2009年2月19日(木)「しんぶん赤旗」

ホンダ期間工切りの非情(1)

2カ月刻み契約の果て


写真

(写真)勤務を終えて帰宅する労働者=三重県鈴鹿市のホンダ鈴鹿製作所

 「まさかホンダが大量クビ切りをやるとは思わんかった」

 「みんなこれからどうするんやろか」

 ホンダ鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の寮内にある談話室。薄明かりのなか、三十代、四十代、五十代の期間工三人が語り合っていました。

4月末までに

 自動車、バイクメーカー大手のホンダ(本社・東京都港区)は四千三百人の期間工を削減して四月末までにゼロにします(表)。鈴鹿製作所でも一月十六日、期間工全員にクビを通告しました。

 「許したら、いつまでたっても使い捨ての労働はなくならんぞ」

 普段は物静かな四十代男性が声を荒らげました。この男性の契約期間はたった二カ月。契約更新を繰り返して約三年間働いてきました。「みんな正社員と同じ仕事を一生懸命やってきた。それを二カ月契約だからと使い捨てにしていいんか」と憤ります。

 ホンダ本社によると期間工はすべて一―二カ月という短期契約です。増産で人員が必要なときは契約更新で何年間も働かせる一方、減産になればすぐに契約期間満了を理由にクビ切りできる体制です。

 ホンダのような短期契約の反復更新について、舛添要一厚生労働相は労働契約法一七条二項(別項)に照らして「基本的には必要以上に短い期間にならないように配慮をすべき」(一月二十一日、参院予算委員会)と国会で答弁しています。

生活あるんや

 鈴鹿の寮内談話室で、三十代男性は「二カ月契約といっても、みんなそれぞれ生活があるんや」と語ります。実家に住む母親への月六万円の仕送りができなくなります。「かあちゃんがショックを受けるから」と打ち明けることができず、悩んでいます。

 五十代男性は「ずっと働けると思ってきたが、わしら二カ月の命だったということや」とつぶやきました。

 男性の妻と三人の娘が京都府内の自宅で暮らしています。クビになれば、高校二年の長女には進学をあきらめてもらうしかありません。月十五万円の住宅ローン返済、生活費、教育費―、焦りはつのります。

 「最近、新聞配達のかけもちを始めてな…。睡眠時間は四時間や。体にこたえるでぇ。そこまでせな、生きていけんのや」

 日本自動車工業会の会長企業であるホンダ。エコカー開発など地球環境を考えるクリーンイメージを宣伝する同社は、一方で違法な短期契約の反復更新を利用して「期間工切り」をすすめています。使い捨て雇用の実態を追いました。(本田祐典)(つづく)


ホンダによる「期間工切り」の内訳

 鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)  1770人
 埼玉製作所(埼玉県狭山市)  1300人
 熊本製作所(熊本県大津町)  680人
 浜松製作所(静岡県浜松市)  380人
 栃木製作所(栃木県真岡市)  170人

労働契約法一七条二項

 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。



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