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日本共産党

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赤旗

➡各分野の目次

5 福祉・生活保護

貧困の打開、福祉の充実、社会的援護の推進をはかります

2019年6月

安倍政権の改悪を許さず、必要な人すべてが受けられる生活保護へ

 安倍政権は、この6年間に2度にわたる生活保護費の削減を強行し、生活保護の申請者や利用者の人権とくらしを破壊する制度改悪を連打しています。

 生活保護は、憲法25条が明記した国民の生存権をまもる“最後の砦”であり、保護費の水準は、国民生活の最低基準(ナショナル・ミニマム)を具体化したものとされています。生活保護の改悪は、憲法が保障した人権を国民から奪いとり、あらゆる福祉制度を後退させる攻撃にほかなりません。

 日本共産党は、生活保護制度の改悪を許さず、削減された支給水準の回復と増額をすすめます。①生活保護法を「生活保障法」に改正する、②国民の権利であることを明らかにし、制度の広報・周知を義務づける、③申請権の不可侵を法的に位置づけ、保護申請の門前払い(水際作戦)を根絶する、④定期的に捕捉率を調査・公表し、捕捉率の向上を図る――など、生活保護を、国民の命と人権を守る制度として改善・強化していきます。

保護基準の切り下げをストップし、給付の改善を

 安倍政権は、生活扶助費の切り下げ、期末一時扶助の減額、住宅扶助基準の引き下げ、冬季加算の削減など、生活保護費の連続削減を強行してきました。

 政府は、そうした削減を実行する際に、生活保護世帯と“生活保護を利用していない低所得世帯”の所得や消費を比較し、「格差是正」や「均衡」の名で保護費を減らすことを常套手段としています。しかし、生活保護世帯よりさらに困窮している世帯があるなら、支援の拡充や貧困の打開に国を挙げて取り組むのが政治の責務のはずです。そうした事態を放置しながら、保護世帯と“保護を利用していない低所得世帯”に貧困を競わせあうなど本末転倒です。

 生活保護基準は、就学援助、住民税の非課税限度額、最低賃金などの基準となり、国保や介護保険の減免基準、公営住宅の家賃の減免基準などに連動しています。生活保護基準の引き下げは、福祉施策の全面的な後退を引き起こします。

 日本共産党は、生活保護費を切り下げに反対し、「ナショナル・ミニマム」にふさわしい水準への改善・向上をめざします。削減された生活扶助基準を元に戻し、物価上昇や生活実態にふさわしい水準に引き上げます。期末一時扶助、住宅扶助、冬季加算などの削減・改悪を中止し、元の水準への回復と制度の改善をはかります。

 自公政権が廃止した、「老齢加算」を復活させます。

 生活保護世帯の子どもが、世帯分離をせずに大学に進学できるよう制度を改善します。

 持ち家がある高齢者に不動産を担保にお金を貸し付け、保護受給を遅らせる「リバースモーゲージ」制度など、保護費削減のために受給権を侵害する制度改悪を撤廃します。

「水際作戦」を根絶して、国民の受給権をまもる

 保護を申請にきた生活困窮者を、自治体の窓口で追い返す、違法な「水際作戦」の横行が各地で大問題となっています。

 日本共産党は、生活保護の申請権の不可侵を法律に明記し、申請の門前払いを絶対に許さない国の立場を明確にして「水際作戦」を根絶します。

 各自治体の保護行政の状況を調査し、違法行為の根絶にむけた指導を強めます。親族への扶養照会などをめぐり、行政が誤った対応をしないよう指導を徹底します。ひとり親家庭の保護利用を阻んでいる、“自動車保有を原則認めない”という運用を改めます。生活困窮者の支援に取り組むNPO、NGO、受給者などの意見を聴きながら「生活保護の実施要領」を改善し、自治体に徹底します。

膨大な漏給、低すぎる捕捉率こそ改革を

 日本の生活保護で、早急に解決がせまられているのは、収入が最低生活費未満の人が生活保護を受けている割合――捕捉率があまりに低いという問題です。

 日本の捕捉率は約2割ですが、ドイツは6割、イギリスは5~6割(求職者)、フランスが9割(OECD基準)です。

 国連の社会権規約委員会は、「スティグマ(恥辱)のために生活保護の申請が抑制されている」日本の現状に「懸念」を表明し、「生活保護の申請を簡素化」すること、「申請者が尊厳をもって扱われることを確保する」こと、「生活保護につきまとう恥辱を解消する」手立てをとることを日本政府に勧告しました。これこそ、いま取り組むべき改革です。

 生活保護は国民の権利であることを広く知らせる活動を、国と自治体ですすめます。

 国として捕捉率を向上させる年次目標を設定し、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと保護を受けられるようにします。

国民分断をねらったバッシング、受給者への人権侵害を許さない

 生活保護の不正受給は支給総額の0・5%前後に過ぎず、しかも、悪質な事例はごく少数です。ところが、自民・公明や日本維新の会、一部メディアが、生活保護を“不正受給だらけ”のように描く「バッシング」を繰り返し、そのなかで、生活に困窮する人が保護の申請をためらい、孤立死や心中に至るなどの悲惨な事件が起こっています。

 一部の自治体が、生活保護利用者の“パチンコ屋通い”や“飲酒”を住民に「通報」させるシステムを導入したり、自治体の生活保護担当課が、利用者を威嚇する文句を書き連ねた専用ジャンパーを着用するなど、行政が「バッシング」を煽る異常事態も発生しています。

 日本共産党は、国民の人権にかけられた攻撃を、社会的連帯の力で跳ね返す、たたかいの先頭に立ちます。

 厚生労働省は、2015年3月、生活保護の利用者に毎年、貯金通帳のコピーなど「資産申告書」を出させるよう自治体に指示する通達を発令しました。厚労省は2013年の生活保護法改定にもとづく措置だと説明していますが、改定法は、利用者と福祉事務所とが協力して金銭管理の適正化を図るとしているだけで「資産申告」強要の根拠とはなりません。こうしたやり方は、不正などの疑いで資産調査をおこなう場合も、その要件を厳格に規定してきた生活保護法の趣旨にも反するものです。

 日本共産党は、生活保護の利用者の人権を侵害する「資産申告」をやめさせます。厚労省の通達を撤回させ、生活保護法の主旨に即した行政を徹底します。

「就労支援」の名による切り捨てをやめさせる

 2013年の生活保護法改定と一体に可決された、生活困窮者自立支援法により、ただちに就労が困難な生活困窮者に「中間的就労」を促す「就労訓練事業」が導入されました。その内容は、保護の利用者申請者を、最低賃金も適用されない事業に「とりあえず就労」させるものです。これには、低賃金労働を助長し、保護の打ち切りや「水際作戦」のツールとなり、貧困ビジネスに悪用されかねないなど、様々な懸念が出されています。

 自治体が“保護よりも就労指導”という方針を徹底するなか、強引な保護打ち切りが横行し、そのなかで餓死者が出るなどの事件も起こっています。

 日本共産党は、「就労支援」の名で要保護者に圧力をかけ、「水際作戦」や強権的な保護の打ち切りを推進する制度改悪に反対します。

生活困窮者のサポート体制を抜本的に強化

 不正受給は、当然、なくさなければなりません。不正受給を防止するとともに、はるかに深刻な「漏給」問題を解決するには、生活困窮者の相談や申請に迅速に対応し、実情を踏まえてきめ細かく対応する体制を整えることが不可欠です。

 生活保護費にたいする国・地方の負担割合の改善などを進め、福祉行政にかかわる国の財政支出を増やします。国の責任でケースワーカーを大幅に増員し、過重な担当件数を減らすなど待遇改善をはかります。保護の申請者・受給者のなかには、生活困難や社会的孤立、さまざまな悲惨な体験から、精神的に追い込まるなど、緊急の対応が必要な人もいます。ケースワーカーの専門性を高め、生活困窮者にきめ細かな支援ができる体制を構築します。

 生活保護受給者を食い物にした「貧困ビジネス」が全国で横行しています。住居や食事を実態とはかけはなれた高額料金で提供し、さまざまな名目をつけて、保護費のほとんどを“ピンハネ”していく悪質業者・団体への、実効性ある規制を行なっていきます。

国をあげて貧困打開をすすめる

 生活保護受給者が200万人を超えて過去最高を更新し続けているのは、「働く貧困層」の増大や低年金者の激増など、日本社会を未曽有の貧困がおおっているからです。ここに手を打たないまま保護申請の門前払いや保護の打ち切りを強化しても、餓死や孤立死が増え、国民の命が脅かされるだけです。

 日本共産党は、日本社会のゆがみをただし、貧困を打開する改革をすすめます。

 正規雇用への転換、最低賃金の引き上げ、解雇規制の強化など、人間らしく働けるルールを確立し、雇用と賃金を立て直して、「働く貧困層」をなくしていきます。

 中小企業と大企業の公正な取引ルールの確立、中小企業の本格的振興、農林漁業の再生など、中小企業や農林漁業者の経営をまもり、所得増をはかる改革を推進します。

 「年金7兆円削減計画」=マクロ経済スライドを廃止し、減らない年金にします。低年金の底上げ、最低保障年金の導入で、無年金・低年金問題の根本的解決をはかります。医療や介護の保険料・自己負担の軽減、公的保育の充実など、社会保障の拡充をすすめます。

 雇用保険の拡充、失業者に対する生活扶助制度の確立、職業訓練と再就職支援の強化など、“生活保護以外の公的扶助が弱すぎる”という現行制度の弱点をただし、失業者を支援する制度の総合的な充実を推進します。

ハンセン病元患者にたいする保障を充実させます

 全国には、13ケ所の国立ハンセン病療養所、1ケ所の民間の療養所があります。入所者は約1338人(うち民間療養所入所者は5人:18年5月時点)で、平均年齢は85歳となっており、高齢化と身体の不自由が年々すすんでいます。2001年の「隔離は違憲」とした熊本地裁判決、ハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづいた運動を受け、2008年6月には、療養所の具体的な維持対策を求めた「ハンセン病問題基本法」が成立しました。元患者への名誉回復、社会復帰・社会内生活支援、在園保障などについて、一日も早く、法の完全実施が実現されるよう力をつくします。

 「基本法」にふさわしい入所者の処遇改善や職員体制の充実を一刻も早く実施し、生活環境が地域から孤立することなく、安心して豊かな生活を営むことができるよう必要な措置を講じることを求めます。

元患者家族に損害賠償と謝罪を

 元患者家族は差別や偏見に苦しめられてきたことで、国に謝罪広告や損害賠償を求める集団訴訟を起こし、5681人が提訴(18年12月時点)しました。国側は「隔離政策は家族を対象としていない」と述べ、原告の訴えは間接的な被害だと主張しています。

 国は強制隔離政策が本人のみならずその家族などに対しても違法な人権侵害があったことを認めて真摯に謝罪し補償すべきです。ハンセン病問題の解決の促進に関する法律を改正し、家族も被害者であったことの明確化を求めます。

療養所の職員の増員と処遇改善をはかる

 緊急に入所者の医療・生活保障を拡充し、不足している医師、看護師、介護職員の確保・増員をはかることが必要です。そのために、国家公務員の定員削減計画からハンセン病療養所を除外するべきです。重症化している入所者の夜間の看護・介護体制の充実をすすめます。

 2016年度から療養所と港を結ぶ官用船の一部の船員の処遇改善がはかられ、人員を補充可能な海事職として採用されています。職員の拡充や賃金などの処遇改善をおこなうとともに、民間委託化された航路を国直営に戻すことを求めます。

 退所者が安心してかかることのできる医療制度を確立します。賃金職員の差別的処遇の抜本的な改善をはかります。

入所者の願いに応えた地域構想・保存を

 療養所ごとに「将来構想」づくりがすすめられています。入所者が最後の一人になるまで国は面倒を見ると言っていますが、そのためには療養所の医療を地域に開放し、ニーズを高めて機能を維持、あるいは充実させていくことが大切です。療養所施設の保存を求めます。療養所に併設されているハンセン病の資料館を、公的責任で運営できるようにします。

 全国の療養所敷地内に保育所や特養ホームが開設されています。広大な敷地に障害者施設や高齢者福祉施設などを誘致することも望まれています。他施設の誘致、併設にあたっては、法外に高い借地代の改善が不可欠です。国は、自治体とともに入所者の願いを反映する療養所を実現するため、着工の予算を確保し、積極的で万全な支援と保障につとめるべきです。

 厚労省で開かれる毎年の追悼式への交通費を、代表者だけでなく、元患者やその家族に支給します。

「特別法廷」の違憲性を受け止め人権侵害の再発防止へ

 裁判所以外の療養所などで開かれた「特別法廷」のハンセン病患者の裁判は、1948年から72年まで95件が実施されました。

 最高裁は「療養所入所者協議会」などから要請をうけ、「特別法廷」の正当性について調査し「裁判所法には違反するが憲法の公開原則には反しない」という結論を出しました(2016年4月)。これに対し、第三者で構成される「有識者委員会」は、「憲法の平等原則に違反し、公開原則は違憲の疑いがぬぐいきれない」と述べています。

 17年4月には、特別法廷について最高検検事は特別法廷について元患者側弁護団と面会し謝罪しましたが、弁護団側からは、国民に向けての公式な謝罪が求められています。

 裁判官などへの人権研修をすすめ、いまだに克服されていないハンセン病に対する偏見、差別をなくし、政府がなぜ隔離政策をとったのか、その隔離政策とは何であったのか、広く国民に知らせ、二度と同じ過ちを繰り返さないための啓発活動を積極的に講じていきます。

中国からの帰国者に社会的支援を確実におこないます

 さきの戦争で犠牲になった中国「残留孤児」「残留婦人」たちが、国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟に立ち上がった結果、改正「中国残留邦人支援法(新支援法)」による支援給付金などの制度が実施されています。しかし、国は、終戦間際に多くの国民を中国東北部に置き去りにし、その後も長期にわたって支援を怠ってきたことへの真摯な反省と謝罪をしていません。そのために、支援給付金の水準は、「安心した老後を送りたい」という願いにこたえるものとはなっていません。

 残留邦人の配偶者には2014年10月から支援給付金と合わせて老齢基礎年金の3分の2相当が加えられるようになりました。さらなる支援拡充をすすめます。中国渡航期限(2カ月以内)の緩和などを行ないます。

 1世と共に帰国した2世にも高齢化が始まっており、日本語も話せず低賃金・過酷な労働を余儀なくされ、生活保護に頼らざる得ない2世も多くいます。新支援法を改正して生活保護とは異なる老後の生活保障をおこなうことや、自立支援通訳の派遣などを利用できるようにして医療や行政サービスを受けられるようにします。

 配偶者や2・3・4世も含め、国が「孤児」たちに約束した「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を、人間としての尊厳にふさわしく、確実におこなっていきます。

ひきこもり、社会的孤立となっている人への支援をすすめます

 15~64歳のいわゆる稼働年齢層のなかで、メディアや研究者が「ひきこもり」「孤立無業者」などと呼ぶ、社会的な孤立状態にある人たちの増加が、日本社会の直面する問題となっています。孤立・無業状態にある50歳代の子を、80歳代の親が支え、親子共倒れのリスクを抱える「8050問題」もメディアの話題となっています。

 今年3月、内閣府は、初めて行った「中高年のひきこもり」に関する調査結果を発表し、40~64歳のひきこもりが全国で61・3万人にのぼるとの推計値を明らかにしました。

 2016年に発表された、15~39歳の「若年ひきこもり」の推計値54・1万人とあわせると、ひきこもりの総数は115万人を上回ることになります。

 これらの人たちが孤立状態に至った経緯はさまざまですが、その背景には、過度の競争教育、長時間・過密労働、職場におけるストレスの増大、弱者たたきの風潮のまん延、格差と貧困の拡大など、日本社会の矛盾があります。

 実際、「中高年ひきこもり」のほとんどは就労経験があり、職場の問題で人間不信や心の病になったり、不景気で再就職できないまま無気力になった人たちが多数にのぼるという調査結果もあります。

 専門家からは、ひきこもりを「自己責任」と捉えるのは誤りで、このまま現状を放置すれば、近い将来、膨大な“貧困高齢者”が生みだされ、孤独死の激増など、深刻な社会問題を引き起こしかねないという警鐘も鳴らされています。

 孤立状態にある人や家族の相談にのり、訪問・ケア・就労援助など、社会的支援の体制を国の責任で構築していくことが必要です。

 日本共産党は、国民のくらしをまもり、誰もが尊厳をもって自分らしく生きられる社会をめざす立場で、ひきこもりなどの孤立状態となっている本人と、家族への支援を進めます。

支援拠点の確立、相談窓口の明確化

 現在、全都道府県・政令指定市に1カ所ずつ「ひきこもり地域支援センター」が設置されていますが、国の予算は1カ所当たり1000万円程度で体制は薄く、事態の拡大に対応しきれていません。抜本的に予算を増額し、支援拠点としての体制・機能の拡充や、増設を図ります。

 ひきこもりへの対応は、自治体によって、支援の格差や、理解のばらつきがあるのが実情です。ひきこもりの人の家族が役所を訪れても、担当部署が不明確だったり、相談窓口自体がわかりやすく整備されておらず、「たらいまわし」になったり、必要な支援につなげていない実態が各地から報告されています。とくに、家族が、「世間への負い目」や焦り、不安、混乱などを抱えて自治体の窓口を訪れても、「本人が来ないと、どうにもできない」「本人の甘えや家族の育て方が原因ではないか」などと言われ、あきらめてしまうケースも少なくありません。

 ひきこもりの事案を担当する所管部署・窓口を明確化し、すべての区市町村で相談に応じられる体制を確立します。

 対応する機関の情報不足や認識不足をただし、家族や当事者の心情に寄り添い、適切で具体的な情報提供を行なう姿勢を現場に徹底します。

伴走型で継続的な支援体制を確立する

 ひきこもり、孤立状態となっている本人が抱える困難は複雑・多様で、一人ひとりの状況に応じた、伴走型の柔軟なサポートが必要です。行政とNPOや家族会などの支援機関とが連携し、ひきこもり支援のネットワークを確立し、支援体制の強化・拡充をすすめます。

 各自治体に、専門性をもった相談員による訪問相談、アウトリーチの仕組みを構築します。その際、ひきこもりの本人、家族の話にじっくりと耳を傾け、実態に寄り添ってアドバイスをする姿勢を徹底します。

 多様な背景をもち、年代も経験も千差万別である、ひきこもりの本人を継続的にサポートするため、オーダーメイド型の支援ができる体制をつくります。

 自治体の担当職員を大幅に増やすとともに、本人の居場所づくり、ピアサポート、家族会の拡充をすすめます。NPOなどの支援機関と協力しながら、本人が自らの意思で参加し、他者との出会いやつながりを持つ、多様な居場所をつくります。そのために、当事者経験者スタッフ(ピアサポーター)の積極的起用と、活動への援助を行います。家族が、地域社会から孤立することを防ぎ、悩みや辛さを分かち合える場として、家族会(家族のつどい)の拡充を図ります。

 家族会をはじめ、ひきこもりを支援する機関の、自治体の福祉施策を検討する場への参画をすすめます。

本人の意思にそった就労・社会参加の支援

 ひきこもりの人への就労支援にも活用されている、「生活困窮者自立支援法」にもとづく国の委託事業では、1年間という期限の設定や、サポートステーションへの数値目標の義務づけが、制度を使いにくくしていると指摘されています。一律の期限設定や数値目標の押しつけをやめ、本人の意思や状況に応じた対応ができるようにします。

 就労後も使える居場所づくり、サポートの仕組みを整備します。

 いくつかの自治体で実施されている、ひきこもりの本人が、自らの経験を活かしながら、ボランティアや地域活動に参加する「社会的役割の機会創出事業」を広げます。「就労だけがゴール」という発想ではなく、本人の意思と選択、実情に応じた援助を行ないます。

自立支援ビジネスの実態把握と規制

 ひきこもりの人の家族が、藁をもつかむ思いで、たまたまネット検索などの情報で知った自立支援ビジネス(暴力的支援団体)にすがってしまうケースが後を絶ちません。その実態は、家族と高額の契約を結び、本人を同意もないまま暴力的手法で強引に引き出して、施設に入寮させ、まともなケアもないまま“矯正”を強いるというものです。

 消費者相談による対応を強化するとともに、行政として実態を把握し、脱法的行為の摘発と規制を進めます。こうしたビジネスが横行する余地をなくしていくためにも、行政による家族への相談と情報提供、本人へのサポート体制の構築が必要です。

偏見・スティグマを克服し、誰もが自分らしく生きられる社会へ

 ひきこもりを「甘え」「怠け」などといって中傷し、無業の人たちにスティグマ(恥辱)を負わせる偏見が、日本社会には根強く残っています。

 また、今年5月、ひきこもり状態にあったとされる50歳代の男性が殺傷事件を起こし、その直後に、今度は、40歳代の無業の息子を70歳代の父親が殺害する事件も発生するなかで、ひきこもりへの偏見を助長したり、孤立状態にある人をいっそう追いつめるような言論がメディアを通じて流されています。

 ひきこもる人の多くは、職場や学校で傷つけられたり、他人を傷つけるのを回避したいと望んだ結果、他者との関係を遮断せざるを得ない状況に追いやられた人たちです。無関係な他者に危害を加えるような事態に至るケースはきわめてまれです。

 ひきこもりを“犯罪者予備軍”であるかのようにいう言動の流布は、本人や家族の孤立と苦難に拍車をかけ、問題の解決を遠のかせるだけです。根拠のない不安をあおって、社会的偏見を拡大するような報道・発言はやめるべきです。

 ひきこもりの本人が、孤立状態に至った背景は複雑で多様ですが、その大本には日本社会の矛盾があります。それを「自己責任」の名で攻め立て、いっそう孤立無援に追い込む社会ではなく、困難のなかで傷ついた人を地域と行政が支え、かけがえない個人として尊重する社会こそ、誰もが安心して生きられる社会です。

 ひきこもりの本人や家族を攻撃する風潮をただし、偏見を克服するため力をつくします。

 過度の競争教育の是正、長時間労働の規制、ブラック企業の根絶、ハラスメントの禁止、社会保障の充実など、日本社会の矛盾を打開する改革を進めます。

  

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