ロシアはクリミア併合を撤回せよ
――世界の平和秩序を覆す覇権主義は許されない
2014年3月19日 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
(1)
ロシアのプーチン大統領は18日、上下両院の議員らを前に演説し、ウクライナの領土であるクリミア自治共和国とセバストポリ特別市をロシアへ編入する方針を明らかにした。
ロシアは2月末のウクライナでの政変以来、クリミアとセバストポリでロシア軍を一方的に展開してきた。軍事的圧力の下での両地域の「独立」承認とロシア併合は、国連加盟国の主権、独立、領土保全を尊重するという国連憲章、国際法の原則に反した侵略行為そのものであり、断じて許されない。
(2)
ロシアによる2地域の併合は、ロシア政府自身が一連の国際的な条約で繰り返し誓約してきたウクライナの主権、独立、領土保全、同国との国境の尊重にも反するものである。
旧ソ連を構成した諸国でつくられた「独立国家共同体」(CIS)発足の際の「アルマアタ宣言」(1991年12月)、ウクライナの核兵器放棄に関する「ブダペスト覚書」(1994年)、ロシア黒海艦隊のクリミア駐留に関する協定(1997年)では、ウクライナの独立、主権、現国境の尊重、内政不干渉が明記されている。これらの国際的誓約を投げ捨てることも、きびしく批判されなければならない。
(3)
ロシアは、クリミアとセバストポリの「独立」とロシア併合を、両地域の住民の自由意思の平和的表明=民族自決権にそったものと強弁している。
しかし、両地域の編入の「意思表明」は、 〔1〕ロシアの軍事的圧力を背景にした事実上の占領下で行われ、〔2〕「領土の変更問題は国民投票のみで議決できる」と明記したウクライナ憲法にも明らかに違反している。
軍事的圧力のもとでの無法な併合を、「民族自決」の名で合理化することは許されない。
(4)
プーチン大統領は演説の中で、クリミアのロシアとの歴史的な結びつきを強調し、「ロシア世界、歴史的なロシアが統一を回復しようとしている」と述べた。これは、自らの領土拡張を国際法の上におく、大国主義・覇権主義そのものである。プーチン大統領がいう「ロシア世界」なるものが、旧ロシア帝国の版図を意味するものとすれば、その危険性はクリミア問題にとどまらないものになる。
日本共産党は、世界の平和秩序を覆す覇権主義にきびしく反対する。
ロシア政府に対して、ウクライナ領内の二つの地域に対する「独立」承認とそのロシア併合の撤回、ロシア軍の介入と展開の中止、ウクライナの主権、独立、領土保全の厳格な尊重を求めるものである。