2012年総選挙政策各分野政策
40、ODA
国際目標をふまえ、人道援助を重視した援助政策への転換を
2012年11月
途上国地域では、1日わずか1.25ドル未満でくらす人が13億7500万人、慢性的な飢餓人口は10億人、5歳未満で亡くなる子どもの数は880万人など、大勢の人々が飢餓、貧困に苦しみ、生存を脅かされています。とくに2008年のリーマン・ショックを契機に起こった世界的な経済危機の影響で、2010年までに「極度の貧困」とされる人々はアジア太平洋地域で2100万人増加するとの見通しも示されています。その一方で食料価格は、2010年後半からずっと値上がりを続け、途上国の人々の家計を脅かしています。また日本、中国、韓国の企業や、サウジアラビアなど砂漠国で食料自給率が低い中東産油国が、先行する欧米の企業を上回る勢いで、アフリカや東南アジアの農地を確保しようとしています。囲い込みが貧しい途上国の食糧難や人権問題、生態系の破壊を悪化させる危険が指摘されています。
途上国が抱えるこうした問題に対処するためにも、日本の外交のあり方を転換する必要があります。「国際紛争の平和的解決」「武力の行使・威嚇の禁止」という国連憲章の「平和のルール」にのっとり、地球上の一人ひとりの人間が、安全と安心のある暮らしを送れるような国際秩序を築きあげることは、国際政治と国際世論が直面する重要課題です。日本共産党は、「アメリカいいなり」の外交から、憲法9条にもとづく自主・自立の平和外交に転換することで、国連憲章の「平和のルール」を本格的に実践し、「人間の安全保障」の実現に向けて飢餓、貧困、人権侵害を克服し、基礎的社会サービス、環境保全、防災などの課題を達成する平和で公正な国際社会の実現に力を尽くします。
こうした転換を図ることによって、日本のODA(政府開発援助)を、これまでのアメリカの戦略に奉仕し、大企業の海外進出の条件を整備するものから、発展途上国の自主的・自立的発展と世界の平和に寄与するものに変えるようにします。
国際社会は、「国連ミレニアム開発目標」(MDGs)という名で具体的な開発目標を設定し、その達成にむけて取り組んでいます。しかし、経済がグローバル化したもとで、発展をとげる一部の途上国がある一方、多くの国が発展の軌道にのれないまま、過度の投機などでより経済が不安定化し、国民の間の格差と貧困が拡大するなど、国連ミレニアム開発目標の達成が危ぶまれています。貧困層への支援による具体的な開発目標、貧困削減の目標が後景にやられ、エリート層の育成など経済成長への貢献を中心とする議論に置き換わることで、先進国や途上国内の少数の富裕者の都合にあわせた目標に代わろうとしていることへの懸念も表明されています。新自由主義的なグローバル経済が内包する貧困と格差の拡大のメカニズムに、国際社会がどう対処するのかという点をぬきには、途上国の発展の可能性を広げることはできません。
実際に援助において途上国が抱える困難に対処するには、貧困対策、飢餓の解消、衛生保健、教育、ジェンダーへの配慮、女性の参加、災害支援、環境保全、法的枠組みの構築と尊重など、相手国の自立と成長を支援するための課題に、援助国も積極的に取り組むことが求められます。
先進国は、国連ミレニアム開発目標の達成にむけたとりくみにおいて、応分の責任を果たさなければなりません。とりわけ日本は、途上国に広がる看過できない飢餓、貧困の状況をふまえ、従来のODAのあり方を以下のように、抜本的に見直す必要があります。
――経済インフラ分野が約3割も占める経済インフラ偏重をあらため、食糧、保健、教育など基礎的生活分野(BHN)や社会セクターへの支援をODAの中心にします。
――後発開発途上国(LDCs)への援助の比重を高めます。
――ODA支出額について、先進国の目標とされるGNP(国民総生産)比0.7%の達成に向けて努力します。
――ODAを増額するため、今年2月に発表した経済提言(「消費税大増税ストップ!社会保障充実、財政危機打開の提言」)で提案した「為替投機課税」をはじめ、国際連帯税、タックスヘイブン課税の強化も含め、財源を広く検討します。
――世界銀行など支援にかかわる国際機関において、途上国の発言権拡大を求める取り組みを支持します。
――日本の都合を優先したODAでは、相手国で期待された目的を十分に達成することができないケースが多くみられました。相手国の主体性を尊重し、住民のニーズに第一義的に応え、説明責任を十分にはたします。そのために、ODAの基本理念や、ODAに関する国会の責任と権限を明確にし、NGOの関与の仕方とそれへの支援などを盛り込んで、ODA基本法を制定します。
――日本の経済協力における官民協力では、民=企業という場合が多く、ODA予算のごくわずかしか、NGOが参加できる案件がありません。NGOの持つきめ細かい対応や、情報、政策提言などを生かせるよう、ODAの計画から実施までのあらゆるレベルで、NGOの自立性を尊重しつつ、パートナーとして参加を位置づける体制(予算、協議や情報発信の場の提供など)をととのえます。