消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言
2012年2月7日 日本共産党
民主党・野田政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税を2014年に8%、2015年に10%に増税する大増税法案を成立させようとしています。多くの国民からこの計画にたいする強い不安と批判の声が広がっています。
同時に、国民みんなが安心できる社会保障をどうやって再生・拡充していくのか、国と地方の財政危機をどうやって打開するのか、そのための財源をどうやってつくるのかについて、多くの国民が答えを求めています。
日本共産党は、所得の少ない人に重くのしかかる最悪の不公平税制――消費税の大増税計画に断固として反対を貫きます。消費税に頼らずに、社会保障を再生・拡充し、財政危機を打開するために、この提言をおこないます。
暮らしも、経済も、財政も壊す消費税大増税に反対する
野田首相は、消費税大増税について、「どの政権でも避けて通れない」というだけで、「なぜ大増税か、なぜ消費税か」について、まともな説明はいっさいできません。いますすめられている消費税大増税計画には三つの大問題があります。
第一に、ムダづかいを続けたままの、大増税だということです。
中止を公約した八ツ場(やんば)ダムや「1メートル1億円」の東京外郭環状道路などムダな大型開発を次々と復活させ、重大な欠陥が指摘され完成してもいないF35を次期戦闘機として買い入れるために総額1・6兆円も費やし、320億円にのぼる政党助成金は受け取り続け、その一方で、富裕層や大企業には、年間1・7兆円もの新たな減税です。こういうムダづかいを続けながらの大増税など許せるものではありません。
第二は、社会保障切り捨てと一体の大増税だということです。
老齢年金、障害年金の給付削減などを皮切りに、年金の支給開始を68~70歳に先延ばしする、医療費の窓口負担を増やす、保育への公的責任を投げ捨てる「子ども・子育て新システム」を導入するなど、社会保障のあらゆる分野で、高齢者にも、現役世代にも、子どもにも、負担増と給付削減という連続改悪をすすめる計画です。「社会保障と税の一体改革」といいますが、「一体改悪」がその正体です。
第三は、日本経済をどん底に突き落とし、財政破たんもいっそうひどくするということです。
1997年に、橋本内閣のもとで強行された消費税の5%への増税と医療費値上げなど総額9兆円の負担増は、当時、回復の途上にあった景気をどん底に突き落とし、その結果、財政破たんもいっそうひどくしました。税収の落ち込みと「景気対策」のための財政支出で、国と地方の長期債務はわずか4年間で200兆円も増える結果となったのです。
今回は、消費税10%への引き上げで13兆円もの大増税になるのにくわえ、年金額の削減などを含めると年間16兆円、さらにすでに決められた制度改悪による年金、医療などの保険料値上げによる負担増をあわせると年間20兆円もの大負担増になります。しかも、日本経済の長期低迷と世界経済危機、これらを「口実」にした大企業の大リストラ、雇用破壊のもとで、国民の所得が大幅に減り、貧困と格差が広がり、多くの中小企業が経営難におちいり、地域経済が深刻な疲弊のもとにあるさなかでの大増税です。それは国民の暮らしにはかり知れない打撃を与え、日本経済をどん底に突き落とし、財政破たんをいっそうひどくすることは、明らかです。
いま東日本大震災の被災地では、復旧・復興にむけた、懸命の努力が続けられています。生活と生(なり)業(わい)の再建にたちあがろうという被災地にまで情け容赦なく襲いかかる大増税をおこなうなど、常軌を逸した冷酷な政治と言わなければなりません。
日本共産党は、暮らしも、経済も、財政も壊す、消費税大増税の計画に断固として反対します。
社会保障充実、財政危機打開の提言 (総論)
それではどうやって社会保障の再生・充実と、財政危機打開をすすめるか。
日本共産党は、以下の二つの柱の政策を実行することを提案します。
I、社会保障の段階的な充実――財源は「歳出」「歳入」の段階的な改革でまかなう
社会保障の「再生」と「抜本的拡充」を、財源を確保しながら段階的にすすめます。
小泉内閣以来の「構造改革」路線と、その路線をまるごと引きつぐ民主党政権によって、医療、年金、介護など、日本の社会保障はあらゆる分野で危機にひんしています。年金制度への国民の信頼は揺らぎ、「医療崩壊」「介護難民」など社会保障の基盤そのものが大きく崩され、国民の暮らしや命が脅かされています。
こうしたもとで、崩された社会保障を再生することは一刻を争う課題となっています。私たちは、先進水準から大きく遅れた日本の社会保障の水準を抜本的に拡充することを目標としていますが、社会保障の「再生」と「抜本的拡充」を一挙に実現することは困難です。そこで、この提案では、急を要する課題から段階的に解決するとともに、その財源も段階的に確保していくこととしています。
財源の考え方を、「財界言いなり」の富裕層・大企業優遇から、税と社会保障の根本原則である「負担能力に応じた負担」に切り替えます。
社会保障でも財政危機でも、「財源」といえばもっぱら消費税――これが財界の主張であり、民主党政権も財界言いなりにこうした政策をすすめています。消費税増税を押しつける一方で、富裕層や大企業への減税も繰り返してきました。こうした政治では、いつまでたってもまともな社会保障をきずくこともできませんし、財政危機は深刻化するばかりです。
こうした「財界言いなり」の姿勢を転換し、近代社会が確立してきた「応能負担」――「負担能力に応じた負担」という税の大原則に立ってこそ、社会保障再生・拡充と財政危機打開の大きな展望が開けてきます。
第1段階
「社会保障再生計画」の実行――ムダ一掃、富裕層・大企業への応分の負担で
社会保障を良くする「第1段階」として、小泉内閣以来の「構造改革」路線で、大きく崩された社会保障を再生させる「社会保障再生計画」を作成し、その実行にただちに着手し、2010年代末までに達成します。
医療費の窓口負担を「子どもは無料、現役世代は2割、高齢者は1割」に引き下げる、毎年の年金額を自動的に削減する制度(マクロ経済スライド)を廃止し、年金額が減らない信頼できる制度にする、特別養護老人ホームや保育所の待機者をゼロにするなど、この間の「構造改革」路線で崩された社会保障を立て直していきます。
その財源は、大型開発や軍事費をはじめ税金のムダづかいの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制を見直すとともに、新たに「富裕税」「為替投機課税」「環境税」などを導入することでまかないます。
第2段階
「先進水準の社会保障拡充」――「応能負担」に立った税制改革で
つぎの段階――社会保障を良くする「第2段階」として、最低保障年金制度の創設、医療費の窓口負担を無料にする、介護の利用料を無料にするなど、先進水準の社会保障――ヨーロッパの多くの諸国で当たり前になっている水準の社会保障――への抜本的拡充をすすめ、憲法25条の生存権を保障する水準へと引き上げます。
あわせて高校とともに大学の学費の引き下げ・無償化に向かうなど、教育・研究の抜本的な充実をすすめます。
その財源は、国民全体で、その力に応じて支える必要があります。もちろん、その場合も、所得の少ない人に重くのしかかる消費税に頼る道はとりません。財源は、「応能負担」の原則――負担能力に応じた負担の原則にもとづき、累進課税を強化する所得税の税制改革によってまかないます。
II、国民の所得を増やし、経済を内需主導で健全な成長の軌道にのせる民主的経済改革
社会保障の再生・拡充と同時並行で、国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した成長の軌道に乗せる民主的経済改革をおこないます。
日本経済は、長期の低迷と後退に陥っています。そのもとで日本の税収は大きく落ち込み、消費税を5%に増税した前年の1996年から見ても14兆円も減っています。こうした経済の低迷と後退をそのままにして、その枠内でいくら歳出と歳入の改革をすすめても、展望は開けてきません。社会保障の再生・拡充、財政危機打開をはかるためには、日本経済を長期の低迷と後退から脱出させて、健全な成長の軌道にのせることが、不可欠となります。
非正規雇用をなくし正社員が当たり前の社会をつくる、最低賃金を大幅に引き上げ「働く貧困層」をなくす、長時間・過密労働をなくし雇用を増やす、大企業と中小企業との公正な取引のルールをつくる、農林水産業の再生のための抜本的方策をはかる、原発をなくし再生可能エネルギーへの抜本的転換をはかるなど、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」への改革をすすめます。大企業の横暴を抑える民主的規制によって、その力にふさわしい社会的責任と負担を果たさせます。
この改革によって、大企業の内部に蓄積された260兆円にもおよぶ内部留保を日本経済に還流させ、国民の所得を増やし、家計を温め、日本経済を内需主導の健全な発展の軌道に乗せることが可能になります。それは、税収増をもたらすとともに、対GDP(国内総生産)比での長期債務を削減していく展望を開くものともなります。
社会保障の再生・拡充と税・財政、経済の民主的改革をおこなうことで、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」への改革をすすめます。こうした改革をすすめることは、「少子化」という日本社会の危機を打開することにもつながります。
社会保障充実と財政危機打開の提言 (各論)
I、社会保障の段階的な充実――財源は「歳出」「歳入」の段階的な改革でまかなう
第1段階
「社会保障再生計画」の実行――ムダ一掃、富裕層・大企業への応分の負担で
(1)つぎの内容の「社会保障再生計画」を実行する
社会保障を良くする「第1段階」として、小泉内閣以来の「構造改革」路線で、大きく壊された社会保障を再生させる「社会保障再生計画」の実行にただちに着手し、2010年代末までに達成します。
医療費の窓口負担を引き下げ、医療崩壊を立て直す
窓口負担は「現役世代=3割、高齢者=1~3割」にもなりました。国民健康保険料(税)は、所得200万円(給与年収換算で311万円)で年間30万円を超えています(4人家族)。国民負担は大幅に増えたにもかかわらず、医療体制は大きく後退、弱体化し、医療崩壊が深刻になっています。窓口負担を重くすれば、早期発見、早期治療を困難にし、病気は重病化し、医療費はいっそう増大します。予防・健診を強化するとともに、窓口負担を引き下げるべきです。
――医療費の窓口負担を引き下げる。子ども(就学前)は国の制度として無料に、現役世代は国保も健保も2割に、高齢者は1割にする。
――国民健康保険料(税)を軽減する。当面、国の責任で年間1人1万円引き下げる。国民健康保険証の取り上げをやめる。
――後期高齢者医療制度を廃止し、老人保健制度にもどして高齢者の医療差別をなくす。
――診療報酬を引き上げる。高すぎる薬価や医療機器にメスを入れ、医療充実にまわす。
――公的病院の統廃合を中止し、計画的に医師・看護師などの養成数を増やす。
年金削減政策を中止し、無年金・低年金の解決に足を踏みだす
年金保険料の際限ない値上げと給付削減、支給開始年齢の先送りなどによって、国民の年金不信が広がり、国民年金保険料の未納者が1000万人にのぼるという深刻な「空洞化」を引き起こしています。無年金・低年金者の増大も深刻です。年金削減政策を中止し、無年金・低年金の解決に足を踏みだし、年金への信頼を取り戻します。
――年金支給額を自動的に削減し続ける「マクロ経済スライド」を撤廃する。
自動的に年金受給額を毎年0・9%ずつ削減していく「マクロ経済スライド」を廃止します。
――年金の受給資格期間を「25年」から「10年」に短縮するとともに、無年金・低年金の解決に足を踏みだす。
年金の受給資格期間を「25年」から「10年」に短縮します。無年金者、低年金者に対する重点的な底上げをおこないます。現行の基礎年金の受給額の2分の1を税金で負担する仕組みをあらため、全員に定額(基礎年金満額の2分の1である3万3000円)を国庫負担で支給します。例えば、現在月4万円の基礎年金額の場合は、国庫負担額が2分の1である2万円から3万3000円に引き上がるので、年金額は月額5万3000円となります。これは最低保障年金制度に向けた第一歩にもなります。
特養ホーム待機者ゼロ。本人も家族も安心して利用できる介護制度をきずく
特別養護老人ホームの待機者が40万人をこえるとともに、在宅でも、利用料が高すぎる、体制が不十分などのために、介護が必要な人が満足なサービスが受けられず、悲惨な生活を送っている“介護難民”が大問題になっています。親の介護のために仕事をやめざるを得ないなど、公的介護制度の不備は、現役世代の重い負担にもなっています。介護保険財政の4分の1に満たない国庫負担の引き上げをはかり、これらの問題を解決するとともに、介護労働者の賃金や労働条件を改善します。
――「軽度者」からの介護サービス取り上げをやめる。
――特別養護老人ホームを増設し、待機者をゼロにする。
――低所得者の利用料を無料にする。
――国の制度として保険料の減免制度をつくる。
障害者の生活を守り、権利を保障する
障害者が人間としてあたりまえの生活をするために必要な支援を「益」などとして負担を課す障害者自立支援法がつくられ、障害者の大きな怒りを呼びました。悪法の延命・温存を許さず、憲法や障害者権利条約の趣旨にそった福祉制度を確立します。
――福祉・医療の「応益負担」を撤廃し、障害者福祉・医療は無料にする。
――自立支援法を廃止し、新しい総合福祉法を実現する。
保育所の待機児童をゼロにする
政府は、もっぱら定員を超えた“つめこみ”や認可外の保育施設を“受け皿”にする安上がりな「待機児童対策」に終始してきました。そのうえ今度は、保育所さがしまで親の自己責任にし、保育への公的責任を投げ捨てる「新システム導入」です。これでは、待機児童はなくなりません。
――保育への国・自治体の責任を投げ捨てる改悪を許さず、公的保育制度を守る。
――待機児童を解消するため、認可保育所を計画的に整備する。
雇用保険を拡充し、失業者への生活援助と再就職支援を強化する
削減が続いた雇用保険、失業給付を回復・拡充させます。これは、「失業保険が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるをえないという状況を改善し、「ワーキングプア」をなくしていくうえでも大切です。
――失業給付期間を、当面、現在の90~330日から180~540日程度までに延長し、離職理由による差別をなくす。
――失業給付が切れても再就職できず、生活が困窮している失業者への生活扶助制度を強化・確立する。
――公共職業訓練所の統廃合をやめるなど、職業訓練と再就職支援を強化する。
生活保護――排除と切り捨てをやめる
門前払いや強権的な打ち切りなど、無法な生活保護行政をあらためます。
――廃止された老齢加算を復活する。
――保護費の切り下げ、「就労支援」を口実にした制限などの制度改悪をやめる。
(2)財源は、ムダの一掃と、富裕層・大企業への応分の負担で
財源は、大型開発や軍事費をはじめ税金のムダづかいの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制を見直すとともに、新たに「富裕税」「為替投機課税」「環境税」などを導入することでまかないます。
歳出のムダと浪費を一掃する
――大型公共事業の浪費を一掃し、1兆円程度の財源をつくる。
大型公共事業予算は国と地方あわせて2兆円近くにのぼります。ダム建設(3000億円、以下すべて2012年度予算案)、国際コンテナ戦略港湾など(1400億円)、大都市圏環状道路や全国ミッシングリンク整備など高速道路建設(5000億円)といった不要不急の支出にメスを入れて、1兆円程度の財源を生み出します。大型公共事業の浪費を続ける仕組みになっている「社会資本整備」特別会計は廃止します。
――原発推進予算を大幅に削減する。
原発推進の予算(4200億円)のうち、「安全・事故対策」としている部分は783億円であり、3000億円を削減して、1000億円を真に安全対策に必要なものに組み替えます。高速増殖炉「もんじゅ」、使用済み核燃料の「再処理施設」を閉鎖し、危険な「核燃料サイクル」はただちに中止します。
――軍事費を1兆円削減する。
軍事費(5兆円)は、米軍への「思いやり予算」・沖縄に基地を押しつけるためのSACO経費・米軍再編経費は全額(2700億円)カットするとともに、ヘリ空母(1200億円)、F35戦闘機(600億円)、新型潜水艦(560億円)、新型戦車(130億円)、イージス艦改修費(360億円)などの主要装備品を中心に、1兆円の削減をはかります。
――政党助成金(320億円)や機密費は廃止する。
政党助成金は、毎年320億円(制度導入以来17年間で5400億円)が、日本共産党以外の各党に配分されています。これまで一度も総額が減らされたこともなく、完全な「聖域」にされています。国民にとっては、払った税金が支持もしない政党に強制的にまわされる「強制献金」と同じであり、思想・信条の自由を侵害する憲法違反の制度です。税金だのみの「国営政党」になるなど、政党と政治の堕落も助長しています。政党助成金はただちに廃止します。
使途不明の官房機密費は廃止します。
高級官僚の天下り禁止、企業・団体献金の禁止など、浪費構造を支える政官財の癒着を断ち切ります。
――「景気対策」の名によるバラマキ財源となっている予備費を削除する。
一般の予備費や復興事業の予備費とは別枠で、「景気対策」の名によるバラマキ財源となっている経済危機対応・地域活性化予備費(9100億円)を削除します。
以上のように、ムダと浪費を一掃し、3・5兆円程度の財源を確保します。
富裕層と大企業に応分の負担を求める
この間、財政危機のもとでも富裕層や大企業には減税が繰り返されました。この優遇と不公平をただす税制改革で、8兆~10兆円の財源を確保します。
【富裕層優遇の不公平をただす】
アメリカ、フランス、イタリアなど欧米諸国で、富裕層への課税を強化する政府の方針が打ち出されています。富裕層からも「私や友人は億万長者に優しい議会に甘やかされてきた」(「世界で最も著名な投資家」とされるアメリカのウォーレン・バフェット氏)など、「自分たちに課税強化を」という声が上がっています。
ところが日本では、富裕層への減税が繰り返され、所得1億円を超えると、大金持ちほど税負担率が減少するという不公平税制になっています。この「富裕層を甘やかす」税制を見直し、応分の負担を求めます。
――株の配当・譲渡所得への特別減税・証券優遇税制を廃止し、課税強化をはかる。
株の配当・譲渡所得への課税は、証券優遇税制で20%から10%に半分に減税されています。10%というのは、預貯金利子所得にかかる20%から見てもきわめて不公平です。ただちに廃止するとともに、高額の配当や株取引には欧米なみの30%を課税します。
――金持ち減税を見直し、所得税・住民税、相続税の最高税率を引き上げる。
最高税率を、所得税・住民税は1998年の水準(65%)に、相続税は2002年の水準(70%)にまで戻し、累進課税と所得再分配の機能を回復します。
――新たな税制として「富裕税」(新しい資産課税)を創設する。
高額な株や不動産などの資産に課税する「富裕税」を創設します。相続税対象額で5億円を超える資産に対して、1~3%の累進課税を行います。課税対象は0・1%程度の大資産家となり、5000億~7000億円程度の財源になります。
――高額所得者を優遇している年金保険料、健康保険料、介護保険料の上限を見直す。
被用者の年金保険料は、給与が月額62万円で上限となり、100万円の月給をもらっていても62万円として計算された低い保険料になっています。健康保険料、介護保険料は、月額121万円で上限になっています。これを見直し、高額所得者に適正な負担を求めます。
【大企業への優遇税制をあらためる】
――来年度からの新たな法人税減税を中止する。
政府は、消費税大増税を打ち出す一方で、来年度から法人税を1・4兆円(国と地方あわせて)も減税します。いま中小企業の7割が赤字ですから、法人税減税額の大部分は、大企業への恩恵となります。しかし、いま大企業に減税しても、内部留保が増えるだけで、賃金や設備投資が増えるという経済効果も期待できません。
――研究開発減税、連結納税制度など、大企業向けの優遇税制を見直す。
政府も財界も、日本の法人税率は高すぎると言います。しかし、大企業の実際の法人税負担率は、三菱商事12・1%、ソニー13・3%、京セラ16・7%、住友化学17・2%など、「表面税率の40%」を下回り、上位300社(税引き前利益)の平均で33・8%です。大企業にしか使えない優遇税制の仕組みがあるためです。
――「為替投機課税」を新設する。
異常円高の原因となっている投機マネーを規制する一つの方法として導入します。年間約6000兆円にも及ぶ為替取引に、0・01%の課税を行えば6000億円程度の財源となります。投機マネー規制のために、通常の貿易や金融取引には影響がない、きわめて低率の税を課すことは、世界的にも検討されており、フランスとドイツは、2013年に金融取引税(株・債券取引に0・1%、デリバティブに0・01%)の導入をめざし、EU全体でも2014年に導入することを提案しています。
――環境税を導入する。
現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。7000億円程度の税収を見込みます。
(3)「社会保障再生計画」の財政見通し
「第1段階」である「社会保障再生計画」を実行するためには、高齢者の人口増による影響も含めて、平年度で9兆円程度の新たな財源が必要になります。ムダの一掃と富裕層・大企業への応分の負担を求める改革で生まれる財源は、同時期に12兆~15兆円です。さらに景気回復による税の自然増収もありますから、社会保障以外の教育・研究、農業・食料、中小企業、環境など各分野の予算を増やし、財政危機の深刻化を抑えながら、「社会保障再生計画」をすすめることができます。
第2段階
「先進水準の社会保障拡充」――「応能負担」に立った税制改革で
(1)「先進水準の社会保障」への抜本的な拡充をおこなう
つぎの段階――社会保障を良くする「第2段階」として、最低保障年金制度の創設、医療費の窓口負担の無料化、介護の利用料の無料化をはじめ、医療、年金、介護、子育て、雇用保険など、社会保障のあらゆる分野で、「先進水準の社会保障」への抜本的拡充をすすめ、憲法25条の生存権を保障する水準へと引き上げます。2010年代末には、「第1段階」の「社会保障再生計画」を達成し、抜本的拡充にすすむことを目標にします。
あわせて、「世界一高い」学費を引き下げ、無償化にむけて前進するなど、大学・研究予算を拡充し、教育・研究への国の取り組みを抜本的に強化します。
――最低保障年金制度を確立する。
公的年金制度の中に、「どんな人にも最低限の年金額を保障し、無年金者をつくらない」という最低保障の仕組みがないのは先進国で日本だけです。国連からも「最低年金を公的年金制度に導入すること」が「勧告」されています。
そこで、最低保障額を月額5万円とし、その上に、支払った保険料に応じた額を上乗せし、無年金を解消し、低年金を底上げする最低保障年金制度を本格的にスタートさせます。これによって、国民年金の満額は現在の月6万6000円から月8万3000円へと引き上げます。厚生年金も給付水準の低い人から順番に底上げをすすめていきます。
「最低保障年金制度」の実現に足を踏みだせば、低年金や無年金の問題、年金制度全体の空洞化、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度がかかえるさまざまな矛盾を抜本的に解決する道が開けます。
――医療費の窓口負担をゼロにする。
公的医療保険制度のある国では、医療費の窓口負担は無料か、少額の定額制がほとんどで、日本はこの点でも世界でも遅れた国となっています。かつて日本でも健保本人の窓口負担はゼロでしたし、国民のたたかいで老人医療費が無料の時期もありました。保険料を月々払えば、病気になっても負担はかからないという、医療保険制度の本来の姿にしていきます。
――介護の利用料ゼロを実現する。
日本の介護保険制度はドイツを一つのモデルにしてつくられましたが、ドイツの介護保険制度にはサービス利用の際の利用料はありません。安心して必要な介護を受けられるようにします。
(2)財源は、「応能負担」の原則に立った税制改革で
このような社会保障の抜本的な拡充をおこなうためには、ムダの削減や富裕層・大企業への不公平税制の是正などだけでは財源は確保できません。この財源は、国民全体で、その力に応じて支えることが必要です。所得や資産に応じた負担――「応能負担」の原則、累進課税の原則に立った税制改革で財源を確保します。
――累進課税を強化した所得税の税制改革。
所得税の課税所得に対して累進的に1・5~15%の税率を上乗せして課税し、6兆円程度の財源を確保します。
消費税は中間層と低所得者には重く、高額所得者の負担率は軽い逆進的な税制です。提案している所得税の累進課税の強化は、非課税世帯にはかからず、所得に応じた累進負担を求めるものとなります。その際、低所得者に配慮した課税最低限の見直しもおこないます。社会保障を抜本的に拡充しながら、財政危機打開をはかるためには、このような民主的税制改革が必要になってきます。
――所得税の税制改革をすすめるうえでの三つの大前提。
国民に新たな負担を求めるにあたっては、つぎの三つを大前提とします。
第一に、雇用や家計の所得を守る経済政策をすすめることによって、国民の所得が増えていくことを前提とし、新たな負担を求めても可処分所得(手取り額)は増え続ける、この立場ですすめます。
第二に、所得税の税制改革は、最低保障年金や医療費窓口負担の無料化など、社会保障の抜本的拡充と一体ですすめます。
第三に、社会保障の抜本的拡充とそれに対応する国民の負担については、国民的な討論と合意のもとで段階的にすすめます。
――将来的には国際協調で法人税率引き上げ。
法人税率については、国際的な動向も踏まえた検討が必要です。世界的な法人税引き下げ競争の有害性はOECD(経済協力開発機構)でも指摘されています。各国に共通している財政赤字の問題を解決するうえでも、有害な引き下げ競争をやめることが必要です。将来的には、法人税の引き下げ競争を見直す国際的な働きかけをすすめ、下げすぎた法人税率の適切な引き上げをはかるようにしていきます。
(3)財政の中長期展望――2030年頃には基礎的財政収支が黒字化、長期債務残高も減少
この提案で示した財源の規模は「第2段階」まで含めると、全体で18兆~21兆円程度です。日本は、当面、高齢者の人口が増え続けていきます。同時に、国民の所得を増やす、内需主導の民主的経済改革を同時並行ですすめることで、健全な経済成長を実現していきます。そのもとで、私たちの提案は、社会保障を抜本的に拡充しながら、基礎的財政収支を2030年ごろには黒字化し、対GDP比の長期債務残高を2030年ごろをピークに減少させていくものとなっています。
なお、社会保障以外の国民生活の各分野――教育研究、雇用、中小企業、農林漁業、環境対策などの予算拡充も考慮にいれた中長期展望としています。
II、国民の所得を増やし、経済を内需主導で健全な成長の軌道にのせる民主的経済改革
社会保障の再生・拡充と同時並行で、国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した成長の軌道にのせる民主的経済改革をすすめます。
日本共産党の提案は、財界・大企業の身勝手な要求にいいなりになる立場から抜け出し、大企業に社会的責任を果たさせ、国民の暮らしと権利を守るルールをつくり、真に持続可能な経済社会を実現する、経済の民主的改革です。
個々の企業にとっては、賃金を下げたり、非正規雇用を増やすことや、下請けや納入業者の単価を引き下げることは、コストを減らし、企業の「体力」が強化されるように見えます。ところが、日本中の大企業が同じことをやれば、国民の所得は大きく減り、経済の6割近くを占める家計消費を冷やし、不況の悪循環に陥ってしまいます。大企業に雇用や下請け企業、地域経済などへの社会的責任を果たさせることは、まともな経済の発展のために不可欠です。
この改革によって、大企業の巨額の内部留保を日本経済に還流させ、国民の所得を増やし、家計を温め、日本経済を内需主導の健全な発展の軌道にのせることが可能になります。それは税収増をもたらすとともに、対GDP比での長期債務を削減する展望を開くことにもなります。
人間らしく働ける労働のルールを確立する
人間らしく働ける労働のルールを確立し、国民の所得を減らす雇用政策から、安定した仕事を保障し、所得を増やす雇用政策への転換をすすめます。
――正規雇用が当たり前の社会をつくる。
労働者派遣法の抜本改正、有期雇用の規制強化をすすめ、派遣や契約社員などは、臨時的・一時的な業務など合理的な理由がある場合に限定し、非正規雇用を安易な雇用の調整弁として利用する「使い捨て雇用」をやめさせます。均等待遇を厳格に実施し、正規と非正規の不当な差別・格差をなくします。
――「過労死」を生むような異常な長時間過密労働を是正する。
違法行為である「サービス残業」を根絶し、裁量労働制などの「サービス残業」を合法化する規制緩和を見直します。有給休暇の完全取得、深夜・夜間労働の規制など、労働時間短縮をすすめます。長時間過密労働の是正で安定した雇用を増やすことを、雇用政策の柱にすえます。
――最低賃金を抜本的に引き上げ、「働く貧困層」をなくす。
最低賃金を、当面、時給1000円以上に引き上げるとともに、中小企業への賃金助成などの支援を制度化します。最低賃金は、労働者の平均給与の半分を上回るようにし、働き続けても貧困から抜け出せない――「働く貧困層」をなくします。
――不当解雇や労働者の生活を無視した強制配転をなくし、労働者の権利を守る。
「整理解雇4要件」(差し迫った必要性、回避努力、選定基準・人選の合理性、労働者・労働組合の合意)を徹底し、不当な整理解雇を根絶します。育児や介護をはじめ労働者の生活を無視した強制配転を規制します。職場での男女平等を徹底します。解雇規制法を制定します。
中小企業を日本経済の「根幹」にふさわしく位置づけ、本格的な振興策を実施する
大企業と中小企業との間に公正・公平な取引関係が存在せず、中小企業が大企業の不当で横暴な支配のもとにおかれ、異常な格差がつくられているのは、日本に特有のものです。雇用の7割を支える中小企業の経営が安定しなければ、国民の所得を増やすこともできません。中小企業と大企業の労働者の賃金格差を是正することは、労働者全体の所得を引き上げるうえで不可欠です。中小企業を日本経済の「根幹」にふさわしく位置づけ、本格的な振興策を実施します。
――中小企業と大企業の公正・公平な取引のルールを確立する。
下請け取引を適正化し、「単価たたき」など不公正な取引をやめさせます。「優越的地位の濫用」をなくすため、独占禁止法を強化します。大型店の身勝手をゆるさないルールをつくり、商店街・小売店を活性化します。
――中小企業予算を増やし、本格的な振興策をすすめる。
国の中小企業予算を1兆円に増額し、技術開発、販路拡大、後継者育成、円滑な中小企業金融など、中小企業への支援を強化します。
――生活密着型公共事業への転換、中小企業むけ官公需の拡大をすすめるとともに、「公契約法・条例」を制定する。
公共事業を大型開発優先から生活密着型に切り替えるとともに、官公需の中小企業発注比率を引き上げます。生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する「公契約法」「公契約条例」の制定をすすめます。
農林水産業を再生させ、食料自給率を抜本的に引き上げる
食料自給率は39%まで落ち込み、日本は、地球規模での食料不足のもとで、自国民の食料の安定供給に大きな不安を抱える国になっています。農林水産業の本格的再生は、日本国民の食の安心を確保するとともに、地域経済の活性化にとって、大きな力となります。
――安心して農業に励めるよう、価格保障・所得補償を抜本的に充実する。
農産物の価格保障を中心に、所得補償を組み合わせて、安心して再生産できる収入を保障することで、農業の抜本的再生への道を開きます。
――TPP(環太平洋連携協定)に反対し、「食料主権」を保障する貿易ルールをめざす。
農業に壊滅的打撃となり、食料自給率を引き下げ、地域の雇用と経済を破壊するとともに、医療や金融など国民生活のさまざまな分野でアメリカの要求が押しつけられるTPPに反対します。自国の食料のあり方は、その国で決めるという食料主権――関税などの国境措置の維持強化は国際的な流れであり、これを尊重した貿易ルールをめざします。
原発から撤退し、自然エネルギーの普及と低エネルギー社会への転換をすすめる
原発からすみやかに撤退します。自然エネルギー(再生可能エネルギー)の豊かな可能性に挑戦し、地域の条件に見合った自然エネルギーの「地産地消」と固定価格買い取り制度をさらにすすめて、エネルギー自給率を高めます。そのことは地域に新しい仕事と雇用を創出するうえでも、大きな力となります。
“安心の子育て社会”をめざす――「少子化」問題の危機を打開するために
日本は、先進国の中でも極端な「少子化」がすすんでいます。もちろん、子どもを何人つくるのかは、それぞれの夫婦、あるいは女性の権利であり、個人の権利を尊重することは当然です。同時に、社会全体の問題としては、その国、その社会の運命にかかわる問題であり、なりゆきまかせにすることはできません。
――日本社会のさまざまな分野のゆがみをただす。
「少子化」社会の克服のためには、人間としてのまともな労働と生活の環境を整備する、あらゆる分野で女性差別をなくして女性の社会進出の条件をつくる、生活不安・将来不安を解消する、地域社会の安定など、日本社会のさまざまな分野でのゆがみをただし、真に持続可能な経済社会にしていくことが必要です。大企業に社会的責任を果たさせ、国民の暮らしと権利を守るルールをつくる、そして、社会保障の再生・拡充を、「能力に応じた負担」の原則で着実にすすめていく、「ルールある経済社会」に向けた経済改革をすすめることは、「少子化」という日本社会の危機を打開する道でもあるのです。
――仕事と子育てが両立できる社会にする。
不安定雇用や長時間過密労働をなくす、男女平等、育児休暇、妊娠・出産を理由にした解雇・雇い止めをなくすなど、人間らしく働けるルールを確立します。待機児をゼロにし、安心して預けられる認可保育所を、緊急に3年間で30万人分増やし、その後も計画的に拡充していきます。
――子育ての経済的負担を軽減する。
年少扶養控除の廃止、消費税増税など、子育て世代への大増税は、「少子化」社会の克服にも逆行するものです。子どもの医療費無料化、重い教育費負担の軽減などを総合的にすすめます。
消費税大増税ストップ! 税・財政、経済の民主的改革の旗を掲げて
消費税大増税は、暮らしを壊し、経済を壊し、財政破たんをいよいよひどくする、未来のない道です。
ムダを一掃する財政改革、富裕層と大企業に応分の負担を求め、「応能負担」をつらぬく税制改革、「ルールある経済社会」をめざす経済改革を、段階的に、また一体的にすすめてこそ、社会保障の再生・充実、財政危機打開に向けた財源をつくりだすことができます。
日本共産党は、「消費税大増税ストップ! 税・財政、経済の民主的改革」の旗を高く掲げ、国民の暮らしを守り、日本経済の前途を開くために奮闘する決意です。