労働者派遣法「改定」案に対する日本共産党の修正案
2010年5月20日 日本共産党国会議員団
20日、日本共産党の小池晃政策委員長が発表した「労働者派遣法『改定』案に対する日本共産党の修正案」は次の内容です。
1.製造業への派遣を全面禁止にします
2008年秋から本格化した大量の「派遣切り」の引き金を引いたのは、世界に名だたる巨大製造企業でした。職を失うと同時に住まいまで失うという深刻な事態をもたらしました。こうした「派遣切り」から教訓をくみとってこそ、実効ある派遣法の改正が可能になります。
ところが政府案は、製造業への派遣を原則禁止にするといいながら、「常時雇用」の派遣を認めています。こうした穴を開ければ、原則禁止にはならず原則容認になってしまいます。製造業への派遣は、どんな形であれきっぱりと禁止します。
2.専門業務の内容を見直し、限定します
政府案は、登録型派遣を原則禁止にするといいながら、専門26業務への派遣を例外としています。ところが、例外とされる専門業務のなかには、「事務用機器操作」や「ファイリング」など専門的知識を必要とする業務とは思えない業務が多数含まれています。専門業務の内容を見直し、真に専門的な業務にきびしく制限します。
3.日雇い派遣は禁止します
政府案は、日雇い労働者(日々または2カ月以内の期間を定めて雇用する労働者)について、特定の業務への派遣を認めています。きわめて不安定な日雇い派遣は、全面的に禁止します。
4.「常時雇用」を削除し、「期間の定めのない雇用」と明記します
政府案に規定されている「常時雇用」は、2カ月をこえる短期契約であっても1年をこえて雇用する見込みがある場合も含んでいます。派遣労働者の雇用の安定をはかるために、「常時雇用」ということばを削除し、「期間の定めのない雇用」と明記します。
5.「みなし雇用」は、期間の定めのない雇用契約で直接雇用したものとします
政府案は、違法派遣があった場合、派遣先が当該派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなすという規定を設けています。その際、申し込む労働契約は、派遣元と締結していた同一内容となります。派遣労働者は短期契約を結んでいる場合がほとんどですから、これでは雇用の安定につながりません。例えば、日本トムソンは、違法派遣の是正指導を受け、派遣労働者を直接雇用にしましたが、5カ月の短期契約で雇用し、5カ月後に「期間満了」で解雇しました。派遣労働者が違法行為の犠牲になってはなりません。「みなし雇用」をする場合は、期間の定めのない雇用契約で直接雇用したものとします。
6.均等待遇を定めます
政府案は、派遣労働者の賃金などの労働条件について、派遣先労働者のそれとの「均衡」をはかるとしています。「均衡」では不十分であり、均等待遇を保障します。さらに、食堂などの福利厚生施設の利用について派遣労働者を差別的に取り扱ってはならないこと、派遣労働者が有給休暇を取得しやすいように必要な措置をとること、派遣労働者との団体交渉に応諾することなど、派遣先の責務を定めます。
7.「グループ内派遣」をきびしく制限します
政府案は、「グループ内派遣」について、グループ内への派遣労働時間が全体の8割以下の場合はこれを認めるとしています。このような緩い規定では、グループ内の正社員が派遣労働者に置き換えられるだけです。正社員化の要求に逆行することにもなります。グループ内への派遣は、5割以下に制限します。
8.労働契約申し込み義務の撤廃を削除します
政府案は、期間を定めないで雇用される派遣労働者を、派遣先の労働契約申し込み義務の対象外としています。現行法に定められている規定を削除するという改悪です。派遣労働は、臨時的・一時的業務に限定するのが原則です。期間を定めないで雇用される派遣労働者であっても、長期間派遣労働者として使い回しにすることは、派遣法の原則に反します。正社員化への道を確保するために、直接雇用申し込み義務の撤廃を削除します。
9.改正派遣法の施行日の先延ばしを許しません
政府案は、製造業と専門業務以外への登録型派遣を法施行日から3年間認め、なかでも専門業務以外への登録型派遣はさらに2年間認めるとしています。3~5年も先延ばしするのではなく、これらについては法施行日から1年をこえない日から施行することとします。
また、法施行によって労働者の職がなくなるということがないように、ひきつづき同一業務に従事させるために派遣先が雇い入れるなどの必要な措置をとることとします。