竹島問題を考える
2006年9月25日、「韓国・パキスタンを訪問して」と題しておこなった志位委員長の報告からの抜粋
四つ目に、日韓の間にあるどんな懸案事項を解決するうえでも、歴史問題で日本が誠実な態度をとること――侵略戦争と植民地支配への反省をきちんとおこなうことが、冷静な話し合いを成り立たせる基礎になることを痛感いたしました。
たとえば、日韓の間には、竹島――韓国では「独島(トクト)」と呼ばれている島の領有をめぐる問題があります。韓国では、国民のおそらく99%以上が、「独島」は韓国の領土だ、日本帝国主義の侵略によって最初に奪われた領土だと考えています。九月五日におこなった西大門での韓国メディアとのインタビューでも、この問題への態度が問われました。九月七日におこなったハンナラ党の金炯旿(キム・ヒョンオ)院内代表との会談でも、「この問題についても理解してほしい」と要請されました。
私は、「この問題は、靖国問題などとは違った事情があります。わが党は、一九七七年にこの問題についての見解(PDF)を発表していますが、竹島(独島)の領有権を日本が主張することには、歴史的な根拠があるとそのなかでのべました」と、まず私たちの立場を率直に伝えました。ハンナラ党の金炯旿午院内代表との会談では、私がそこまで言いますと、「共産党がですか」と聞き返してきました。会談は一瞬、緊張しました。私は、「そうです」と答えるとともに、「わが党は同時に、竹島の日本への編入が、一九〇五年という韓国の植民地化の過程でおこなわれたこと、当時、韓国はすでに外交権を剥奪(はくだつ)されており異議をいえる立場になかったことを考慮し、韓国側の言い分も検討しなければならないと考えています。植民地支配への反省を土台において、まずこの島をめぐる歴史的な認識を共有するための両国の共同研究をおこなってはどうでしょうか」とのべました。そうしますと、先方から、「いいお話をありがとうございます。植民地化の過程については、私の方からあえて申し上げなかったのですが、それについて志位さんのほうから言及されたというのは、非常に意味のあることだと思います」との答えが返ってきました。この会談は、一瞬の緊張はありましたが、最後はたいへん友好的な雰囲気で終わりました。
竹島問題は、日韓間で非常にこじれている問題ですが、私は、この会談を通じて、こじれにこじれた糸をときほぐす道が見えたように思えました(拍手)。一九六五年の日韓基本条約の締結にいたる過程で、日韓両国政府間で竹島領有をめぐって往復書簡による論争があります。その論争の過程でも、また今日においても、日本政府は、韓国併合――植民地支配を不法なものであったと認めていません。それを認めないもとで、竹島の領有権を主張するから、韓国国民の側からは、この問題が「侵略の象徴」となってしまうのです。ですから韓国政府は、この島の領有権をめぐっては話し合いすら拒否するという状況にあります。日本政府が、植民地支配の不法性、その誤りを正面から認め、その土台のうえで竹島問題についての協議を呼びかけるなら、私は、歴史的事実にもとづく冷静な話し合いが可能になると、これらの交流を通じて痛感したしだいです。