「安定した仕事を」「人間らしく働きたい」――若者の願いにこたえ、当たり前の権利をまもる緊急要求
――若者を使い捨てにするような働かせ方を許さないために
2005年10月24日
若い世代の雇用と労働条件は、深刻さを増しています。失業率が他の世代の二倍にもなっているだけでなく、多くの若者が、法律も社会常識も無視した雇用形態と労働条件で働いています。
とくに深刻になっているのが、派遣、パート、契約など、非正社員の急増です。大企業でも派遣や業務請負で働く若者が増え続け、24歳以下では、二人に一人にまでなっています。いつ仕事がなくなるかわからない不安とともに働きながら、その多くが月収10万円などという低賃金です。「いやなら辞めろ」「文句を言ったら契約更新されない」というもとで、労働条件の改善さえ言い出せずに働き、そして、“あきらめ”や“失望”感とともに失業する、そんな若者が増え続けています。“いらなくなれば捨てる”という使い捨ての働かせ方です。
一方で、異常な長時間労働がはびこっています。大企業の34歳以下の若手社員を対象にした調査では、会社にいる時間の平均が11時間16分で、「今の働き方が続けば病気になる」という不安を四割の若手社員が持っています。
重大なことは、多くの若者が、職場でも、学校でも、労働基準法をはじめ労働者としての基本的権利や雇用主としての企業の責任について、何も知らされず、違法・脱法状態のもとで働きながら“泣き寝入り”の状態になっていることです。
未来をになう若者を使い捨てにするような社会、経済、そして企業に未来があるでしょうか。深刻な青年雇用問題は、日本社会にとっても切実で重大な問題になっています。若者が経済的に自立できない雇用のひろがりは、少子化問題や社会保障制度をはじめ日本社会のあらゆる分野に深刻な影響を及ぼしています。技術や仕事の伝承にも重大な障害がうまれています。若者が経済的に自立しにくい社会は、親の世代にも大きな負担と不安を引き起こしています。
財界・大企業は、日本の経済、社会の現在と未来に深刻な障害となっている若者を使い捨てにする働かせ方をただちにやめるべきです。日本共産党は、財界・大企業に日本社会の一員として、企業の社会的責任、未来をになう若者への雇用責任を果たすことを強く求めます。
政府は、安定した雇用と人間らしく働ける労働条件の確保という、政治の当然の責任をはたすべきです。ところが、小泉内閣は、財界・大企業のいいなりで、労働法制の「規制緩和」をすすめ、非正社員への置き換えをやりやすくする政策をとり、違法・脱法行為さえ見逃しています。その一方で、政府の「若年雇用対策」は、もっぱら若者の職業観や「人間力」を問題にするだけで、不安定雇用拡大の是正にも、労働条件と権利の擁護にも、まともにとりくもうとしていません。
不安定雇用の拡大に歯止めをかけ、解雇の脅しや長時間労働のおしつけをやめさせ、働く若者の当然の権利をまもることこそ求められています。日本共産党は、以下の緊急要求をかかげ、若者の願いにこたえ、深刻な青年雇用問題を解決するために全力をあげます。
1、無法な解雇、雇い止めや、短期・反復雇用をなくす
どんな雇用形態であれ、理不尽な解雇や雇い止めへの不安をなくさなければなりません。とくに、6ヵ月、3ヵ月といった期限付きの雇用契約を繰り返す、短期・反復という働かせ方がひろがり、雇用不安を大きくしています。
誰もが納得できるような「合理的な理由」がないまま、解雇や雇い止めをすることは、労働基準法でも禁止されています。正社員でないパートやアルバイトでも同様です。まして、解雇や雇い止めをちらつかせながら働かせる「脅迫」行為も許されません。
短期間の雇用契約を繰り返すことは、会社にとって必要な労働力でありながら、「いらなくなったらいつでも捨てられるようにしておく」という、若者を「使い捨て」にする見本のようなやり方です。働く側にとっては、失業の不安と隣りあわせで、将来の展望も、生活設計もできません。政府も、裁判の判例でも、たとえ契約が数ヶ月単位であっても、繰り返し更新していれば、期間の定めのない労働者としてみなす、としています。
政府は、無法な解雇や雇い止め、脱法的な短期・反復雇用をなくすために、労働行政の重点課題として、労働基準監督署の必要な体制を整備することをはじめ実効ある措置をとるべきです。
2、非人間的な長時間労働、違法のサービス残業を根絶する
心も、身体もボロボロにする長時間労働が、若い世代ほど激しくなり、政府の統計でも、30代や20代後半の労働時間がいちばん長くなっています。
日本には、時間外、深夜、休日の労働時間の上限を制限する法律がありません。日本共産党は、残業時間の上限を年間120時間にする労働基準法の抜本改正案を提案しています。長時間労働が大きな社会問題になっているときだからこそ、ヨーロッパでは当たり前の残業時間規制を法律で行うようにすべきです。
同時に、長時間労働を助長させている大きな要因となっている違法なサービス残業をきちんと取り締まることがますます重要になっています。日本共産党は、国会で240回を超える質問で追及し、政府にサービス残業をなくすための通達を出させてきました。その結果、2001年以降、トヨタ、中部電力、東京電力、郵政公社など、日本有数の大企業を含めて違法行為が摘発され、600億円以上の不払い残業代が支払われました。しかし、これは氷山の一角にすぎません。“ただ働き”だからこそ、何時間働かせようが、企業は気にしない、という状態になっています。法律違反が経営の前提になっているという異常をなくせば、長時間労働のかなりの部分を解決することができます。
雇用主に厳格な労働時間管理をさせるとともに、パソコンやタイムカードでの労働時間を改ざんする、一定時間以上の残業は申告させない、残業を申告すると不利益な扱いをするなど、違法な残業時間の偽装行為などを厳しく摘発すべきです。
また、派遣や請負会社の社員が過労死に追い込まれるような深刻な状況もあります。東京地裁は、請負労働者として働いていた青年の過労自殺に対して、労働者を派遣した企業だけでなく、実際に仕事をさせていた企業の責任も断罪する判決を出しています。派遣や業務請負だからといって、自分の会社で働いている労働者が何時間働いていようが関係ないという、企業の態度は許されません。どんな雇用形態であっても、労働時間や健康に企業が責任を負うのは当然です。
法律で権利として認められている有給休暇が取れない、という状態もなくすべきです。有休の取得率は下がり続け、50%を切ってしまいました。パートやアルバイトでも半年以上勤務し、決められた労働日の8割以上出勤していれば、雇用主は有給休暇を取れるようにしなければなりませんが、実態は、この権利もほとんど無視されています。
違法なサービス残業分をなくせば160万人、有給休暇の完全取得をはかれば148万人の新しい雇用が創出できるという試算もあります。一人で二人分、三人分働かせるような違法な長時間労働をなくすことは、新規雇用の拡大にもつながります。
3、職場から不当な差別やいやがらせ(ハラスメント)をなくし、非正社員の均等待遇を実現する
(1) 非正社員への差別・格差をなくし、均等待遇を
均等待遇は、ヨーロッパで「同一労働同一賃金」の原則が確立しているように、世界の流れです。派遣とか契約など、雇用形態の違いだけで、差別したり、待遇に格差をつけることは許されません。厚生労働省も、パートなど非正社員と正社員との均等待遇をはかるという指針を示しています。ところが日本では、パート労働者の時間当たりの賃金は正社員の50.3%という大きな賃金格差があります。それだけでなく、非正社員には交通費が支給されない、仕事上の教育・訓練の機会もない、厚生施設や休憩場所でさえ差別されるなど、不当な差別がまかりとおっています。
派遣やパートと正社員との均等待遇の法制化が必要です。日本共産党は、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」「派遣労働者保護法」を提案しています。
同時に、政府が、自ら示した均等待遇の指針を企業に徹底するという当たり前の行政責任を果たすことを強く要求します。それだけでも、少なくない非正社員への不当な差別をなくすことができるのです。
その会社で働いているパートや派遣労働者から正社員への優先採用の仕組みをつくることも必要です。
(2) 職場からいじめやいやがらせ(ハラスメント)をなくす
職場でのいじめやいやがらせ(ハラスメント)が、厚生労働省などの労働相談や、個別的労使紛争でも激増しています。この背景には、雇用形態の違いが身分の違いや人間としての能力の違いであるかのように扱われ、「使い捨て」の労働力としか見られていないという問題もあります。気軽に相談でき、解決できる能力をもった相談窓口をつくることなどを、労働行政の重要な課題とすべきです。
4、年金、健康保険、雇用保険などの社会保険への未加入をなくす
会社が、条件を充たしている労働者を社会保険に加入させないという、違法・脱法的な社会保険未加入者が若者の間で増大しています。「アルバイトだから」「派遣料金を安く上げるため」・・・経費節減のために、雇用期間、労働時間をごまかすなどして、厚生年金に加入させるべき多くの若者が、国民年金の対象になり、高い保険料を払えず、無年金者になってしまう危険な道に追いやられています。雇用保険の未加入は、失業手当も、失業者のための職業訓練も受けられなくなってしまいます。
社会保険の未加入は、その人の一生を台無しにしかねない深刻な問題です。社会保障制度の空洞化も引き起こしてしまいます。行政が、違法・脱法的な未加入を厳しく摘発するとともに、企業が、人権と社会への最低限の責任を果たすべきです。
5、労働条件の文書による明示の徹底と、「遅刻は罰金」などの違法な雇用契約をなくす
労働基準法では、労働条件を文書で明示する義務が雇用主に課せられています。ところが、就職したら、「交通費支給」のはずが「給料込み」になっていたなど、「話が違う」という例が多発しています。労働者に契約不履行への違反金や賠償額を求めるなどの契約をすることも禁止されているにもかかわらず、「遅刻は罰金」とか「1日休めば一月分の時給が8割に」などの「ペナルティー」も少なくありません。職を求める若者に正しく理解できるように、労働条件を明示させるとともに、違法な雇用契約をなくすべきです。
6、地域最低賃金の引上げと全国最賃制の確立を
働く人の賃金の最低額を保障する最低賃金制が法律で定められ、国が都道府県ごとに最低賃金を定めています。この最低賃金以下の賃金で働かせることは違法行為です。しかし、地域最低賃金は、最高でも714円(東京)、最低では608円(青森、秋田、長崎、宮崎など8県)という低さです(いずれも時給)。最低賃金が生活保護水準よりも低いのです。これでは自立した生活をおくることができません。地域最低賃金の引き上げと、都道府県ごとの格差の是正は急がれる課題です。さらに、どこで働いていようとも、どんな仕事についていようとも、すべての労働者に適用される全国一律最低賃金制の確立をめざします。
7、若者の雇用と権利、労働条件をまもる行政施策を抜本的に充実する
日本の青年雇用対策予算はヨーロッパ諸国と比べ数十分の一にすぎません(GDP比)。この大幅増額とともに、以下の施策を盛り込むことを要求します。
(1) 政府自らが、若者への仕事をつくる
国の保育や介護、医療、福祉の切り捨てなどのもとで、公的な仕事のなかでも不安定雇用化と人手不足がすすんでいます。政府や自治体の責任で、教育、保育、福祉、医療、防災などの雇用を拡大させます。中小企業などへの青年雇用助成金制度を拡充させます。
(2) 仕事探しや労働条件など、あらゆる雇用問題の相談と解決をはかる窓口を
縦割り行政をあらため、就職や職業訓練のことでも、解雇やいやがらせなど、職場での労働条件のことでも、若者の雇用と労働条件に関するあらゆる問題の相談に応じられ、解決をはかる、文字通りの「ワンストップ」窓口をつくります。
(3) フリーターにもスキルアップ、職業訓練のチャンスを
公的職業訓練の場の増設などをすすめ、フリーターにも職業訓練の場を保障します。訓練中の生活保障のために、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設・整備します。
(4) 若者の経済的自立を支援する
若者向けの公共・公営住宅の建設や家賃補助制度、生活資金貸与、失業中や求職中の保育園入所など若者の経済的自立への援助をすすめます。
(5) 労働行政でも、学校教育でも、労働者の権利を知らせることを重視する
すべての働く若者に、労働基準法や労働組合法など、労働者の権利と雇用主の義務を知らせるよう必要な冊子の作成や広報を行うように要求します。また、学校教育のなかで労働基本権についての学習ができるようにすべきです。
(6) 企業が若者の雇用状況の情報を公開する仕組みをつくる
企業が社会的責任をきちんと果たすために、それぞれの企業がどのような取り組みをしているかの情報公開をすすめる取り組みがヨーロッパなどですすんでいます。年齢別の雇用者数、労働時間、派遣やパートなど非正社員の数と労働条件などの情報を企業が公開するよう、その基準や枠組みなどをつくります。
若者の雇用問題は、若者自身の現在と未来にかかわる重大問題であると同時に、日本の労働者全体にとっても、日本の社会にとっても、解決しなければならない重大問題です。労働組合はもとより、青年サークル、団体、国民各層のみなさんが、若者を使い捨てにする働かせ方をなくし、人間らしく働ける日本社会にしていくために、ともに力をあわせることを心からよびかけます。
労働条件の改善を要求して声をあげることは、憲法28条に保障された国民の権利であり、労働基準法第一条は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」としています。「安定した仕事に就きたい」「もっと人間らしく働きたい」――若者の当たり前の願いを実現するために、いまこそ世論と運動をひろげようではありませんか。
日本共産党は、国政の場でも、地方政治の場でも、この緊急要求の実現のために全力をあげます。そして、職場で、地域で、若者の切実な要求をかかげて、その実現と権利の擁護のために、知恵と力をつくす決意です。