◆(4)極端な大企業中心主義の異常をただす、経済的民主主義の改革

 第三は、「ルールなき資本主義」――極端な大企業中心主義の異常をただす、経済的民主主義の改革である。

 (1) 小泉内閣が、「構造改革」としてすすめてきた「新自由主義」の経済路線――大企業の利潤追求を最優先にし、規制緩和万能、市場原理主義、弱肉強食をすすめる経済路線は、日本経済と国民生活の矛盾をあらゆる分野で深刻にしている。

 イ、「ルールなき資本主義」のもとでの貧困と社会的格差の新たなひろがり……雇用と所得の破壊、中小零細企業の倒産・廃業・経営難がすすむもとで、九〇年代末から貧困と社会的格差の新たなひろがりが重大な社会問題となっている。

 低所得層の増大という傾向が顕著にすすんでいる。生活保護世帯は百万世帯を突破した。教育扶助(生活保護)・就学援助(生活保護に準じる水準世帯の児童・生徒におこなう給食費や修学旅行費、学用品などの援助)を受けている児童・生徒の割合は、12・8%とこの十年で二倍以上になった。貯蓄ゼロの世帯が急増し、23・8%に達している。年金はわずか月数万円、貯蓄もないという高齢者が増えている。

 国際比較でみても、日本における貧困層と社会的格差の広がりは顕著である。OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本の貧困率(全世帯の等価可処分所得の半分以下しか収入のない世帯を貧困としてその人口比率を出したもの)は、15・3%に達している。貧困率は、調査した加盟二十五カ国のなかで第五位で、OECD諸国の平均10・2%を大きく上回っている。

 これらの根底には、人間らしい雇用の破壊がある。大企業・財界は、中高年への「リストラ」と新規採用抑制によって、正社員を減らし、派遣や請負、パート、アルバイトなど非正規雇用への置き換えをすすめ、労働者の三人に一人、若者の二人に一人は、不安定雇用のもとにおかれ、極端な低賃金や無権利状態に苦しめられている。政府は、「労働法制の規制緩和」の名で、財界の横暴勝手を全面的に支援してきた。連続的におしすすめられた税制・社会保障改悪も、貧困と社会的格差の新たな広がりをつくり、それに拍車をかけている。

 ロ、庶民大増税と社会保障の連続改悪……政府・与党は、民主党と競いあうようにして、庶民大増税への暴走をはじめようとしている。いま計画されている増税計画は、消費税増税と、所得税増税で、合計二十四兆円という史上空前の規模である。この増税計画は、所得の少ない人、社会的弱者に容赦なく襲いかかり、税負担能力に応じた負担(応能負担)と生計費非課税、所得の再配分という税制の民主的原則を根本から破壊するものである。

 社会保障は、医療、年金、介護、障害者支援で、連続的な改悪が強行され、二〇〇六年には、ふたたび医療の大改悪がねらわれている。社会保障とは、ほんらい人間らしい暮らしの支えになるべきものだが、それが反対に人間の尊厳を踏みにじるものにおとしめられている。政府・財界から、社会保障給付費を経済の伸び率以下に抑制する方針が打ち出されているが、これはたえがたい負担増・給付減をもたらすものである。日本の社会保障給付費は、対GDP比でヨーロッパ諸国に比べていまなお低い水準にあり、抑制しなければ経済も財政も破綻(はたん)するかのような脅しに根拠はない。

 庶民大増税と社会保障の連続改悪の根底には、財界・大企業の横暴勝手がある。これまでも、財界のもとめにしたがって法人税の減税が繰り返され、大企業はバブル期を上回る利益をあげているのに、法人税収は半分にまで落ち込んだ。そのうえ、日本経団連は、消費税・所得税の増税とともに、法人税のいっそうの減税を要求し、企業の社会保険料負担をいっさいなくすことまで求めている。財界・大企業の負担を減らし、その穴埋めを庶民生活におしつける――これがいまおこなわれていることの真相である。

 ハ、日本経済へのアメリカの介入……アメリカ政府は、一九九四年から毎年、日本に「年次改革要望書」を提出して規制緩和と市場開放をせまり、実現した成果を国内の報告書で自慢しているという実態が、明らかにされている。

 人材派遣の自由化(米国の要求は一九九六年)、大店法の廃止(同一九九七年)、郵政民営化(同一九九九年)など、米国が要求したものが、数年後には実現する、異常な内政干渉のシステムがつくりあげられている。これらは日本の財界との二人三脚ですすめられている。

 アメリカ政府は、IMF(国際通貨基金)、世界銀行などとともに、経済の「グローバル化」の名のもとに、「新自由主義」にもとづく「構造改革」を、世界の多くの地域におしつけてきた。この動きは、「ワシントン・コンセンサス(合意)」のおしつけと、世界でもきびしく批判されてきた。「年次改革要望書」を軸にした日本経済への介入は、その最も悪質なあらわれである。

 アメリカ型経済の鋳型にあわせて日本を改造するこれらの動きは、国民生活と日本経済の危機と矛盾を、いっそう深刻なものとしている。

 ニ、社会のゆがみの進行と少子化……「構造改革」の名による財界・大企業の利益至上主義の政治は、国民が現在と将来に希望のもてない閉塞感をひろげ、日本社会のゆがみの進行、荒廃と衰退への傾向をつくりだしてきた。

 経済苦による自殺の増加が、重大な社会問題になっている。「勝ち組・負け組」を当然視し、社会的弱者にたいする攻撃に痛みを感じない風潮が生まれている。高齢者や子どもへの虐待、家庭基盤の崩壊、犯罪の増加など、社会の病理現象が深刻になっている。その一方で、ぬれ手で粟(あわ)の錬金術で大もうけしている投資家たちがもてはやされる現象が広がっている。

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