◆(2)過去の侵略戦争を正当化する異常――大本からの転換は急務

 第一は、過去の侵略戦争を正当化する異常な政治を、大本からただす改革である。

 (1) この数年来、「過去の日本の戦争は正しかった」と歴史を偽造する勢力が台頭し、そのなかで、小泉首相の靖国神社参拝、戦争礼賛を子どもたちに教え込もうとする歴史教科書問題という、二つの重大な逆流がつくりだされた。

 自民党政治は、過去の侵略戦争にたいしてまともな反省をしないまま、戦後の時代をすごしてきたが、戦後六十年をへたいま、侵略戦争の“名誉回復”をはかろうという動きが、公然と頭をもたげてきたことは、きわめて重大である。

 このもとで日本共産党の不破議長は、二〇〇五年五月十二日に開いた時局報告会で、「日本外交のゆきづまりをどう打開するか」と題する講演をおこなった。わが党は、この講演につづけて、一連の「しんぶん赤旗」での論説や国会質問で、問題の核心を明らかにするとりくみをすすめた。

 靖国神社の歴史観、戦争観――過去の日本の侵略戦争を、「自存自衛の戦争」「アジア解放の戦争」として正当化する“靖国史観”にたいして、日本政府が公認のお墨付きをあたえるような行動をとることが、今日の世界において許されるか。ここに、問われている問題の核心があることを、わが党は明らかにしてきた。

 わが党の問題提起にたいして、国内外で反響が広がった。あるジャーナリストは、「靖国史観を被告席につかせた」と評したが、多くの人々がはじめて問題の本質を知り、国際的にも批判が広がった。批判の矛先は、“靖国史観”そのものにむけられ、ことに靖国神社が境内に設置している遊就館――侵略戦争礼賛の展示物などが並べられている軍事博物館の存在は、世界に広く知られるようになった。

 (2) 内外の批判にもかかわらず、小泉首相は、五年連続で靖国神社に参拝するという行動をとった。首相は、国会でのわが党の追及にたいして、「靖国神社の考えと、政府の考えは違う」と答弁していた。この答弁にてらしても、首相の連続参拝は、説明がつかず、道理がたたないものである。

 首相による靖国参拝が、日本の国策として固定化される危険が生まれていることは重大である。かりに日本がそうした方向にすすむならば、日本の国益の損失ははかりしれないものとなる。

 この問題は、中国、韓国など、アジア諸国との関係の問題にとどまらない。日本と世界の関係の問題である。戦後の国際秩序は、かつて日本、ドイツ、イタリアがおこなった戦争が、犯罪的な侵略戦争であったという共通の認識にたち、二度とこうした戦争を許さないという決意のうえになりたっている。これを否定することは、世界の秩序に挑戦するものにほかならない。

 現に首相の靖国連続参拝にたいして、中国、韓国などアジア諸国の政府・メディアからきびしい批判がよせられたのはもとより、欧米諸国の主要なメディアからも批判の論説が集中した。

 米国の動きをみても、ブッシュ大統領は、対日戦勝六十周年の記念演説のなかで、「アジア解放のための戦争」という侵略戦争正当化論をきびしく批判した。米国議会下院が第二次大戦終結六十周年にあたって採択した決議には、過去の日本の戦争犯罪を再確認する一文が明記された。首相の連続参拝にあたって、米下院の外交委員長は、駐米日本大使あてに、「遺憾」の意をつたえる書簡を送った。これらは、米国政府や議会が、“靖国史観”が今日の日本に存在していることに注意をむけ、特別の憂慮と懸念を表明したものにほかならない。

 二〇〇五年十一月から十二月にかけて、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議、ASEANプラス3(東南アジア諸国連合と日本・中国・韓国)、東アジア首脳会議など一連の重要な国際会議が開かれたが、日本外交の孤立は一段とすすんだ。

 日本政府が“靖国史観”を肯定する行動をとりつづけるならば、日本外交のゆきづまりと孤立は、いよいよ深刻にならざるをえないことを、強く警告しなければならない。

 (3) わが党が前大会で決定した新しい綱領は、第一章「戦前の日本社会と日本共産党」のなかで、日本がおこなった侵略戦争について、戦争の性格、戦争の開始と拡大、敗戦にいたる経過、それがもたらした惨害などを、端的に明らかにしている。わが党が、綱領の冒頭に戦前の問題をのべたのは、これが現在の情勢と党の任務を理解するうえで不可欠であるという立場からであったが、この間の情勢の展開は、これらの綱領の規定の重みを、痛切にしめすものとなった。

 また、新しい綱領は、第四章「民主主義革命と民主連合政府」のなかで「新しい日本の平和外交」の方針の冒頭に、「日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する」と明記している。

 侵略戦争を正当化する異常な政治から脱却し、大本からの転換をはかることは、民主的政権の樹立を待たずに実行すべき、急務中の急務の課題である。

 歴史は、後で作り替えたり、塗り替えたりできない。しかし、歴史の事実に向き合うことはできる。過去の過ちに正面から向き合い、反省を言葉だけでなく行動でしめしてこそ、アジアと世界の人々から信頼される日本をきずくことができる。日本政府に、こうした転換をおこなわせるためにも、日本の国民一人ひとりがこの問題に真剣にとりくみ、歴史の事実に背をむけた戦争礼賛論を許さない国民的な合意をつくりあげていくことがもとめられる。

 日本共産党は、戦前・戦後の歴史をつうじて、反戦・平和を不屈につらぬいた党として、歴史を偽造する逆流の根をたつために力をつくすものである。

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