◇「党綱領改定案」から社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される。 →関連部分 |
人間が社会で作っているいろいろな物資は、大きく分けると二種類あるのです。衣食住をはじめ、私たちが生活のなかで消費してゆくもの、これは生活手段なんです。これにたいして、いろいろなものを生産するために使うものが生産手段なんです。
「生産手段の社会化」というのは、共産主義・社会主義の社会になって、社会化されるのは何かということを言葉の上でも明確にしています。つまり社会化されるのは、生産に使われる物資だけであって、生活の手段は社会化の対象にならないということが、この言葉にははっきり表現されています。
よく私たちへの非難として、共産党の社会になると貯金全部とられちゃうぞとか、財産を全部もっていかれるとか、そんなことをよくいわれます。しかし、人間にとって生活の上で大事な生活手段の財産はしっかり守り、豊かにしようというのが、共産主義・社会主義の大事な内容なんです。(拍手)
私たちは今度の綱領の改定案に、そのことをはっきり書きました。「社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される」。
なお、つけくわえていえば、生産手段の「社会化」も一律のものではありません。私的な経営、個人経営が、長く役割を果たし、そのことが尊重される部門も広くあります。綱領改定案が「農漁業、中小商工業など私的な発意(はつい)の尊重」と書いているのは、そのことです。
(「党綱領の改定について」不破議長の党創立81周年記念講演から)
→関連部分
すなわち、社会化と私有財産の関係について、
――この変革によって社会化されるのは、生産手段だけで、生活手段を社会化する必要はない、
――逆に、生活手段については、私有財産として生産者自身のものになる権利が保障される、
こういう形で、問題が理論的に整理されるようになりました。
『資本論』の刊行から間もない時期に、こういう事件がありました。当時、インタナショナル(国際労働者協会)という国際組織ができて、マルクスがその指導的なメンバーとなっていましたが、この組織に、いろいろな方面から、激しい反共攻撃がくわえられました。その一つに、インタナショナルは「労働者から財産を奪う」という非難があったのですが、インタナショナルの会議で、エンゲルスがただちに反撃をくわえました。その立場は明確です。
「インタナショナルは、個々人に彼自身の労働の果実を保障する個人的な財産を廃止する意図はなく、反対にそれ〔個人的財産〕を確立しようと意図しているのである」(全集(17)六一五ページ)
反撃はきわめて明りょうです。「生産手段の社会化」という定式を確立したことが、私有財産の問題でも、反共攻撃を許さない明確な足場をきずくことに結びついたのです。
この立場は、私有財産の問題での原則的なものとして、改定案に明記されています。
「社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される」(第一五節の二つ目の段落)
(「日本共産党綱領改定案についての提案報告」から)
→関連部分