1997年9月22日
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第21回党大会にたいする中央委員会の報告(3)
日本共産党第21回大会の1日目(22日)に、不破哲三幹部会委員長がおこなった「第21回党大会にたいする中央委員会の報告」(3)は、つぎのとおりです。
三、民主的政権への接近のために何が必要か
つぎに、その民主的政権への接近のために何が必要かという問題にうつります。
大会決議案が「二十一世紀の早い時期に、……民主連合政府を実現することをめざして奮闘する」という方向をうちだしたことは、全国に大きく反響をひろげました。同時に、そのためにいったい何をすべきなのか、政権への道筋は何か、こういう声もよせられました。
政権構想を問題にする場合に、「オール与党」勢力の“政権構想”とわが党の政権構想とのあいだには、大きな違いがあります。「オール与党」勢力の場合には、政党の組み合わせの変更・組み替えによって、どうやって現状のもとで多数になるか、これが政権構想の軸となっています。しかし私たちの場合には、民主的改革をめざす勢力がいかにして国政の多数派、国民の多数派になるか、そこまでどうして情勢と政治的力関係を変えるか、これが政権構想の中心問題であります。
ですから、私は、民主的政権を現実的な目標として展望しながら、具体的にその条件をかちとってゆく活動、闘争の力点はどこにあるのか、この問題について報告したいと思います。
(1)この課題をになうにふさわしい日本共産党の量的・質的な成長・前進
第一は、この課題をになうのにふさわしい、日本共産党の量的・質的な成長と前進ということであります。民主的政権を現実の展望にするには、日本共産党が国民多数の共感と信頼をになう党として、量の面も質の面でも、それにふさわしい発展をとげることが決定的な条件になります。
量的には、「総選挙の得票の一割の党員と五割の読者」を当面の目標にしていますが、これを二〇〇〇年までに着実に達成し、二十一世紀にはさらに大きな党への成長、発展を実現するために奮闘したいと思います。
質的には、全党の努力によって党の活動の内容と水準を民主的政権をめざすにふさわしいものに発展させ、数千万の国民と結びつく大衆的な政党への発展をめざすことであります。
そのなかで、日本共産党が国政のうえで強力な議会勢力に発展することは特別に重要な意義をもちます。
この点で、当面の目標、第一段階の目標として、衆議院に百をこえる議席、参議院に数十の議席をもち、国会の力関係のうえでも自民党と正面から対決できる力量をきずきあげることを、全党の目標にしたいと思います。これはどちらも一回の選挙で達成するわけにはゆかない目標であります。しかし、何回かの選挙でこういう目標にかならず到達する、そういう力量をつくりあげるように、連続的な躍進の実現に力をつくしたいと思うのであります。
それぞれの地方の党組織が、こういう展望をもって“わが地方”のことを考えていただいたら、まだ議席に遠いと思うところでも、いつまでもそんなことではいられないという意気込みがかならず生まれてくることを確信しております。(笑い、拍手)
(2)無党派勢力との共同の発展
第二は、無党派勢力との共同の発展という問題であります。
党活動のあらゆる場面で、革新的な無党派層あるいは保守的な無党派層など、広範な人びととの交流・接近・合流にひきつづき力をそそぐことが、大事な要(かなめ)であります。
この点では、わが党はすでに全国で多くの経験と前進をかさねてきています。それをより系統的な意欲的なものにして、この分野でも新しい境地をきりひらいてゆきたいと思います。
地域・職場革新懇の網の目を日本社会の全体にひろげる
この点で具体的問題として二つのことをのべます。一つは、革新懇運動の発展であります。この運動は、全国的な運動であると同時に、四十七都道府県に県レベルの革新懇があり、さらに三百八十の地域革新懇、八十四の職場革新懇をもって草の根からの活動を発展させています。ここには、国民的な多数派をめざす本格的な共同の運動および組織としての真価がしめされています。
これらの地域革新懇、職場革新懇の数は、一九六〇年の安保闘争のさいに地域共闘が二千つくられたという歴史的な実績にくらべれば、まだまだ第一歩であります。これを全国津々浦々にひろげることは、革新懇運動自体の課題であることはもちろんですが、その一翼をになう政党として、わが党も意識的、意欲的なとりくみをする必要があります。
現在、党の三百三十一の地区委員会のなかで、その地区のなかに地域革新懇が一つもないというところが四分の一以上、九十三地区あります。職場革新懇はもっと数が少なく、自分の地区の経営のなかには一つも職場革新懇がないというところがまだ大多数です。
もちろん、党の地区に革新懇の地域の単位が対応するわけではありませんが、この活動に意欲をもつ個人・団体と協力して、地域革新懇、職場革新懇をつくる努力を党の側からもつよめ、革新懇の網の目が日本社会の全体にひろがるように、計画的な努力をすすめることが大切であります。
「住民が主人公の政治」をめざす地方政治での活動
もう一つとりあげたいのは、地方政治の問題であります。実際、無党派勢力との共同の重要な分野は、地方自治体での共同にあります。わが党の地方議員数は、四月に四千人台を突破しましたが、昨日の選挙で四千五十一人になったことが、けさの「しんぶん赤旗」で報道されました。これは、わが党の大会への各地の党組織からのはなむけであります。(拍手)
いま地方政治の現状をみますと、自民党政治のもとで、「地方分権」とはまったく言葉だけ、「開発会社」化政策や福祉切り捨て「行革」の中央からの押しつけなど、地方政治を破壊する悪政の押しつけが全国に横行しています。「地方住民の利益をまもる自治体らしい自治体を」というのは圧倒的な住民の願い、声であって、いわゆる保守・革新の立場をこえて、開発優先の自民党政治を打破する条件――「住民が主人公の政治を」の主張がその地方、地域の多数派になりうる条件は、全国いたるところで広範に発展しています。
この面で、党の地方議員の役割は、いよいよ大きくなっているといわなければなりません。
住民要求の実現のための議員団活動、議員活動の質的な強化に力をつくすことは、全党がになう重要な任務であります。現在、議案提案権をもった議員団は三百五十一自治体、内訳をいいますと、東京都と京都府、政令市六をふくむ百四十市、二十区、百八十九町村にひろがっています。この議案提案権の効果的な活用にも習熟する必要があります。
地方議員団の活動の交流と発展をおこない、議員活動を情勢にふさわしい新しい水準にたかめるために、その一助として、来年四月に地方議員全員の会議をひらくことを計画しています(拍手)。会場は首都圏の大型会場を予定しています。これまで議員の全国集会は何回かひらいてまいりましたが、会場はここでおこないましたから、やはり千人かそれ以下とならざるをえませんでした。こんどは文字どおり全議員集会としてひらき、地方政治での活動を前進させる一つの画期となることを期待しています。(拍手)
わが党が与党の自治体は全国で百二十、そのうち日本共産党が単独与党という自治体は六十六にのぼります。重要なことは、これらが地方政治全体のなかで孤立した存在ではなく、根本では、住民本位の地方政治をめざす、わが党議員団を先頭にした全国的な活動と大きくつながっていることであります。
わが党が与党の自治体で、住民本位の行政をどのように発展させるかは、その地域の住民にとってはもちろん、現実政治にとりくむ日本共産党と革新民主勢力の力量をはかるものとして、文字どおり全国的な意義をもつことを銘記する必要があります。そのためにさらにおおいに力をつくしたいと思います。
(3)多数者をめざす民主的な大衆運動の画期的発展
つぎは、大衆運動の問題であります。民主的政権を誕生させるような政治的な力関係の大きな変動は、あらゆる分野での大衆運動の画期的な発展をぬきにしてはありえないことであります。
大衆運動には、労働者、農民・漁民、中小業者、女性、青年・学生、高齢者、知識人・文化人などの階層的な運動の分野もあれば、環境、福祉、医療、教育、薬害、被災者救援その他の分野ごとの運動、反核平和、憲法擁護、地方自治確立などの平和・民主主義の運動と、さまざまな分野、領域があります。これらの運動のどの分野でも、民主的な運動がその分野で多数者を代表する運動になることを意識的に追求しつつ、運動の前進、発展につとめたいと思います。こういう視野でそれぞれの分野の大衆運動にとりくむことは、その運動自体の展望にもかならず新しい境地をひらくであろうことを確信しています。
とくに、決議案も強調しているように、労働組合運動の現状の民主的な打開は、国民的社会的な急務だといっても言い過ぎではありません。現状では「連合」が多数派となっていますが、労働者の経済的利益をまもる仕事を投げすてるという点で、これほど極端なところにまでいっている組合は、世界にもほとんど存在しません。それは、「連合」と交流したヨーロッパの諸組合が、経営者と政府への度はずれの追従ぶりにあきれて声をあげるほどです。また、政治的には、「連合」の役割が自民党政治の後押し役を労働者に押しつけるものだということは、すでにまったくあきらかになっています。
日本の労働者のあいだには、生命と健康と自由をすりつぶす過酷な職場支配のもとで、この現状に甘んじないで、自分たちの利益をまもる組織をもとめるエネルギーと要求が、潜在的には広範にひろがっています。このエネルギーを発展させながら、労働組合運動の階級的民主的な転換をかちとることを、党と民主勢力全体の共同の歴史的任務と位置づけ、あらゆる努力と知恵をかたむける必要があります。
(4)政策的な対決を通じて革新・民主の路線を国民のものに
第四は、政策的な対決をつうじて、革新民主の路線を国民のものにするという問題であります。
自民党政治と国民の利益、要求との矛盾は、さまざまな分野で、これまでには経験しなかったような鋭さをみせ、また広範にひろがりつつあります。この矛盾・衝突の現場で、きわめて広範な人びとが、その問題を国民的な立場で解決するにはどういう道をもとめるべきかと、その解決策を模索しようとしています。
それだけに、もっとも広範な人びとの目に見え、理解されるかたちで、政策的な対決を鮮明にし、あれこれの問題の国民的な解決策をあきらかにしてゆく活動が大切であります。そして必要な場合には、広範な人びとと協力して、国民多数の合意できる解決策を探究する活動を、真剣におこなわなければなりません。そういう立場で、国政のうえでも、地方政治のうえでも、政策活動へのとりくみを抜本的につよめ、今日の情勢が必要とする水準にこれをたかめる意識的な努力がなによりも重要になっています。
つけくわえて指摘したいことは、いま、日本の社会が当面している諸問題のなかには、自民党政治の害悪との関連ももちろんあるが、悪政の結果だということだけに解消するわけにはゆかない社会的諸問題も数多く存在しているという問題であります。いじめの問題、少年の非行の問題などもその一つであります。もちろんそこには、自民党政治のもとでの教育行政のゆがみ、まちがいなどの影響、結果が深刻にあらわれていることは、いうまでもありません。しかし、政治をただせばすべて解決するかというと、それだけでないことは明りょうであります。
われわれは、民主的な社会の建設者として、当然、これらの社会的な諸問題にたいしても、必要な打開策を提案するものであります。大会決議案が、最近の社会的風潮のもとでいっそう発展させるべき問題として、七〇年代にわが党がおこなった市民道徳の教育についての提言をとりあげたのは、そういう立場からであります。当時、政府は戦前に逆戻りするような「道徳教育」の押しつけをくわだてており、それにたいする機械的な反発から、道徳教育一般に反対する空気も民主運動の一部にかなり根強くありました。それだけに、市民道徳の教育を、というわが党の提唱は、さまざまな反響を大きくよんだものであります。ここには、社会進歩を追求する運動の重要な課題の一つがあることを、あらためて強調したいのであります。(拍手)
(5)他政党との連合の問題について
第五に、他政党との連合の問題であります。 決議案が民主連合政府という方向づけをあらためてしめしたことから、いったい連合の相手となる政党はあるのか、あるとすればどこにか、そういう疑問も、若干の同志からだされました。
政権をつくる場合、日本共産党の単独政権はめざさないというのは、党綱領にも明記されたわが党の一貫した立場であります。現実の政党状況の問題としていえば、現在、国政のレベルで、民主的改革で共同できる政党は存在しませんが、この政党状況を、長期にわたる固定した状況として決めてかかる必要はどこにもないわけであります。実際、政治・社会の民主的な刷新をもとめる日本の国民の民主的エネルギーの大きさは、戦後史のなかでも幾度となく実証されてきました。今後、民主的改革への条件が熟する過程、とくに国民の多数がそういう改革を支持する方向に情勢が熟する時期には、国民的な根をもった民主的な党派が生まれる可能性は十分にあります。こういうことも展望して、決議案は、めざすべき政権の目標を、民主連合政府と明確に規定しているのであります。
将来の問題ですが、共同が可能となる民主的党派はいろいろありえます。いま私たちが日本で問題にしているのは、資本主義の枠内での民主的な改革ですから、理論的には、資本主義体制そのものを擁護する修正資本主義の立場にたった政治勢力でも、賛成できるはずの課題であります。ですから、わが党の共同の相手として、どのような政治勢力が今後生まれてくるかという問題は、いまからあれこれ決めてかかるべき問題ではありません。
この共同の相手について、過去のヨーロッパの経験や六〇年代、七〇年代の日本の革新運動の経験を教条主義的に固定化して、社会民主主義政党との共同が中心になるなどと決めてかかる必要もありません。日本では、戦後の半世紀をつうじて、社会民主主義政党が、そういう政治潮流として国民のあいだに定着することに失敗した、このことが重要だと思います。その失敗の原因としては、(1)労働組合組織を不当に私物化して、党独自の組織の建設に失敗したこと、(2)ソ連その他、日本の革新運動にたいして外国からの覇権主義的な干渉があったときに、いつもこれに追従して干渉の応援団の役割をはたしたこと、(3)“政権参加”の誘惑を前にしてみずからの公約や方針を無節操に投げすてたこと、などがあげられるでしょう。いずれにしても、社会民主主義政党が国民のあいだでの定着に失敗したということは、日本の今後の政治的展望を考える場合に、重要な意味をもつ問題であります。
なお、新社会党にたいする評価と態度について、大会前の討論のなかでいくつかの質問がありました。わが党は、新社会党とは、地域的に共同の条件と必然性があるところでは、誠実に対応する方針をとってきました。国会でも、参議院では消費税増税反対などでいくつかの共同をすすめてきました。しかし、この党はわが党との共同の問題で、かならずしも全国的に統一した態度をとっておらず、地域によっては反共的、反民主的な側面がつよい流れもあります。また総選挙では、全国的な政党としての資格をえられませんでした。これらの点をリアルにみながら、その地方の実情に応じて個別に対応することが、適切だと考えています。
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