2005年3月10日(木)「しんぶん赤旗」
児童扶養手当など減額
3年間「かさ上げ」解消口実に
「特例法案」衆院委で可決
山口議員が反対討論
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児童扶養手当など十種の手当の減額につながる特例法案が九日、衆院厚生労働委員会で自民、公明、民主の各党の賛成で可決されました。日本共産党、社民党は反対しました。
同法案は、物価スライドを実施することになっている各種手当制度の手当額について、物価指数が下落した一九九九年度から二〇〇一年度までの三年間に、物価スライド制で変動させずに、特例措置で据え置いたのを「かさ上げ」分(1.7%)とみたて、今年四月以降、解消させるというものです。物価上昇の場合も手当額は上昇せずに実質マイナスとなり、物価下落の場合も減額するという仕組みがつくられることになります。
日本共産党の山口富男議員は、児童扶養手当の対象となる母子家庭の平均所得は一般の四割以下、就業も不安定雇用が拡大していると指摘。そもそもの目的である「生活の安定と自立」にふさわしい額を確保するよう求めました。
また障害者や原爆症にかかわる各種手当も連動して減額される問題について、「社会的弱者、原爆被害者など社会的支援が必要な人に対する政治の冷たい仕打ちだ」と批判しました。
尾辻秀久厚生労働相は「(政府の支援策は)必ずしも充実していない」と認めた上で、「自立に向けた支援を総合的に進めていくことは当然」とのべました。
解説
目的に反する自動改定・減額
社会的に弱い立場にある母子家庭や障害者、被爆者の人たちの生活を支える手当が減らされかねない――。支援が必要な人々に対するあまりにも冷たい政治の仕打ちです。
九日の衆院厚生労働委員会で、自民、公明、民主の賛成で可決された「児童扶養手当特例法案」。同法案の対象となるのはのべ百四十六万人。うち児童扶養手当の受給者は八十七万人です。
そもそも、母子家庭の「生活の安定と自立の促進」を目的として支給されてきたのが児童扶養手当。手当額についても目的に見合うものであることが求められますが、それを自動的に改定・減額する仕組みをつくることは、本来の目的にも反します。
母子家庭の暮らし向きは、「大変苦しい」が四割を超え、一般世帯の倍。「やや苦しい」を含めると73%。平均所得は諸手当も含めて二百三十四万円程度と一般家庭の四割以下しかありません。(厚生労働省の〇三年国民生活基礎調査)(グラフ参照)
就業面でも母子世帯は、常用雇用が39%で、前回調査時の51%から大きく後退しています。臨時、パートは49%に増大するなど、不安定雇用が進み収入も安定していません。(厚生労働省の〇三年度全国母子世帯等調査)
ところが政府は、この間、十八歳未満までの支給から、支給後五年間で半減するという支給削減をおこない、母子家庭の「いのち綱」といわれる児童扶養手当の支給を削減してきました。このような支給制限を改め、不十分な手当の増額こそおこなうべきです。
影響は母子家庭にとどまりません。障害者や被爆者にかかわる手当も連動して、減額されることになります。被爆者で対象者となるのは二十四万人にのぼります。被爆から六十年。平均年齢は七十歳を超え、いまなお、原爆の放射線による、がん、内臓疾患、白血病などに苦しむ被爆者にとってはとんでもない話です。
国民の暮らしのすみずみにまで情け容赦ない負担増を押し付け、「いのち綱」さえも削減の対象にする小泉「改革」にストップをかけ、社会保障を守る国民的なたたかいを広げる時です。 (矢守一英)
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