2004年9月20日(月)「しんぶん赤旗」
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「参ったよ。幹部たちは困っている」。自民党森派(清和政策研究会)関係者が深刻な顔つきで語ります。
本紙十日付一面のスクープが小泉首相の出身派閥・森派に衝撃を与えています。
――清和政策研究会(会長・森喜朗前首相)が年二回、年末とお盆に「もち代」「氷代」と呼んで派内議員に配る特別手当(各二百万円)、年間一億円前後を少なくとも五年間にわたり、政治資金収支報告書に記載していない。一件五万円以上の支出先、金額を記載するよう義務づけた政治資金規正法に違反する疑いがある。
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これが本紙報道のポイントでした。直後、マスコミ各社から森派に問い合わせが相次ぎました。森派は「もち代」「氷代」は出していないというウソや沈黙で対応しています。
「もち代」「氷代」の支出は、日本歯科医師連盟(日歯連)不正事件の渦中にある旧橋本派も一九九九年まで記載していませんでした。それでも、現在では旧橋本派をふくめ他派閥が記載している「もち代」「氷代」をなぜ、森派は隠し続けるのか。
「いま急に年間一億円もの支出を記載したら今度は収入が足りなくなる。訂正したくても訂正が訂正を呼ぶ結果になって収拾がつかないんだ」。前出の森派関係者はいいます。
実際、清和政策研究会の二〇〇三年の収支報告書をみると「翌年への繰越額」いわゆる“貯金”は約二千万円。一億円の支出があったと訂正すれば、収入についても年一億円近くの未記載があったと訂正しなくては、つじつまが合いません。それが五年は積み重なっているのです。
どこから闇の収入があったのか。日歯連からの一億円献金不記載で会計責任者が逮捕された旧橋本派と構図が似てきます。
問題は派閥の議員全体に波及します。
森派が「もち代」「氷代」の対象としている衆院当選三回までと参院一回までの同派議員の資金管理団体や党支部の報告書(〇二年分)を調べたところ、該当する収入の記載はありませんでした。つまり、出す方も、もらう方も闇で処理していることになります。
森派の若手議員がいいます。「私も困ってる。『もち代』『氷代』は、前から政治資金収支報告書に記載したいと派閥幹部にはいっていたが、ダメだというんだ」
自民党幹事長の安倍晋三議員も森派出身で現在、当選四回。かつては、「もち代」「氷代」の対象となっていたはず。安倍氏は、いま、さかんに政治資金の「透明化」を主張しますが、自身と森派の問題はどうするのでしょう。政治資金として届け出なければ、所得申告する必要があり、それもなければ脱税という疑いさえ出てきます。
「森派ぐるみの闇のやりとりだ。訂正するといかにいい加減に政治資金を報告しているかわかってしまう」(前出関係者)
森派幹部、とくに歴代会長の責任はとりわけ重い。幹部が承知で隠してきた――という構図が浮かんでくるからです。現会長の森前首相、そして二〇〇〇年四月から一年間会長だった小泉首相はどう答えるのでしょうか。本紙の取材に森派は沈黙を続けたままです。
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日歯連事件でも浮かび上がった政治献金の闇。その実態を追及します。
(つづく)