2004年9月21日(火)「しんぶん赤旗」
自民党が財界に献金を要請するとき、実際の仕切り役はこの人物――。そういわれるのが自民党本部の事務局長、元宿(もとじゅく)仁氏です。
元宿氏は、財界から自民党への献金システムをつくった元経団連副会長兼事務総長(退任後経団連相談役)の花村仁八郎氏(故人)に見込まれ、三十数年、自民党経理畑で活動してきました。二〇〇〇年九月に経理部長兼任で党本部事務局長に。党本部献金システムの全ぼうを知り、党総裁の選挙応援にも大きなかばんを抱えてつきそう、と自民党関係者が語ります。
この元宿氏が、今回、日本歯科医師連盟(日歯連)の不正献金事件を捜査する東京地検特捜部の事情聴取を受けていました。
その大きなテーマが迂回(うかい)献金でした。
日歯連から自民党の政治資金団体、国民政治協会(国政協)↓自民党本部↓政治家と迂回して流れていたことが発覚したのです。
日歯連会計担当の前常務理事、内田裕丈被告は「国政協への献金の封筒に政治家のあて名を書いた」と供述しました。つまり、国政協への献金のある部分は、最初から特定議員あてだったのに、その痕跡を隠すために迂回させたことを認めたのです。
元宿氏は日歯連の要望に応じて献金を迂回させました。なかにはわいろ性が問題になった献金もありました。旧橋本派への一億円の闇献金でも元宿氏は、迂回献金とするための相談にのった、と指摘されました。
この手法こそ、自民党が長年、疑惑の資金を“洗浄”するために使ってきたものでした。迂回献金は自民党内では「指定寄付」「指定献金」などと呼ばれます。過去の新聞報道をたどってみると、少なくとも一九八〇年には党本部でおこなわれていた、とする記事があります。二十数年以上の“歴史”があり、党本部や国会に長くいる自民党関係者には周知の手法です。複数の自民党関係者がこう証言します。
――指定献金は私も経験した。議員から党本部に「A企業からこれだけの金額が振り込まれるが、これはおれの口座に入れてくれ」と連絡する。また、企業も「これだけ振り込むので、これだけの金額はB代議士にまわしてほしい」と相手先を指定する。その結果、国民政治協会から自民党本部に回り、党本部から組織活動費や交付金などの名目で議員に渡る。このシステムに一番くわしいのは元宿氏だ(元自民党本部職員)。
――なぜ指定献金を使うかといえば、政治資金規正法違反やわいろとして摘発されないためだ。献金額の制約を超える場合、献金企業とのつながりを隠したい場合がある。職務権限とのかかわりもある。しかし、指定献金にすれば、いったん党にはいり、出所もわからない。いっさいは闇のなかだ。これは自民党の“英智”だ(元自民党議員秘書)。
――指定献金は党役員が了承しているからできる。自民党の役員に事後であっても話を通す。要求されなくても黙認料というか、一定額を党側に渡すのは常識だ(元自民党議員秘書)。
その迂回献金に捜査当局がメスを入れようとした事件がありました。一九九三年に表面化したゼネコン汚職。当時自民党前衆院議員で、現在は民主党参院議員の渡辺秀央元郵政相への献金でした。(つづく)