2003年10月26日(日)「しんぶん赤旗」
地方自治体への国の補助金の廃止・削減問題が大きな焦点になっています。小泉・自公内閣が「三位一体改革」(補助金の廃止・縮減、交付税見直し、税源移譲)を掲げ、民主党もマニフェスト(政権公約)に盛り込みました。「地方分権」のためといいますが、住民、自治体の立場から見たらどうなのか、日本共産党はどう考えるのか−−。
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地方自治体向けの補助金(国庫補助負担金=別項)は約二十兆円(〇三年度予算、一般会計分は十七兆五千億円)です。マスコミなどは「ヒモつき補助金」などといいますが、それはおもにムダな公共事業の補助金などの場合です。
実際は、老人医療、介護、保育所、生活保護などの社会保障関係が61・2%、義務教育費などの教育関係が18・1%で、全体の八割も占めます。これらは、国民の権利である福祉、教育などの一定の水準を保障するために、国が支出しなければならないものです。その廃止、削減は国民生活を直撃する大問題です。
例えば、義務教育費国庫負担金は約二兆七千億円。小中学校の教職員給与の半分を国が負担しています。これが削られると一学級当たりの児童・生徒数など教育条件に大きな影響を与えます。
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名古屋市の私立こすもす保育園常務理事の久保忠士さんの話 保育所運営費国庫負担金は、子どもたちの生活や健やかな成長を守る上でかかせないものです。これがあるからいまは職員の配置や設備など全国一律の最低基準が保たれています。それが大もとから崩されるとなれば、子どもたちに影響しないわけはありません。また保育料が高額になったり、もうけ本位の保育所経営がはびこるのではないか、とたいへん危ぐします。
自民・公明、民主 |
義務教育、保育重点に削減 税源移譲は8割だけ |
自民党や公明党の政策は小泉内閣の「骨太方針第三弾」(六月に閣議決定)そのままの内容で、三年間で義務教育、保育所など福祉・教育を重点に国庫補助負担金を四兆円削減するものです。
「骨太方針」では代わりに税源(国税の一部)を地方に移すといいますが、削減分の「八割程度」しか渡しません。単純計算でも差し引き八千億円も減ってしまいます。
国が基準を決めている義務教育などは「全額を移譲」としていますが、「徹底的な効率化」が前提です。塩川正十郎前財務相は「八割ぐらいにできる」といっていました。
差し引きマイナスになるため、自治体は住民サービスを維持するのに厳しい状況になります。
しかも、税源を地方に移していけば都市と農村では課税対象の多少により税収の格差はさらに広がります。ところが、これを埋めるための地方交付税の「財源保障機能」(どの自治体も標準的な行政ができるようにする)を縮小するとしており、さらに自治体と住民に犠牲が及ぶことになります。
補助金原則廃止、 「一括交付金」化後に徐々に削減 |
民主党は「霞が関からの『ひも付き補助金』を全廃」(政権公約)として、補助金のうち十八兆円分を四年以内に廃止するとしています。代わりに五・五兆円分を所得税から住民税に移し、十二兆円分は自治体が使途を決められる「一括交付金」として配分する方針です。
単純計算でも、差し引き五千億円のマイナスになるうえに、一括交付金も「統一自治体選挙の政策」では「漸減が必要」としており、削減していくことになっています。
補助金すべてを「使い道が不必要に限定されている」と決めつけ、義務教育や介護保険など福祉や教育の負担金まで否定しています。これでは、国民の権利として保障すべき福祉や教育などの水準(ナショナルミニマム)を壊すものです。
しかも、税源移譲で自治体間の財政格差が広がるにもかかわらず、これを埋める役割を果たしている地方交付税について「財源保障機能を縮小」(政策集)と、自民党と同じように交付税の縮減を掲げています。
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自民・公明党案も民主党案も、福祉や教育への国の支出を大幅に廃止・削減し、代わりの税源も削ってしまうものです。
全国知事会、全国町村会など地方六団体の会長は十六日、地方分権について共同声明を発表しました。そのなかで「国庫補助負担金の廃止、税源移譲の先送りといった地方財政への負担転嫁は、住民福祉を守るため、断じて認められない」と強調しています。
全国の知事は、政府・自民案、民主案とも支持しない−−「毎日」のアンケート調査(四十六知事が回答、十六日付)では、政府・自民党案を支持した知事はゼロ。
民主党案を支持したのも三知事だけで、三十知事が「あくまでも税源移譲を明確にすべきだ」と答えました。
記事では両党案は「税源の移譲額が少ないことに知事側が反発したものとみられる」と分析しています。
日本共産党 |
日本共産党は、自民・公明両党や民主党とは違って福祉、教育など住民サービスを守るために必要な国庫補助負担金の廃止・削減には反対です。やめるべきは「ひもつき補助金」の中心になっているムダな公共事業への補助金です。この補助金をやめて、その分を地方の税源に移すことによって、自治体が自由に使える財源を増やすよう提案しています。
自治体の財源を拡充するため、所得や資産にかかる税を中心に税源移譲をすすめます。税源を移譲されても、人口や会社が少ないなど課税対象が少ない自治体では財源が不足するところも出てきます。そのため、自治体間の財政格差を埋めるなど地方交付税の「財源保障・調整」の仕組みを充実させて、自治体の財源を保障していくことを提唱しています。
「ひもつき補助金」は、政治家や官僚が「口利き」「個所付け」で介入しやすくなっており、ムダな公共事業の温床になってきました。
日本共産党は、これらをきっぱり整理・縮小することを主張。
かわりに自治体がみずからの基準と裁量で、効率的に事業がすすめられる「総合補助金制度」を導入することを提案しています。
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