
2006年10月29日(日)「しんぶん赤旗」
対北朝鮮 経済制裁
中国・韓国が始動
唯一の国際線 運航中止へ
「対決と事態悪化」防止強調
北朝鮮の核実験発表に対し国連安全保障理事会は十四日、問題の平和解決のための対北朝鮮経済制裁を定めた決議一七一八を全会一致で採択しましたが、これを受けた形の各国の経済制裁が始まっています。(中村圭吾)
北朝鮮の最大の貿易相手国である中国は当初、経済制裁には慎重だとみられていました。しかし中国では、すでに以下のような一連の制裁が始まっています。
外貨送金も停止
▽北朝鮮との唯一の国際線を運航してきた中国南方航空が十八日、北京と平壌を結ぶ定期便の運航を二十八日から中止すると発表した。
▽北京の大手旅行代理店が二十一日、北朝鮮観光の取り扱いを停止。北朝鮮との国境にある丹東市の旅行会社も北朝鮮観光の取り扱いをやめた。
▽香港海事局が二十三日、香港に入港した北朝鮮の貨物船「カンナム1号」を検査。火災予防施設など「安全性の不備」が見つかり出港禁止処分とされた。二十六日には、「カンナム5号」に立ち入り検査し、同様の理由で出港禁止処分とした。
▽四大国有商業銀行のうち中国銀行、中国建設銀行、中国工商銀行と、大手商業銀行の招商銀行が二十五日までに、丹東支店での北朝鮮向け外貨送金業務を停止した。
中国外務省の劉報道官は二十四日の記者会見で、「中国は国連決議で負っている義務を真剣に履行する」と表明しました。
北朝鮮の第二の貿易相手国である韓国の李統一相も二十六日、北朝鮮制裁に関する政府の基本方針についての報告書を提出し、安保理の北朝鮮制裁委員会の決定を順守するとの立場を示しました。具体的には、金剛山観光事業への補助金の中断を示唆しました。
外交手段で解決
中国の劉報道官はまた、制裁が「朝鮮半島の核問題の対話・話し合いと外交手段を通じた解決、半島の非核化と北東アジアの平和・安定の実現という全般的目標に役立てるものであるべきだ」と強調し、「対決と事態の悪化を防止」すべきだと語りました。周辺事態法の適用や核保有論議など軍事的対応をめぐる議論が続いている日本とは好対照です。
安保理決議実施促進のため十七―二十一日に関係四カ国を歴訪したライス米国務長官も、米国が想定しているのは、一九六二年のキューバ危機の時のような「隔離」や「封鎖」という軍事措置ではなく、関係各国の「法的権限」で実施可能な範囲の措置でよいと繰り返し強調。米国は「緊張を激化させる」意図はないと述べました。
中国の対応についてブッシュ大統領は、「北朝鮮に兵器を放棄させる上で中国がとても重要なパートナーになった」(二十三日のCNBC放送とのインタビュー)と評価しています。