
2006年10月19日(木)「しんぶん赤旗」
北朝鮮制裁の安保理決議
国連憲章41条
軍事力使用と無関係
国連安全保障理事会が十四日に全会一致で採択した対北朝鮮制裁決議一七一八は、「国連憲章第七章に基づいて行動し、第四一条に基づいて措置をとり」と述べ、国連憲章四一条を国際法上の主要な根拠とする決議であることを明記しています。これは、この決議の重要な特徴となっています。
41条と42条区別
国連憲章第七章を適用する場合は、まず三九条に基づいて、「平和に対する脅威」や「侵略行為」が「存在」するのかどうかを「決定」し、その上で非軍事的措置を定めた四一条に従うのか、軍事的措置を定めた四二条に従うのかを決定することになっています。今回の決議は、四一条に基づくことを明確に表明しています。
四一条は、平和に対する脅威に対して「兵力の使用を伴わない…措置」をとるとしています。その具体例として「経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶」を挙げています。いずれも、軍事力の使用とはまったく無関係な措置ばかりです。
最新の国連憲章逐条解説であるブルーノ・シンマ編『国連憲章注解』第二版(二〇〇二年刊)は、「四一条に基づいて利用可能な措置の範囲は極めて広いが、武力の行使は排除している」と述べ、四二条に規定される軍事的措置とは明確に一線が画されることを指摘しています。
検査は国際法で
軍事的措置を定めた憲章四二条では、そのもとで利用可能な措置として、国連加盟国の各軍による「示威、封鎖」が例示されています。このうち「封鎖(ブロッケイド)」について『国連憲章注解』は、対イラク制裁でとられた措置を例に挙げ、「経済制裁の体制を順守するために、出入りするすべての船舶の遮断(インターセプション)、検査(インスペクション)を許す」ようなものだと説明しています。
この説明によれば、日本で議論されているような「臨検」は、むしろ四二条に基づく措置に近いとも解釈できることになります。
安保理決議一七一八にも、北朝鮮に出入りする荷物の検査(インスペクション)に関する規定があります(第8項f)。しかし、それは、「必要に応じて、自国の権限と法律に従い、また国際法にそって」、このような検査「を含む協調行動をとるよう要請される」という、非常に抑制的な規定となっています。
米国が九日に提示した最初の案文では、「憲章第七章に基づいて行動し」とだけ述べられ、「すべての加盟国は以下の必要な措置をとるべきものと決定する」という主文のもとに、「貨物検査を実行、促進する」という表現になっていました。
最終的に採択された決議が「四一条に基づいて」と「非軍事」を明記した意義は、このような規定の変更にも貫かれています。(坂口明)