
2006年8月2日(水)「しんぶん赤旗」
イスラエルのレバノン攻撃擁護
アメリカの思惑は…
イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの撲滅を掲げレバノン爆撃を続けるイスラエル。それを擁護する米国は何を考えているのか。最近の若干の動きをみてみました。
ネオコンに勢い
「これは第三次世界大戦だ」―イラクへの先制攻撃戦争強行に大きな影響を及ぼし、イラク情勢泥沼化で鳴りを潜めていた米国のネオコン(新保守主義)派が、イスラエルのレバノン攻撃で再び勢いづいています。
パレスチナのハマス(イスラム抵抗運動)とヒズボラによるイスラエル攻撃、北朝鮮のミサイル発射は、すべて結びついている。これは、「文明と、それを破壊するテロリスト・テロ支援国家との世界戦争」「イスラムの非和解的な翼との長期戦争」だ―ネオコンが集結するシンクタンク、米エンタープライズ研究所(AEI)上級研究員のギングリッチ前下院議長は特徴づけます。
約七百人の犠牲者を出しているレバノン危機。即時停戦を求める国際世論の高まりにブッシュ政権は抵抗してきました。
「テロ組織」ヒズボラが問題の「根本原因」(ブッシュ大統領)だ、イスラエルは自衛権を行使しているだけだ、ヒズボラの力を温存させる「即時停戦」は認められない、その力をそぐ「持続可能な停戦」でなければならないと主張します。
ライス国務長官は、現在のレバノンの事態が「新しい中東の生みの苦しみだ」と語りました(七月二十一日)。英紙フィナンシャル・タイムズ三十一日付は、この発言に対しアラブ諸国で激しい反発の声が渦巻いていると報じています。
単なる応援団か
米国が現に果たしている役割は、単なるイスラエルの応援団、擁護者にとどまりません。
F16戦闘機などイスラエルの最新兵器はほとんどが米国製であり、米国の援助はイスラエルの軍事予算の二割強。ヒズボラが地中施設に兵器を隠しているとしてイスラエルが地中貫通兵器の供与を至急求めているのに対し、米国は地中貫通爆弾GBU28を英国経由でイスラエルに輸送したと報じられています。
しかし、両国の協力はもっと深いとの見方があります。カタールの衛星放送アルジャジーラ電子版(七月二十六日)などによれば、六月十七―十八日に米コロラド州ビーバークリークでAEIの会議が開かれ、イスラエル右派政党リクードのネタニヤフ党首(元首相)、シャランスキー元内相、チェイニー米副大統領らが参加しました。ここでイスラエル軍のガザ・レバノン攻撃計画が議論され、チェイニー氏は了承したといいます。シャランスキー氏は「全世界民主化」論を提唱し、ブッシュ氏に大きな影響をもつとされる人物です。
ネタニヤフ氏はすぐイスラエルに戻り、十九日に開かれた首相経験者の会合でAEI会議の中身をオルメルト首相らに伝えたとされます。
イラン攻撃計画
レバノン攻撃の目的をめぐり取りざたされるのが、イラン攻撃計画との関連です。十九日のイスラエルでの会合に関しエルサレム・ポスト紙六月十八日付(電子版)は、会合の目的はイラン対策だと報じました。
英サセックス大学の政治学者、ナフィーズ・アーメド氏は、元英労働党閣僚からの情報に基づき、イスラエルの行動は、米英両国と協調し、年末までのイラン攻撃開始を誘導するものだとの見方を示しています。
十一月の米中間選挙との関連も指摘されています。チェイニー氏は七月二十一日のフロリダ州タンパでの共和党の集会で、イスラエルのレバノン攻撃を引き合いに出し「対テロ戦争は終わった」論に反論。選挙では安保問題で党への支持を固めるよう訴えました。
他方で、レバノン攻撃は、イラクで出口を見いだせないブッシュ政権を、米内外でいっそう窮地に追い込んでいるとの見方も強まっています。(坂口明)