日本共産党

2004年2月25日(水)「しんぶん赤旗」

経団連企業トップ 盗聴を主導

武富士事件初公判

武井前会長 起訴事実認める


 サラ金最大手「武富士」の盗聴事件で、電気通信事業法違反(盗聴)の罪に問われた同社前会長の武井保雄被告(74)と、法人「武富士」の初公判が二十四日、東京地裁(青柳勤裁判長)で開かれ、武井被告は「間違いありません」と起訴事実を認めました。


 東証一部上場の日本経団連加盟企業トップが盗聴を主導するという異例の犯罪で、検察側は冒頭陳述でその経緯を詳述しました。

 法人としての関与についても清川昭社長が「間違いありません」と認めました。

 起訴状によると、武井被告は同社元法務課長・中川一博被告(43)、探偵業重村和男被告(57)らと共謀。二〇〇〇年十二月から〇一年二月にかけ、フリージャーナリストの山岡俊介さんら二人の電話回線に盗聴器を仕掛け、録音しました。

 弁護士、ジャーナリストらでつくる「武富士対策連絡会議」は、武富士の上場廃止と日本経団連からの除名を要求していますが、同社への処分はされていません。


「本当の反省ない」

被害者・弁護士ら

 「武富士」による盗聴被害者のフリージャーナリスト、山岡俊介さんと高尾昌司さんが二十四日、武井保雄被告の初公判後に記者会見しました。山岡さんは「武富士は本当の反省はまったくしていない。新聞におわびの全面広告を出しながら被害者に謝罪にこない」と批判。山岡さんは、同社から三千万円以上支払うとの慰謝料の打診がきていると明らかにした上で「札びらでほっぺたをはたかれている」と応じない意向を明らかにしました。

保証金3億円で武井前会長保釈

 東京地裁は二十四日、武井保雄被告の保釈を認める決定をしました。保釈保証金は三億円。


「盗聴業者知りませんか」

依頼、確認、決裁 すべて自分で

写真

武井被告が決裁した盗聴費用支払いの稟議書のコピー

 「盗聴できる業者知りませんか」。ためらわずに犯罪に走り、みずから成果をたしかめて支払いを決裁、さらには口止めも――。サラ金最大手「武富士」の前会長・武井保雄被告(74)の初公判。検察側は冒頭陳述で、一部上場企業のトップが犯罪の先頭に立った経緯を明らかにしました。

 検察側の冒頭陳述や証拠要旨の説明によると、武井被告は一九九二年ごろ、退職して金融業をしていた元専務が同社からの情報漏えい、社員引き抜きにかかわっているのではと疑い、元専務の尾行を指示しました。しかし、尾行では証拠はつかめませんでした。

■「報告しろ」

 武井被告は知人の会社経営者に「盗聴できる業者知りませんか」と問い合わせ、紹介された調査会社「ミリオン資料サービス」に盗聴を依頼するよう当時の専務に指示。ミリオン社は「アーク横浜探偵局」の重村和男被告(57)に再依頼して、重村被告が元専務宅を盗聴しました。

 武井被告は盗聴で証拠は得られなかったものの詳細な会話内容が把握できることに満足。情報漏えいへの関与などを疑った役員らへの盗聴を繰り返し実行しました。

 同社取締役宅を盗聴した二〇〇〇年七月ごろには、法務課長だった中川一博被告(43)に調査会社の一覧表を渡して盗聴業務を引き継がせ、「後で内容を報告しろ。これからこの件を報告する時は『耳の件』といって報告しろ」と指示しました。

■“調査費用”

 フリージャーナリストの山岡俊介さん、高尾昌司さんを盗聴したころは、批判記事や同社の問題の取材活動を、黒幕的人物の指示によるものではないか―などと疑っていました。

 山岡さん宅盗聴では、別の雑誌記者が武富士の地上げ問題に関する記事を、山岡さんと共同執筆しようとしていたことを盗聴内容から知り、同記者の盗聴も指示。

 武井被告は、武富士で十万円以上の支出のほとんどを決裁。「常務会」の決裁が必要とされる一千万円以上の支出も実際は同被告一人で決裁していました。盗聴報酬も武富士から支出することにし、「人事調査」「企業調査」の費用などの名目で稟議(りんぎ)書を上げさせて決裁。重村被告に二〇〇〇年十二月末からの二カ月あまりで千七百五十五万円の報酬を支払いました。

■隠ぺい工作

 検察側は隠ぺい工作の一端も明らかにしました。逮捕前、盗聴業務の元担当者で逮捕された元専務(処分保留で釈放)に、中川被告が勝手にやったことにするよう指示。武井被告の妻が元専務の妻に会い口止め料計二百万円を渡しました。

 検察側は武井被告に窃盗、銃刀法違反、傷害など前科十犯があることも指摘しました。

 また、武井被告の二男の武井健晃専務・営業統括本部長(34)が中川被告から盗聴の録音テープ二本を借りて聞き、広島県福山市の元支店長実家の盗聴を提案したと、同専務が供述していることも初めて明かされました。


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