2003年6月22日(日)「しんぶん赤旗」
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最近、「三位一体(さんみいったい)改革」という言葉をよく耳にするけど何のこと?
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小泉内閣がすすめている「地方税財政改革」のことさ。言葉はむずかしそうだけど、中身は暮らしに直接かかわってくることなんだ。
「三位」とは、(1)国庫補助負担金の削減(2)地方交付税の見直し(3)地方への税源移譲を含む税源配分の見直し-の三つで、これを「一体」にしてやろうというんだ。
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「三位一体改革」は、今週にも小泉内閣が決める「骨太方針第三弾」に盛り込まれる。
原案では、国庫補助負担金について四兆円をめどに廃止・縮減し、その八割程度の税源を地方に移す、となっている。これだと単純に見ても、地方には二割分、約八千億円の新たな負担が強いられる。
国が基準を定めて地方がやっている社会保障や教育など義務的事業については「全額移譲」としている。これも「徹底的な効率化」を前提にしていて、塩川正十郎財務相は「二割削減すべきだ」といっている。実質的に削減される可能性が高い。
もともと政府が、「三位一体」といいだしたのは、財政難を理由に国庫補助負担金と地方交付税を減らしたいというのが動機だったんだ。でも、国庫補助負担金だけでも「数兆円規模の削減」が目標だから、財源の手当てもなく削減すればすむというわけにはいかない。それで税源移譲もセットでやるといいだしたんだ。
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補助金といえば「ヒモ付き財源」なんていわれる。減らすのはいいことなんじゃないの?
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公共事業などの補助金にはそういう問題点もある。ムダな補助金はなくすなどの改革は当然のことだね。
一口に「補助金」といっても、国民生活を支える重要なもので国に負担を義務付けている「国庫負担金」が全体の八割以上を占めている。義務教育、老人医療、保育所、生活保護など社会保障や教育関係が多いんだ。
例えば、約二・八兆円の「義務教育費国庫負担金」は、国が小中学校の教職員給与の半額を出している。義務教育で国が経費を負担するのは当然だ。これが代わりの財源もなく削られると、大きな影響を受ける。
近畿ブロック知事会は税源移譲が削減額の七割の場合で試算(表)していたが、小中学校の一学級あたりの生徒数は四十人から四十六人に増えることになるという。少人数学級に逆行するよ。
税源移譲では所得税も対象になっているが、大都市圏と農山村では税収に大きな差がある。人口が少ない地域では、増える税収より補助金の削減額が大きくなる可能性が高い。税源移譲をしても、自治体間の差を調整する十分な仕組みがないとかえって格差が広がりかねない。
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じゃあ「地方交付税の見直し」はどうなの。交付税をもらっていない自治体は東京都などわずかだっていうでしょ。
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地方交付税は、法律にもとづいて、所得税や消費税をはじめ国税の一定部分などを財源にして地方に保障しているお金のことだ。自治体間の財政力の差を調整し、どの自治体でも標準的な住民サービスをおこなえるよう財源を保障してるんだ。
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ところが、「三位一体改革」では、地方交付税のこの財源保障機能については「縮小していく」としている。
これまでは国庫補助負担金を削る場合、それに代わる財源は地方交付税などで手当てしてきた。それが縮小されると、地方自治体は、削減分を自前で補うか、住民サービスの切り捨てにつながりかねない。
地方の自治権を拡充するために地方の財政基盤を強くしようというのが本来の税源移譲だよ。
全国町村会はじめ地方団体が、地方交付税の制度を堅持するよう求めているのは当然だよ。
税源移譲には、国、地方ともまず増税をやってから、増税と一体でやろうという動きもある。
結局、小泉内閣のやろうとしているのは、政府が招いた財政危機のツケを地方に転嫁するものだ。自治体には負担増を、住民には福祉や教育の切り捨てと増税を押しつけることになるよ。