2002年5月24日(金)「しんぶん赤旗」
侵略戦争を美化した『最新日本史』(明成社版)を、来年度から使う高校教科書として採択させようという動きが強くなっています。『最新日本史』は、四月九日発表された文部科学省の検定に合格。改憲団体の「日本会議」などが、明成社以外の教科書を攻撃し、採択へ後押ししています。
千葉県松戸地区一帯では昨年十一月から毎月一回「教育を正す東〓市民の会」を名乗る団体が「東〓教育ニュース」を配っています。「ニュース」は、「南京事件の記述はデッチ上げ」だなどと各社の高校教科書を攻撃、「偏向教科書を採択させないため、県民・市民・保護者の声を教育長・校長に届けよう」と「申し入れ先」を列挙しています。
高校教科書は現行では現場の教師の意見を聞いて学校ごとに選定しています。
ところが、東京都教育委員会は従来のやり方をくつがえそうとしています。九日付の都教委指導部の文書は各高校での教科書選定について「責任と権限は校長にある」と明記。校長を委員長とする「教科書選定委員会(仮称)」の設置を明らかにしています。しかも、採択は採択権者である東京都教育委員会の責任と権限でおこなうと強調しています。現場の教員を採択からはずし、学校長や都教育委員会の意見をもっぱら重視する方式です。
国会では四月二十五日の参院文教科学委員会で自民党議員が「教科書採択の責任の所在は教育委員会にあると解されているのに、実際には個々の高校によって採択されている」とし、そうならないよう文部科学省の「指導」を求めました。矢野重典初等中等局長も「指導したい」とこたえています。
子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長の話 まだ局地的だが、『最新日本史』の採択をねらった一連の動きは、教科書採択から現場教師をはずそうとする東京都などの動きとあいまって軽視できない。教科書採択についていえば、子どもと日常的に接し、教科書を使って学習を指導する教師にいい教科書を選ぶ権利を付与するのは当然のことだ。政府の九七年の閣議決定でも採択に教員の意向が反映されるよう求めているし、ユネスコ・ILOの勧告でも教材の採用に教員の不可欠の役割を強調している。ひきつづき現場教師の意見が反映されるよう、公正な採択を求めていく。
『最新日本史』 太平洋戦争を、当時の政府の呼称である「大東亜戦争」と記述し侵略戦争だったことを否定。アジア解放の戦争であり、正しい戦争だったとの立場から歴史を記述しています。出版元の明成社は日本会議が製作した「靖国のこころ―英霊いま生きてあり」などのビデオや同会議のメンバーによる著書を出しています。