日本共産党

2002年1月17日(木)「しんぶん赤旗」

小泉内閣 「公共事業見直し」は看板倒れ

東京←→博多

「のぞみ」停車は10駅なのに

17も空港がいるの?


 あるわあるわ―。東京―博多間でみると、新幹線「のぞみ」の停車駅十に対し、空港は既存のものに建設中、計画中を合わせて十七カ所。二〇〇二年度は国の公共事業長期計画の一つ、「第七次空港整備七カ年計画」が終わる年です。こんなにもたくさんの空港が必要なのでしょうか。(江刺尚子記者)


 東京駅から新幹線「のぞみ」に乗って、新横浜、名古屋、京都、新大阪…関門海峡を渡って博多まで所要時間は約五時間。この間に、羽田、名古屋、伊丹、広島など既存の空港に加え、建設・計画中の静岡、中部、神戸など含め十七カ所(地図)もあります。検討中の首都圏第三空港、山口東部空港を加えると十九空港になります。

 新幹線で五十分の新大阪―岡山間には、伊丹、神戸、播磨、岡山と四空港も並びます。

地図

過大な需要見込んで…

 「東京、名古屋に一時間、大阪に二時間あったらいける。静岡に空港が必要なのか」と、県民が強く反対している静岡空港。県が計画を発表し、用地買収を始めた当初、「空港利用者は五百三十四万人」と宣伝しました。県の人口は三百七十万人です。過大すぎる需要見込みだと批判されるなか、百七十八万人に下方修正し、さらに百二十四万人へと修正を繰り返してきました。いったんは凍結した工事を、昨年十二月から再開しています。

 同県の年間予算は約一兆四千三百億円。ところが一兆九千億円もの借金(累積債務)を抱え、県知事が「財政非常事態宣言」を出すほどです。それなのに、千九百億円の巨費を空港建設に投じようとしています。

 神戸港沖に人工島をつくり、三千百四十億円をかけて建設が進められている神戸空港も、県民の反対の声を聞かずに推進されています。神戸市は、年間四百二十万人が利用すると予測。しかし、新幹線「のぞみ」も止まる新神戸駅の年間乗降客は約四百五十万人です。予定便は札幌、東京、九州各地の九カ所と県内の但馬空港しかないのに、新幹線なみの利用者を見込んでいるのです。

 しかも高速艇で二十五分のところに関西国際空港があり、その第二滑走路をつくる二期工事が一兆四千二百億円かけて進められています。

 びわこ空港(滋賀県)は、札幌、九州の四県へ行く便しかないのに、県民の六割、七十六万人が利用するという過大な予測をもとに、県が計画。あまりのひどさに、建設是非を問う直接請求署名に十二万三千人が署名し、県内の全自治体で法定数(有権者の2%)を突破しました。現在は工事をストップしているものの、県知事は推進姿勢を変えていません。

五全総には手をつけず

 需要の見込めない空港建設を進めているのが国の「空港整備七カ年計画」。さらに、政府が一九九八年に閣議決定した新全国総合開発計画(五全総、二〇一〇~一五年が目標年次)で、「競争力の高い国際空港を東京圏、関西圏、中部圏に配置する」「国内の交通需要は二〇一〇年までは伸び率は鈍化するものの安定的に拡大する」として都市・地方空港の建設推進などをすすめています。

 小泉内閣は「公共事業を見直す」といいますが、この五全総にはまったく手をつけていません。


接近した空港非常に危険だ

 航空労組連絡会議の久我義昌副議長=日本航空・整備士=の話 神戸空港の建設予定地と関西国際空港は直線距離で約二十キロメートル、冬の晴れた日はお互いに見える近さです。

 安全上、非常に問題があります。関空への着陸は、神戸空港の真上から旋回しながら降下します。神戸空港への着陸は、この経路の下をくぐることになります。同じ空間の運航は、高度差を約三百メートル確保しなければならないのですが、狭くてこの間隔がとれません。ですから、どちらかが離着陸する間、もう一方が地上や上空で待機しなければならなくなります。

 安全面で非常に危険なうえ、採算の見通しがなく、市民に多大な負担を強いる空港は必要ありません。

県民合意ない事業は中止を

 「静岡空港・住民投票の会」の林克事務局長の話 私たちがとりくんだ「静岡空港の建設是非を問う住民投票を求める直接請願署名」には、法定数の約五倍、二十九万人が名前を連ねました。しかし、県議会は昨年九月、自民党の反対多数で否決。“県民の判断に委ねてほしい”という要求を退けました。つまり、静岡空港は県民の合意がない事業だということです。そんな事業には、私たちは中止を要求します。

 いま、「住民投票の会」を「建設中止の会」(仮称)に発展させ、運動を続けていこうと準備をしています。

 本体工事が16%進んでいるといいますが、静岡空港は中止しかないと声をあげていきます。


 第七次空港整備七カ年計画 国の公共事業長期計画の一つ。一九九六年~二〇〇二年度の七カ年で、投資総額三兆六千億円。関西国際空港の二期事業の推進など、「大都市圏における拠点空港の整備を最優先とする」ことなどを盛り込んでいる。

 


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