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中田進さん(関西勤労者教育協会講師)

すぐにでも飛んでいって、ゆっくりおはなしを伺い、具体的な対策を一緒に考えたいという気持ち

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 みなさんの声、深刻な中身にやりきれない気持ちです。すぐにでも飛んでいって、ゆっくりおはなしを伺い、具体的な対策を一緒に考えたいという気持ちです。労働相談センターに電話したら「この回線は一つしかないから、次の人が待ってるから」といわれ切られたという、声もありました。労働組合も少ないスタッフで必死で頑張っておられますが、充分対応できずほんとうにすみません。しかしみなさんの貴重な声は全国に届いています。

 今回の声でも、派遣労働者が、正規労働者から差別され、いじめられ、ボーナスもなく低い賃金で、正社員以上の仕事をさせられ、働く気力を奪われ、心を病んでいく実態が浮かび上がっています。

 「通学路で見かける無邪気な小学生のこども達、通園バスから手を振ってくれるかわいい幼稚園の子供達、ベビーカーに乗ってる赤ちゃん、ほとんどみんな、将来ぐったり疲れた派遣社員ですよ。ワーキングプアですよ。政治家にはきちんと将来を想像してからあれこれ決めてほしい。このまま行けば日本はすさんだ国になると絶対に言える!」

 この声は、衝撃でした。参議院選挙の結果は、国民の大きな怒りが爆発し自民・公明の大敗北でしたね。暴走をストップさせ、まともな国にしましょう。

 「私はトラックドライバーなのですが給料は日給月給制です。早朝3時から夕方6時まで15時間労働してますが、残業手当ては一切出ないんですよね。ひどい会社です。仕事終わって家に帰っても何も出来ず直ぐに寝るようなんですよ!!!就寝時間は1日4時間前後!!眠い目擦りながら毎日運転してます。そのうち事故起こしそうです!」

 なんとひどい働かせ方でしょう。月100時間を超え年間1000時間をこえる残業という実態もありました。そもそも「8時間」という規制になぜなったのでしょうか。

 産業革命のあとイギリスでは一日14時間が普通、時には19時間も働かされ早死し、平均寿命が縮まり社会問題となりました。労働者は時間短縮のたたかいに立ち上がり、まず婦人・児童の一日の労働時間を12時間、10時間と制限する法律ができ、やがて成人男子にその制限がひろがりました。そして一日の労働時間を8時間に制限し、自由に過ごす時間を8時間、睡眠は8時間確保することが、人間らしく生きる当然の権利であることが確認され、1886年5月1日、アメリカのシカゴの労働者が「8時間労働制」を要求にストライキでたたかい、4年後の1890年にも5月1日、全世界の労働者がシカゴの労働者とともに「8時間労働制」をかかげたたかいました。これが「メーデー」のはじまりです。この流れで日本の労働基準法も「8時間」と制限しています。時間短縮は生活・健康を守るためにも、またそれ以上に、労働者の学習やたたかいの前進のためにも重要です。本来8時間超えることは許されません。例外として超える場合は労働組合の了解が前提。その場合25%の割増、10時過ぎると50%割増の「残業手当」を支払うことが義務づけられています。これを支払わない「サービス残業」はまさに犯罪です。トラックの運転手が4時間の睡眠では事故、必然です。バス・トラックなどの運転手の長時間労働が、大きな事故の原因となり人の命を奪っています。どんな分野の労働者にとって、せめて時給を1000円にすることと、一日8時間、週40時間を超えない労働条件を勝ち取ることは緊急の課題ですね。


プロフィール

なかた・すすむ

1937年、京都に生まれる。関西勤労者教育協会講師。京都府立大学卒業後、大阪の中学校教諭を経て、勤労者教育に専念。労働学校、労働組合、民主団体、青年女性団体、公民館、高等学校、各種団体で講演、 政治経済情勢、哲学、「暮らしと経済」「二一世紀どう生きる」「学ぶこと、生きること」「働くこと、生きること」「自分らしく輝いて」「学ぶことは生きる道しるべ」 などをテーマに、分かりやすく語りかける。

主な著書「働くこと生きること」(学習の友社)。「自分らしさの発見」(新日本出版)。 「人間らしく自分らしく」(学習の友社)

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