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平井哲史さん(弁護士)

派遣先の会社には就職する事はできるのでしょうか?

 1、偽装請負や派遣という働き方への疑問が多く寄せられました。非正規雇用の保護は弱いのが現状です。「派遣先の会社には就職する事はできるのでしょうか?」という質問がありましたが、派遣法40条の3では、一定期間同じ職場で同じ業務をしてきた派遣労働者について、派遣先が直接雇用する努力義務を課しています。パート労働指針の第3の2(6)(7)でも正社員への転換について定めています。これらを利用して、派遣先・使用者と交渉することで直接雇用を実現した例も出てきています。しかし、これを強制の可能な法的義務に高める法改正が必要です。

また、ヨドバシカメラで起きた事件のように「便器をなめろ」などと人間扱いされないような待遇を是正する必要があります。「賃金が低い、昇給がない、賞与・退職金がない」の3点セットの改善が求められます。雇用形態の違いに基づく差別を規制していく必要があります。

2、待遇改善をはかるには、「これはおかしいんじゃない?」と声をあげていくことが大切です。こんなこと言って大丈夫かな〜と思うのであれば相談してください。寄せられた声の中からいくつか拾ってみます。

●「社員には夜間手当等ありますが我々にはありません」

→ これは労働基準法37条の深夜手当が払われていないのだとしたら違法です。労働基準監督署などに相談してみてください。

●「定時が6時だと仮定すると、最初の30分は残業代が出ないんです。 更に30分単位で区切られるので、 たとえば6時59分まで残業すると、すべてサービス残業になってしまいます。」

→ 休憩時間を除いて定時の時点で8時間働いていれば、これは違法です。8時間をこえていなくても所定外労働に違いはありませんから、通常の時間あたり賃金は請求できます。支払わなければ賃金全額払い原則(労基法24条1項)違反になりますから、労働基準監督署に相談してください。

●「辞めたいのに、辞めれない。退職届は受理されず…。」

→ 民法627条では、退職の告知をすれば2週間後に自動的に雇用契約が終了することになっています。上司が届けを受理しない場合は、内容証明郵便で送付すればよいでしょう。

●正社員1名の教室で「教室長」の立場で、現場のかぎ開け、鍵締めを行っているけれども、勤務時間は決まっていて、タイムカードも打刻していて、人事権もないけれども労働基準法第41条の「管理監督者」だから割増賃金は出ないと言われたという声もありました。

しかし、管理監督者は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことですから、単に現場の鍵を管理しているとかアルバイトに指示をしているというだけでは、管理監督者とは言えません。一度弁護士に相談してみてください。

3、1人で声をあげるのは勇気が要りますから、ぜひ労働組合に相談してみてください。偽装請負の解決にも労働組合が大きな役割を果たしています。時に我慢は必要ですが、我慢ばかりしないで声をあげていきましょう。弁護士はみなさんをサポートします。


プロフィール

ひらい・てつふみ

1969年生。1994年早稲田大学法学部卒。2001年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる分野として取り組む。個人加盟組織の出版情報関連ユニオン顧問。日本弁護士連合会憲法委員会幹事、第二東京弁護士会人権擁護委員会委員、自由法曹団事務局次長。一児の父。

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