「格差社会」という用語はあっという間に世の中に定着しました。それだけ、現実を的確に表現した言葉だったのだろうと思います。みなさんのご意見の中にも、派遣労働者に対する扱いのひどさや、障害を抱えた方々の就職難を訴えるものが多数ありました。自民党の新総裁は「再チャレンジ」を掲げていますが、これは競争に負けても自前でなんとかしろということです。自分の力だけではどうにもならないことがあるから社会福祉があるわけですが、そんなことはおかまいなしという姿勢がこの標語にはみてとれます。福祉の進んだ国などでは、障害をもった方でも、その能力を活かしていろいろな仕事についています。本人の努力もあるのでしょうが、それを支える社会的なサポートがあるからでしょう。人と人とが競争し、け落とし合うのではなく、協力し、支え合って生きていくような社会に転換するために選挙で政治の流れを転換する必要があります。
そして、日々の生活では、あきらめないことです。150時間近く働いたのに98時間しかつけてもらってなく、しかも迷惑料として給料を半額にされたという方がいましたが、これらは労働基準法24条1項の賃金全額払いの原則に違反する違法行為です。タイムカードやシフト表など150時間働いたことを証明する資料があれば、退職後でも未払賃金の請求はできます。また、迷惑料についても、本当に会社に損害が生じたならば、それを法的手続をとって請求してくればいいのです。しかし、往々にして「損害」などなく、立証もできないから、力づくで給料から引く使用者がいるのです。こうした横暴に対して泣き寝入りをせず、あきらめない、これが大事だと私は思います。そして、一人だけではしんどくても、労働組合や弁護士、さらにときには議員に相談をすることで解決できることも多々あります。私たちは意外とみなさんの近くにいます。あきらめずにまず相談をしてみてください。皆さんの世代向けの本と労働組合を一つずつご紹介します。
●本 『フリーターの法律相談室』(平凡社新書:笹山尚人・井上幸夫共著)
●労働組合 首都圏青年ユニオン 電話 03−5395−5359
■プロフィール
ひらい・てつふみ
1969年生。1994年早稲田大学法学部卒。2001年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる分野として取り組む。個人加盟組織の出版情報関連ユニオン顧問。日本弁護士連合会憲法委員会幹事、第二東京弁護士会人権擁護委員会委員、自由法曹団事務局次長。一児の父。
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