若者ネットワーク 若者に仕事を

「偽装請負」是正へ運動 てい談 

春名なおあき元衆議院議員と徳島の青年労働者


 全国各地に広がった「偽装請負」の是正を求める青年労働者の運動。徳島県藍住町の光洋シーリングテクノでたたかう全日本金属情報機器労働組合(JMIU)徳島地域支部書記次長の矢部浩史さん、その運動を支えてきた同徳島地方本部委員長の森口英昭さん、そして日本共産党の元衆議院議員春名なおあきさんが、徳島市内で話し合いました。(「しんぶん赤旗」中国・四国のページに06年12月19日から4回連載されたものです) 


森口 実態は派遣の「脱法」

矢部 上がらぬ年収200万円

春名 社会動かすたたかい

記者会見に感激

春名 9月1日の矢部さんたちの会見を知り感激しました。「しんぶん赤旗」1面に「光洋シーリング 請負労働者59人 直接雇用かちとった」の大きな見出しがおどりましたね。
  光洋シーリングテクノは、トヨタ系の自動車部品メーカーですが、そこで2年前の2004年9月、矢部さんたちが違法な偽装請負の実態を告発して、直接雇用を求めるたたかいが始まりました。そのたたかいがこういう形で実りました。

(左から)春名さん、矢部さん、森口さん


森口 偽装請負の実態と仕組みを告発することに力を入れました。
 労働者は派遣会社に雇われて派遣先に行き、そこの指揮・命令で働く。これが派遣です。請負というのは、親会社から仕事を請け負って自分の所の設備や材料を使って仕事をします。
 しかし、矢部さんたちは、派遣会社から派遣され、指揮・命令も派遣先の社員から受けて働いているのに請負だとされていました。
 派遣労働は期間が限定されていて、2007年2月末までは1年、それ以降は3年です。その期間を超えた場合、派遣先企業は直接雇用の責任を負います。これを免れようと、実態は派遣なのに「請負」という形をとって働かせる脱法行為です。

春名 それが偽装請負ですね。


企業の「うまみ」


森口 製造業の場合は一定の技術が必要ですから、企業もできるだけ同じ労働者を使っていきたいんですよね。しかし、派遣だと期間が過ぎれば直接雇用を申し入れる義務が企業側に生じます。請負の形だと期間が過ぎても直接雇用する必要がなくて、その労働者を、何年でも好きなだけ使うことができる。光洋シーリングテクノにしてみれば、そういう「うまみ」があるんです。
 それに、雇用関係にあるのが派遣会社ですから事故が工場内で起こった時、請負の場合だと何も責任を負わなくていい。


解雇も簡単に…

矢部 光洋シーリングテクノの偽装請負の労働者の年収は200万円程度の低収入で、何年働いても上がりません。僕は35歳で光洋シーリングテクノで仕事を始めたんですけど、現状で60歳定年まで働いても収入の総額は5千万円にしかならないんです。
 みんな最初は仕事にやりがいがあったんよね。それがだんだんなくなっていく。どんなにがんばっても、会社の利益は上がるが、賃金が上がる話は一切ない。それで「仕事はしっかりやれ」ですからね。
 会社が気に入らん人は簡単にクビ(解雇)にされる。しかし、30代や40代になって次の仕事ってないですからね。

春名 その憤りから運動が始まったわけですね。いま「社会的格差と貧困」が日本社会の大きな問題になっていますが、その原因の一つにこういう労働者の働かせ方がある。そこを変えていく、社会を動かす歴史的なたたかいです。

春名 頼れる労組があった

森口 たたかうなかで勉強

矢部 とことんいったると

春名 偽装請負をやめさせるたたかいになぜとりくもうと思ったのか。光洋シーリングテクノではどうだったでしょうか。

派遣会社に脅し

矢部 光洋シーリングテクノの総務部に厚生労働省の「労働者派遣で請負を適正に行うために」などのパンフレットを持って改善してほしいとお願いしたんです。でもとりあってくれない。反対に派遣会社に「矢部をクビにせんとお前んとこの契約を解除するぞ」といったようです。派遣会社から「そういうことやけん。矢部さん、すまんけんど総務にはいかんといてくれ」といわれました。
 だけど自分は納得いかんかったから、そのパンフレットを持って、ある労働組合に相談にいったんですが、「よっし、一緒にたたかおう」とはなりませんでした。


春名 それでも矢部さんはあきらめなかった。

矢部 頼れる所はないかとインターネットで探したらあったんですよ。JMIU(全日本金属情報機器労働組合)が。

森口 JMIU徳島地域支部に矢部さんがやってきて「労働実態をなんとかして解決したい」という相談を受けました。話を聞いて青年労働者が置かれている状態が均等待遇とはほど遠く、「このままでは青年に未来がない」という思いを強くしました。
  本来なら労働者は誇りを持って働いて、幸せもつかんでという形にならないかんのに、それがつぶされていく。青年の勤労意欲以前に、人間としての誇りも壊してしまっている。「なんとかせないかん」と思いましたね。

春名 ことは矢部さんが労働相談にやってきたところから始まったんですね。


仲間で労組結成


 
森口 だけどこれはなかなか難しい問題で、はたして外部からどれほどの手伝いができるのかと。やっぱり、みんながみずから立ち上がってもらう以外にないということで、矢部さんに「仲間を連れてきてくれ」っていったんですよね。
 そしたら、それに応えて、今度は27人できてくれて、労働組合結成になってね。

春名 その時にJMIUがあって、森口さんがいてよかったね。


矢部 僕たちが労働組合を始めてから、派遣会社の方から「お前のようなことをいうのなら、世間の請負はみんな偽装請負だ。お前らが何やっても世の中変わらん。一人でなにができる」といわれました。だったら、こっちも「もうとことんいくとこまでいったる」という感じになりました。僕のたたかいのエネルギーは、意地でしたね。


からくり突いた


春名 同一労働、いやそれ以上の仕事をしてるのに賃金は半分以下、いつクビになるかもわからない。派遣先も派遣元も責任を負わない。そのからくりが偽装請負ということを突き止めてたたかってきた。


森口 当事者の組合員、矢部さんなんかは、よくこの問題を勉強して、熱心にほかの労働者にも語って、そのことをたたかうエネルギーにしてきたと思うんですよね。僕ら支援する側もたたかう中で勉強してきました。

森口 直接雇用の流れ生む

矢部 みんなとやらんとね

春名 未来開く人間的労働

春名 あの青色発光ダイオードの開発で有名な日亜化学工業での偽装請負なくせのたたかいのことを教えていただけませんか。11月10日に、1600人の直接雇用という快挙を実現しました。


日亜の運動激励



森口 日亜の場合は、やっぱり光洋シーリングテクノのたたかい、全国のたたかいが土台です。それが行政をも動かしました。とりわけ県が積極的に解決に乗り出したというのもあってね。世論的にも直接雇用の流れをつくってきた。この全国のたたかいが日亜のたたかいを励ました。

春名 ここでも十数人の労働者がJMIU(全日本金属情報機器労働組合)徳島地域支部に加入したんでしょ。

森口 そうです。17人が。最初は1人だったんです。彼にも「みずからが立ち上がらないと。請け負ってはたたかえんよ」「やるんやったら仲間を連れてきて」といいました。そしたら、次には17人できましたからね。

春名 組合員の平均年齢は何歳くらいですか。

森口 22歳くらいかな。

春名 うおー、すごい若い人たちですね。「しんぶん赤旗」の日刊紙と日曜版に「1600人直接雇用」と載りましたよね。私は、そのコピーを街頭演説や講演会で使ってるんですけど、参加者から拍手が起こるんよね。「たたかえばやれるんだなー」「励まされるなー」と。魂を揺さぶられるようなたたかいをすれば動く、変わる。そのことを実感しますよね。
 でも、そこで勇み足になって仲間も連れず1人でやったらうまくいかんわけやね。

矢部 みんなとやらんとね。

森口 そうそう。僕は、このたたかいの中で重視をしなければいけないと思うのは「本当に青年が将来展望を持って一生懸命仕事をやっていけるか」だと思っています。「青年に未来のある働かせ方」をどう確保するのか。それがこのたたかいのテーマだと思うんですよ。

技術が伝わらぬ


春名 ある週刊誌に「トヨタの変」という特集が掲載されました。品質ナンバー1だったトヨタに異変が起こっていて、管理部長が逮捕されたりリコールが繰り返されたり、重大な状況になってることを警告しています。その原因の1つとして「今、現場が疲れきってる」と指摘してるんですよ。何年か前と比べれば、1人当たりの生産台数が10台も増えている、一方、正社員が非正規に取って替えられて「技術」の継承も満足にできてないと。非人間的な働かせ方は、その青年の未来を閉ざしてワーキングプアと呼ばれる人たちをつくりだしました。どうしてもこのありかたを変えねばならないと決意しています。

森口 非正規雇用認めない

矢部 国の姿勢見えてくる

春名 現場と政治が一体に

製造業まで解禁


春名 偽装請負、無権利な働かせ方と政治との関連を見てほしい。1985年に労働者派遣法ができた。これが2003年にはとうとう製造業まで解禁されました。1999年には産業活力再生法という、労働者をリストラすれば税金をまけてやるという途方もない法律がつくられた。大企業と結託した政治のあり方が厳しく問われています。

森口 1995年に財界の賃金・雇用にかんする21世紀戦略の報告が出されたんですけど、一部のエリートがおれば、あとは使い捨ての労働者でいいという方針を出し、それを政治が後押ししてきた。やっぱりそこを根本から変えていかなくてはならない。
 僕らは現場から実態を告発して、国会では日本共産党にがんばってもらって悪法をなくしていく。そうして労働のまともなルールをつくっていきたいですね。

春名 そうですね。日本共産党も、みなさんのたたかいに学んで国会質問や政府交渉を繰り返してきました。10月13日の参院予算委員会では、市田忠義書記局長が偽装請負をただし、安倍首相に「ワーキングプアを前提にコスト、生産の現状が確立されているなら大変な問題だ」とまで答弁させました。

森口 それと同じ日のことですが、安倍首相が議長の経済財政諮問会議で日本経団連会長の御手洗冨士夫氏が、請負では製造業者が労働者に指揮・命令ができないという現行法の規定について「請負法制に無理がありすぎる」「これをぜひ見直してほしい」といっています。

春名 むちゃくちゃですよ。

矢部 僕は、御手洗さんと反対の方向で労働者派遣法を変えないといけないと思っています。
 罰則が軽くて企業は軽視するし、指導・監督する側の人間も少な過ぎてね。徳島労働局の需給調整指導官も1人しかおらんのですよ。企業は2万社あるのにね。
 こういうとこからも国の姿勢っていうのが見えてきますよね。「本気でただす」つもりがない姿勢がね。こういう問題は国会でやってもらわないと仕方ないです。


流れを広げたい

森口 光洋シーリングテクノのたたかいに端を発して、日本中に直接雇用を求める運動が広がり、国民の世論もできてきた。この流れをいっそう広げたい。僕らは現場からのたたかいに全力をあげながら、合わせて日本共産党との連携も強めてね、非正規雇用を許さないたたかいを続けていきたいと思っています。そのことが日本を救うんだということを確信してます。


企業責任明確に



矢部 会社っていうのは人を使って利益を上げるんですから、きちんと人に責任を持ってやっていってほしい。企業にはそれを求めたいし、国にはそうさせていってほしいですよね。それと僕らのたたかいっていうのは、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)や日本共産党やマスコミが支えてくれたからできたものなんですね。だから、直接雇用を勝ち取れました。

春名 青年を使い捨てにするような社会に未来はないし、これを変えるためには現場と政治の一体となったたたかいが必要です。みなさんとがっちりとスクラムを組んでたたかっていきます。




もどる

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ

著作権についてリンクについてメールの扱いについて
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7  TEL03-3403-6111 FAX03-5474-8358 Mail:info@jcp.or.jp