「武器を使用する」と首相
日本の若者が「殺し、殺される」危険に
こんどの法案は、米国が世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争をおこしたさいに、これまで政府が「戦闘地域」とよんでいた場所まで自衛隊を派兵し、米軍への軍事支援をできるようにするものです。
「戦闘地域」まで行けば自衛隊が相手から攻撃されることになる。攻撃されたら「武器の使用をする」─志位委員長に追及され、安倍首相は認めました。
重火器で応戦する「戦闘」そのもの
「非戦闘地域」での活動が建前だったイラク派兵でも、対戦車弾、無反動砲などで重武装していた自衛隊。そんな重火器で応戦すれば、戦闘そのもの。憲法9 条が禁止した武力の行使になることはあきらかです。
危険な地域に送って「安全確保」とは
首相は、「自衛隊員の安全確保」をくりかえしますが、「法改正で、隊員に与えられる任務の危険性は格段に高くなる。間違いなく戦死者がでる」(イラク戦争当時の内閣官房副長官補・柳澤協二氏)。危険な地域に送りこみながら「安全確保」など、まったくの自己矛盾です。
「非戦闘地域」ですら深刻な被害「いつ何が飛んでくるか、怖かった」「警備を交代しても寝られない」─睡眠障害や不安を訴えた隊員が3割をこえる部隊も。「非戦闘地域」を建前としていたアフガン・イラク派兵でもこれだけの犠牲者です。「戦闘地域」に日本の若者を送るわけにはいきません。 |
米軍のイラク・アフガン帰還兵では、1日平均22人、戦死者よりも多い年間8000人が自殺。その多くが、「無実の民間人を殺してしまった」と重い自責の念にかられ、命を絶っています。 |
弾薬の補給 武器の輸送
「兵たんは戦闘と一体不可分」と米海兵隊教科書
政府のいう「後方支援」=弾薬や燃料の補給、武器や兵員などの輸送、壊れた戦車の修理などは、国際的には「兵たん」とよばれる活動のこと。攻撃のいちばんの目標とされるのは軍事の常識です。自衛隊が「兵たん」をしている場所が戦場になるのです。
米軍教科書は「戦闘と一体不可分」と明記。「武力の行使と一体ではない後方支援」などという政府のごまかしは世界では通用しません。海外での武力行使を禁じた憲法をふみにじる戦争法案は廃案しかありません。
憲法学者がそろってレッドカード
「集団的自衛権が許されるという点は憲法違反」(長谷部恭男早大教授)「(従来の解釈を)踏み越えてしまったので違憲」(笹田栄司早大教授)「海外に戦争に行くのは憲法9 条、とりわけ2項違反」(小林節慶大名誉教授)─衆院憲法審査会で、与党推薦の参考人もふくめ、安倍政権の戦争法案は「憲法違反」と表明しました。
安倍政権は、これまでの政府の憲法解釈を180度変え、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、アメリカの戦争に参戦しようとしています。
問題は、米国の違法な戦争への態度
志位委員長が、「米国が先制攻撃の戦争をおこなった場合でも、集団的自衛権を発動するのか」と追及すると、首相は「違法な武力行使をした国を、日本が支援することはない」と一見"殊勝"な答弁をしました。
しかし、問題は、日本政府が、米国の違法な武力行使を「違法」と批判できるのか、ということにあります。
先制攻撃を国家戦略にするアメリカ
「必要なら一方的に、軍事力を行使する」(オバマ大統領)─アメリカはいっかんして、自国の利益のためには先制攻撃の戦争を辞さないという国家戦略をとっています。
実際、1960 年代から70 年代のベトナム戦争、2003 年のイラク戦争など、アメリカは、国連憲章と国際法をふみにじって、先制攻撃の戦争をくりかえしてきました。どちらの戦争も、戦争の口実がアメリカによるでっち上げだったことは、いまでは当事者自身が認めています。
米国の戦争に一度も反対したことがない日本
「戦後、アメリカの戦争に、日本政府として一度でも反対したことがあるのか」(志位)「反対したことない」(首相)「でっち上げの事実について、米国に一度でも説明をもとめたことがあるのか」(志位)「ない」(外相)─こんな異常なアメリカいいなりの政府は、主要国で日本だけです。
このような政府が、「違法な武力行使をした国を支援しない」といって、誰が信用できるでしょうか。米国に言われるがままに、違法な先制攻撃の戦争に参戦する─ここに集団的自衛権行使のいちばんの危険があります。
日本を「侵略国」の仲間入りさせる戦争法案は絶対に許せません。
ベトナム戦争「トンキン湾事件」1964 年、米艦が「公海上で攻撃された」と北ベトナムへの爆撃を開始(「トンキン湾事件」)。日本も「攻撃があった」と同調。しかし、「実際には(攻撃は)なかった」(マクナマラ元米国務長官)。 |
イラク戦争「大量破壊兵器」「イラクは大量破壊兵器を保有」と、国連決議もないまま戦争へ。小泉首相(当時)は「廃棄させるために武力行使はやむをえない」と支持。米英政府は、いまではこの情報の誤りを認めている。 |
戦争法案はさらに、形式上「停戦合意」がされているが、なお戦乱が続いている地域に自衛隊を派兵し、治安活動にとりくませ、任務遂行のための武器使用を認めるという、新しいしかけをつくろうとしています。
志位委員長が、「アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)のような活動に参加できるようになるのでは」とただすと、首相は参加を否定しませんでした。
2001年から13年間、アフガンで活動したISAFは、米軍主導の「対テロ」掃討作戦と渾然一体となり、3500人もの戦死者を出しています。ISAFの活動は、アフガンの治安維持部隊を支援するRS任務(「確固たる支援」任務)として、現在も引き継がれています。ここに、憲法9条をふみにじって、自衛隊を「殺し、殺される」戦闘に参加させる、もう一つの危険な道があります。