特集

『戦争か平和か――歴史の岐路と日本共産党』

推薦辞

日本は戦争より平和を選択するのが歴史の正しい流れだ


 今年は日韓両国にとって、終戦70周年とともに国交正常化50周年を迎える意義深い年である。無数の無辜の人命が失われ、経済的な損失も甚大だった第二次世界大戦だが、終戦後、1965年に国交正常化されるまで日韓両国の関係は事実上断絶した状態が持続した。

 現在、この地球上に暮らす70億の人類が追求する幸福、その大前提となるのは「戦争のない世界」だ。人類にとって平和は誰にも奪う権利のない最も尊い価値だ。それにもかかわらず現在の北東アジア情勢には依然として戦争の影がちらつく。戦争を追求する者達は平和を渇望する代わりに、自国や民族の利益の為に戦争を煽り、軍備を強化している。このような姿勢は、歴史の逆行の見本であると同時に、人間性を否定し、人類を滅亡に導く犯罪行為である。

 そうした中、8月15日の節目に合わせ建国大学校出版部から志位和夫日本共産党委員長の『戦争か平和か:戦後70年の東北アジア平和』が刊行されることの意味は、非常に大きい。志位委員長は本書で、日本の安倍晋三総理の右傾化と周辺国に対する侵略と戦争を合理化する姿勢を強く批判している。その上で志位委員長は、日本はこれ以上戦争を追求すべきではなく、周辺国と人類のために平和を追求すべきであることを丁寧に説いている。読者はこの本を通じ、過去の歴史から私達が学ぶべき価直は「平和」であり、それがいかに尊いものかということを切実に認識することだろう。

 日韓両国は過去、直接の当事者として侵略と戦争を経験した。日本は1858年の明治維新の後、1894年に朝鮮半島に出兵し日清戦争を展開した。そして戦争に勝利した日本は莫大な賠償金を得た。以後台湾を占領し、1905年には中国東北地域において日露戦争に勝利した。日本は戦争を通し国富を築いた。

 日本の指導者達はなぜ戦争を追求し続けたのだろうか。様々な要因が考えられるが、決定的だったのは、「戦争をすれば儲かる」という誤った信念と自国の利益追求を最優先する姿勢ではなかっただろうか。こうした経緯により20世紀は、全世界を巻き込む「戦争の世紀」となってしまった。

 侵略戦争に味をしめた日本の政治指導者達は1931年9月18日に満州事変を起こし、中国東北部に傀儡国家満州国を設立、1937年7月7日にはついに中国に対する全面戦に拡大した。それから1945年8月15日の終戦に至るまで、8年間にわたって中国に対する侵略戦争を繰り広げた。これは中国人2千万人が命を落とす大惨事をもたらした。それにもかかわらず戦争の結果と侵略について、日本政府は反省もせず、依然として自分たちの行為を合理化するのに汲々としている。

 本書の著者志位和夫委員長は、日本の政治指導者としては珍しく、平和の重要性を強調する人物である。彼は2006年、日本共産党の委員長として初めて韓国を訪問し、西大門刑務所を訪ねた。そこはかつて日本が朝鮮半島を植民地支配した時期に、数多くの韓国独立運動家達を監禁した歴史の現場だ。彼は西大門刑務所の追悼碑に献花し、自身の歴史認識は韓国のそれと同じだと説明した。彼の名前和夫には平和を願う意味が込められている。日本で彼は和ちゃんという愛称で呼ばれることもある志位委員長は、音楽を好み、趣味のレベルを超えたピアノの実力とクラシック音楽への深い造詣でも知られる。

 1965年に国交正常化してからの50年間、両国には様々な出来事があった。両国間には摩擦も多かったが全体として関係は発展してきたと評価できる。そのことは、毎年550万人に及ぶ両国国民の渡航と、毎週670便の航空便の往来にも現れている。

 日韓両国間の摩擦の根本には、朝鮮半島に対する侵略や戦争に起因する歴史問題、日本軍慰安婦問題、独島問題などに対する一貫した日本側の反歴史的態度がある。このところ一層目に付くようになった日本国内の右傾化に対する憂慮もこれに拍車をかけている。またその背景には、日本側の不満として、韓国が歴史問題に関しいき過ぎた要求を続けていること、韓国が経済発展してきたことに対する一種の競争意識が芽生えていることに加え、韓国が新たな強者として浮上してきた中国を重視していることを批判的に見ていることがあると分析できる。最近の中国の強大化により政治面・経済面において中国の重要性が日本を上回るようになった点、北朝鮮問題において中国の軍事的プレゼンスの上昇を考慮しなければならない点などを考えると、韓国にはさらに賢明な外交が求められるようになった。

 日韓間摩擦の根本的な問題は戦略的側面にある。日本は米国と共に朝鮮半島の南側・韓国を自分達の側に引き入れる、いわゆる「南方三角関係」戦略をひたすら追求してきた。他方、中国やロシアそして北朝鮮からなる「北方三角関係」とは対立的な軸を形成して来た。従って日本の立場からは、韓国が北方三角関係と近づくことが、即ち韓国の休戦線が大韓海峡(対馬海峡)に置き換わるのではという懸念に結びついていることを忘れてはいけない。それゆえ、朝鮮半島を覆うように位置する日本には、対決より平和追求の論理のほうが、はるかにコストが少なくてすむということを忘れないでもらいたい。

 このような情勢の下で志位和夫委員長の『戦争か平和か:戦後70年東北アジア平和』が出版されるのは、日韓摩擦の本質を理解し今後の両国の健全な未来を予測するのに非常に重要な意味を持つと言える。日本が戦争より平和を追求する戦略を活かしていくことを期待する。

 建国大KU中国研究院は本書の出版に合わせ、来る10月に志位委員長を韓国に招請し、終戦70周年と国交正常化50周年を記念した東北アジアの平和に関する特別講義をお願いしている。志位委員長の著書出版を心からお祝い申し上げるとともに、出版と特別講義の実現に尽力下さった宋総長にも感謝申し上げたい。再度この本の出版が今後の日韓関係の新しい50年の発展と協力に寄与することを期待しながら、推薦の辞としたい。

2015年7月

建国大 KU中国研究院院長

韓仁熙

 (c)日本共産党中央委員会