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日本共産党

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赤旗

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41 公務員制度

住民・国民の目線で働く民主的な公務員制度の実現を目指します

2019年6月

 憲法第15条は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定しています。これは、戦前の公務員が「天皇の官吏」と位置づけられていたことが、軍国主義の暴走の一因となったことへの反省によるものです。ところが、歴代自民党政権のもとで、キャリアと呼ばれる特権官僚層が復活し、政権政党との癒着構造を形成してきました。さらに安倍政権は、一連の国家公務員制度改悪によって、「政権に奉仕する官僚組織」につくりかえてきました。

 特権官僚層を生みだすキャリアシステムにメスを入れ、政権中枢による幹部人事介入制度を廃止し、公務員が「全体の奉仕者」として、国民と住民の目線にたって働く、公正中立の民主的公務員制度に改革することを求めます。

内閣人事局を廃止し、政権による恣意的人事をやめさせます

 安倍内閣は、「国家、国益に奉仕する国家公務員」(2013年4月)をかかげ、「政権の方向性を常に念頭に置いて取り組む」よう求め、2014年の国家公務員法改悪によって、内閣官房に内閣人事局を新たに設け、「幹部職員人事の一元管理」の仕組みをつくりました。

 内閣人事局の初代局長には総理の側近の政治家である官房副長官を任命し、官邸による政治主導の幹部職員人事を行ってきました。

 幹部職員の任用は、内閣総理大臣と官房長官、各大臣による「任免協議」で最終的に決定します。任免協議における判断基準は、個々の人事案ごとの「官職の適性」と「採用昇任等基本方針」だと政府は説明しています。その「採用昇任等基本方針」には「縦割り行政の弊害排除」と書かれています。この点について、「岩盤のような規制がいつまでも残っているのは、省庁ごとの縦割りがあるからだ」(内閣人事局設置当時の担当大臣)と発言し、菅義偉官房長官も「政権が掲げる改革政策に協力する公務員を登用するのは当然だ」と答弁しています。(2018.3.30衆院内閣委)

 内閣人事局による幹部職員人事の一元管理は、官邸による恣意的な介入を可能とし、政権が掲げる規制緩和を推進するための官僚機構、“政権に奉仕する公務員“への「改革」だといわざるを得ません。

 内閣人事局は、憲法15条が規定する行政の中立・公正を歪めるものであり、ただちに廃止します。

国家公務員の定員を削減する「定員合理化計画」を中止します

 政府は、「官から民へ」「国から地方へ」を掲げ、国家公務員の総人件費抑制方針の下で「定員合理化計画」によって5年間で10%減(毎年2%減)の定員削減を推し進めています。

 わが国の国家公務員数は、2001年の中央省庁再編時から3分の1に減少しています。政府公表の「人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較」では、フランス89.5人、イギリス69.2人、アメリカ64.1人、ドイツ59.7人に対して、日本は36.7人と最も少ない水準です。

 非正規職員の正職員化を含め、国民生活の安全・安心のための必要な人員を確保することは急務です。

 この間の国家公務員の定員削減によって、国、地方の様々な公務部門で必要な正規職員が配置できなくなり、国民生活の向上や安全などの職務遂行に支障が生じています。震災被災地の救援・復興にあたって、避難所の生活環境等の改善について内閣府通達がだされても、通達を受けとめ実行する「公務の力」が不足していることが指摘されています。

 人事院も、若年層職員の減少により技能等が世代間で継承されないなど「業務遂行上の重大な支障」が生じていると指摘し、その要因が「政府の総人件費抑制方針の下、継続的な定員削減や新規採用抑制の取り組みが進められてきた影響」だと答弁しています。(2018.11.16衆院内閣委)

 国家公務員が公務・公共サービスを国民に提供していく役割を果たすためには、「定員合理化計画」は廃止するべきです。定員管理の柔軟な運用で必要な人員を確保する仕組みに改めます。

労働基本権を回復し、公務員の労働条件の向上をはかります

 安倍内閣は、公務員給与制度の「総合的見直し」と称して、地方部の手当を引下げて、都市部の地域手当などに配分する制度改悪をおこない、地域間給与格差の拡大をおしすすめました。地方においては、公務員給与に準拠した賃金を支給している事業所等が多いことから、「官民を通じて地域間格差が拡大することになりかねない」(全国知事会)ものであり、地方経済への深刻な打撃となります。

 公務員の賃下げは、公務員の生活を破壊するだけでなく、民間の賃下げと相まって、日本の労働条件全体を引き下げる一因ともなってきました。

 給与を引き下げ、労働条件を引き下げる「見直し」が、労働基本権制約の代償機関とされる人事院の勧告としてなされてきたことも重大です。ILOは、くりかえし日本の公務労働者の労働基本権回復の勧告を行っています。

 公務員の労働基本権を回復し、労働条件の向上をはかる労働政策への転換を求めます。

「天下り」の禁止、「天上り」のような官民癒着の規制強化を図ります

 2007年、第一次安倍内閣は、民間企業への天下りを原則禁止していた国家公務員法を改悪し、「あっせんによる天下り」でなければ、自由に民間企業に天下りすることを可能としました。

天下りを禁止し、厳格に実行する法改正が必要です

 この天下り自由化のもとで、2011年には、経産省・資源エネルギー庁長官が堂々と東京電力顧問に天下ったのです。東日本大震災での原発事故をうけた国民世論の厳しい批判によって顧問は辞職に追い込まれ、経済産業省は、幹部官僚の電力会社への天下り自粛を表明しましたが、その後も、原発輸出を狙う原発メーカーに元経産事務次官が天下っています。

 2011年に明らかになった国土交通省の組織ぐるみの天下りあっせんでは、同一ポストに何代も続けて天下りする「固定ポスト」や、複数の天下り先を渡り歩く「わたり」、さらに二つがいっせいに行われる「玉突き人事」という天下り構造が明らかになりました。

 2017年にも文部科学省で、抜け穴を使ったOBを介した組織的な天下りあっせんが発覚しました。

 天下り自由化の際に設置された「再就職等監視委員会」は、これらの天下りに対する監視の機能を果たしているとは、到底いえません。

 天下りを禁止し、厳格に実行する法改正が必要です。

 規制する再就職先は民間企業だけでなく公益法人・特殊法人に拡大し、離職後2年間は離職前5年間に在職していた国の機関と密接な関係にある営利企業などの職に就くことを禁止する「事前規制」を導入するなど、抜本強化します。さらに、OBを介した再就職あっせん行為も禁止します。

 同時に、定年まで働ける人事制度に改めます。

「天上がり」による官民癒着を防止する法規制が必要です

 第二次安倍政権以降、大企業などの民間企業出身者が、非常勤の国家公務員として内閣官房で勤務する事例が増加しています。

 例えば、医療分野の研究開発を政府一体で推進する「健康・医療戦略」の事務局である健康・医療戦略室では、52人中26人が塩野義製薬、第一三共、大日本住友製薬、田辺三菱製薬、中外製薬、タニタ、日立製作所など医薬品・医療機器メーカーの出身です。全員が非常勤ながら課長補佐・係長クラスの役職に就いています(2019年1月現在)。この中の日立製作所は、医療機器分野を注力事業と位置付けており、「健康・医療戦略」に関連する予算から日本医療研究開発機構(AMED)を通じて6億6430万円の補助金を受けています。官民癒着の疑念は払しょくできません。

 官民人事交流法は、「公務の公正性」を担保するため、出身元企業における「業務の従事」「給与の補てん」を禁止しています。ところが、これら民間企業出身者の給与は、非常勤のため年収換算で230万円程度です。政府は、出身元企業での勤務実態や給与補填は「把握していない」といいながら「雇用継続」があることを認めています。

 出身企業のヒモつきで非常勤職員として雇用されていることは重大です。

 特に多くの民間企業出身の非常勤職員がいる内閣官房は、政府の重点政策の企画・立案・総合調整を行っています。政府の重点政策の立案に、民間企業出身者が直接、深く関与することで、大企業・財界の利益を優先する仕組みがつくられているのです。

 国民全体の奉仕者としての公務の性格がゆがめ、財界奉仕の政治を推進する官民癒着を防止するため、「天上がり」を規制する法改正を求めます。

縮小廃止ありきの「改革」でなく、公共性・自主性を生かす独立行政法人改革を

 独立行政法人制度は、2001年の中央省庁再編時に導入され、宇宙航空開発機構などの研究機関や国民生活センターなどの公共機関が独立行政法人とされ、運用されてきました。この制度は、行政における企画立案部門と実施部門を分離し、実施部門に運営裁量を与えることで、政策実施機能の強化をうたったものですが、実際は、多様な公共的事業や業務を一つの枠組みの中に押し込み、事業の縮小や廃止の手段とされてきました。

 各独立行政法人には、整理統合や一方的な人件費削減目標などが押しつけられ、その役割の発揮どころか、事業や業務の遂行に支障すら生じている法人もあります。

 ところが安倍政権は、事業、業務の廃止、縮小を進める独立行政法人通則法の改悪を強行しました。法律には、雇用の維持、権利義務の継承などを保障する規定すら設けられておらず、職員の士気を低下させ、雇用の安定を脅かすものとなっています。

 独立行政法人の役割の発揮を妨げている仕組みを改め、職員の雇用を保障するとともに、研究機関や行政に密着した事業などの独立行政法人制度になじまない法人は、行政自身の業務として制度の枠から除外するなど抜本的な改革が必要です。

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