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日本共産党

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赤旗

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7 性暴力被害者支援

女性に対する暴力の根絶へ、性暴力被害者支援法の成立と、刑法改正の実現を

2019年6月

 「#Me Too」「#With You」-セクシュアルハラスメントや性暴力への抗議が広がっています。

 レイプ事件無罪判決に異議を申し立てた「フラワーデモ」は、4月の東京から始まり、6月には9都市で開催。女性たちは、「今まで話せなかった」「被害を次の世代に続かせてはならない」と、次々と発言に立ちました。

 大学では、「ストップ!キャンパス性暴力」をかかげ、学内・就活での性暴力防止と「性的同意」を学び合う学生たちの運動が着実に進んでいます。

 2017年に110年ぶりに刑法性犯罪規定が改正されましたが、その内容は、国際水準からは程遠く「周回遅れ」のものでした。多くの被害は潜在化し、加害者は野放しにされています。

 この状況を根本から変える必要があります。

 日本共産党は、参院選重点政策において、「個人の尊厳とジェンダー平等」の実現、性暴力被害者支援の拡充と刑法の抜本改正を公約にかかげました。

 個人の尊厳とジェンダー平等のために――差別や分断をなくし、誰もが自分らしく生きられる社会へ

性暴力被害者支援法の制定とワンストップ支援センターの充実を

 内閣府「男女間における暴力に関する調査」(2017年度)で「無理やり性交等をされたことのある」女性は1807人の回答者の7.8%にのぼり、この被害実態を性暴力救援センター大阪(SACHICO)では、一年間に6-7万人と推計しています。

 多くの被害者は「恥ずかしい」「自分さえがまんすれば」などと、どこにも誰にも相談できず、警察にも病院にも支援センターにもつながることができずにいます。性暴力は、心身に長期に深刻なダメージを与え、被害を思い出し、異性に対する恐怖心を持つなど日常生活にも支障をきたします。

 被害者が早期に支援につながれることは、その後の被害回復、生活再建にきわめて重要です。社会全体に、「被害者は悪くない」「性暴力は加害者が悪い」のメッセージを打ち出し、全国どこでも1か所で十分な支援を受けられる体制を整備する必要があります。

 性暴力被害者が相談できるワンストップ支援センターは、2018年秋に各県1か所に設置され、全国54か所になっています。(日本弁護士連合会調べ2018年11月)

 しかし、急性期の被害者に医療的ケア(緊急避妊、感染症予防など)、証拠保全を行える病院拠点型センターや、24時間365日対応のセンターはそれぞれ10数か所にとどまっています。

 内閣府の交付金予算は2019年度2.1億円で、交付金要綱によると、拠点となる病院の整備に使える交付金は、多くても1か所30万円にすぎません。医療費等の交付金申請を行わない府県もあり、多くのセンターは、脆弱な財政基盤の下、医師の多忙と低賃金のスタッフ、ボランティアの熱意に支えられている現状です。

 各県に病院拠点型センターを最低1か所設置する必要があります。

 性暴力からの回復へ、被害者が速やかにつながることができるよう、国は抜本的に予算を拡充し、支援体制を強化すべきです。

 日本共産党は野党共同で、2018年6月、衆議院に「性暴力被害者支援法案」を提出しました。http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19605035.htm

 法案の成立に力を尽くし、センターの充実をはかっていきます。

 ※国連「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」(2009)は「女性20万人に1か所のレイプ・クライシスセンター」の設置を求めています。また、センターは「性暴力の被害者が、国の費用により、妊娠検査、緊急避妊、人工妊娠中絶、性感染症の治療、負傷の治療、被害後の予防およびカウンセリングを含む、包括的かつ総合的なサービス」と「被害者による警察への被害の申告の有無を条件とするものではない」ことがもとめられています。

「3年後見直し」の刑法改正で、国際水準の規定を実現しよう

 2017年の改正刑法では、強制性交等罪を非親告罪化し、強制性交等罪の被害者を女性以外に拡大する、監護者性交等罪などの新設、強制性交等罪の法定刑の下限を3年から5年に引き上げるなどの抜本改正が行われました。一方、関係団体等からの改正要求にもかかわらず、110年前の制定時のまま留め置かれ、今後の課題として残ったのは、▽強制性交等罪などの「暴行・脅迫要件」の撤廃 ▽いわゆる性交同意年齢(13歳) ▽強制性交等罪の公訴時効の撤廃又は停止 ▽配偶者間における強姦の処罰化 ▽刑法における性犯罪に関する条文の位置――などです。これら積み残しの課題は、性犯罪処罰規定が国際水準に到達するために改正が必要な事項です。

 関係者の強力な運動で、刑法の「3年後の見直し」(必要があると認めるときは所要の措置を講ずる)が附則に定められ、法務省は、性犯罪の施策実施状況をワーキンググループで調査してきました。

 2020年に向けて、ただちに法制審議会で検討を開始すべきです。

人間の尊厳を侵害する重大な犯罪として位置付けます

 国連女性の暴力に関する立法ハンドブック(2009)は、「性暴力は、身体の統合性と性的自己決定を侵害するものと定義すべきである」と勧告しています。強制性交等罪、性犯罪の保護法益は、人間の性的自由の保護にとどまらず、人間の尊厳、性的な人格権の保障です。

 しかし、刑法の条文の位置は制定時のまま、社会的法益の第22章「わいせつ物販売罪等の性風俗に対する罪」とともに規定されており、便宜的に、「強制わいせつ、強姦」は「個人的法益に対する罪」、「わいせつ物販売罪等」は「社会的法益に対する罪」と分けて考えているにすぎません。

 条文の位置を、「社会的法益に対する罪」から、「個人的法益に対する罪」へと明確にし、人間の尊厳を侵害する重大な犯罪と位置付けることが必要です。

「暴行・脅迫要件」の撤廃と同意要件を新設します

 内閣府調査によると、「無理やり性交等をされたことがある女性」は8割が顔見知りの相手からです。しかし、「顔見知り」からの加害は、より拒否や抵抗をしにくいと指摘されています。

 被害者の推計数(6-7万人)と比べ、警察での強制性交等罪の認知件数が1000件程度と少ないのは、ほとんどの被害者が警察に相談できないためですが、相談したとしても、加害者の暴行・脅迫が少ないと判断されれば、被害届は受理されません。暴行・脅迫が「相手方の抗拒を著しく困難にする程度」でなければ、強制性交等罪と認められないことが多いのです。

 しかし、仮に、暴行や脅迫がなくても、同意のない性交等は、被害者の心身と生活に深刻な打撃を与える、重大な性暴力です。

 「暴行・脅迫要件」が処罰化の障壁になっている現状を撤廃する改正が必要です。

 また、刑事司法の実務では、加害者が「被害者の同意があった」、「被害者が不同意ではないと思った」などと誤認していれば、安易に故意を阻却している問題が起きています。

 この対策として、少なくとも加害者が、被害者から同意を得たか否かを確認するための段階を踏んだことを構成要件とする、この事実について立証を求めるなど、要件の新設をもとめます。

諸外国の先進例を参考に

 イギリス性犯罪法(2003)では、レイプ罪の成立を「被害者が同意しなかったこと」「加害者は被害者が同意していると合理的に信じていないこと」と規定しています。

 スウェーデン刑法(2018)では、「自発的に参加していない者と性交をし、」「相手方が自発的に性的行為に参加しているか否かの認定にあたっては、言語、行動その他の方法によって、自発的関与が表現されたか否かに特別の考慮が払われなければならない」とし、さらに、過失レイプ罪では「自発的に参加していなかったことについての注意を著しく怠った場合」を規定しています。

 日本の刑法が長年参考にしてきたドイツ刑法も2016年改正で「暴行・脅迫要件」を撤廃し、「他者の認識可能な意思に反して性的行為を行った者」は強姦罪が成立します。

 欧州評議会のイスタンブール条約(女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンスの防止及びこれとの闘いに関する条約、2011年)は、性暴力を「同意に基づかない性的行為」と規定し、処罰化を求めています。

 こうした諸外国の先行事例を参考に、条約批准を視野に入れた法改正を行うようもとめます。

警察、検察、裁判で、被害者の尊厳を守ります

 ジャーナリスト・伊藤詩織さんの著書『BLACK BOX』では、被害者に対するとは思えない、警察の過酷な事情聴取の様子が描写されています。裁判では、事件とは関係のない、被害者の過去の性的な経験などプライバシーの暴露が行われています。これでは、加害者の処罰を望んでも、よほどの勇気がなければ訴え出ることはできません。

 性犯罪の捜査体制を強化し、事情聴取の専門的な訓練を受けた警察官、検察官の養成や、一連の刑事手続きにおいて被害者の尊厳を守ること、裁判の立証において、被害者の過去の性的な経験、傾向を用いてはならないとするレイプシールド法の確立をもとめます。

 性暴力被害の実態や、被害者への長期的な重大な影響は、精神医学、トラウマ研究の進展から明らかにされてきましたが、まだ司法関係者にも十分に理解されていません。

 被害者のカウンセリングを行っている日本フェミニストカウンセリング学会の聴き取り調査では、主に「顔見知り」からの長期化した被害の凄惨な実態を明らかにしています。まだまだ認識されていない深刻な被害実態を、司法関係者をはじめ、社会全体の認識に高め、性暴力を許さない社会の構築と性暴力の根絶につなげていきます。

不起訴処分、無罪判決の分析をもとめます

 警察で被害届が受理され、検察に送致されたとしても、不起訴処分が増加の一途です。

 起訴率は、1998年の72.3%をピークに低下を続け、2017年は未遂を含め30.5%は過去最低です。被害者が、明確かつ積極的に同意しておらず、むしろその反対の意思を有していたのに起訴に至らない事例が多いと指摘されています。

 検察当局は、不起訴理由(嫌疑不十分)の要因は何か―暴行脅迫の程度か、加害者が親族、知り合い(上司、同僚、教師等々)である等々―を徹底分析して説明すべきです。またその分析を専門家が検証できるよう、情報開示すべきです。

 上川陽子法相(当時)と法務省刑事局長(当時)は2018年5月、「無罪となった事案、不起訴処分となった事案も、法務省ワーキンググループで調査する必要がある」と国会で答弁しましたが、実施していません。ワーキンググループ、もしくは法制審議会での開示を求めます。

加害者の更生プログラムを強化します

 性暴力の加害者への更生プログラムの実施と強化に取り組みます。

 刑事施設内での処遇をはじめ、施設外の民間の取り組みを支援します。

  

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