2014年 総選挙各分野政策
30、消費者
「消費者の権利」を実現するために、消費者行政を抜本的に強化します
2014年11月
食の安全、製品事故、不当契約や詐欺、偽装、個人情報の漏洩など、消費者の安心・安全を脅かす事件が後を絶ちません。消費者基本法は「消費者の権利」(「基本的な需要が満たされる権利」「健全な生活環境が確保される権利」「安全が確保される権利」「選択の機会が保障される権利」「必要な情報が提供される権利」「消費者教育の機会が提供される権利」「消費者の意見が消費者政策に生かされる権利」「被害者が適切かつ迅速に救済される権利」)を明記し、国に「消費者政策を推進する責務」を課しています。
しかし、「消費者の権利」は守られていません。国民生活センターへの消費者相談は増加に転じ、とりわけ「危害・被害情報」は2万件を超え、過去最多となっています(2013年度)。
おおもとには、「市場への参入規制を取り払い、誰でも自由に市場に参入できるようにして、自由に競争させれば消費者に不利益を働く事業者は消費者の支持を得られないため、市場から撤退をせざるをえなくなり、結果、優良な事業者だけが市場に残り、消費者の利益は増進する」として進められてきた「規制緩和」路線があります。このもとで、「事前規制から事後チェック」の名で、国民の安全にかかわる規制までもが緩和されてきました。そもそも、「事後チェック」では、国民の生命や安全を守ることにはなりません。それさえも不十分なまま推移しています。さらに、「消費者重視」といいながら、「産業優先」の省庁からの骨抜きも繰り返されています。
アベノミクスを標榜する安倍政権は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすとしてきました。そのために、消費者の安全・安心のための必要な規制さえ、「効率的な手法」で見直すとし、「一般医薬品のインターネット販売」を強行しました。さらに、「一般健康食品の機能性表示の容認」「医療関連業務における労働者派遣の拡大」「医薬品の承認期間の短縮」なども検討されています。また、TPP(環太平洋連携協定)参加のために、BSE輸入規制を緩和し、アメリカの保険会社の営業利益を配慮してかんぽ生命の新規商品の販売中止を行ってきました。TPP交渉の妥結までに、日米二国間で、保険、投資、知的財産、企画・基準、政府調達、競争政策、衛生食物検疫などの非関税措置についても、まとめるとしています。安倍政権は、企業の「稼ぐ力」のために、消費者の安心・安全さえもないがしろにしようとしています。
いま求められているのは、こうした路線を転換して、「消費者の権利」や利益をまもる立場に立って実効ある措置を講じることです。
日本共産党は、企業や産業界から一円の献金をうけていません。アメリカにも堂々とものをいう政党です。消費者の安全・安心よりも、大企業やアメリカ業界のもうけを優先する政治を転換し、「消費者の権利」を実現します。
1、食品の安全をないがしろにするTPP参加ストップ。食品安全行政の抜本的強化をはかります
●TPPに参加すれば、日本の農水産業に壊滅的打撃を与え、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩します。食の安全のための規制も「非関税障壁」とされ、撤廃・削減されてしまいます。米国政府は、残留農薬や食品添加物などの規制緩和を要求し、輸入牛肉の規制見直し問題では、日本政府は2013年2月には緩和し、さらにゆるめようとしています。
食の安全をはじめ、暮らしと経済のあらゆる分野に「アメリカ型ルール」を押し付けるTPPに断固反対します。食料主権、経済主権を尊重した貿易ルールの確立をすすめます。
●福島原発事故を受けて、食品の放射能汚染にたいする不安が高まっています。行政として食品の安全検査を徹底しておこなうこと、生産者の検査への行政支援を強化すること、こうした情報の徹底開示を進めます。
「アベノミクス」による急激な円高で、輸入物価が高騰し、公共料金や物価の値上げが相次いでいます。また、福島原発事故との関連で、電気料金のあり方が大問題になりました。電気料金、ガス料金、水道料金、鉄道料金、電話料金など公共料金については、その根拠となる情報の公開、透明性を担保する必要があります。
●輸入食品の検査体制について、人員の抜本的増員をはかるなど強化し、子ども・妊婦・病弱者への影響を最大限配慮した安全基準の設定、消費者へのすばやくてわかりやすい情報の提供など、食品衛生法を強化、改定します。食品安全委員会は「国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識の下に、食品の安全性の確保」をはかるために設置されました。しかし、BSE問題をはじめ政治的な圧力にたいして、独立性・中立性を確保しているとはいえません。現行の食品安全行政を、独立性・中立性のあるものとして国民の立場に立って機能させ、実効あるものとします。
●食品の表示は、消費者が商品やサービスを正確に知るための権利であり、とりわけ、食品の安全を求める権利、食品の内容を正確に知る権利、食品選択の自由の権利などを実現していく必要があります。この間、有名ホテルをはじめとした食材偽装が大問題になりました。これを契機に、景品表示法による課徴金導入の要望が消費者団体からも出されています。「偽装・不当な表示はダメという当たり前の制度」を早く実現することが必要です。課徴金の導入はもちろんのこと、内部告発者を保護する実効ある措置、立ち入り検査の強化が必要になっています。
2、消費者の生命・身体の安全を確保するための施策を強化します
●消費者被害や事故情報は、国民共有の財産です。情報収集の強化とともに、情報開示を一段と進めます。
●カネボウ化粧品やちゃのしずく石鹸をはじめ、欠陥製品による消費者被害は後を絶ちません。被害者の救済は不十分です。製造物責任法(PL法)を抜本的に改正し、企業責任を追及しやすくし、公正で迅速な被害者救済へと道を開く必要があります。欠陥や因果関係の推定規定の導入、企業側による立証責任、リコール隠しをするような悪質企業には懲罰的賠償を命じる、内部告発者の保護、消費者団体訴権の導入などの改善をおこないます。
●日常生活用品や遊具・建造物などの安全確保に努めます。日常の生活用品での死傷事故、エレベーター、エスカレーター、プール、ジェットコースターなどの設備による事故や建物の耐震強度の偽装などが相次いでいます。消費者庁の消費者安全調査委員会に事故情報が一元的に収集されるようになりましたが、原因調査の件数が少なすぎ、報告も遅いと批判されています。事故情報のさらなる収集、分析、公開のためには、体制の充実が必要です。事故分析の上に立って、行政と企業の責任による安全基準のいっそうの厳格化をはかります。
3、悪徳商法や悪質な取引から消費者をまもります
●特定商取引法によるクーリングオフ期間のさらなる延長やネット上の広告の改善など、特定商取引法をさらに消費者が使い勝手のよいものに改めます。悪質商法には「過去の消費者被害者」「サラ金利用者」「高齢者」などの名簿が使われて2次被害も増えています。この背景に、悪質な「名簿屋」の存在も指摘されています。これらは詐欺幇助で立件できるものであり、取り締まりを強化すべきです。また、現行の個人情報保護法が5000人以上の名簿を扱う事業所しか規制対象としていないことも問題であり、規制を強化すべきです。
●事業者の情報提供義務の明記、「適合性の原則」(消費者の知識・経験・財産の状況を事業者が配慮する)の導入、契約取り消し期間の延期、誤認して結んだ契約の取り消し範囲の拡大など、消費者契約法を改正します。
●改正貸金業法ではグレーゾーン金利は廃止されましたが、法定金利そのものが高すぎます。利用者の7割が20代~30代であり、非正規労働者がふえるなかで、「生活費のため」に借りるケースが多くなっています。法定金利の引き下げが必要です。また、多重債務者にたいする相談体制の強化、生活福祉資金の改善などで生活の建て直しが図れるようにします。
●クレジット会社による加盟店の厳密な審査、クレジット会社と加盟店との連帯責任の強化など、割賦販売法の運用をすすめます。
4、消費者、消費者団体への支援を一段とつよめます
●消費者団体などの粘り強い運動で、不当な事業者利得を吐き出させるための「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度」が創設されました。訴訟の対象、事案、賠償水準などはまだまだ限定的であり、消費者のニーズにあったように早期の改善が必要です。消費者団体訴訟制度について、消費者団体が使いやすい制度に改善します。適格消費者団体に、行政が入手した情報の提供や財政的援助を強化します。
●消費者にもっとも身近な地方の消費相談体制を強化する必要があります。消費生活相談員は年々減少しており、660自治体では相談員そのものがいません。また、地方自治体の消費者行政予算もほとんど増えていません。さらに、相談員の75.8%が非正規公務員となっています。国として、相談員の待遇を改善し、地方の消費者行政予算を抜本的に拡充するための措置を講じます。
●NPOの自主的な活動は、国民生活を豊かにする上でも、社会全体の発展のためにも重要な役割をもっています。NPOの自主性を尊重し、行政との対等の関係を保ちつつ、活動資金の助成や活動に必要な施設・設備の提供、寄付が受けやすくする制度への改善など、支援を強化します(分野別政策「NPO・NGO」をご参照ください)。
●スマートホン、携帯電話やインターネットを使った消費者被害が広がっています。学校での体系的な消費者教育をすすめます。公的機関による消費者教育の充実はもちろん、社会教育活動として、地域の住民や団体を対象にした、自主的な消費者教育運動への支援を強化します。