2014年 総選挙各分野政策
24、高齢者
高齢者が安心してくらせる社会をつくります
2014年11月
65歳以上の高齢者は3000万人にのぼっています。戦前、戦中、戦後の苦難の時代を、身を粉にして働きつづけ、家族と社会のためにつくしてきた人たちで す。高齢者は「多年にわたり、社会の進展に寄与してきた者」「豊富な知識と経験を有する者」として「敬愛されるとともに、生きがいをもてる健全な安らかな 生活を保障される」と、老人福祉法には明記されています。高齢者が安心して暮らせる社会をつくることは政治の重要な責任です。
ところが、 歴代自民党政権のもと、年金・医療・福祉など社会保障制度の改悪が繰り返され、高齢者の暮らしと権利が脅かされています。とくに、安倍内閣・自公政権は、 “社会保障が高齢者優遇となっている”“高齢者の年金や医療の費用を負担するために若年世代が苦しんでいる”など「世代間分断」をあおる宣伝を繰り返し、 年金支給額の連続削減、70~74歳の医療費の窓口負担の1割から2割への引き上げなどの改悪を強行してきました。さらに、安倍内閣は、要支援者からの介 護サービス取り上げ、特養入所の「要介護3」以上への限定、介護保険への2割負担の導入、入院患者の「追い出し」強化などを内容とする「医療・介護総合 法」の成立を強行し、2015年度から実施していく予定です。「マクロ経済スライド」発動による年金支給の削減、後期高齢者医療保険料の大幅値上げ、窓口 負担の引き上げなど、さらなる社会保障の改悪・削減も狙われています。
日本の高齢者世帯は、年収200万円以下の世帯が37・8%、年収 100万円未満の世帯も12・8%にのぼります(2013年「国民生活基礎調査」)。国民年金だけを受給している人の年金の平均額は月4・9万円、女性の 厚生年金の平均受給額は月11万円です。生活保護受給者の40%以上が高齢者であり、自殺者のなかに高齢者が占める割合も日本は世界のトップクラスです。 「老後破産」という言葉がメディアの話題となることにも示されるように、“優遇”どころか、高齢者の貧困・生活破壊が社会の大問題となっているのです。
日本共産党は、高齢者の尊厳を傷つけ、くらしと健康を破壊する悪政と対決し、高齢者が大切にされ、安心して老後をおくれる社会の実現をめざして全力をあげます。
後期高齢者医療制度の廃止、安心してかかれる医療制度へ……後 期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで、負担増と差別を押しつける悪法です。2008年の制度導入後、す でに3回にわたる保険料値上げが強行されましたが、安倍政権は、制度への批判をかわすために導入した保険料の「特例軽減」を撤廃し、今の保険料を2倍から 3倍、ケースによっては5倍から10倍に引き上げていく改悪を、「選挙が終わったら」実行に移す構えです。際限のない保険料の値上げと差別医療の推進とい うこの制度の害悪が、高齢者・国民に本格的に襲いかかろうとしています。日本共産党は、後期高齢者医療制度をすみやかに撤廃して、元の老人保健制度に戻し ます。 減らされ続けた高齢者医療への国庫負担を復元し、保険料や窓口負担の軽減をすすめます。
医療費の重すぎる窓口負担に、多くの高齢者が悲鳴をあげています。ところが、安倍政権は、70~74歳の窓口負担を2割に引き上げる改悪を今年4月から実行に移しました。
欧州諸国など先進国では、窓口負担は無料または少額の定額制です。日本でも、沢内村で始まった老人医療費無料化制度が全国に広がり、1973年から1983年まで国の制度として実現した歴史をもっています。
日本共産党は、70~74歳の窓口負担の2割への引き上げの中止を求めます。2012年2月に発表した「経済提言」の「社会保障再生計画」にもとづき、まず、「現役並み所得者」も含めたすべての高齢者の窓口負担を1割とし、“窓口負担ゼロ”の医療制度へ前進していきます。
国の責任で国保料(税)を1人当たり年1万円、緊急に引き下げます。削減された国庫負担を計画的に増額し、だれもが払える国保料(税)に改革します。
療養病床の削減計画をストップさせ、安心して入院治療・療養ができるよう体制をととのえます。
年金の充実を……公 的年金は老後の暮らしを支える柱です。ところが、毎年のように繰り返される支給額の削減のために年金制度への不信と不安が高まっています。安倍内閣が強行 した「特例水準の解消」の名による2度にわたる年金削減と、消費税増税とアベノミクスによる物価上昇で、現役世代の「実質賃金」と同じく物価上昇を加味し た「実質年金」はこの2年間に6%も目減りしています。安倍政権は、2015年度に「マクロ経済スライド」の発動をさせ、年金を削減・目減りさせる予定で す。また、物価下落時にも「マクロ経済スライド」を発動させる新たな仕組みの導入や、支給開始年齢の先延ばしなど、さらなる年金支給削減も検討していま す。
日本共産党は、年金支給削減の仕組みを撤廃して、“減らない年金、頼れる年金”を実現します。受給者全員に基礎年金満額の2分の1の公 費負担を行い、低年金の底上げをはかります。これによって年金額が月4万円だった人は5・3万円に増えます。次の段階では、月5万円の最低保障年金に保険 料に応じた額を上乗せする制度をスタートさせます。これが実現すれば、現在、国民年金の満額を受け取っている人は、年金が6・6万円から8・3万円に底上 げされることになります。
「消えた年金」「消された年金」問題に対する国の責任を放棄することを許さず、「分限免職」した旧社会保険庁職員の再雇用をはじめ、問題解決の体制をとり、解決に責任を持つことを求めます。
介護保険制度の拡充……老老介護に疲れ果てた高齢者夫婦の無理心中や、要介護の高齢者を抱えた一家全員が遺体で発見される「孤立死」など、痛ましい事件が後を絶ちません。重い保険料・利用料負担、深刻な介護施設の不足など、“保険あって介護なし”の事態を解決することは急務です。
日本共産党国会議員団の介護保険実態調査でも、「重い負担を理由にサービスを抑制している人がいる」との回答が7割を超え、「国庫負担の増額を」の声がトップで7割近くにのぼりました(2010年6月、介護事業所からの回答)。
「医療・介護総合法」による介護保険の大改悪を中止させ、特養ホームの抜本的増設による「介護難民」の解消、低所得者に対する利用料・保険料の減免制度の 創設、介護・福祉職員の賃上げと労働条件の改善など、必要なサービスが受けられる介護制度への見直しをすすめます。利用料・保険料などの国民負担増を抑え ながら、介護制度の抜本的改善をはかるために、介護保険にたいする国庫負担割合をただちに10%引き上げ、公費負担割合を60%にします。
高齢者向け住宅の増設……高 齢者で、現在、居住している住宅で困っている人は4割を超えます。特養ホーム待機者は50万人を超えており、ケアハウス、グループホームなどの入居希望者 も増えています。政府は、「高齢者住まい法」を改定し、「サービス付き高齢者向け住宅」の建設を推進していますが、その利用者は、家賃・食費・サービス 費・介護保険の自己負担分をあわせて月15~20万円程度を負担できる人に限られます。低所得・低年金の人も含め、高齢者に住まいを確保する取り組みが必 要です。
低所得で体調に不安があり、様々な理由から同居家族がいない高齢者を低廉な費用で住まわせる「軽費老人ホーム」の増設、低所得者や 高齢者が住み慣れた町で暮らせるよう、国と自治体の責任で住宅整備や家賃補助を行う「地域優良賃貸住宅」の活用など、住宅福祉を抜本的に拡充します。
介護保険の住宅改修の改善をはかるとともに、自治体による住宅改造助成制度の新設・拡充をすすめます。サービス付き高齢者住宅については、自己負担への補 助制度や入居者のくらしと権利をまもる仕組みづくりをすすめます。
公営住宅やUR(都市再生機構)の賃貸住宅の建設をふやし、高齢者むけ家賃減免制度の拡充をはかります。民間賃貸住宅に暮らす高齢者にたいする自治体の家賃補助制度の普及をすすめます。
就業・雇用の保障……政 府は、年金制度改変の論議とも呼応しながら高齢者の就労促進(シルバーの活用)を叫んでいますが、意欲と能力があっても、真っ先にリストラの対象となるの が高齢者です。ハローワークに通っても、希望どおりの仕事につけるのは皆無に近く、中高年齢者の再雇用はきわめて厳しいのが実情です。
2012年、高年齢者雇用安定法の改定で、60歳定年後も希望者全員を雇用することが原則化されましたが、そのなかで、使用者が労働者を選別できるように する“抜け穴”がつくられ、病気や障害のある人への差別が生まれかねないことに懸念が広がっています。継続雇用をする企業が“グループ企業”に広げられた ことで、関連企業への派遣・出向による賃金の大幅ダウン、労働者の心身の負担、親企業の雇用責任回避につながる危険性も指摘されています。雇用延長によっ て労働者の賃金・待遇が悪化する事態をなくすため、企業への指導・監督の強化、“抜け穴”をふさぐための法令改正を求めます。年齢による賃金差別や年齢を 理由にした解雇をやめさせるため、アメリカやEUなどで実施されているような、「年齢による差別を禁止する法律」(仮称)の制定をめざします。
地域の実情におうじて高齢者の就労・社会参加の場をひろげることも大切な課題です。シルバー人材センターについて、賃金や労働条件、災害補償など改善をはかります。また高齢者の就労の場の確保のために活動している団体にたいして、行政が支援をおこなうようにすべきです。
安心・安全のネットワークづくり……ひ とり暮らしの高齢者(65歳以上)は年々増えつづけ479万人にのぼります(2010年)。だれにもみとられず亡くなるという痛ましい孤独死は、民間団体 の推計で年間2万人を超えるとされています。その背景には、医療制度の連続改悪、生活保護の“門前払い”や受給者バッシング、介護保険導入を契機とした自 治体の高齢者福祉の大幅後退があります。行政が責任をもって地域住民と協力しあい、高齢者を地域でささえる、安心のネットワークをつくることが急務です。
日本社会の病理化が進行し、虐待被害や貧困・孤立など処遇困難な高齢者が急増する今こそ、自治体の福祉・保健・公衆衛生の再構築が必要です。自治体と地域包 括支援センターが地域の高齢者の実態を把握し、介護保険や民間事業所では対応できない人を自治体が直接救済する体制を強化していきます。そのために、自治 体の福祉職員の増員、地域包括支援センターの体制強化、養護老人ホームへの財政支援などをすすめます。
NPO、ボランティア団体、地域自 治会、社会福祉協議会などに、地域で高齢者の暮らしをささえる多様な主体に保険給付の“肩代わり”を押しつける改悪を中止し、本来の役割の発揮を応援し て、高齢者への配食サービス、見守り活動、緊急通報システムなどの普及・拡充をはかります。高齢者が積極的に外出し、住民同士で会食や交流などができるミ ニ集会所をきめこまかに整備します。
600万人に達するといわれる「買い物弱者」(買い物難民)をなくすため、移動販売車への補助、商店街・小売店への移動手段の確保などを行います。