2014年 総選挙各分野政策
50、カジノ合法化問題
百害あって一利なし、カジノ合法化に反対します
2014年11月
自民党、日本維新の会(当時)、生活の党などは2012年12月、賭博の合法化につながるカジノ法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)を議員立法として国会に提出しました。法案は2014年通常国会で初めて審議されたものの、継続審議となりました。衆院の解散(2014年11月)によって廃案になったものの、カジノ合法化をめざす議員連盟には日本共産党と社民党をのぞくすべての与野党の議員208人が名前を連ねている〝翼賛法案〟であり、一気に可決・成立の流れがつくられる危険があります。
一方、法案を提出してからほぼ1年が経過しても成立させることができなかったのは、百害あって一利もない賭博解禁=カジノ合法化に反対する広範な国民の世論と運動があるからです。
<536万人と推定される病的賭博患者>
日本は世界一のギャンブル大国であり、同時に、病的賭博(ギャンブル依存症患者)も世界最悪です。
日本では、刑法で賭博が禁止されているにもかかわらず、特例的な措置として6種類の公営賭博も認められています。競馬(中央、地方)、競輪、競艇、オートレース、宝くじ、そして「toto」(サッカーくじ)です。
しかし、日本での最大の賭博は、「遊技」(ゲーム)として合法化されているパチンコ・パチスロです。現在、日本には都市といわず田舎といわず、全国津々浦々にパチンコ店が存在します。その数は、11,893件にものぼります(2013年末在)。そこに設置されているパチンコ・パチスロの台数は約460万台。これらは、外国では事実上カジノ施設でしか目にふれることのできない〝賭博機〟そのものです。
厚生労働省の研究班が2014年8月に発表した調査報告によれば、日本人男性の8.7%、女性の1.8%が病的賭博(ギャンブル依存症)の患者にあたるとされ、その合計は536万人と推計されることが明らかにされました。同様の海外の調査では、米国(02年)1.58%▽香港(01年)1.8%、韓国(06年)0.8%――ですから、日本の「病的賭博」患者の比率は際立って高くなっています。
<「カジノ合法化」は病的賭博患者をさらに広げるだけ>
日本でギャンブル中毒者の数が突出して多い最大の原因が、パチンコ(パチスロ)にあります。6種類の公営賭博の売り上げの合計は約6兆円ですが、これにたいしてパチンコ(パチスロ)の売り上げは、その3倍以上の約19兆円に達します。
しかも、病的賭博患者をめぐっては、個々人やその周りの親しい人びとの問題だけではないということです。パチンコ駐車場にとめた車内への乳幼児の放置の事件、賭博が原因となる事件・事故、トラブルなどは毎年、毎月のように発生しています。
こうしたときに、カジノを合法化するなどというのは、とんでもない愚挙です。カジノ推進派のなかからさえ、「カジノを合法化すれば、かならずギャンブル中毒患者は増える」と指摘されています。カジノ解禁は、世界最悪の病的賭博患者の数字を、さらに悪化させる結果にしかなりません。
カジノを合法化している韓国では、韓国人が入場できるカジノ(江原ランド)の周辺で自己破産者と自殺者が急増し、周辺に質屋が立ち並び、200㌔離れている首都ソウルもふくめて病的賭博患者が増えています。
また、2010年にカジノが運営されるようになったシンガポールでは、自国民に特別の入場料金(1日約9,000円、又は年間約18万円)を課していますが、この4年間でギャンブル中毒とみられる本人や家族の相談件数が増え、自己破産者も急増する一方、闇金融や質屋が急激に増えていることが指摘されています。
<「経済成長」を口実に推進するが、その保障はどこにもない>
安倍首相は、2014年5月にシンガポールのカジノを視察した際、「カジノは日本の成長戦略の目玉になる」などとのべました。これは、「経済成長」のためであれば、刑法で禁じられている賭博も解禁しようという、最悪の「経済成長至上主義」ともいうべき発想です。
そもそも、「賭博」で経済成長をはかろうと考えること自体、出発点からして発想がゆがんでいます。しかも、カジノを合法化し開設したからといって、経済が潤うわけではありません。
たとえば、大阪府・市は、同市夢洲にカジノを含む統合リゾート施設を設置したいとの意向を明らかにしていますが、大阪商業大学によるとカジノ施設全体の消費額は、約415億円になるとはじき出しています。
静岡大学の鳥畑与一教授によると、仮にカジノ415億円の消費が生まれても、それは逆に周辺の地域から同額の購買力が奪われてマイナスの波及効果が発生することになると警告しています。
また、先に紹介したように、韓国のカジノ施設「江原ランド」の周辺で、ギャンブル中毒の患者が増えるにしたがって、町の空気が悪くなり、この十数年で2万5,000人の人口が、1万人も減少してしまうという、地域共同体としての存続さえ危ぶまれるような事態も指摘されています。
こうしたことになれば「カジノ栄えて、地域経済が廃れる」ことが現実にさえなりかねません。
<カジノ産業は世界的には斜陽産業>
しかも、カジノ産業は、世界的には「斜陽産業」だとの指摘も出ています。現に、ラスベガスに次いで、米国有数のカジノ都市であるニュージャージー州のアトランティックシティでは、2014年に入って、2年前に開業したばかりのカジノホテルもふくめ、すでに3件のカジノが閉鎖され、さらに2件のカジノもふくめ、今年だけで合計5件のカジノの閉鎖が報告されています。
日本では、東京オリンピックの2020年までに2、3件のカジノを開業する計画ですが、台湾や韓国(仁川、済州)などでも統合型リゾートによるカジノ開設の方針が伝えられています。アジア地域には、すでに世界最大のカジノ都市であるマカオ、カジノ新興国として急速に注目を集めているシンガポールがありますが、それに加えて、近隣諸国・地域に大型カジノ施設ができるということになれば、統合型リゾートとして日本がカジノを設置したからといって、それが自動的に成功に結び付く保証はありません。
<運営と破綻のつけは周辺住民と自治体に>
カジノの設置にともなって、国民が負担することになる「社会的費用」も重大です。米連邦議会の調査報告によれば、失業保険や精神治療、治安対策などもふくめたコストは、カジノによる利益の4~6倍以上といわれています。これはすべてが税金で賄われることになります。
一方、カジノ解禁に伴う官僚機構の〝肥大化〟も懸念されています。カジノの公正な運営を監視・監督するためという名目による「博打の取り締まり」のために、数百人規模の新たな行政機関の設置さえ取りざたされています。
<カジノは百害あって一利なし>
以上にみたように、カジノの設置=賭博解禁は、百害あって一利もありません。いま必要なことは、パチンコもふくめて、現にある賭博の是非について国民的な議論をおこすことであり、なによりも500万人を超えるといわれる病的賭博患者の治療と社会的復帰を促すことです。
日本共産党は思想・信条の違いを超えて、「賭博の合法化は許されない。カジノ法案の成立を許すな」という一点で、国民的な共同と連帯をすすめるために奮闘します。