2014年総選挙政策

2014年 総選挙各分野政策

28、子ども・子育て

子どもの成長を喜びあえる、だれもが安心して子育てできる社会をつくります

2014年11月


 これから子どもを持つために必要な条件として一番多くの人があげているのは、「働きながら子育てができる職場環境」です。また理想の子ども数がもてない理由のトップは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」です(国立社会保障・人口問題研究所調査)。お金の心配なく、だれでも安心して子育てできる社会への願いは切実です。ところが安倍政権は、この願いに逆行する政治をおしすすめています。

 増えない給料、不安定な雇用、加えて安倍政権の2年間で、児童手当(旧子ども手当)の減額、高校授業料無償化への所得制限導入、生活保護の削減・制度改悪、そしてこの4月からの消費税8%への増税と、子育て世代を直撃する負担増・増税がつぎつぎに強行されました。働きたくても、保育所に入れない待機児童問題も解決されず、生活の困難、貧困と格差がいっそう拡大しました。子どもの貧困、児童虐待も増加しています。ますます日本は、子育てしにくい国、子どもを産みたくても産めない社会になっています。

 日本共産党は、子育て世代と子どもたちを苦しめる安倍政権の暴走をストップさせ、だれもが安心して子育てでき、子どもたちの健やかな成長を保障できる社会をめざします。安定した雇用と子育てしながら働きつづけられる条件整備、子育ての経済的負担の軽減など、社会全体で子育てを支える総合的な子育て支援をつよめます。最も困っている子どもと家族への支援を充実させ、子どもの貧困の改善をすすめます。

 

1、子どもを安心して育てられる働き方、社会的条件をつくります

●長時間労働の改善、正社員化など子育てしやすい働き方のルールをつくります

 子育て世代の家庭にとって、働き方の改善は切実な願いです。異常な長時間労働が子育ての困難をひろげており、30代の男性で週60時間以上働く人は5人に1人、女性の長時間労働も増加しています。

 違法なサービス残業を根絶し、残業時間の上限を年360時間に法律で規制します。子育て期の労働者の時間外労働の免除、短時間勤務制度は小学校入学前まで、深夜労働の免除も中学校入学前まで請求できるようにします。安倍政権がすすめようとしている “残業代ゼロ”のホワイトカラー・エグゼンプションの導入や裁量労働制は、いっそうの長時間労働をおしつけるものであり、子育てしながら働きつづけることを困難にします。労働法制の大改悪を許しません。

 低賃金と不安定な働き方が結婚も子育ても困難にしています。青年と女性の半数以上がパートや派遣などの非正規雇用です。非正規雇用から正社員への流れをつくり、「期間の定めのない働き方」が当たり前の子育てしやすい社会をつくります。労働者派遣法を抜本的に改正して、派遣労働は一時的臨時的なものに限定し、均等待遇の原則にもとづき、労働条件の改善をすすめます。パート労働法を改正し、パート労働者への差別禁止、均等待遇を明記します。時給1000円以上への最低賃金の引き上げと全国一律最低賃金制の確立で賃金を底上げします。

 

●育児休業制度を改善し、非正規雇用労働者、男性の取得促進などをすすめます

 育児休業制度を利用している女性は76%、男性は2%です。女性も男性も利用できるように、所得保障を父母それぞれに3カ月間は100%にする、保育所入所ができない場合には育児休業の1年以内の延長を可能にするなど制度の拡充をすすめます。代替要員確保の助成金の増額や助成期間の延長など中小企業への支援を充実します。

 非正規雇用の父母は、子どもが2歳になるまで雇用が続いていることが条件とされています。有期雇用をふくめ6カ月以上勤続している労働者すべてに対象を拡大します。

 子どもが病気のときの「子どもの看護休暇」は、学校行事への参加などにも使える「家族休暇」制度に拡充し、労働者1人10日に増やします。

 妊娠・出産や産休、育休制度を利用したことに対する解雇、嫌がらせなど。違法なマタニティ・ハラスメントをなくします。育休制度の利用による不利益取り扱いを許さず、原職復帰原則の確立、苦情処理・救済制度の拡充、指導・監督の徹底、違反企業への罰則強化などをはかります。

 

2、新制度による公的保育の後退を許さず、安心して預けられる保育・学童保育を保障します

●国・自治体の責任で保育要求にこたえた認可保育所を増設、保育条件の改善をすすめます

 今年4月に、認可保育所に申し込んでも入れなかった待機児童は2万1371人、実態はその倍以上とみられています。男性も女性も、安心して子育てしながら働き続けられるよう、子どもの健やかな成長を保障する条件の整った保育を保障しなければなりません。

 政府が来年4月に実施しようとしている「子ども・子育て支援新制度」は、基準を緩めた保育サービスの導入や、営利企業の参入の拡大、公立保育所の廃止や強引な幼稚園との統合など、本来の国と自治体の責任を後退させるものです。安心して預けられる公的保育を守り拡充するために、新制度による保育の後退を許さず、待機児童の解消、認可保育所を中心とした保育の保障、保育条件の改善をすすめます。

 子ども・子育て支援法で、自治体には、ニーズ調査をふまえて5年間の支援事業の需給計画作成が義務づけられています。「児童福祉法24条1項」にもとづき、保育需要にこたえた認可保育所をつくります。保育士の確保と労働条件の改善、保育条件の確保、保育料の負担軽減などに、十分な財源を保障します。 

→ くわしくは、分野別政策【保育】をお読みください。

 

●学童保育の拡充、環境整備と指導員の待遇改善をすすめます

 子どもたちが放課後を安全に安心して過ごせる学童保育の拡充はいっそう切実な願いとなっています。学童保育数は、この5年間で1・2倍加し、2万2096カ所になり、93万人以上の児童が利用しています。しかし、なお「潜在的な待機児童」が約40万人と推測されており、必要数に遠く及びません。

 公的責任で学童保育を抜本的に拡充します。国の予算を大幅に増やし、学童保育の増設、大規模化の解消、施設・設備の改善、指導員の正規化・労働条件の改善、複数配置、利用料の軽減などをすすめます。2012年の児童福祉法の改定で、市町村は国の基準に基づいて設置運営基準を条例で定めることになりました。一歩前進ですが、従うべき基準とされたのは指導員の配置基準のみで、面積基準などは参酌基準です。専任で常勤の指導員の複数以上の配置、面積基準の確立をすすめるなど基準を引き上げ、地域格差の改善をすすめます。営利企業の参入促進は反対です。

 すべての子どもを対象とした「放課後子ども教室」などを拡充します。学童保育と一体化させるのでなく、それぞれ充実させつつ、連携強化をはかります。

 

3、子育ての経済的負担を軽減します

●就学前の子どもの医療費無料化を国の制度にします

 子どもの医療費助成はすべての市区町村でおこなわれるようになっています。しかし、年齢、所得制限など助成の内容は都道府県・市区町村でまちまちです。子どもが病気のときに、どこに住んでいても、安心して必要な医療が受けられるように、全都道府県・市区町村がおこなっている子どもの医療費助成制度の土台として、就学前までの子どもの医療費を、所得制限なしに国の制度として無料化します。

子どもの医療費の助成制度(現物給付)をおこなっている自治体の国保にたいする国庫負担の減額調整のペナルティをやめさせます。

 

●児童手当の拡充をはかります

 民主党と自公両党との談合で「子ども手当」が廃止され、児童手当に戻ったことにともない、支給額が削減されました。児童手当は、子育て支援の重要な柱です。拡充をはかり、18歳まで支給期間の延長をめざします。

子育て世代向けの公共住宅の建設や「借り上げ」公営住宅制度、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの支援を特別につよめます。

 

●高すぎる幼稚園授業料を引き下げます

 高すぎる幼稚園授業料を引き下げます。私立幼稚園に通う子どもの親に対する国の助成制度を拡充します。OECDは、日本の就学前教育について、民間部門に大きく依存しており、就学前教育機関への支出の55%が私費負担でありその大半が家計支出となっていることを指摘しています。「子ども子育て支援新制度」によって、公立幼稚園の保育料が大幅にひきあがるとことが出てくることが危惧されています。高すぎる国の保育料の基準額を改善し、父母負担を引き下げます。

 

●中学校給食をすすめ、学校給食の無償化をめざします

 栄養バランスのとれた温かく美味しい給食を、家庭の経済状況にかかわらず提供することは、子どもの健やかな成長のために重要です。とりわけ貧困世帯では、1日のうちバランスのとれた食事を1回もとれていない世帯が86%をこえるという調査もあります。中学校給食の実施自治体は8割です。すべての自治体で中学校給食を実施できるようにします。学校給食の無償化をめざすとともに、生活の実態に応じて、必要な免除措置をすすめるようにします。

 

●高校、大学などの教育費負担を軽減します

 政府は、2012年にようやく国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項を受け入れました。学費を値下げし、奨学金制度を拡充することは、憲法と教育基本法が定める教育の機会均等への国の責任を果たすことであり、日本政府の国際公約です。安倍政権が廃止し所得制限を導入した公立高校の授業料「無償化」を復活させ、私立高校・大学・専門学校の無償化をめざします。低所得世帯に対する制服代、交通費、修学旅行費などへの支援制度をつくります。

安心して利用できる奨学金制度にします。先進国(経済協力開発機構・OECD加盟国)で、大学の学費があり、返済不要の給付奨学金がないのは日本だけです。奨学金をすべて無利子に戻します。既卒者の奨学金返済の減免制度をつくり、生活が困窮する場合の救済措置を講じます。延滞金、連帯保証人・保証料を廃止し、返済困難者への相談窓口を充実させます。すべての貸与奨学金を所得に応じた返済制度にします。とくに就学が困難な生徒・学生のため、欧米では主流の「給付制奨学金制度」をただちに創設し、奨学金の基本は給付制となるように制度を拡充していきます。

 → くわしくは、「学生が安心して使える奨学金に――奨学金返済への不安と負担の軽減のために」をお読みください。

 

●安心して妊娠・出産できるように経済的支援をつよめます

 妊婦健診は国の補助事業にし、どこでも同じように安心して受けられるようにします。高い出産費用は、若い夫婦にとって重すぎる負担です。現在42万円の出産育児一時金を大幅に増額します。風疹予防ワクチン接種費用への国による補助をすすめます。国保の出産手当金制度を「強制給付」にするなど休業中の所得保障、社会保険料免除などをすすめ、非正規雇用や業者、農業などを問わず、安心して産前産後休暇がとれるようにします。不妊治療への助成にたいする夫婦で730万円の所得制限の緩和、健康保険適用の拡大などをすすめます。

 

4、子どもの貧困の改善に力をつくします

●子どもの貧困削減の数値目標をもちます

 子どもの貧困率が15.6%と、子どもの6人に1人が貧困に陥っています。その割合は年々増加しており、解決が急がれます。政府の子どもの貧困大綱には、世界では子どもの貧困削減するうえで当たり前となっている数値目標が示されませんでした。まず子どもの貧困の実態をつかむために、各都道府県で調査をおこなうとともに、改善のための数値目標と計画をもち、政策の具体化をはかります。

 

●ひとり親家庭への支援をつよめます

 ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当制度の支給額引き上げ、所得制限の緩和による支給対象の拡大、多子加算の引き上げなどをすすめます。小泉自公政権時代に行われた、支給から5年後に支給額を半額にする児童扶養手当制度の改悪を中止します。過去の物価下落を理由とした手当の削減の中止も求めます。安定した仕事につけるように、ひとり親家庭の就業支援をさらに強め、パートや派遣の正社員化、パートを正規雇用に転換した事業主にたいする奨励金や資格取得や技能訓練費などの国の支援制度を充実させます。安価で良質な公共住宅を供給します。父子家庭の実態に即した子育て支援・生活支援をつよめます。

 

●生活保護制度の改善・強化、就学援助制度の拡充をすすめます

 安倍内閣は生活保護費の削減や、利用申請者の「門前払い」を合法化する生活保護制度の改悪を強行しました。物価高騰のなか、子育て世代のなかでも最も経済的に困難な状態におかれた生活保護世帯に深刻な打撃を与え、怒りを呼んでいます。さらに2015年度から生活保護の住宅扶助費削減に乗り出そうとしています。生活保護費のさらなる削減を許さず、だれもが安心して制度を利用でき、子どもたちの健全な成長が可能な生活、教育・福祉制度が保障されるように、生活保護制度の改善・拡充をすすめます。

 生活困窮世帯の子どもに給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する就学援助制度の役割はますます重要です。生活保護基準の引き下げにより、就学援助の基準も下がり、自治体によっては対象を外される子どもたちも出ています。支給額の改善や対象者の拡大など、拡充をはかります。

 

5、子どもの命と健康を守り、子育ての不安にこたえます

●放射能から子どもを守ります

 多くの人々と力をあわせ「即時原発ゼロ」を求め、放射能から子どもの命と健康が放射能に脅かされることのない社会にします。福島の子どもたちの命と健康を守る検診・医療制度の充実、教育条件の整備、福島県をはじめ放射能汚染が心配されるすべての地域を対象とした、食の安全確保、学校や保育所等の施設、子どもの通学路や遊び場などの放射線量測定と除染について、国の責任を明確にして取り組みをつよめます。子どもの健康を心配し自主避難した人なども含めて、すべての原発被災者・被害者を支援します。

 

●小児科、救急医療体制の確立をはかります

 医師不足による小児科病棟の休止、病院の閉院、救急医療施設の減少は、地方でも都市でも、国民のあいだに深刻な不安をひろげています。出産できる病院・診療所も激減したままです。公的病院の産科、小児科切り捨てをやめ、早期復活をはかります。産科・小児科・救急医療などを確保する公的支援を抜本的に強化します。地域の医療体制をまもる自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。産科・小児科・救急医療の充実などにかかわる診療報酬を抜本的に増額し、安心して医療を受けられる小児救急医療体制の確立をすすめます。

 

●子育ての不安にこたえる体制をつくります

 初めての出産による不安や、貧困などさまざまな問題を抱えた家族に対し、きめ細かな相談体制、個別の訪問活動などの支援を拡充します。保育所への入所や一時保育、子育て支援事業など、子育て不安を軽減する取り組みを地域全体ですすめます。児童虐待や子育ての困難の背景には、若い世代の雇用破壊と貧困の広がりがあります。安心して子育てできるように、安定した雇用、人間らしい働き方、教育・福祉・社会保障の充実と子育てへの経済的支援など総合的な施策をつよめます。

 

●児童虐待の防止対策を強化します

 格差と貧困のひろがりを背景に、2013年度に全国207か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は73,765件(速報値)で、過去最高を更新しています。児童虐待の防止、早期発見、子どもと親への専門的な支援などの独自の施策をつよめます。早期発見で子どもを守るために、保育所や学校、病院、児童相談所、保健所、子育て支援センター、児童養護施設など、子どもにかかわる専門機関の連携をはかるとともに、職員の専門的な研修をつよめます。相談支援体制を充実させるために、児童相談所の増設、職員の抜本的な増員と専門性向上のための研修の充実、一時保護施設や児童福祉施設の整備増設、設備や職員配置の改善をはかります。虐待を受けた子どもへの専門的なケア、親にたいする経済的、心理・医療的、福祉的な支援をつよめます。

 

●児童養護施設、里親制度などの整備・拡充すすめます

 経済的、社会的事情をもった親が子育てできない状況におちいったり、予期せぬ妊娠に悩んだ時に、身近に相談できる体制を整備します。

 児童福祉行政の中核的役割を担う児童相談所は全国で207カ所、乳児院は130カ所しかありません。児童相談所や児童福祉施設、小児病院や保健所、子育て支援センターなどが連携して、親が育てられるための支援をつよめるとともに、困難な場合の受け入れ施設の拡充をすすめます。

児童養護施設などの国の最低基準を旧民主党政権が廃止し、自治体まかせにしてしまいました。国の責任で職員配置や施設整備の改善、小規模化、家庭的養護の推進を急ぎます。施設に暮らす子どもたちの教育、進学への支援をつよめます。里親制度は子どもたちを家庭的環境で育てるために重要な制度です。いっそうの拡充をはかり、里親への支援や研修の充実、制度の周知をすすめます。

 

●子どもの豊かな成長を保障する地域づくりをすすめます

 子どもたちの成長、発達にとって、遊びや豊かな文化・スポーツにふれることが大切です。子どもたちの生活圏内に安全で安心して遊べる公園や児童館、プレイパーク、青少年がスケートボード、フットサルなどを楽しめる広場の確保をすすめます。演劇や映画、音楽などの芸術・文化に親しめるように、文化団体、地域の活動を応援します。学校公演(鑑賞教室)の支援を充実します。各地ですすんでいる児童館の統廃合など、国と自治体の責任を後退させる動きにストップをかけます。

 子どもの通学途中での交通事故が多発しています。車優先社会の日本では、歩行者よりドライバー優先の交通政策がとられており、通学路の安全対策が不十分です。生活道路や通学路を道路法や道路交通法に位置付け、通過交通を排除・抑制する等の改正を行います。登校時の通学路への自動車の侵入をできるだけ制限します。速度を時速30km以下に抑制したり、車道の幅を狭めたり、イメージハンプ(自動車の走行速度を抑えるための車道舗装や凹凸の設置等)なども活用します。

 

6、子どもの権利条約の立場を政治と社会につらぬきます

 今年で日本が子どもの権利条約を批准して25年です。日本政府は、子どもの権利条約を批准国しているにもかかわらず、子どもたちの権利を守る立場にたった施策があまりにも不十分です。過度の競争をあおり、管理をつよめる教育をただちに改善するとともに、子どもたちの声に耳を傾け、子どもの権利を守る社会、人間らしい安定した雇用、社会保障や福祉の充実など、社会全体のあり方を変えて、子どもたちがストレスを抱えて自己肯定感も将来への希望も持てないような事態をなくしていかなければなりません。

 いまほど、子どもの命と健康をまもりぬき、一人ひとりの子どもが真に大切にされる社会、将来に希望がもて、安心して子育てできる社会へ、子どもの権利条約の立場で、子どもと子育てをめぐる問題を見直すことが求められているときはありません。政府と社会が「子どもの最善の利益」のために、福祉、教育、文化、子育て支援の充実を最優先にはかることは、国際的には当たり前のことになっています。子どもの権利条約を社会のすみずみに実現するための国民の共同をひろげます。

 

 (c)日本共産党中央委員会