2014年総選挙政策

2014年 総選挙各分野政策

38、秘密保護法・共謀罪

国民の目・耳・口をふさぎ、「海外で戦争する国」へと道を開く希代の悪法――秘密保護法の廃止を求めます

2014年11月


 2013年末、多くの国民の反対の声を押し切り自民・公明政権が成立させた秘密保護法(特定秘密保護法)は、2014年12月10日からの施行が強行されようとしています。8月には、秘密保護法の運用基準案に関して実施されたパブリックコメントに、法の廃止を求めるものも含め2万4千通もの意見が殺到し、10月までに130議会が秘密保護法の撤廃を求める意見書を可決、同月、「特定秘密保護法に反対する学生有志の会」が呼びかけた東京・渋谷デモに約2000人が参加するなど、秘密保護法の廃止を求める世論と運動はいまも大きく広がっています。

秘密保護法のねらいは、防衛・外交をはじめ国政の重要問題で国民の目・耳・口をふさぎ、集団的自衛権の行使容認ともあわせて、日本を「海外で戦争する国」につくりかえることにあります。

日本共産党は、他党や無所属議員との共同で、2014年の通常国会と臨時国会に秘密保護法廃止法案を提出しました。総選挙後の新しい国会でも、国会内外での共同を強め、この希代の悪法の廃止へ力を尽くします。

 

[1]民主主義の根幹である国民の知る権利、言論・表現の自由を脅かし、日本国憲法の基本原理を根底からくつがえすものです

 

(1)「秘密の範囲」は政府が勝手に決め、国民には何が秘密かも秘密

 秘密保護法は、①防衛②外交③特定有害活動(スパイ行為)の防止④テロリズムの防止―に関わる行政情報で、政府が“安全保障に支障がある”と判断したものを「特定秘密」に指定し、それを漏らしたり知ろうとしたりした者に対して、公務員・民間人を問わず最高で懲役10年と1千万円の罰金という重罰を科すものです。

特定秘密の範囲はあいまいです。特定秘密を指定するのは「行政機関の長」です。首相や外相、防衛相、警察庁長官らの勝手な判断で、秘密の範囲はいくらでも広げることができます。秘密にしておく期間も、政府の判断でいくらでも延長でき、原則60年、場合によってはさらに長く、永久に秘密にされる恐れもあります。

国民には“何が秘密かも秘密”です。自分が接した情報が特定秘密かどうかもわからないまま、いきなり処罰されることが起こりえます。政府は「原発やTPPは秘密保護法の対象ではない」といいますが、法文上それらが除外される保証はありません。原発事故での資料隠しのように、政府に都合の悪い情報を秘密にされる危険が大です。

10月に閣議決定された秘密保護法の運用基準で、秘密の取り扱いが適切かどうかを監視する第三者機関として内閣保全監視委員会(内閣官房)、独立公文書管理監(内閣府)を設置するとされましたが、それぞれのトップは内閣総理大臣です。「首相が『第三者』として監視する」などという仕組みが、成り立つはずがありません。

 

(2)国民の知る権利、報道の自由を奪う

 特定秘密の漏えいは、故意でなく過失であっても処罰の対象です。特定秘密を取り扱うことになる公務員や、国との取引関係がある民間業者に対しては、「適性評価」と称して、犯罪歴や病歴、借金、思想信条をふくむ網羅的な身上調査が行われます。調査対象は家族や友人にも及びます。多くの国民がプライバシーを侵害され、思想信条を理由とした差別的取扱いという重大な人権侵害の危険にさらされます。

 ジャーナリストの取材活動や一般市民による情報公開請求などが、特定秘密を知ろうとしたとして処罰される恐れもあります。「共謀、教唆、煽動」も処罰するとしており、処罰の対象は市民のあらゆる行為に及び、家族・友人などにも広がる危険があります。

批判の世論に押され、条文には報道や取材の自由に「配慮」することが盛り込まれましたが、何の歯止めにもなりません。この法律の存在そのものが、報道・取材を委縮させ、言論・表現の自由、国民の知る権利に対して致命的な打撃を与えることは明らかです。

 

(3)特定秘密というだけで国会の立法権や国政調査権をも制限

 特定秘密に対しては、国権の最高機関である国会の調査権も制限されます。秘密保護法は、秘密を国会に提供する場合には非公開の「秘密会」を要求し、秘密会で知った秘密を漏えいした場合には国会議員でも懲役5年の処罰を受けます。これでは、外交・防衛という重要問題で、国民の代表として政府を監視しチェックすることは不可能になります。国会の立法権、国政調査権を侵害し、国民主権の原理にも反するものです。

 日本の国会には開示を制限する一方、アメリカなど同等の秘密保全体制をとる外国政府に対しては、外務省や防衛省の判断で特定秘密を提供できる仕組みとなっています。国民には隠しながら、日米で情報を統制・操作しようとするものです。

 

[2]「海外で戦争する国」につくりかえるため、国家が強権的に情報を統制し、国民の言論・表現を規制するのがねらいです

(1)アメリカと軍事情報を共有し、日米軍事一体化をすすめるためのもの

 安倍政権は、秘密保護法と一体で国家安全保障会議(日本版NSC)設置法を成立させ、2014年7月には集団的自衛権の行使容認を閣議決定しました。

日本版NSCは、内閣総理大臣を中心に外交・安全保障政策の「司令塔」として機動的に活動し、各省庁の情報を集中させ、アメリカと軍事戦略・情報を共有する受け皿です。秘密保護法の制定は、日米で国家戦略や軍事情報を共有し、また情報を管理・統制して軍需企業が国際的な武器の共同開発・生産に本格的に参画するための不可欠の課題として、アメリカから要求されていたものです。

集団的自衛権の行使容認とあわせて、日本をアメリカと一緒に「海外で戦争する国」につくりかえる策動が、秘密保護法強行のねらいです

 

(2)日米軍事同盟の「密約」や実態を明らかにすることも処罰の対象に

 歴代政府は、日米の「核兵器持ち込み密約」を否定しつづけてきました。日本共産党が国会で明らかにした決定的な外交文書「討論記録」の存在を、2010年になってようやく認めましたが、核持ち込みの「明確な合意はない」といって密約だったことは否定したままです。さらに、米軍に事実上「行動の自由」を容認している日米地位協定に関わる密約や、裁判権・指揮権をめぐる密約はいまだに隠されたままです。日米合同委員会合意の実質的内容も国民に秘密にされています。

 これらの密約の公表を求めること、基地の実態や予算の使い道を追及し公開を迫ることなども、秘密保護法によって処罰の対象になりかねません。

 

[3]国民弾圧体制の強化を許さない―施行を許さず、きっぱり廃止させましょう

 

(1)共謀罪の新設、盗聴法の改悪もねらう安倍自公政権

 安倍政権は、共謀罪の新設や、通信傍受(盗聴)法の改悪も検討しています。

犯罪の計画を話し合っただけでも罪とされるのが共謀罪です。安倍政権は、先の臨時国会での法案提出は見送りましたが、共謀罪そのものについては「世界でテロや組織犯罪と戦う中で、条約上の義務を果たすために必要だということは否定できない」(9月22日、菅義偉官房長官)との立場です。

1999年に強行成立させられた盗聴法については、盗聴ができる対象を4類型(銃器犯罪、薬物犯罪、集団密航、組織的殺人)の組織犯罪に限定し、最低限のチェック機能として、盗聴する際はNTTなどの通信事業者の職員が立ち会うことを課しています。立会人は、盗聴について意見をのべることができ、捜査と関係のない会話を盗聴していないかチェックする役割があります。ところが安倍自公政権は、この制約を緩め、盗聴の対象犯罪を殺人や詐欺、傷害、窃盗、恐喝など一般犯罪に大幅拡大すること、組織的犯罪集団だけでなく捜査機関が共謀と疑えば広く盗聴できるようにすること、通信事業者の立ち会いを要件から外すことなどを狙っています。

これらが成立すれば、国家権力が秘密保護法や共謀罪違反で市民を取り締まりやすくなり、監視・密告社会がもたらされます。

 

(2)選挙で悪法を推進する勢力に審判を

 秘密保護法の成立に先立つ2回の国政選挙(2012年衆院選、13年参院選)では、同法制定を公約に掲げた政党は、与党の自民・公明両党を含め一つもありませんでした。今回の総選挙が、秘密保護法の是非を国民に問う初めての国政選挙となります。

民意を十分に問わず、秘密保護法成立に協力した各党の態度も問われます。

民主党は、昨年12月の参院本会議での採決の土壇場で「反対」に回りましたが、そもそも「秘密保護法制」を最初に提起したのは民主党政権でした。安倍政権のもとで、秘密保護法案審議のための特別委員会を衆参両院に設置することに賛成したのも民主党です。

 維新の党は、秘密保護法案の修正協議に応じ、採決で棄権したものの、修正合意で成立に協力しました。

問題だらけの国民弾圧法である秘密保護法は、施行を断念し、きっぱり廃止すべきです。選挙で推進勢力に審判を下し、共謀罪、盗聴法拡大など、国民弾圧体制の強化を許さない世論と運動を広げましょう。

 (c)日本共産党中央委員会