総選挙にあたっての日本共産党の政策と訴え

2000年5月30日 日本共産党中央委員会

各分野の政策


財政再建暮らし・社会保障の予算を確保しながら、財政を再建の軌道に

 国・地方あわせた借金残高が六百四十五兆円という破局的な財政危機のもとで、財政再建の道に踏みだすことは、国民の暮らしを守り、日本経済の安定的な発展をはかるうえでも避けて通れない課題になっています。

 日本共産党は次の「三つの原則」にたって、財政再建に踏みだすことを提案します。

 (1)無駄と浪費の構造に思い切ったメスを入れる歳出の改革

 公共事業の中身を、ゼネコン本位の公共事業から暮らし・福祉中心に切り替え、公共事業費を段階的に半減する…国・地方で年間五十兆円の公共事業費を無駄な巨大プロジェクトの削減を中心に、段階的に半分に減らします。公共事業の“自己増殖装置”となっているガソリン税、自動車重量税など年間八兆円を超える公共事業特定財源制度をやめ、一般財源化します。

 無駄の多いゼネコン型公共事業の一方で、特別養護老人ホームなどの福祉施設や公共住宅の建設、老朽化した病院の建て替えや学校の改築・修繕・施設整備などは大きく立ち遅れています。公共事業を大型優先から暮らし・福祉優先に切り替えれば、公共事業の総額を減らしても、中小企業への発注を増やし、雇用の拡大をはかることができます。

 東京都の場合、中小企業への発注率は、臨海部開発では七・三%(一九八八年度から九九年度までの累計)にすぎませんが、福祉局は八八・六%、住宅局は八五・四%(いずれも九八年度)にもなっています。また、工事規模五億円以上の事業では、工事費百万円あたりの就労者数は九人程度ですが、工事規模一千万円未満では十九人と二倍以上の雇用効果があります(建設省「公共工事着工統計」)。

 銀行業界の自己責任のルールを確立し、大銀行支援を廃止する…不良債権や破たん処理の費用は、銀行業界の自己責任でおこなうことが当然のルールであり、七十兆円の公的資金投入の枠ぐみは廃止します。

 軍事費、ODAを半減する…軍事費は五兆円規模で世界第二位です。平和外交こそ力を発揮する時代の流れからしても半減は当然です。アメリカが戦略的に重視する国や日本の大企業の海外進出の地ならしに使われている場合が多いODA(政府開発援助)を半減させ、途上国支援に有効なものにあらためます。

 国債の低利借り換えによって利払い費を圧縮する…国債のなかには金利七・八%の国債など、四%以上の金利を払っているものが九十兆円以上もあります。このうち民間金融機関が四割強を保有して、高金利の恩恵に浴しています。これを低利で借り換え、利払い費を圧縮します。

 (2)税の不公平を是正する歳入の改革

 この間、法人税の税率が三七・五%から三〇%に引き下げられ、所得税も最高税率が五〇%から三七%に引き下げられたことなどによって、五・三兆円も減収となっています。税収減の半分は、“気前のいい大企業・高額所得者減税”です。

 大企業・高額所得者優遇の不公平税制を是正する…日本の法人課税の課税ベースは、受取配当の益金不算入、外国税額控除制度、準備金、特別償却制度などによって、世界でも類のない狭いものとなっています。このような大企業優遇税制の廃止や縮小をおこない、課税ベースを拡大します。所得税は原則「総合課税」にします。

 投機的な資本取引に課税する…金融先物取引など、わが国の短期金融市場の規模は一京円(一兆円の一万倍)を超えています。これに低率の「取引税」を課します。

 (3)国民生活予算を確保しながら、計画的・段階的な目標をもってすすめる

 第一段階の目標――国民生活のために十兆円程度の財源を確保しながら、単年度赤字を圧縮の方向に向かわせる。

 以上の歳出と歳入の改革をおこなうのが第一段階です。この改革を実行すれば、十兆円程度の新たな財源を確保しながら、毎年の財政赤字を現在のGDP比一〇%から五%に半減させていくことが可能になります。新たな財源は、介護、年金、中小企業など、暮らしと営業の支援にあてます。消費税三%への引き下げの道も開けます。

 第二段階の目標――累積した債務残高が減りはじめる。

 第二段階では、いっそうの歳出の見直し、税制の抜本的・民主的改革を実行することにより単年度赤字をGDP比二・五%程度に減らすことを目標にします。そうすれば、累積した借金を減らしていくことができます。

税制──消費税など庶民増税でなく、不公平税制の是正による民主的税制を

 この十年間は、大企業・高額所得者への減税と一般庶民への増税が、「税制改革」の大きな流れでした。国民生活の向上、日本経済の活性化のためには、この流れを切り替えなければなりません。

 実際、この十年間(一九九〇年度〜二〇〇〇年度)、法人税収は十八兆四千億円から九兆九千億円へとほぼ半減し、所得税収も二十六兆円から十八兆七千億円に激減しました。大企業減税や高額所得者減税が大きな要因です。一方、消費税の税収は、五兆八千億円から十二兆三千億円へと倍以上になり、いまや法人税収を上回るまでになっています。

 企業や個人が負担能力に応じて税金を負担し、低所得者には社会保障給付など「所得の再分配」によって、貧富の格差を是正するというのが財政・税制の常識です。

 日本共産党は、消費税の引き上げや課税最低限引き下げに反対し、大企業・高額所得者優遇の不公平税制の是正に取り組み、直接税中心、総合・累進制、生計費非課税を原則にした民主的税制度の確立をめざします。

 (1)大企業、高額所得者優遇の不公平税制を是正する

 自民党政府がおこなった大企業、高額所得者向け大減税には何の道理もありません。

 日本は、法人課税の国・地方をあわせた実効税率が四〇・八七%と主要国でも低い国の一つになってしまいました。アメリカ(ニューヨーク市)は、四六・〇八%です。

 大幅に引き下げられた法人税率を見直すと同時に、受取配当の益金不算入、外国税額控除制度、準備金、特別償却制度などを縮小・廃止し、課税ベースを拡大します。

 所得課税の最高税率も五〇%(国三七%、地方一三%)で、ドイツ五三%、フランス五四%より低くなってしまいました。しかも日本では、利子・株・土地譲渡益(キャピタルゲイン)にかかわる所得税は低率の分離課税が適用されるため、実際の税負担ははるかに軽いものになっています。所得税の最高税率を見直すと同時に、アメリカ、イギリス、ドイツなどのように原則「総合課税」とします。

 こうして、法人課税と所得課税が税制の中心になるようにします。

 (2)消費税増税に反対し、引き下げに道を開く

 消費税の大増税に反対し、まず食料品非課税を実現します。つづいて、財政再建をはかるなかで消費税引き下げ、廃止に道をひらきます。

 自自(保)公三党は、消費税の福祉目的税化で合意し、自由党は、消費税を基礎年金、介護、老人医療の費用にあてるよう主張しています。民主党の鳩山代表も、福祉目的税化をいい、五年後に「七%」にするといっています。政府・自民党は、いまのところ消費税の増税をひたかくしにしていますが、政府税制調査会は、総選挙後の七月に消費税二ケタ(加藤税調会長は一五%)引き上げを答申するといわれています。消費税増税は、個人消費を冷え込ませ、景気に大打撃を与える点でも、絶対に選択してはならない道です。

 消費税増税派は、「福祉のため、高齢化社会のため」といいますが、低所得者ほど重い負担になる消費税ほど、福祉に反する税金はありません。

 (3)課税最低限の引き下げをやめ、生計費非課税をつらぬく

 民主党などから課税最低限引き下げの主張もなされています。課税最低限の引き下げを主張する人たちは、(1)日本は課税最低限が高いため、所得税をおさめない人が増えている、(2)国際的にみて日本の課税最低限は高すぎる――といっています。しかし、この二つとも間違っています。所得税ゼロの人の割合についていえば、特別減税がおこなわれた九八年を例外として、九五年二〇・二%、九六年一九・九%、九七年一九・六%と年々減っています。また、購買力平価(一ドル=一六三円)で比較すれば、日本の課税最低限(夫婦子二人のモデル世帯)は、アメリカと同程度です。フランスやドイツとくらべれば百万円から二百万円も低いのです。

 課税最低限は、「最低限度の生活」の権利をさだめた憲法第二五条にもとづいて、生計費に課税してはならないという、税制の基本原則の一つです。課税最低限の引き下げに反対し、生計費非課税をつらぬきます。

 (4)固定資産税・相続税の負担を軽減する

 いま政府・与党は、相続税の最高税率を引き下げ、課税ベースを拡大しようとしています。しかし相続税の最高税率(二十億円超)が適用されるのは、年間わずか十数人にすぎません。一方、せっかく引き上げられた基礎控除(五千万円)などが引き下げられれば、庶民増税につながります。このような相続税の改悪に反対します。

 個人の住宅用地や中小企業の事業用土地にかかる固定資産税・相続税を軽減します。一九九〇年以降、自民党政府は、土地の評価額を「一元化する」として、土地にかかわる固定資産税・相続税の評価額を取引価格へ段階的に近づけ、大幅に引き上げる方針をとりました。そのため、地価が下がっているにもかかわらず、固定資産税・相続税は高い水準のままです。

 いまは、大企業や銀行などの用地も、宅地も中小企業の土地も、まったく同じように扱われています。土地を一律の「時価」で評価し、銀行や証券会社の土地と、近くの住宅や零細商店などを同等にあつかうのは不合理です。土地にかかる固定資産税・相続税の評価方式を、現在の取引価格方式から、土地の利用状況に合わせた「収益還元方式」にきりかえるようにします。そうすると、巨額の利益をあげている銀行やオフィスビルは高く、一般商店は低く、庶民の住宅用地はさらに低くなります。

 「収益還元方式」が実現するまでにも、二百平方メートル以下の住宅にかかわる固定資産税については、評価額を引き下げ、負担を軽減します。相続税については、同様の軽減措置をとると同時に、住みつづけるかぎり納税を猶予します。

 また中小企業の事業承継については、事業の存続が可能となるよう、土地、建物、設備などにかかる相続税について、通常の評価額とは別の評価をおこない、通常の評価額による税額との差額は猶予し、十年以上の事業を継続した場合は差額を免除することとします。個人所有の事業用土地については、三百三十平方メートルまで八〇%を控除する現行の措置を拡充します。

年金制度──将来に希望がもてる年金に

 自公など与党が強引に成立させた年金改悪法は、サラリーマン夫婦が生涯に受け取る年金を一千万円以上も減額し、現に年金を受け取っている高齢者の場合にも、数百万円も減額するというもので、長い年金の歴史のなかでも前例のないものです。とりわけ、支給開始年齢を六十五歳に引き上げようとする改悪は、今日の深刻な雇用状況ともあいまって、生存権を事実上否定することにつながるものです。

 日本共産党は、次の三つの改革をおこなうことで、今回の無法な改悪をもとにもどし、将来に希望がもてる公的年金制度の実現をめざします。

 第一の改革――基礎年金への国庫負担をただちに二分の一に引き上げる

 国民年金は、年金の一階部分(基礎年金)にあたるもので、公的年金制度の土台です。ところが、負担が重すぎるため、いま三人に一人、約七百万人が保険料を払っておらず“空洞化”の危機にさらされています。土台がくずれれば、二階部分にあたる厚生年金などの制度が危うくなるのは当然です。

 基礎年金への国庫負担は、九四年の国会決議でも、いまの三分の一から二分の一に引き上げるようもとめています。これをただちに実施すべきです。

 第二の改革――世界に例のない年金積立金のためこみ方式をあらためる

 政府の計画によると、厚生年金の積立金は二〇〇〇年度末で百七十七兆円、給付費などの支出総額の六・一年分です。そのため国民から毎年六兆円から七兆円も余分に保険料をとりたてています。

 アメリカが一・四年分、イギリスが二カ月分程度、ドイツが一カ月分程度、フランスが若干の剰余金であるのにたいして、日本の積立金は突出しています。年金支給のピークをすぎた二〇六〇年でも三年分もためこむ計画です。これほどの積み立ては必要ありません。

 巨額な積立金を、計画的にとりくずし、給付と保険料軽減にあてるべきです。

 第三の改革――「少子化」を前提にした年金の将来推計を見直す

 政府の年金見通しは、「少子化」の進行を絶対に避けることができない、不動の前提にたっています。これでは年金制度がうまくいかないのもあたり前です。

 「少子化」の進行は、たんに年金制度の未来にとどまらず、国の将来にとって大問題です。世界をみると、女性の就業率が高い国、男女の賃金格差が小さい国ほど、子どもが多いという傾向がはっきりしています。これらの国々の教訓に学び、社会をあげて「少子化」対策に本格的な取り組みを開始すべきです。

 労働時間の短縮、男女差別賃金の是正、育児・介護休暇の改善、保育所の増設など、労働条件の改善により、子どもを安心して生み、育てられる環境をつくることこそ優先すべきです。「少子化」が克服される社会は、女性も男性もだれもが働きやすい社会の実現を意味します。「少子化」対策に本腰をいれて取り組むことで、年金制度の展望もおのずとひらかれることはあきらかです。

介護保険──安心して利用できる介護保険に緊急改善を

 四月からはじまった介護保険について、森首相は「大きな混乱もなくスタートできた」と国会で答弁しましたが、あまりにも実態とかけはなれた認識です。危惧(きぐ)されていた多くの問題が、全国各地で噴き出しています。

 なかでも利用料負担が重いため、多くの人がこれまで受けていたサービス水準を後退させています。「老人保健施設から出なければならない」というので自殺に追い込まれた人さえでています。これでは“何のための介護保険か”“高齢者を苦しめるのが介護保険か”という恨みの声があがっているのも当然です。

 なぜこんな事態になったのか、政府の責任は重大です。介護保険の導入という国民的大事業なのに、介護にたいする国の負担を二千五百億円も削減してしまったからです。

 安心して利用できる制度にするため、次の改善をおこなうようもとめます。

 ただちに取り組むべき最小限の改善策…(1)在宅介護の利用料について、低所得者への一〇%から三%への軽減措置を、ホームヘルプサービスだけでなく、すべての在宅サービスにひろげる、(2)十月から実施予定の高齢者からの保険料徴収を見直すべきです。

 保険料徴収の延期期間中に実施すべき改善策…(1)住民税非課税の高齢者・低所得者については、保険料を免除し、利用料を免除、軽減する恒久対策を確立すること、(2)在宅・施設ともに、サービス不足の解消のために必要な目標をさだめて、その整備に全力をあげること、(3)介護認定の制度は、高齢者の生活実態が反映できるように改善することをもとめます。

中小企業──日本経済の主役にふさわしい本格的な対策を

 中小企業は、企業数で九九%、雇用者数で七八%をしめる日本経済の主役です。いま、長引く不況のなかで、中小企業の倒産が急増しており、それが失業者も増やしています。中小企業に活気を取り戻すことが、景気を回復させ、日本経済を立て直していくかなめの一つになっています。

 ところが自民党政治のもとで、国の中小企業予算は、全体の〇・四%の千九百四十三億円で、放漫経営で破たんした長銀への公的資金投入額七兆円の三%にすぎません。そのうえ「規制緩和」の名で大型店出店を野放しにし、大企業のリストラ支援で下請け中小企業の切り捨てを促進さえしてきました。

 日本共産党は、日本経済の主役にふさわしく国が中小企業対策に取り組めるよう、中小企業の予算を抜本的に増やして経営を効果的に支援する、中小企業の経営を守るルールを確立するという二つの改革をすすめます。

 (1)中小企業予算を抜本的に増額し、経営支援を強める

 東京・墨田区では予算の二%程度を中小企業対策に使っています。国の予算を、当面、この程度にまで引き上げます。中小企業向け官公需を増やすとともに、販路拡大、商品開発、技術支援など、経営基盤を直接強化する支援策に取り組みます。

 (2)「規制緩和」一辺倒やリストラ支援でなく、中小企業を守る公正なルールの確立を

 規制をなくせば経済は活性化する、という「規制緩和」万能論のもとで、大型店の出店規制の緩和がすすみ、この十年間に中小小売店が二十万も減少しました。また、参入規制の緩和などによって、酒屋や薬局、タクシー会社などが深刻な営業難にみまわれています。

 大型店、大企業の横暴から中小業者と地域経済を守るためのルールづくりを…ヨーロッパなどでは、中小小売業保護や住環境保護のため、大型店の出店規制が強化されています。日本では、大規模小売店舗法(大店法)の廃止で、ますます野放しにされようとしています。地域経済や住環境を守るためにも、大型店の出店を許可制にする「新大店法」の制定をめざします。大店法の“代わり”として制定された大店立地法は、出店自由化が大前提という根本的な欠陥がありますが、生活環境の保全という面から、地方自治体で、騒音や営業時間など一定の抑制措置をとろうという動きが広がっています。この取り組みを支援するとともに、自治体への政府の不当な介入に反対します。各業界ごとにもうけられている理にかなったルールを残し、消費者の利益と中小業者の営業を守ります。

 下請け中小企業を守るため下請け二法の強化改正と下請け検査官の増員をすすめる…日産に代表される大企業の身勝手なリストラ、工場閉鎖を名目にした下請け切り捨てや一方的な単価切り下げなど、下請け中小企業いじめも深刻です。

 中小企業庁の担当官も無力と認める現行の下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法を実効あるものとするため、罰則強化などの法改正をおこなうとともに、下請け検査官の人員を大幅に増員します。

 大銀行の貸し渋りを規制し、中小企業への安定的な金融の流れをつくる…少なくない中小企業が、銀行の貸し渋りのもとで、超高金利で暴利をむさぼる商工ローンや日掛け金融にはしり、そのえじきにされています。この悪徳金融業者に資金を提供してきたのが多額の公的資金をうけながら、中小企業には貸し渋りを続けている大銀行です。大銀行の貸し渋りを規制し、アメリカの「地域再投資法」のように、金融機関が地域経済に一定の資金を供給するルールをつくります。

農業・食料──日本農業を再建し、食料自給率を計画的に引き上げます

 日本の温暖多湿な気候は、多様な農業生産ができる恵まれた条件です。農業技術の蓄積も、農業を支える経済力も最高の水準です。農業経営が成り立つ条件を整え、農地の減少に歯止めをかけて生産を発展させれば、食料自給率を向上させる力は十分にあります。

 ところが自民党政治は八〇年代の初めに、自給率向上の取り組みそのものを放棄し、いまや四〇%を割るところまできてしまいました。この間、日本をのぞくサミット参加国は、すべて自給率を向上させており、自民党政治の異常さは際立っています。世論に押されて自民党政府はことし三月、二〇一〇年度の自給率を四五%程度とする目標を出しましたが、これまでの大規模化偏重による家族経営の切り捨てや農産物の輸入「自由化」=輸入拡大策になんの反省もない自民党政治では、自給率の向上は図れません。

 「農は国の大もと」――国民の食料を自国できちんとまかなってこそ、明日の「国づくり」の土台がすえられます。日本共産党は農業を基幹産業と位置づけ、食料自給率を早急に五〇%台へと回復させ、引き続き六〇%台をめざします。

 (1)農産物貿易の無謀な「自由化」に反対し、WTO農業協定の改定を要求する

 国連食糧農業機関の報告によれば、現在、世界で八億二千万人が飢餓や栄養不良に苦しんでおり、世界人口の増加に対応して二〇二〇年までに穀物の生産を四割増やさなければなりません。日本共産党は、少なくとも、主食である米を「自由化」の対象からはずすとともに、日本のような自給率が極端に低い国では、実効ある輸入規制がとれるようにし、生産拡大への助成措置を一律に削減・禁止している条項を削除するなどWTO農業協定の改正を要求します。「自由化」一辺倒を見直せ、環境や食品の安全を守れ、家族経営を守れという農民、消費者、環境保護団体の声は国際的に広がっており、こうした動きと連帯してWTO協定の改定を世界に訴えます。

 (2)主な農産物の価格を保障し、自給率の低い作物の増産を奨励する

 先進資本主義国のなかで、価格保障制度をすべて廃止しようとしているのは日本だけです。EU(ヨーロッパ連合)では、価格保障を縮小しても、その分、所得保障を充実させ、農家数を減らさない努力をしています。アメリカでも、穀物価格の暴落に苦しむ農家を救済するために、この二年間で総額百四十七億ドル(約一兆六千億円)もの予算を追加支出しています。

 日本の自給の柱である米について、毎年七十万トン以上もの無用の輸入をやめ、米の政府買い入れ量を拡大し、買い入れ価格を生産費の水準に近づけるようもとめます。自主流通米についても適正な値幅制限をもうけるべきです。また、その他の農産物への価格保障制度も充実させます。とくに自給率が低い麦、大豆、飼料作物については、当分のあいだ、一定の奨励金を交付します。

 家族経営を安定させるため、新規就農者のための「青年農業者支援制度」の創設をはじめ、後を継ぐ青年や女性を応援する制度を確立します。

 自民党政治は、農林水産予算でも、大型土木事業や大型施設の建設に多くをふりむけ、公共事業予算が農林水産予算全体の五割をこえるというゆがみをつくってきました。その結果、農道空港や諌早湾干拓事業などゼネコンに奉仕するだけで農林漁業振興とは無縁のむだづかいが、全国各地でおこなわれています。フランス、イギリス、ドイツでは、価格・所得保障予算が農業予算全体の約七割をしめています。日本では二割にすぎません。こうした予算の「逆立ち」をあらため、価格・所得保障の割合を高めることで農家経営の改善、自給率の向上に必要な予算を確保します。

 (3)条件不利地域の農家や都市農業への支援をおこなう

 農業生産の三分の一をになっているのが不利な条件にある中山間地農業です。政府は今年度からこの地域への「所得補償」を導入したものの、その対象がきわめて限定されているためほとんど役にたちません。実態にあった、文字通りの所得補償に改革します。

 都市農業は、新鮮な農作物の供給や都市の貴重な緑地としての役割をはたしています。農業生産を続ける間は、市街化区域内の農地の課税評価を、農業収益を基準として固定資産税・相続税を大幅に軽減するなど、都市農家への支援を強めます。


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