大銀行・ゼネコン応援から、国民の暮らし応援へ

日本経済の危機打開へ 3つの転換を提唱する

2001年3月23日 日本共産党


目次

1、国民の所得・消費を冷え込ませた自民党政治の大失政

2、大銀行・ゼネコンを応援する「景気対策」の失敗はだれの目にも明らかに

3、日本経済の危機を打開するために3つの転換を

4、「逆立ち財政」をただすことを緊急中心の課題として、景気回復と財政再建を両立させる道をきりひら


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1、国民の所得・消費を冷え込ませた自民党政治の大失政

 いま日本経済は、放置することができない、深刻で、新しい危機に直面しています。

 日本経済の六割を占める個人消費は、九三年以来八年連続で減りつづけ、とくに、消費税増税などの九兆円負担増が強行された一九九七年以降、所得と家計消費の減少が急速にすすんでいます。この三年間に、勤労者世帯の実際に使える所得(可処分所得)は、月平均で二万四千円、家計消費は一万六千円も減りました。国民一人ひとりの暮らしのための支出、個人消費が、これだけ落ち込んだのは、かつてなかったことです。

 失業者は、一九七〇年代の石油ショック後の不況時で百二十四万人(七八年)、八〇年代の円高不況時でも百七十三万人(八七年)でした。ところがいまは、その水準をはるかに超える三百二十万人にもなっています。昨年の企業倒産は一万九千件で、負債総額は約二十四兆円と過去最大規模になっています。

 政府も、日本経済の現状を「緩やかなデフレ状態」にあると認定しました。物価が下がるからといって、「良いこと」と言うわけにはいきません。物価が下がり、需要が減少するという「デフレ」がこのまま推移すれば、企業の売り上げがますます落ち込み、それが国民の所得と消費、需要をいっそう落ち込ませ、さらに「デフレ」がひどくなる――という悪循環(デフレスパイラル)におちいるからです。その瀬戸際に、いま日本経済は立たされています。

〔個人消費に大打撃あたえ、経済危機を深刻化させた、消費税増税、社会保障連続改悪、リストラ応援の3つの失政〕

 日本経済が、ここまで落ち込んだ最大の原因は、自民党政治、自公保連立政権が、一九九七年以来、日本経済の六割を占めている個人消費を痛めつづけ、冷え込ませる、経済失政を繰り返してきたからです。

 その第一は、消費税引き上げなどの増税政策をおしつけたことです。

 一九九七年、当時の橋本内閣(自民、社民、さきがけ政権)が消費税増税、医療費引き上げ、特別減税廃止などによる九兆円負担増を押しつけようとしたとき、日本共産党は、国会で、「国民に年間九兆円という負担増は過去どの内閣もやったことがない。不況のもとで、国民の消費にこんな打撃を与えたらとりかえしのつかないことになる。これは、日本経済のかじ取りを決定的に誤るものだ」と警告しました(一九九七年一月・不破委員長代表質問)。一九八九年の消費税の導入にも一九九七年の五%増税にも、きっぱり反対したのは、日本共産党だけでした。

 この警告を無視して、強行された消費税増税などの九兆円負担増が、国民の暮らしに深刻な打撃をあたえ、わずかながらも立ち直りかけていた日本経済を再びどん底に突き落としたのです。

 第二は、社会保障の連続的な改悪です。

 この間、年金は「逃げ水」のように、支給開始年齢が先延ばしにされ、四十歳の夫婦で生涯に受け取る年金額が一千万円も削減される仕組みがつくられ、老人医療費の引き上げも強行されて、深刻な受診抑制がおこっています。介護保険制度も、負担が重くてサービスを受けられないなど、国民と高齢者に苦痛をもたらすものになってしまいました。これらの連続改悪による給付の切り下げや負担増が、いのちと健康をおびやかすとともに、国民の所得を奪い、将来不安をつのらせ、それが個人消費を冷え込ませる大きな要因にもなってきました。

 第三は、大企業のリストラを応援する政治です。

 失業者をたくさんつくり、賃金、ボーナスをカットするリストラ競争が、国民の購買力を奪っただけでなく、ものづくりの基盤を崩すなど、日本経済と産業を荒廃させています。

 リストラでもうけをあげることは、個々の大企業にとっては「都合がいい」ことのように見えますが、社会全体でみれば、そうではありません。失業の増大や賃金・ボーナスのカットは、国民の所得を減らし、消費を冷やして、経済をさらに悪化させるからです。こうして、経済全体が縮小すれば、そのツケは、売り上げ減少という形で大企業自身にもはね返ってきます。

 ところが政府は、リストラをすれば税金をまけてやるという仕組み(「産業再生法」)までつくり、このリストラ競争をあおり、応援し続けてきました。「産業再生法」による減税額は、上位十社だけでも二百二十六億円にのぼり、その支援で二万三千人もの人員削減が行われています。これでは、政府が「不況運動」の先頭にたったようなものです。こんな国は、世界中探してもありません。

 日本経済全体が、いま深刻な危機に直面しているのは、こうした国民の暮らしを痛めつける経済失政が続いた結果です。こうした失政をすすめた自民党中心の政権の責任はきわめて重大です。

2、大銀行・ゼネコンを応援する「景気対策」の失敗はだれの目にも明らかに

 国民のくらしを痛めつける一方で、自民党政治が「景気回復」といって、やってきたことはといえば、大銀行支援のために七十兆円もの公的資金枠をつくり、惜しげもなく税金を投入する、ゼネコン応援のためのムダな大型公共事業を中心に年間五十兆円もの巨費を投入し続けるなど、肝心の個人消費はそっちのけの大銀行、ゼネコン応援政治でした。

政府は、「大企業が利益を増やせば、いずれダムの水がいっぱいになって放流されるように、国民の暮らしにもまわっていく」と説明してきました。しかし、大企業がリストラで失業者や倒産を増やして利益をあげても、国民の暮らしはよくなるわけがありません。最近になって宮沢財務相は、「企業設備や企業利益の回復が家計消費に一向に連動しない。家計にまわると期待したのは間違いだった」と告白せざるをえませんでした。大銀行・ゼネコン応援政治の破たんは、いまや明瞭です。

〔政府の「緊急経済対策」は、またもや国民犠牲の大銀行、ゼネコン支援だけ〕

 ところが、いま自公保政権が「緊急経済対策」と称してやろうとしていることは、またもや大銀行とゼネコン・大企業を応援することだけです。

 たとえば、その一つが、株価が下がって銀行やゼネコン・大企業が大変だというので、「株式買い上げ機構」をつくって銀行や大企業が保有している大量の株を買い入れ、損失がでたら税金で穴埋めすることです。株投機の損を国民の税金で穴埋めする、こんな「市場経済」があるでしょうか。

 しかも森首相は、日米首脳会談で、アメリカの「強い要請」を丸のみして、「不良債権処理を早期にやる」ことを公約し、金融・財政政策の対米追随ぶりを示しました。もちろん、銀行が多額の不良債権を抱えていることは良いことではありません。投機的・乱脈融資で破綻した企業にたいする債権処理は当然です。

 しかし、森首相が対米公約してきた「不良債権の早期処理」とは、日本経済にとってたいへん危険なものです。政府はそのための二つの方法を考えています。一つは、銀行が債権を放棄して、「借金棒引き」をおこなう方法です。もう一つが、銀行が借り手を倒産させ、回収できる分だけは回収するという方法です。

 第一の方法で政府がねらっているのは、ゼネコン、大企業などにたいし、いっそう大規模なリストラを条件に、「債権放棄=借金棒引き」をおこなうことです。しかし、そうなれば、失業、倒産の激増は必至です。

 第二の方法では、広範な中小企業がねらわれています。この大不況のなかで多くの中小企業が赤字経営におちいっています。もし、この中小企業への融資が「不良債権」として扱われるなら、ここでも中小企業の倒産の激発と失業者のいっそうの増大は避けられません。

 そして、いずれの場合も、銀行がこうむった損失の穴埋めは、七十兆円の公的資金でおこなおうというのです。

 これでは、景気回復どころか、取り返しのつかない大不況に日本経済は落ち込んでしまいます。

これまで、銀行支援のためすでに二十数兆円もの公的資金が投入されてきました。それでも、不良債権が減らないのは、いくら不良債権を処理しても、不況のため次々と新たな不良債権が発生しているからです。個人消費を軸に、日本経済そのものを建て直すことをぬきに、いくら税金を投入しても不良債権問題は解決できません。

 日銀が金融の量的緩和や事実上のゼロ金利政策の復活を決めたことも重大です。金融の量的緩和策は、事実上のインフレ政策への転換をはかるものです。インフレになって物価が上昇すれば、国民の預貯金は目減りし、所得が減少しているもとで、ますます個人消費に打撃をあたえることは必至です。また、国民が受け取る純利子所得は、かつては年間十兆円程度あったものが、二〜三兆円に減ってしまい、この四年間だけでも三十兆円近い利子所得を奪われてきました。それが、再びゼロ金利というのでは、大銀行の利益を増やし、ゼネコン・大企業の利子負担を減らすことには役立っても、国民からはさらに利子所得をうばい、個人消費をますます冷え込ませてしまうだけです。

 破たんした道にしがみつく自民党政治、自公保政権には、日本経済のかじとりの資格も能力もなくなったというべきでしょう。

3、日本経済の危機を打開するために3つの転換を

 いま、景気を本気でいい方向に向けようとするなら、この間、自民党中心の政治がおこなってきたゼネコン・大企業と大銀行への応援の政治から、国民の暮らしの応援に切り替え、国民の消費、購買力を直接高める政策を、緊急かつ大胆に押し進めることが不可欠です。

 日本共産党は、そのために、次の三つの分野での転換を、緊急の経済対策として提案し、その実現のために全力をあげます。

(1)消費税を緊急に3%に引き下げ、国民の購買力を直接応援する

 国民の購買力を直接あたためるためには、消費税の減税がもっとも有効です。毎日の買い物に直接影響し、消費マインド(意欲)を高めるという点でも、生活が苦しい中・低所得者に厚い減税となるという点でも、もっとも効果があります。また、不況で売り上げが減少しているうえに、消費税を転嫁できずに苦しんでいる中小業者の営業を助けるうえでも有効です。

 ところが政府は、反対に、「消費税率を上げなければならない」(宮沢財務相、二月二十日の衆院予算委員会での答弁)などといって、いっそうの増税さえ計画しています。昨年、当時の政府税制調査会の会長は、「消費税率の一〇%から一五%への引き上げも」と語っています。もし一〇%への引き上げということになれば、十二兆五千億円もの大増税になります。こんな大規模な増税がおこなわれるなら個人消費は、奈落の底につきおとされ、日本経済は取り返しのつかない大打撃を受けてしまいます。

 いまやるべきは、増税でなく、消費税の三%への引き下げです。

 日本共産党は、もともと低所得者ほど重い負担になる不公平な税制の典型である消費税には反対です。増税に反対することはもちろん、減税から廃止への道をすすむことをいっかんして主張してきました。この立場から、昨年の総選挙では、財政の危機的な状況を考慮して、まず食料品非課税を実現し、つづいて財政再建をはかるなかで消費税引き下げ、廃止の道を切り開くという提案をおこないました。

 しかし、いま景気の冷え込みは容易ならざる事態になっており、こうした段階を踏む余裕はなくなっています。そこで、消費税の三%への引き下げを緊急の課題として実施し、これを中心に国民の消費、購買力を高める政策をただちに実行するよう提案します。

(2)社会保障の連続改悪を凍結し、将来不安をなくす

 いま実施・計画されている三兆円負担増の改悪と、今後計画されている改悪を凍結します。

 昨年から今年にかけても、相次いで、負担増と給付削減の改悪が実行に移されつつあります。年金の賃金スライド停止(一兆円)、一月からの老人医療一割定率負担(三千億円)、四月からの年金支給開始年齢の引き延ばし(二千億円)、十月からの高齢者介護保険料の満額徴収(四千億円)、さらに労働者の雇用保険料負担引き上げ(三千億円)、失業者の〃命の綱〃である失業給付期間の短縮(六千億円)も計画されています。あわせて約三兆円もの給付削減・負担増です。この給付削減・負担増計画を凍結します。

 さらに、七十歳以上のすべてのお年寄りからの保険料徴収と医療費負担増をねらう老人医療制度の抜本的な改悪や健保本人の三割負担など、現在、検討されている改悪の計画も、いったんすべて凍結することを提案します。そして、凍結している間に、国民が安心でき、頼りにできる社会保障体系を、国民合意のうえでつくりあげていきます。

 また、介護保険がスタートして一年たちましたが、お年寄りの保険料、利用料の負担の重さが深刻な矛盾をひろげています。朝日新聞の市町村を対象にした調査では、六二%が「自己負担を気にして利用が抑制された」と答えるなど、利用抑制によって七割の市町村で給付実績が初年度の予算を下まわっています。〃介護保険で介護をうけられなくなった〃という事態をなくすために、国の制度として住民税非課税のお年寄りなど低所得者への保険料、利用料の減免制度をつくります。

(3)リストラをおさえ、中小企業を支援する政治で、雇用危機を打開する

 東京証券取引所の上場大企業の従業員数が六年間で二割も減少するなど、大企業のリストラは、とどまることがなく、深刻な雇用危機と不況の大きな原因になっています。政府の「ミニ経済白書」ですら、大企業の利益が増えたのに、家計の所得と消費が伸びず、景気が良くならないのは、大企業がリストラをしているからだと指摘しています。いまの大企業によるリストラ競争は、不況の悪循環に拍車をかけているだけなのです。

 こうしたリストラ競争を応援する政治から、雇用危機を打開し、雇用を大切にする方向への転換が必要です。

〔サービス残業なしの「経営計画」をたてる大運動を提唱する〕

 いまのリストラは、サービス残業を含む長時間労働を前提にして計画されています。本来なら、労働者は「過剰」ではなく、不足しているのです。

 働かせても賃金は払わないというサービス残業は、明白な違法行為=犯罪です。財界系のシンクタンク・社会経済生産性本部は、サービス残業をなくせば九十万人の雇用が増えると試算しています。

 政府が先頭にたって、働く状態を改善しながら、失業も、就職難も解決し、日本経済も立て直していく、そういうサービス残業なしの経営計画をたてる大運動を全産業規模でおこすことを提案します。さらに、次の段階では、残業そのものの圧縮にも取り組みます。

〔中小企業の経営を守り、応援する予算とルールを〕

 雇用者の八割は中小企業で働いています。ところが、大企業のリストラは、下請中小企業の切り捨てや単価切り下げなど、中小企業に直接の被害を与えただけでなく、リストラ・「不況運動」による消費減退が、商店街をはじめ中小業者の売り上げの減少をもたらしています。深刻な経済危機から、中小企業の経営を守ることは、雇用の危機を打開するうえでも重要です。

 そのためにも、予算の裏づけを持った中小企業への対策を抜本的に強化することが必要です。政府の中小企業予算は、一般歳出のわずか〇・四%の千九百四十八億円にすぎません。これは在日米軍に安保条約上の義務もないのに支出している「思いやり予算」より六百二十五億円も少ないのです。自民党や公明党の政権が、いかに中小企業に冷たいかが、ここにも現れています。

 大企業の横暴から中小企業や地域経済を守るルールを確立します。大企業の身勝手な下請中小企業の切り捨てや一方的な単価切り下げを規制します。政府が、「下請け二法」をきちんと活用するとともに、下請検査官の増員など、必要な体制をとることも緊急の課題です。また、大型店の横暴から、商店街や地域経済を守るルールをつくります。

 中小企業にたいする銀行の「貸し渋り」は解消されるどころか、最近の株安による銀行の経営悪化を口実に、さらに激化しようとしています。それにもかかわらず政府は、その代替措置として導入された「中小企業金融安定化特別保証」をことし三月で廃止することにしていますが、復活・継続すべきです。

 いま野菜などの農産物や繊維製品などが、洪水のように日本に持ち込まれ、農家や業者は商売がたちゆかなくなっています。このままでは、日本から農業や地場産業が消えてしまいます。セーフガード(緊急輸入制限)の発動は、アメリカ、カナダ、韓国でもおこなわれているようにWTO(世界貿易機関)協定でも認められた当然の権利であり、日本もただちに発動すべきです。

4、「逆立ち財政」をただすことを緊急中心の課題として、景気回復と財政再建を両立させる道をきりひらく

 日本共産党は、経済危機の打開のために、以上の緊急対策を提案するとともに、財政再建についても、無責任に先送りすることなく、必要な転換にただちに取り組むことを主張します。国と自治体の借金が六百六十六兆円にものぼる財政危機を、このまま放置することは、許されません。

 緊急にとりくむべきは、歳出のムダ・浪費にメスを入れることです。その中心は、「ゼネコン型公共事業には五十兆円、社会保障には二十兆円」という「逆立ち財政」をあらためることです。ムダな大型公共事業費を削減し、段階的に半減させます。公共事業の中身を住宅、福祉施設など国民の暮らしに必要な社会資本整備中心にすれば、中小建設業者の仕事は十分確保できます。大銀行支援のための七十兆円もの公的資金の枠組みは廃止します。軍事費の大幅削減にも取り組みます。この取り組みは、財政再建への決定的な一歩を踏み出すことにもなります。

 同時に、景気回復の状況をみきわめながら、歳入のあり方――税制の民主的改革、安心できる社会保障体系づくりに取り組みます。その大原則は、「応能負担(能力に応じた負担)」をつらぬくことです。税制では、まず大企業・高額所得者優遇の不公平税制の是正に取り組みながら、直接税中心、総合・累進、生計費非課税という民主的税制を確立することが基本になります。社会保障制度については、社会保障への国庫負担を増やすとともに、大企業や高額所得者の負担を適正化することが不可欠です。財政・税制・社会保障制度の民主的改革に取り組むなかで、景気回復と財政再建を両立してすすめる道を、国民的討論と合意でつくりあげていきます。


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