国民のみなさん
小泉内閣は、ただでさえ国民の暮らしが、この長期不況でおしつぶされそうになっているときに、社会保障で三兆円を超える負担増を強行し、所得税・住民税増税や外形標準課税の導入まで計画しています。こんな大負担増と庶民増税を実施したら、国民の暮らしが大打撃を受けるだけでなく、景気・経済もとりかえしのつかないことになります。
小泉内閣は、株価の急落を目の前にして、あわてて「デフレ対策」などと言い出しています。しかし、国民には三兆円負担増や増税を押しつけ、乱暴きわまる「不良債権処理」や大企業のリストラは奨励するという「小泉改革」を強行するのでは、暮らしも経済もよくなるわけがありません。
日本共産党は、この経済危機から国民の暮らしをまもるため、次の緊急要求にもとづく共同のたたかいをよびかけるものです。
来年四月から、サラリーマンなど健康保険本人の窓口負担が二割から三割に値上げされ、健康保険料も値上げされようとしています。介護保険料は、来年度、平均で約一〇%引き上げられ、雇用保険料は、今年十月から月収の一・二%から一・四%に、さらに、来年度は一・六%まで引き上げようとされています。年金の給付額も、“物価が下がった”というので過去四年分にさかのぼって二・三%も減らそうとしています(財務省方針)。厚生年金だと年間約六万六千円(厚生労働省モデル年金の場合)も給付額が減ることになります。これらすべてをあわせると、三兆二千四百億円という未曾有の負担増になります。
国民の暮らしをまもるべき社会保障が、逆に、暮らしに襲いかかろうとしているのです。
日本経済が、橋本内閣による九兆円負担増によって、戦後最悪の大不況に陥るという痛恨の経験をしたのは、わずか五年前です。それでも、このときは、まだ国民所得が毎年五兆円程度増えていました。ところがいまは、国民の所得が一年間で四兆円も減っているのです。そこに政府が国民から社会保障で三兆円以上もの所得を奪ったら、暮らしをさらに追いつめ、景気と経済に深刻な打撃となるのは、誰の目から見ても明らかではないでしょうか。
たとえ社会保障の制度の将来像について意見の違いがあったとしても、暮らしをまもり、経済危機を打開するためにも、「三兆円負担増はやめよ」の声を大きくひろげていこうではありませんか。
国民の暮らしをおしつぶそうとしているのは、社会保障の負担増だけではありません。この大不況の最中に、国民と中小企業への大増税が計画されています。
一つは、所得税・住民税の増税です。家族を扶養している勤労者を対象に、配偶者特別控除や「教育減税」として導入された特定扶養控除の縮小・廃止などで、五千億円もの増税をかぶせようとしています。
もう一つが、九割以上の中小企業が増税になる外形標準課税の来年度からの導入です。 外形標準課税は、利益には関係なく、赤字であろうが、経営が苦しかろうが、情け容赦なく税金をとりたてるものであり、長期不況で苦しむ中小企業には、致命的な大打撃となるものです。また、人件費にも税がかかるため、中小企業に人減らしを強いることになります。日本共産党は、東京都の大銀行に限定した外形標準課税の導入に賛成しましたが、これは多額の業務純益を上げながら、不良債権の処分損が出ることを理由に、まともに税金を払わない大銀行だけを対象としたもので、日本中の中小企業に大増税を押しつける政府の外形標準課税とは、まったく異なったものです。さらに、消費税の免税点の引き下げによる二千億円の増税も計画されています。
しかも許しがたいことは、国民や中小企業への増税で増えた税収は、「投資のための減税」などの名目で、大企業への法人税減税のために使うというのです。法人税減税の恩恵を受けるのは大企業を中心とした黒字企業だけです。
こんなやり方は、経済政策としても大きな間違いです。国民の暮らしや中小企業を押しつぶしてしまったら、いくら大企業の税金をまけてやっても、景気はよくなるどころか、いっそう悪くなるからです。
庶民と中小企業からは大増税、大企業には減税という逆立ちしたやり方を、きっぱり阻止しようではありませんか。
小泉内閣が「構造改革」の名ですすめる「不良債権の早期最終処理」によって、多くの中小企業が金融の道を絶たれ、連鎖倒産に追い込まれるなど、政府自身の手による中小企業つぶしが強行されています。
政府が、大銀行と一体になって、「不良債権の早期最終処理」をすすめてきた結果、ベンチャー企業も、老舗といわれる企業も、つぎつぎと倒産に追い込まれてきました。ところが、この一年間に十兆円の不良債権を処理したにもかかわらず、新しく二十兆円も発生したために、去年の同じ時期に三十二兆円だった不良債権は、四十二兆円にも増えてしまいました。不良債権を無理やり処理して倒産、失業を増やせば、結局、景気が悪化し、新たな不良債権が発生するという悪循環に陥ってしまっているからです。
それにもかかわらず、小泉首相は、日米首脳会談で「不良債権処理をさらに加速する」と約束してきました。日本銀行に銀行保有株を買い取らせるという、世界でも例がない「禁じ手」も、「株価対策」とともに、大銀行のリスク(危険)を日銀が肩代わりして、「不良債権処理を加速」させるためです。
信用金庫や信用組合を政府が先頭に立って、次々につぶしていくという、暴挙としか言いようがない金融政策も「不良債権処理」の名ですすめられています。金融機関への「早期最終処理」の押しつけが、貸し渋り、貸しはがしに拍車をかけてきました。
無理やり中小企業を倒産に追い込むような、いまのやり方で、不良債権を減らすことはできません。それは、この間、三十兆円もの公的資金を銀行に投入しても、不良債権が増え続けていることでもあきらかです。
いまやるべきは、無理やり不良債権を処理するというやり方を抜本的にあらため、地域・中小企業金融を立て直し、地域経済と中小企業に責任を負う、まともな金融の再建をはかることです。
失業率は戦後最悪、完全失業者は三百六十万人をかぞえ、多くの国民がいつ失業するかわからないという深刻な不安にさらされています。ところが、大企業の職場では、雇用を奪い、リストラをすすめるための無法がまかりとおっています。政府の雇用統計でも、中小企業は必死で雇用をささえているのに、大企業では、雇用を減らし続けていることが明らかになっています。
いま、大企業の職場では、希望退職の強要、遠隔地に転勤させると脅して「退職や別会社への転籍」をせまる、「隔離部屋」や社員の前で罵倒するいじめで会社を追い出すなどなど、退職させるためには、人権を踏みにじり、法律さえ平然と破るという、無法なリストラの嵐が吹き荒れています。
こんな不法行為、脱法行為をなくすことは、政府と労働行政の責任です。同時に、経済界も、真剣に考えるときです。「会社のためなら法律も無視する」という労働者への無法行為が横行していることが-、最近のあいつぐ企業スキャンダルや原発の事故隠しなど企業モラルの破たんにもつながっています。
いまこそ、無法なリストラを職場から一掃するために、労働団体の違いなどをこえて力をあわせるときではないでしょうか。
人べらし・リストラの結果、いま多くの職場で、これまで以上に「サービス残業」や、労働者の健康と家庭を破壊する長時間残業がはびこっています。政府の統計でも失業者が増えているにもかかわらず残業時間も増え、自動車総連の調査では、三割以上が月に五十時間以上の残業をやりながら、残業代が「きちんと支払われている」のは、わずか四五%でしかありません。
「サービス残業」の根絶や長時間残業の是正は、雇用の拡大に直接大きな効果を発揮します。三百六十万人もの完全失業者がいる一方で、過労死や過労自殺が増え続けるという異常な事態は、ただちになくさなければなりません。
職場からの無法をなくすために、政府は、実効ある措置をただちにとるべきです。とくに、(1)繰り返しの呼び出しなど「転籍や退職の勧奨行為は、限度をこえれば違法な権利侵害となる」という最高裁判例を徹底するなど、希望退職、転籍などの強要をやめさせること。(2)「サービス残業」とよばれるただ働きを根絶するとともに、残業時間は年間三百六十時間、月四十五時間を上限にする、という大臣告示を徹底し、企業に守らせること、を強く要求します。
政府の調査でも、完全失業者のうち、雇用保険の失業給付を受けている人は二割にすぎず、半分の失業者が無収入の状態に置かれています。この大不況下で、不幸にして職を失ってしまった人とその家族の最低限の生活を支えることは、ともに働き、ともに社会を構成する人間としてあたりまえの連帯であり、国や自治体は、そのためにもっと力をつくすべきです。
当面、すくなくとも失業率が三%程度の水準に戻るまでの緊急措置が必要です。そのための四つの対策をもとめます。(1)雇用保険の給付期間を一年間まで延長する。リストラで大量に失業者をつくった大企業から特別保険料を徴収するなどして、その財源を確保する。(2)雇用保険が切れ、生活が困窮する失業者(働く能力と意思があり、求職活動を一生懸命している失業者)への生活保障制度を創設する。(3)子弟の学費・授業料などの緊急助成制度、住宅ローンのつなぎ融資など、家庭と家族を維持するための制度を創設する。(4)臨時のつなぎ就労の場を自治体がつくる。――こうした要求を緊急に実現するために、失業している人も、職がある人も、ともに力をあわせようではありませんか。
国も、地方も、大型公共事業へのバラマキなどで巨額の借金をかかえるという、厳しい財政状況にあります。小泉内閣は、国民に負担増をおしつけ、国民の生活を押し下げることで財政危機をとりつくろうとしていますが、これでは負担増と不況の悪循環におちいり、税収も減らしてしまうという最悪の道です。
しかも、小泉内閣は、国民には負担増や増税を強いながら、大企業や大銀行には、減税や巨額の公的資金の投入など新たなバラマキをしています。公共事業もわずか三%削減としたうえに、全体の事業量は減らさないなどと、まともにメスを入れようとはしていません。世界第二位の五兆円にのぼる軍事費も事実上の聖域あつかいになっています。こんな「逆立ち」した税金の使い方があるでしょうか。
いまほど、税金の使い方が大きく問われているときはありません。貴重な財政資金だからこそ、国民の暮らしと社会保障を最優先に使うべきです。
国民のみなさん
日本経済の源泉、原動力は、一人一人の国民です。国民から活力を奪って、日本経済が活性化するはずがありません。国民の暮らしを支える政治にきりかえてこそ、長く、厳しい大不況から脱け出す道も開けてきます。そのためにも私たちが提案する、暮らしをまもるための四つの緊急課題での幅広い共同を大いに強めようではありませんか。
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