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「世界一高い学費」を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために

2008年4月16日 日本共産党

 この春、多くの新入生が希望に胸をふくらませて学校の門をくぐりました。新入生のみなさんは、有意義な学園生活をおくり、自分のやりたい勉学やスポーツなどにうちこみたいと、期待に胸はずませていることでしょう。日本共産党は、そうしたみなさんの願いが実現するように全力で応援します。

 <「ひとしく教育を受ける権利」が侵害されている>

 ところが日本には、進学を手放しで喜べない事情があります。「世界一高い学費」が、高校生や学生、その家庭に重くのしかかっていることです。子育て世帯についての実態調査(国民生活金融公庫)によれば、高校入学から大学卒業までにかかる費用は一人平均1045万円、わが子のための教育費は年収の34%に達しています。

 とりわけ見過ごせないことは、「貧困と格差」の拡大の中で、学費が高すぎるために毎日深夜までアルバイトをして体を壊したり、学校を去らざるをえない若者が増えていることです。「1年間で2クラス分くらいの人が高校をやめた」「大学に合格したが入学金が払えず、1年間バイトをしてお金をためて再受験する」など、その実態は深刻です。私立大学では毎年1万人の学生が経済的理由から退学しています。

 憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべての国民は……経済的地位……によって教育上差別されない」(第4条)と明記しています。いま起きていることは、憲法と法律が禁じている「経済的地位による教育上の差別」そのものです。

 <「学費無償化」の方向は世界の流れ>

 こうした事態を招いた最大の原因は、自民党政府の極度に貧困な教育対策です。高等教育予算の水準(国内総生産にしめる割合)は、OECD(経済協力開発機構)加盟国全体の平均1.0%に対して、日本は0.5%にすぎず、加盟国中で最下位です。その一方で自民党政府は、“学費は、教育で利益を受ける学生本人が負担する”という「受益者負担」の考え方を教育にもちこみ、学費値上げをすすめてきました。1970年に1万2000円だった国立大学の授業料は今では53万5800円(標準額)で、これほど高騰した公共料金は他にありません。

 国際人権規約(1966年に国連総会で採択)は「高校や大学の教育を段階的に無償にする」と定めており、欧米のほとんどの国では高校の学費はなく、大学も多くの国で学費を徴収していません。

 教育を受けることは基本的人権の一つであり、経済的理由で妨げられるべきではありません。若い世代が高校や大学で新しい知識や技術、理想を身につけることは、社会の発展にとって不可欠ないとなみであり、それは社会全体にとっての貴重な財産となります。それだからこそ、学費をできるかぎり低額にとどめ、無償に近づけてゆくことが世界の大勢になっているのです。このことは、国民の「ひとしく教育を受ける権利」を保障した日本国憲法の精神にも合致しています。国民の生活や権利にかかわる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識になっているルールが確立していないことは自民党政治の大きな歪みですが、「世界一高い学費」もその一つにほかなりません。

 誰もがお金の心配なしに教育を受けられる条件を整えることは、若者に安心と希望をもたらし、日本の未来を支える安定した基盤となります。困難なもとでも真面目に学ぼうとしている若者の努力に応えることこそ政治の責任です。

 日本共産党は、経済的理由で学業を断念する若者をこれ以上出さないために、以下の4つの提言をおこなうとともに、「世界一高い学費」を軽減させるための国民的な運動をよびかけます。

日本共産党の提言

(1)公立高校の授業料減免を広げる。私立高校の授業料を減免する「直接助成制度」をつくる

 高校は進学率が97%を超え、「準義務教育」というべき実態がある一方で、経済的理由で高校に進めない若者も増えています。平均年収213万円の母子家庭からは、「高校進学の夢も見るなというのか」という悲痛な声が上がっています。また、期日までに入学金が未納だからという理由で、生徒を入学式から排除するという事態までおきています。

 公立高校の授業料減免のための国の予算枠(交付税の算定基準)を増やし、国の責任で、減免対象を少なくとも年収500万円(四人世帯の場合)にまで引き上げます。

 私立高校は授業料以外の学費負担も重く、いっそう深刻な事態が広がっています。年収500万円以下の世帯は授業料全額免除、年収800万円以下の世帯は一部減額とするような、授業料直接助成の制度をつくることを提案します。専修学校・各種学校(高校に準じるもの)も同様とします。

(2)国公立大学の授業料減免を広げる。私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくる

 大学の初年度納付金は国立80万円以上、私立130万円以上(平均)と庶民が負担できる限界を超えており、所得に応じた負担軽減が必要です。ところが、1982年に学生比12.5%あった国立大学授業料の減免予算枠は5.8%に削られ、減免を受ける要件を満たしながらも予算がなくて受けられない学生は少なくありません。私立大学にいたっては国の予算枠は学生比わずか0.1%に過ぎません。

 国公立大学・高専については国及び地方の減免予算枠を引き上げ、東京大学ではじめたような世帯年収400万円以下は全員授業料免除とする制度を全国でおこなえるようにすべきです。

 また、私立大学の学生にたいしては、世帯年収400万円以下の場合に一定額が減額となるような授業料直接助成の制度をつくることを提案します。

(3)国の奨学金をすべて無利子に戻し、返済猶予を拡大する。経済的困難をかかえる生徒・学生への「給付制奨学金制度」をつくる

 「世界一高い学費」のもとで、奨学金は“頼みの綱”です。ところが国の奨学金(日本学生支援機構=旧育英会)は有利子が約7割を占め、この春も10万人の大学受験予定者が奨学金を受ける資格がありながら無利子奨学金から締め出されました。

 国の奨学金を以前のようにすべて無利子にもどすとともに、低賃金などの事情で返済が困難な場合、イギリスのように一定の収入(年300万円)に達するまで返済を猶予することが必要です。

 欧米では、世帯収入や兄弟姉妹の人数などの条件に応じて支給される、返済なしの「給付制奨学金」が主流です。実際、親の失業や病気などの事情で、授業料減免だけでは学業が続けられない場合があります。そうした若者を一人も出さないために、日本でも経済的困難の程度に応じて必要な経済支援をおこなう「給付制奨学金制度」をスタートさせるべきです。

(4)「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約を批准する

 国際人権規約(A規約=経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)の第13条は、高校と大学を段階的に無償化することを定めています。

 日本政府は、国際人権規約に加わりながらこの条項について「留保」したままです。無償化条項を留保している国は、条約加盟国157カ国中、日本とマダガスカル、ルワンダの3カ国だけです(2008年2月現在)。2001年には、国連・社会権規約委員会から「なぜ世界第2位の経済力の日本が認めないのか」「早く留保を撤回するように」という勧告が出されています。ところが政府は、回答期限の2006年が過ぎても、勧告への回答を放置したままです。かつて政府は「解除する方向に努力をし、またそういう責任がある」(1979年、園田直外務大臣)と明言していました。ただちに「留保」を撤回し、「世界一高い学費」の負担軽減をすすめる姿勢を明確にすべきです。

 以上の提言を実現するための経費は年間約1900億円であり、政府がやる気にさえなれば、ただちに実行可能なものです。日本共産党はその実現のために全力をつくします。


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