農家の声を農政に届け、農地と地域農業をまもる農業委員会に
日本共産党の農業委員はがんばります
2008年4月 日本共産党 農・漁民局
農家のみなさん。この七月、全国の約六割の市町村で農業委員選挙がおこなわれます(沖縄は九月)。地域農業や農地をどうまもるのか、どこでも大きな問題になっているなかでの選挙です。農家の声をしっかりと代弁し、地域農業と農地をまもる農業委員会の役割を強める機会にしようではありませんか。
「こんな米価では作る人がいなくなる」、「安全な国産がほしいのに輸入品ばかり」――。
いま、わが国の食料と農業は、農家経営が成り立たなくされ、食料自給率が三九%と世界でも異常な水準に低下するなど、歴史的な危機に直面しています。米価暴落を野放しにし、「競争力」がないなどとして中小農家を切り捨て、アメリカや財界のいいなりに国民の食料を際限なく海外に依存してきた歴代自民党政府の農政の結果です。
しかも事態をいっそう深刻にしているのが、世界の食料需給のかつてないひっ迫です。この数カ月、輸入穀物を原料とする食品や飼料があいついで値上がりし、中国製冷凍ギョーザ事件も加わって、食の海外依存の危うさはいよいよあきらかです。
農家も消費者も、日本の食料と農業がどうなるのか、大変心配しています。多くの国民のなかに安全な国産農産物を求め、農政の見直しを願う声がかつてなく高まっています。
日本共産党は、こうした激変する内外の食料情勢に対応し、国民の不安や願いに真正面からこたえて、三月七日、「食料自給率の向上を真剣にめざし、安心して農業にはげめる農政への転換を――日本共産党の農業再生プラン」を発表しました(全文は「しんぶん赤旗」三月八日付、および日本共産党のホームページに掲載)。
そこでは、食料自給率向上を当面五〇%台に回復することを最優先課題に位置づける農政をめざし、次の四つの転換を提言しました。
提言1 持続可能な農業経営の実現をめざし、価格保障・所得補償制度を抜本的に充実する
提言2 家族経営を維持するとともに、大規模経営をふくむ担い手育成で農地を保全する
提言3 関税など国境措置を維持・強化し、「食料主権」を保障する貿易ルールを追求する
提言4 農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざす
日本共産党は、「再生プラン」にもとづく対話や共同を広範な団体・個人とすすめ、食料と農業の危機を打開する新たな農政についての合意を広げ、その実現のために奮闘します。
農地や農家、農業をまもる地域で可能なとりくみを発展させるために、生産者や消費者などと共同して全力をつくします。農業委員会のとりくみを、その一つとして重視します。
農業委員会は、農地法による農地の売買・貸借、転用などにたいする許可の権限をもつ行政委員会です。委員の大半が農民の選挙で選ばれ、国や自治体に農民の意見を反映させる役割ももっています。また、農業をめぐる情勢が厳しい今だからこそ、実際に農業生産を担っている農家の要望、意見を幅広くつかみ、それにこたえていくことが求められます。そのためにも農業委員会はその権限や機能を生かして、積極的な役割をはたすことが大事になっています。
政府はいま、農政「改革」の柱として農地政策の見直しに乗り出しています。「農地耕作者主義」という戦後の農業発展の土台となってきた現行の農地制度や、それを前提とする農業委員会の解体にもつながりかねない内容です。また、農業委員会が農業「構造改革」の推進役を押しつけられる一方、市町村合併にともなう委員会の再編・統合、委員定数の大幅な削減などで、弱体化させられている委員会も少なくありません。それだけに、今度の選挙で、政府の農政に立ち向かい、農家の代表として地域農業や農地を守るために真剣に努力する委員が一人でも増えることが求められます。
日本共産党は、農業委員会発足以来、その役割を一貫して重視し、委員に積極的に立候補し、政策もあきらかにし、活動してきました。現在、日本共産党の公認・推薦、議会などからの選任をふくめて五百人余の農業委員が活動しています。今度の選挙では、次の政策を掲げて奮闘するものです。
農業委員会の日常の大事な仕事は、農地をまもり、有効利用をはかることです。これは、農地法などにもとづく行政権限のある農業委員会にしかできないことであり、地域農業の維持や環境の保全にかかわる大事な仕事です。農地を積極的に活用し、農業生産を続けることの意義を訴え、農家を励ましながら、農地に関する農業委員会の責任が果たせるように努めます。
農地の有効利用、荒廃農地の復旧にとりくむ――遊休農地の解消は、根本的には農業つぶしの農政の転換が不可欠ですが、農地の守り手としての農業委員会が、日常の仕事のなかで可能な役割を果たすことも大事です。実態調査などをおこなったうえ、行政や農協などと連携して遊休農地の再生に取り組み、退職者や都市住民など就農希望者への農地のあっせん、市民農園としての活用、作業の受委託などもすすめます。愛知県田原市(旧田原町)の農業委員会は遊休農地解消のため、毎年調査し、担い手をあっせんし、遊休農地を耕し、菜の花を育て、観光事業や搾油とも結びつけています。
近年、都会に出た人が農地を相続しながら耕作を放棄している例が増えていますが、農業委員会はこうした遊休農地が近隣の農家によって適正に耕作されるよう援助する措置を強めます。
農地にたいする重税を軽減する――多額の固定資産税、相続税が農地つぶしに拍車をかけています。当面、市街化区域内農地にたいして生産緑地の新設と追加指定を市町村に求めます。農業施設用地の固定資産税は農地並みが基本と政府も認めています。地域の実態を調査し、宅地並みにされている施設用地・畜舎などの課税額の是正を求めます。
違法な農地取得、無秩序な転用を厳しくチェックする――農地法は、みずから耕作する(農作業に従事する)ことを目的としない農地に関する権利(所有権や賃借権など)の取得を禁止し、農地の転用を規制しています。そのために、農業委員会には、農地の売買・貸借や転用にたいする許可、違反した場合の告発や原状回復命令などの権限が与えられています。農地の権利移動の審査にあたって、農家以外の青年や高齢者が「むら」に定住して自ら労働してまともに農業をおこなう場合に積極的に支援する一方で、農外企業などによる不法あるいは無秩序な農地の取得、転用については、厳格なチェックをおこないます。
優良農地を広い面積で転用する大規模開発は、周辺環境に重大な影響を及ぼすので、農業委員会は農地や緑の環境を極力まもる立場から積極的に行動します。
株式会社の農地取得をチェックする――一定の条件のもとで株式会社によるリース方式の農地利用が認められました。農業委員会には、そうした農外企業に報告を求め、監視や調査・勧告などの権限が与えられています。それを行使し、農地の投機・荒廃を防ぐため、厳しいチェックと規制をおこないます。それを実効あるものにするために、必要な体制や予算の充実を求めます。
産廃や建設残土の投棄を厳しくチェックする――産業廃棄物や建設残土の無秩序な埋め立てが横行し、各地で農地の汚染や周辺環境への悪影響が出ています。自治体や議会、住民運動などと連携しながら、農地や環境をまもるより厳しい規制を確立し、対策を強めます。千葉県山武市では、産廃業者が絡んでいる埋め立て案件が出た際、住民に知らせ、反対運動を盛り上げて不許可にさせました。さらに農地法上の規制に加え、残土埋め立て条例を町独自に作らせています。
自治体などに農業振興策を提案・建議し、実現に力をつくすことも農業委員の重要な仕事です。各地で始まっている消費者や都市住民、関係団体が共同した農林業を重視した地域づくりの経験を広げるために農業委員会が積極的なイニシアチブを発揮します。
地域に根ざした農業振興計画づくり――地域の実態や農家の声を踏まえた農業振興計画づくりに積極的な役割をはたします。千葉県横芝光町の農業委員会は、「元気な農業めざして」と題して全農家の声を聞くためのアンケート調査を実施、その結果をふまえて「地産地消・食育推進宣言の町」をめざした建議や、学校給食への地元農産物の導入、直売所の設立などを求める意見書を採択、同町ではその具体化が始まっています。千葉県匝瑳市でも、農業委員会の決議にもとづき「地産地消・食の安全と自給率向上都市宣言」をあげています。
学校給食への地場農産物の供給、朝市・直売所など消費者や住民と共同して地域農業を振興する例が各地に広がっています。山梨県甲府市では日本共産党の農業委員が、直売所の改装へ市に支援を要請する建議をまとめ、市や県にたびたび要請して実現しています。 地域特産物の振興、農家経営に対する援助――特産物に対する価格保障や農業機械・施設・資材費にたいする支援、小規模土地改良への援助などさまざまな手立てで地域農業を応援する自治体が各地にあります。愛媛県西予市(旧野村町)などでは、地域特産物への価格保障で生産を振興しています。兵庫県丹波市の農業委員会は、集落営農への支援、ハウス・果樹栽培施設、有機農業に対する助成などを市当局に要請し、実現しています。埼玉県美里町では遊休農地を活用し、ブルーベリーなどの植栽、土壌改良を町の負担で実施、ブルーベリーでは日本一の栽培面積となる観光果樹園を実現しています。こうした自治体独自の支援措置を提案し、具体化するために農業委員会としても積極的な役割をはたせるようにします。
多様な家族経営をできるだけ多く維持する――地域農業の担い手を育てることは、農業委員会の重要な役割の一つです。近年、きびしい情勢のなかでも農業に生き生きととりくんでいる地域の多くは、兼業農家や高齢者、女性など中小農家も大事にし、その知恵や力を引き出しています。農業委員会として、専業的な農家とともに、中小農家、兼業農家、集落営農をふくめて多様な家族経営ができるだけ多く残れるよう支援します。
新規就農者、定年帰農者などを支援する――新規就農者が定着するためには、当面の生活費、農地・住宅・施設のあっせん、技術援助など地域の手厚い支援が不可欠です。北海道千歳市では、日本共産党の委員の提案で新規就農者にたいする助成措置を求める建議をまとめ、新規就農者に月五万円(二年間)、世話する農家に月五万円(一年)の制度を実現しています。こうした経験をひろげるとともに、受け入れた就農者に対して農地保有合理化法人の保有地を長期契約で貸し出し、農地負担を軽減するようにします。
中山間地域の農業をまもる――中山間地域への直接支払い制度について、その充実と地域の実態に合わせた柔軟な対応を求め、適用を広げます。最近増えている有害鳥獣から農作物を保護する防護さくの設置などにたいする国・自治体の補助を求めます。
都市農業をまもる――都市の農地には、生鮮農産物の生産とともに環境の保全、防災空間など市民生活に欠かせない多面的役割があります。農地・農業の守り手である農業委員会の役割はそれだけに重要です。集出荷施設、温室・ハウスなどを整備し、市民農園・体験農園のとりくみを広げます。東京でも武蔵村山市や狛江市では、直売所マップをつくり、地産地消を推進しています。
地域農業振興のとりくみは、農業つぶしの国の農政の転換と結びついてこそ実を結びます。農家の願いを国政に届ける農業委員会の役割は、この点でも、大きいものがあります。
日本共産党の農業委員は、これまで各地で、「品目横断対策」の中止、全農家を対象とする価格保障の実現、日豪FTAなど輸入自由化反対、BSE全頭検査の徹底などで建議をまとめ、農協や自治体などと共同して政府に迫ってきました。農地事案の審議にとどまらず、国の農政にたいする農家の思いを率直に出し合い、建議や意見書としてまとめ、政府に提出できる農業委員会にするために力をつくします。当面、以下のような要求や課題にとりくみます。
食料自給率の向上を農政の基本に据えさせる――ひっ迫する世界の食料情勢にてらしても、食料自給率向上の緊急性はあきらかです。食料の海外依存政策を転換し、自給率の向上を柱に据えた農政の確立のために、全国の農業委員会から意見書などを政府に集中するようにします。
中小農家切り捨ての選別政策を転換し、続けたい人すべてを支援する――ごく一部の大規模経営だけを対象とする「品目横断対策」は一年目で矛盾が噴出し、破たんはあきらかです。福岡県築上町の農業委員会は昨年十二月、「品目横断対策」を中止し、農業を続けたい人すべてを支援することなどを建議し、政府に求めています。競争力のない農家や地域を切り捨てる農業「構造改革」をやめ、集落営農をふくめて大多数の農家を担い手に位置づける農政を求めます。
米の市場まかせを改め、農産物価格の安定を求める――政府による米価の下支えや農産物価格の安定は農家の最大の願いです。岐阜県高山市農業委員会では、「畜産物の政策および価格要求に関する建議」を政府や各政党に届けています。農業委員会が農家の声を代弁して、政府に価格保障の確立を堂々と求めます。
米の需給調整は需要拡大に力を入れることを優先するとともに、生産調整をおこなう場合は、未達成者・地域への補助金カットといった強権的なやり方を改め、転作条件を思い切って有利にし、農家が自主的に選択できる条件を整えることを求めます。
飼料や資材価格の高騰対策を強める――飼料や資材価格の高騰が農家経営を窮地に追い込んでいます。畜産経営を維持するため、飼料安定基金への国の支援を強めるとともに、新たな特別な基金を創設するなど、飼料価格の安定対策の強化を求めます。
農地の「利用権」の自由化に反対する――政府は、農業委員会の業務に重大な影響を及ぼす農地政策見直しに乗り出しています。その内容は、農地の所有権には厳しい規制を維持するとしながらも、利用権(貸借)は自由化する方向です。それは、都会の資産家や農外企業が優良農地を借りて、人を雇って農業を営むことを可能にし、多様な家族経営で成り立ってきた地域農業に重大な困難を持ち込むものです。そして次には所有権の自由化に不可避的に結びつき、耕作者主義を原則とする農地法の解体にも結びつきかねません。戦後の農業の秩序を根底から覆すものです。その内容やねらいについて積極的に議論し、農業委員会の存在意義をかけて反対の声を広げ、家族経営を基本とする現行の農地制度の原則をまもるために奮闘します。
各国の食料主権を尊重する貿易ルールを求める――農産物のさらなる輸入自由化は、わが国の農業をいっそう衰退させるのは必至です。WTO(世界貿易機構)やFTA(自由貿易協定)交渉では、自由貿易一辺倒ではなく、各国の食料主権を尊重する貿易ルールの確立を求めます。日豪FTAなど、わが国の農業と食料はじめ国民の利益に反するFTA・EPA(経済連携協定)に反対する意見書などを政府に提出し、世論を広げます。
BSE全頭検査を維持する――アメリカのBSE対策のズサンさはなんら改善されていません。ブッシュ政権の圧力に屈することなく、わが国独自の対策を従来どおり貫くよう政府に求めます。自治体のおこなうBSE全頭検査への国の補助金を継続するよう、政府に求めます。
農業委員会が「農民の代表」にふさわしい役割をはたすためには、運営の面でも「農民が主人公」を貫くことが求められます。農地事案だけではなく、日ごろから農家の声や地域の農業問題、農政問題などを議論できるよう、積極的に役割をはたします。
農業委員会制度の存続、予算の確保――農業委員会への国の交付金の一般財源化、必置規制の廃止は、農業委員会制度の縮小・解体につながります。強く反対するとともに、農業委員会運営に必要な予算の確保を政府に求めます。
農業委員会が市町村行政から独立することも大事です。自治体首長が会長を兼務しているところは改めさせ、事務局体制の強化をはかります。
農業委員会の再編、委員定数の削減への対応――市町村合併に伴って農業委員会の再編・統合、委員定数の大幅削減が各地ですすんでいます。きめ細かな行政サービスが困難になるなど農村社会を衰退させ、農業委員会の活動にも重大な困難が生じています。
新しい合併市町村をはじめ農地面積が大きい市町村では、地域をわけて複数の農業委員会を設置できる規定を適用するとか、農業委員協力員制度をつくります。京都府宮津市では、台風被害に際して、農業委員と農業委員協力員らが災害対策委員会を立ち上げ、農業被害状況の把握とともに農家を激励して回り、迅速な復興策を市にとらせています。
要求実現のために行動する――意見書や建議で取り上げた要求を実現するために、行動する委員会をめざします。福島県旧小高町の日本共産党の農業委員は、農業委員会として小中学校給食の現場を視察しようと提案、給食を試食しながら栄養士と地場産品の供給を増やすために懇談しています。市町村長や行政担当者と協議、議会活動との連携、関係団体との共同など積極的な働きかけをおこない、世論づくりの先頭に立ちます。
農民の声を運営に反映させるよう努める――集落での座談会や要求アンケートなどを随時おこない、地域農業の実態や農家の要求を委員会運営に反映できるようにします。
農業委員会の活動を農家に知らせることも大事な仕事です。農業委員会だよりなど、独自の広報紙を発行するように努めます。農業委員個人としても、「農業委員ニュース」、地域民報などで、農業委員の活動を報告するようにします。
農地や税金問題で農家の相談に乗る――農業委員は、委員会や各種の会議などで農家の営農や暮らしにかかわる各種の制度を知りうる立場にあります。事務局や関係者の知恵も借りながら、農地の貸借や転用、相続や贈与、融資や補助金の活用、所得税・固定資産税・相続税など各種の税金などで農家の相談に乗ります。
女性、青年の委員への選出を重視――農業就業者の六割を占め、食の安全などにも切実な関心を持つ女性の農業委員への進出を重視します。各地の農業委員会で、女性委員が地産地消や学校給食への地場産の供給などで大きな役割をはたしています。千葉県船橋市の共産党の女性農業委員は、千葉県女性農業委員の会の会長として、県内の農家女性の地位向上や要求実現の先頭に立っています。女性とともに青年農業者の委員選出も重視します。