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原油高騰問題に関する申し入れ

 
 
国民のくらしと営業、日本経済を原油価格の高騰が襲っています。

 原油価格は、国際指標とされるニューヨーク商業取引所の先物価格で一バレル=九十九ドル台を突破し、史上最高値を更新しました。国内の石油製品価格も二〇〇四年初頭に比べて全国平均でガソリンが五割高、軽油が六割高、灯油・重油が二倍超などと軒並み上昇しています。ハウス栽培農家、漁業者、トラック運送業者、ガソリンスタンド、銭湯、クリーニング店、燃料油を使う事業者などから、“これでは経営がたちゆかない”と、悲鳴が上がっています。

 国民生活にも重大な影響が出ています。ガソリン代の高騰に加え、これから厳しい冬を迎えるにあたり、暖房用の灯油が生活必需品となっている北海道・東北などの地域では、灯油代の値上がりはまさに死活問題となっています。

 原油価格高騰の影響はこれだけにとどまりません。原材料費や穀物価格の高騰ともあいまって、パン・即席麺・みそ・ビール・豆腐など、食料品から日常生活用品にいたるまで価格上昇を招き、この動きは、消費者物価全般へ波及しつつあります。

 原油高騰問題は、まさに国民のくらしと地域経済を直撃し、日本経済全体の先行きにとって重大な問題となっています。

 このように、消費者・石油販売店・ユーザー業界・中小企業などから悲鳴や不安の声が上がっているなかで、大手石油元売り六社はこの三年半だけでおよそ二兆六千億円もの巨額の利益をあげています。石油元売り企業と一部の巨大企業だけが空前の大もうけを続けているもとで、政府が、迅速・有効な対策を講じていないことに国民の怒りと不信が広がっています。

 今日、特に重視しなければならないのは、近年の原油価格暴騰の主犯ともいうべき国際的な投機資金の流入問題です。

 ヘッジファンドなど短期的な利益を目的とする膨大な投機資金が、原油市場や穀物市場に大量流入して価格暴騰をもたらしていることは今や明らかです。実需を反映しないこれらの投機筋とその背後の巨大金融機関が、市場価格を乱高下させ大幅な価格つり上げで巨利を得ているのです。まさに異常事態です。

 投機の背景には、(1)世界最大の石油消費国である米国や中国、インド等の新興諸国の需要拡大、(2)米国の石油精製設備など供給能力の不足、(3)イラク戦争の泥沼化など中東情勢の不安定化があります。

 食糧とエネルギーという人類の生存と経済社会の基盤を、巨大な国際的投機資金が左右する「市場原理」、「マネーゲーム」に任せるわけにはいきません。今こそ、日本政府が各国と連帯・協調して、国際的な投機を規制するルールの確立とエネルギーの安定供給に向け全力を傾けるべき時です。

 世界的なスーパーメジャーの誕生、資源ナショナリズムの高揚とともに、国内的にはこの間の一連の政府の規制緩和・自由化政策のもとで、我が国においても新日本石油、ジャパンエナジーという二大石油元売りグループなどの寡占化がすすみ、原油高騰にともなう石油製品の精製・流通の市場支配力を強めています。石油製品の便乗値上げや市場操作、不公正な取引を許さないため、また食料品等の値上げなどについて、厳重な監視を行うべきです。

 日本共産党国会議員団は、社会の格差と貧困が広がるもとで、いっそう厳しさの増す国民の暮らしと中小企業の営業を守るため、政府に対し下記項目について緊急措置および抜本対策を行うよう強く申し入れます。


一、異常な原油・石油価格高騰を沈静化、抑制するため、ヘッジファンド、コモディティ・ファンドなど国際的な投機マネーを規制する国際的協調を実現するために、あらゆる方策を検討すること。

二、消費者、地方への影響を緩和するため、ガソリンなど石油製品や食料品・日用品などの便乗値上げの監視を強化し、生活必需品である灯油量の確保と価格の引き下げのための緊急対策を行うこと。

(1)「福祉灯油」など寒冷地、低所得者向けの支援策や離島対策を国の責任で制度化する。

(2)地方バス・鉄道その他の公共的交通機関への財政上の支援措置を講ずる。

(3)石油元売りの利益還元への指導、国内備蓄の放出および「国民生活安定緊急臨時措置法」などあらゆる方策を検討する。

三、この間の石油・エネルギー政策の規制緩和、「市場への不介入」方針を見直すこと。また大手元売り会社に対して原油差益を国民に還元させ、製造原価、卸値等の費用価格の情報の公開および国民に対して値上げ理由の納得できる説明責任を果たさせること。

四、大手商社・大手荷主・元請け親企業などの大企業に対して、原材料費・燃料費の上昇分を中小・下請業者、物流業者などに一方的に押しつけないよう強力に指導するとともに、買いたたき・不当廉売・差別対価などを厳重に取り締まり、公正な取引価格を実現する特別の措置を講ずること。また中小企業に対する緊急融資・保証制度を創設すること。

五、ガソリン、軽油、重油等の価格高騰の直撃を受けている運送業者、中小業者、農林漁業者などの負担を軽減するため、国の責任で緊急の減税措置を講ずること。

六、政府に関係閣僚による原油高騰問題戦略本部を設置して対策を講ずること。その際、以下のことに重点をおく。

(1)環境・エネルギー政策を根本的に転換し、石油依存度を引き下げ、省エネルギーの推進につとめるとともに、穀物にたよらないバイオエネルギーなど再生可能エネルギーの開発・利用を抜本的に拡大すること。

(2)低所得者・貧困層、中小・零細業者など働く国民の生活実態をよくつかむ。国民からの相談窓口および不公正取引の告発ホットラインを設置すること。

二〇〇七年一二月四日

日本共産党国会議員団

内閣総理大臣 福田康夫殿


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