07年のいっせい地方選挙のさなか、山口組系暴力団の組長代行が長崎市長を銃撃し、殺害した事件は、民主主義社会を破壊する蛮行であり、国民の深い憤りと怒りをよびました。その後も、拳銃を使った凶悪犯罪がくりかえされ、この3年間に銃器発砲事件は160件発生し、死傷者は77人におよんでいます。組織暴力団や銃器の携行に有効な手だてを打ってこなかった警察当局の責任もきびしく問われています。
凶悪犯罪や無差別殺傷事件が大きく報道され、身の回りでもさまざまな事件がおきるもとで、治安への住民の不安が広がっています。ところが、いまの日本の警察のなかでは、言論機関、市民運動の監視、弾圧をおこなう警備・公安警察が、予算や体制などでいまだに幅をきかせています。しかも、組織ぐるみの裏金づくりが明るみに出ても、警察には自ら真相を明らかにし、それをただす意思も能力も存在していません。
日本共産党は、警察の一番のしごとは市民の安全を確保することだという見地にたって、現在の警察の体質、体制を改革します。「空き交番」が市民の不安に拍車をかけていたために、警察庁は07年4月末までに、東京で12%、全国でも5%の交番そのものをなくして「空き交番がゼロになった」などと発表しましたが、これでは、ほんとうに国民の不安を解消することはできません。しかも、いまでも、夜間は不在になる交番が多くあります。日本共産党は、警察官を市民生活の安全の分野に適正に配置し、足りない場合は最小限必要な警察官を増員することにより、市民生活の安全確保に努めます。
テロを根絶することは切実な問題となっており、日本国内でも、多くの人びとが、テロの不安を感じています。罪のない人びとを恐怖に陥れるテロは、日本の右翼暴力団によるものはもとより、誰によるものであれ、いかなる理由があっても、絶対に許すことはできません。
日本共産党は、国民の生命をあらゆる手段で守るという見地から、テロ対策に有効な条約、法律に賛成してきましたが、今後とも必要な対策の整備を求めていきます。
国際的な広がりをもつテロに対処するためには、国際的な協力によって、情報の収集を国内外で徹底し、テロ集団の資金の流れを押えていくことが決定的です。そのために、テロ資金供与防止条約、核物資防護条約をはじめ、テロ対策の基本を規定した12の条約、関連する国内法の厳格な実施を求めます。
テロ集団の潜入を阻止し、摘発するうえで、警察行政、出入国管理行政の役割が重要であり、その活動と体制を充実させます。それでもなお、大規模なテロ事件が発生するときは、可能なあらゆる手段で国民の生命をまもります。
テロはどんなものであれ許されないのは当然ですが、一方、貧困や飢餓、大国による国際的無法行為の存在が、テロの口実となり、テロ集団を勢いづけているのも事実です。テロの口実をなくしていくことが、国民のなかでテロリストを孤立させることにもなります。テロを根絶するためにも、国連憲章にもとづく平和のルールの確立、人道支援分野での政府開発援助(ODA)の充実、異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に全力をつくします。
テロにたいするアメリカの報復戦争は、テロを減少させるどころか、逆にテロの土壌を広げ、拡散させています。テロ根絶に向かううえでも、アメリカの「対テロ戦争」に反対し、国連憲章にもとづく平和のルールをきずくことが重要です。
昨年から、各国がソマリア沖に軍隊を派遣しましたが、海賊事件は減るどころか逆に増えているのが実態です。米軍が人質救出のために海賊を射殺し、海賊が「報復」を宣言するなど、軍事的な報復の連鎖、悪循環もうまれています。自公政権は、「海賊対処」を口実にして、自衛隊の海外活動と武器使用権限を拡大しましたが、憲法9条が禁じる海外での武力行使に道を開くものであり、断じて容認できません。
海賊問題を解決する道は、軍隊を派遣することではありません。ソマリアの周辺国イエメンなどの海上警察の能力向上のための財政的・技術的支援を強化すべきです。さらに長期にわたる内戦を終結させ、人びとが生活できる環境をつくるための支援が国際社会に求められています。憲法9条をもつ日本は、そのような外交努力、民生支援にこそ力をつくすべきです。