教育は、すべての子どもが持っている成長・発達する権利を保障するための社会の営みです。とりわけ学校教育は、すべての子どもに基礎的な学力を保障し、子どもたちが社会の主人公として行動できる能力の基本を身につけることを助ける責任をおっています。私たちは学校がその責任をきちんと果たすことを重視します。
ところが歴代の自民党政府は、教育予算を先進諸国のなかで最低の水準に落ちこませ、教育を粗末にしてきました。また、改悪された教育基本法にそって「競争と管理」を今まで以上につよめ、学校を息苦しい場にしてきました。さらに、この間の「構造改革」により「子どもの貧困」をひろげ、少なくない子どもたちの生活を破壊し、子どもらしい希望や進学の夢を奪っていることは、座視できない問題です。
私たちは、こうした政治による歪みを是正し、憲法と子どもの権利条約を生かし、すべての子どもが安心して学び、成長できる教育をめざします。
教育予算をOECD平均並みまで引き上げます……日本の教育予算の水準はGDP比3.4%でOECD諸国最下位、諸国平均の7割にも達していません。そのため日本はヨーロッパとくらべて教育条件が大きく立ち遅れています。財界が「もっと教育予算を削れ」と圧力をかけ、自公政権はその言いなりに、予算を抑制してきた結果です。いま圧倒的多数の教育関係者は一致して教育予算の増額を求めています。財界の妨害をはねのけて、教育予算についてOECD平均をめざして計画的に引き上げます。
国として「30人以下学級」を実現させます……少人数学級は子どもをていねいに育てるために必要な条件であり、国民のつよい要求です。自公政権が少人数学級の実施をかたくなに拒むなか、日本共産党は住民のみなさんとともに自治体独自の少人数学級をすすめ、今では46道府県にまで広がりました。この流れをさらにすすめるには、国による教職員の増員が必要です。教職員の純減を決めている行政改革推進法を凍結し、政府の「教職員一万人削減計画」をやめさせ、教職員定数増をはかり常勤教員を増やして、国として「30人学級」を実施させるために全力をつくします。
私学助成を増額します……私学教育は公教育の大切な一翼を担っています。公私間格差を是正し、私学の教育条件をきちんと保障するため、当面、経常費2分の1助成の早期実現、授業料直接補助、施設助成の拡充をすすめます。
私学の自主性を守ります……「私学の自由」は、国民の教育の自由を保障する上できわめて大切なものです。一昨年、自公政権が強行した「教育三法」は、私学にたいする権力統制に道をひらく危険があります。日本共産党の国会質問にたいして、政府は「私学の建学の精神尊重」を認めるとともに、教員評価・学校評価を私学助成の交付要件にすることを「考えていない」と答弁しました。こうしたことをふまえ、私学の自主性を守るために全力をあげます。
乳幼児教育の負担軽減を進めます……乳幼児は人格の土台をつくる大切な時期です。ところが、日本の乳幼児教育の予算はOECDの半分しかなく、足りない保育園、保育園の民営化など量質ともに貧弱で、負担の重さに若い保護者は改善をつよく求めています。すべての乳幼児が豊かな保育がうけられる体制を整えるとともに、無償化をめざして、保育料、幼稚園授業料の軽減を進めます。
義務教育段階の家計負担の解消を進めます……義務教育無償の原則にも関わらず、無償の対象は授業料や教科書代などに限られ、制服代、ドリル代、修学旅行積み立てなど義務教育段階の家計負担はあまりに重すぎます。義務教育にふさわしく家計負担の解消をめざし、段階的に負担の引き下げを進めます。
高校教育の無償化を進めます……高校は進学率97%を超えた「準義務教育」ともいうべき教育機関です。先進諸国でほとんど高校学費が無償になっているにもかかわらず、日本では高額な負担が強いられています。とくにこの間の経済不況の中で、高校から経済的な理由で排除される若者が生まれていることは、憲法と法律が禁じている「経済的な地位による教育上の差別」そのものです。
以下の無償化政策を実行に移し、経済的な理由で高校から排除される子どもを一人も出さないようにします(高等専門学校の高校相当部分も同様にします)。
《公立高校》授業料を無償とします。
《私立高校》私立の初年度納付金は公立の六倍に達し、負担軽減は急務です。私立高校授業料を減額する「直接助成制度」をつくり、年収500万円以下の世帯を授業料(入学金、施設整備費を含む)全額助成、800万円以下の世帯を授業料半額助成とします。専修学校・各種学校(高校に準じるもの)も同様とします。
《共通》学費支払いが困難な場合の無保証人・無利子・返済猶予付の緊急貸し付け制度をつくります。高校通学費補助制度をつくります。高校奨学金制度を無保証人・無利子・返済猶予付とし、成績要件を撤廃します。経済的困難な高校生への給付制奨学金制度を創設します。
大学学費の負担軽減を進めます……「世界一高い学費」は、学生とその家庭に重くのしかかっています。高校入学から大学卒業までにかかる費用は一人平均1045万円、わが子のための教育費は年収の34パーセントに達しています。しかも、「貧困と格差」の拡大の中で、学費を捻出するために毎日深夜までアルバイトをして体を壊したり、学校をあきらめる若者がふえています。ヨーロッパでは大学学費を無償としている国は少なくありません。
緊急に次の政策を実行し、経済的な理由で大学・大学院を諦める若者を一人も出さないようにします。
《国公立大学》国立大学では1982年に学生比12.5%だった減免予算の枠は、いまや5.8%に削られています。国公立大学・高専については国及び地方の減免予算枠を引き上げ、東京大学がはじめた「世帯年収400万以下は全員免除」などの制度を全国でおこなえるようにします。
《私立大学》私立大学にいたっては国の予算枠は学生比わずか0.1%にすぎません。私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。年収400万以下の場合に一定額が減額となるような授業料直接助成制度をつくります。
《奨学金制度》国の奨学金をすべて無利子に戻し、イギリスのように一定の収入(年300万円)に達するまで返済猶予とします。欧米で主流である、返済なしの「給付制奨学金制度」を創設し、当面、経済的困難をかかえる学生に支給します。
「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約への留保を撤回します……日本政府は、国際人権規約に加わりながら、無償化条項を留保したままです。そういう国は今や日本、マダガスカルの2ヶ国のみです。留保を撤回し、国の姿勢を転換し、「世界一高い学費」を計画的に引き下げるようにします。
国として「子どもの貧困」対策に本腰をいれます……小泉政権以来の「構造改革」、アメリカ発の金融危機は家庭を直撃しています。日本の子どもの貧困率は14.7%とOECD平均をうわまわり、年々深刻になっています。しかも、日本はOECD諸国で唯一、社会保障などの所得の再配分によって、子どもの貧困率をかえって上昇させている国です。専門家会議を設置し、実態調査をふまえて、貧困削減について国としての目標を定め、対策に本腰をいれます。児童手当の拡充、各段階の教育費負担軽減、子どもの医療費の無料化、児童福祉施設の充実と進学保障、児童相談所の体制強化などの幅広い対策を進めます。
就学援助を拡充します……就学援助は義務教育に通う子どもの命綱です。ところが、「子どもの貧困」が広がり就学援助を強めなければならない時に、自公政権が就学援助の国庫負担制度を廃止し、各地で就学援助の縮小がはじまっています。国庫負担制度をもとに戻し、対象を少なくとも生活保護基準×1.5倍となるように引き上げ、支給額も実態にみあってひきあげ、利用しやすい制度にします。教育扶助の額も同様に引き上げます。学校給食費の未払いをすべて保護者の責任にするのではなく、無償化の方向を検討するとともに、生活の実態に応じて、必要な免除措置をすすめるようにします。
ひとり親家庭への支援強化、生活保護の母子加算削減・廃止の撤回……「構造改革」のもとで、ひとり親家庭、とりわけ母子家庭の労働条件が悪化し、平均年収は237万円強と、全世帯平均の四割未満しかありません。そのもとで「高校進学の夢も見られないのか」という悲痛な声があがっています。自公政権による生活保護の母子加算の削減・廃止を中止させるとともに、児童扶養手当の拡充、子どもの病気や保育などへの手当てなど支援をつよめます。
全国いっせい学力テストの中止、学区自由化の見直し……「全国いっせい学力テスト」が三年連続おこなわれました。各地で「点を上げるため先生が正解を教える」「ドリルばかりでほんらいの知育がおろそかになる」「テスト対策のため文化祭や林間学校を縮小・廃止」「個人情報が塾産業に流れているのではないか」など深刻な問題が噴出しています。学力の全国的調査は、抽出調査で十分です。一回で数十億円の税金を浪費する「全国いっせいテスト」をやめさせます。大阪などで首長が市町村教育委員会にデータ公表の圧力をかけていますが、序列化競争により教育をゆがめる最悪の政治介入であり、つよく反対します。子どもと教員を不毛な形で競い合わせ、地域の教育力を弱め、入学者ゼロの学校をつくりだすなど教育を歪める学区自由化の強制に反対します。
学校予算の差別化に反対します……政府主導の「一貫校」構想などは、一部の「エリート」のための教育に公立学校予算を重点的につぎこむもので、教育格差を助長しかねません。学校評価による予算の格差配分に反対し、すべての学校の教育条件の向上を重視します。
競争的教育制度の見直しに着手します……高校学区の拡大などにより、偏差値による高校の輪切りなど「選別の教育」はますます強まっています。そのことが子どもや青年をどれほど傷つけているか知れません。ヨーロッパでは基本的に高校入試を課さないなど、過度な競争から子どもの成長を守るしくみがあります。高校、大学の入試制度を抜本的に改革するための専門家、国民の検討の場をもうけ、改革に着手します。
権力的で硬直した教育行政を抜本的に改革します……政府・文部科学省の教育への権力的な介入の結果、多くの自治体の教育委員会は、学校現場の意見や住民の声をまともに聞かず、国等の意向を学校に押しつける、権力的で硬直した組織になっています。そのもとで学校では、職員会議での意思表示が禁じられるなど息苦しい場になっています。文部科学省による教育統制をやめ、教育委員会については、教育条件を整備し、教育の自主性を守るための民主主義的な機関へと抜本的に改革します。そのために、教育委員会の会議公開の実質化、子ども・保護者・教職員らの意見反映、事務局職員の専門性向上などをすすめます。国による教育委員会への「指示」「是正」など、地方分権にも逆行した国家統制に反対します。かつて自民党政権が廃止した教育委員の公選制や予算の編成権を復活させます。
学校の自主的な運営を保障します……教育行政や政治による学校への不当な介入・干渉に反対し、憲法が保障する教育の自由、自主性を尊重します。職員会議の形骸化などに反対し、教職員、子ども、保護者らの参加と協同による子どもの成長を中心にすえた学校運営を奨励します。学校評議員制度や地域運営学校はその立場で改善します。学校の教育活動を、行政のきめた数値目標に従属させてゆがめる「PDCAサイクル」などの押しつけに反対します。
「多忙化」解消など、教員を専門家として尊重し、支援します……教職員は、残業月平均81時間・国の過労死ラインを上回る労働時間で働き、かつ、授業準備や子どもと触れ合う時間が取れずに悩んでいます。こうした「多忙化」を解消するために、現状を無視した行政による「改革」の押しつけをやめさせるとともに、教職員の増員をはかります。
「ILOユネスコ・教員の地位に関する勧告」をふまえ、教員を教育の専門家として尊重し、学校運営のみならず教育政策の決定でも重要な役割を果たせるようにします。教員の自主的研修を保障します。新任の先生を長時間子どもから引き離す、官製の「初任者研修」を抜本的に見直します。教員の専門職性を弱め、教員組織を上意下達のピラミッド型組織に変質させる主幹制、主幹教諭制度を見直します。管理職による「パワー・ハラスメント」の予防、対策をつよめます。
恣意的な「教員評価」「不適格教員」制度や「教員給与の格差付け」に反対します……行政がおこなう「教員評価」制度は、教員の目を子どもから管理職や行政に向けさせ、教育を歪める有害なものです。教員評価というなら、子ども、保護者、同僚、専門家などの関与のもとで、教員が納得し、教員の努力を励ます、教育活動へのていねいな評価であるべきです。「不適格教員」のレッテル貼りや「草むしり」「密室に座らせ続ける」などの「指導力改善研修」も、教員を追いつめるだけです。子どもを傷つける教員には、子どもの成長する権利を保障する立場から毅然と対処するとともに、問題をかかえる教員の人間的な立ち直りを促す支援を重視し、そのための人員配置などの支援策をとります。行政が教員の優劣をきめて、給与に格差をつけることは、教員のあり方を歪めるもので、教員どうしの協力や連携を困難にし、子どもの教育に悪影響をおよぼすものです。つよく反対し、専門職にふさわしい処遇の改善をもとめます。
「教員免許更新制」を中止します……今年度から本格実施となった「教員免許更新制」は、中央教育審議会でさえ「導入には無理がある」としてきたものを、時の安倍首相が強引に法律を通して具体化させたものです。そのねらいは、教員の身分を不安定にして、政府言いなりの「物言わぬ教師」づくりをすすめることです。しかも、大量の教員の「講習」が義務づけられるのに講習の開設義務が誰にもない、講習中の代替要員もないなど制度的にも破綻しています。同制度は中止すべきです。
臨時教員制度を抜本的に改善します……いま、教育予算削減のもとで、学校に臨時教員など非正規雇用の教員がふえ、「子どもがなついていた先生が学期途中でいなくなってしまった」など教育を不安定にしています。定数をふやし正規雇用とする道をひらくべきです。夏休みなどの間は賃金保障もないなどの劣悪な処遇の改善をすすめます。
教員採用、管理職昇任を公正なものにします……教員人事の不正を根絶するため徹底してメスをいれ、公正な採用・昇任がおこなわれるようにします。採点者、選考者に受験者が特定できないようするなどの公正性、透明性の確保とともに、採点基準や解答、試験結果を公表し、採用を受験者の側からもチェックできるようにします。採用時の思想チェックはあってはならないことです。管理職試験への「推薦制」などもやめさせます。
学力保障をすすめます……すべての子どもに基礎的な学力を保障することを学校教育の基本的な任務として重視します。暗記ではない自然や社会のしくみがわかる知育、体育、情操教育などバランスのとれた教育をめざします。学習が遅れがちな子どもへの支援を手厚くします。「授業時数確保」の名のもとで、夏休み短縮などゆとりのない学校生活にしては、知育をふくむ人間的成長全体にマイナスです。学力保障に一番有効な施策である少人数学級こそ実現すべきです。学習指導要領は、研究者や教職員、保護者など国民参加で抜本的に見直すとともに、その強制性をあらため、戦後直後のように「試案」と明示し、子どもの状況や学校・地域の実情に即した教育課程を自主的につくれるようにします。子どもをふるいわけ、人間として傷つける危険のつよい習熟度別学習の強制に反対します。
市民道徳の教育を重視します……市民道徳の教育を、憲法にもとづき、基本的人権の尊重を中心にすえ、子どもたちが自らモラルを形成できるようにします。改悪教育基本法にそって、特定の愛国心などの「徳目」を上から与え、それを子どもたちに植え付けるようなやり方は、憲法が保障する「思想・良心の自由」を侵害するもので、許されるものではありません。「心のノート」などの官製教材の強制、「伝統文化」に名をかりた「靖国参拝」の押しつけ、「道徳の教科化」につよく反対します。
いじめ問題の解決にとりくみます……いじめの実態を見えなくする「いじめの数値目標化」は、国民の非難をあび、私たちの追及とあいまって、政府の「教育振興基本計画」には入りませんでした。いじめを多発・深刻化させている要因である過度の競争と管理の教育をあらため、子どもの声をききとり、子どもを人間として大切にする学校をつくることを重視します。そのために、子どもの権利条約の普及、いじめ問題についての理解促進、教員の多忙の解消、保健室やカウンセラーの充実などにとりくみます。子どもの命、安全を最優先に、安全配慮義務を徹底します。いじめ問題の解決のためにも、いじめ被害者と家族の「知る権利」を尊重します。
不登校、非行など個々の子どもへの支援をすすめます……「不登校ゼロ作戦」など子どもや親をおいつめる施策をやめさせ、子どもの「最善の利益」の立場から、多様な選択への公的支援をすすめます。親の会、フリースクールなどへの支援をつよめます。子どもたちを追いつめ、ストレスを強いている、ゆきすぎた競争と管理の教育をやめさせます。相談しやすい窓口を拡充するとともに、支援団体や家庭への公的支援をつよめます。
学校の安全対策をすすめます……「学校災害給付」件数は年間200万件に増加し、学校での事故や犯罪から子ども、教職員らの生命を守る仕事は急務です。ところが国の施策は、通達を出すだけの「通達行政」「手引き行政」の枠をでず、学校安全対策はきわめて不十分です。子どもの「安全に教育を受ける権利」を保障する立場にたった「学校安全法」「学校安全条例」の制定を支持するとともに、不審者対応を含めた安全対策のための専門職員配置や施設の改善をすすめ、住民の自主的なとりくみを支援します。
性教育への政治介入に反対します……性教育は、子どもを人間として大切にしようと、専門家や保護者らの努力ですすめられてきました。ところが、自民党や民主党などの国会・地方議員が、性教育の実践をゆがめて描き、一方的な攻撃をおこない、行政が教材を奪う、処分するなどの事態がひきおこされています。ついに東京地裁は昨年、自民党、民主党の都議会議員による介入にたいし、「教育への不当な支配」だとして有罪判決を下しました。政治介入に反対し、子どもたちに体や心の仕組みや発達、性の多様性などを伝え、自己肯定感情をはぐくむ、自主的な性教育を尊重します。
特別支援教育・障害児教育を拡充します……一昨年の4月から、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など軽度発達障害の子どもへの支援をふくむ「特別支援教育」が本格化しました。ところが、軽度発達障害の子どもは数十万人(6.3%、文科省推計)とされているにもかかわらず、「既存の人的・物的資源」で対応しているため、「障害児学校の多くの教職員が特別支援にまわされ、在籍する障害児の教育が手薄になった」、「普通学級で学ぶ軽度発達障害の子どもへの支援体制が組めないままになっている」など多くの矛盾がうまれています。さらに、障害児教育への需要が高まり、学校施設が慢性的に足りなくなり、廊下で授業を行うなど深刻な実態が広がっています。この事態を打開するため、教員と「支援員」の増員・待遇改善、学校施設の拡充に力をつくします。特別支援教育の実施に必要な教職員の定数基準を各学校種でさだめることを求めます。軽度発達障害をふくめどの子にもていねいな教育ができるよう、少人数学級などをすすめます。障害児学級をまもり、通級指導教室をふやします。「支援地域」の中心と位置づけられる特別支援学校は統廃合でなく、小規模分散の地域密着型をめざし拡充します。寄宿舎の統廃合をやめさせ、拡充をはかります。教員をふやして地域支援がおこなえる体制をととのえます。医療・福祉など専門機関とのネットワーク、巡回相談など地域全体の支援体制をつよめます。
学校耐震化をすすめます……昨年6月、日本共産党をはじめ5会派共同の「学校耐震化促進法」が成立し、市町村が行なう耐震補強工事への国庫補助率を現行の二分の一から三分の二に引き上げるなどが決まりました。これは長年の国民運動の成果です。しかし、自公政権による「三位一体」改革で財政が疲弊し、地方自治体によっては診断調査さえ手がつかない状況にあります。さらに、現在の補助事業は耐震性のない建物4万1000棟のうちで倒壊の危険性が高いとされる7300棟が対象のため、残りの建物の耐震化が後回しになる危険もあります。予算をさらに増額して、全ての耐震調査・耐震化工事への補助率と補助単価をひきあげ、保育園や幼稚園も含めて遅れた耐震化を確実に進めるようにします。
学校の一方的統廃合に反対します……政府は、教育予算削減のために学校統廃合の推進を打ちだしました。しかし、小規模な学校は子ども一人ひとりに目が行き届くなどの優れた面があります。そうした条件をこわし、子どもの通学を困難にし、地域の教育力を弱めるなど子どもの学習権を後退させ、地域の文化、コミュニティーの拠点を奪う、学校の一方的統廃合に反対します。
公立図書館、学校図書館を拡充します……公立図書館、学校図書館の整備を図るため、国の財政措置を充実させます。日常の生活圏域に図書館を設置し、司書の配置、資料費の増額を図り、住民の知る権利の保障と地域の振興に資する公立図書館を整備します。学校図書館に専任の学校司書を配置し、所蔵資料を充実させます。子どもの読書推進計画は、公立図書館や学校図書館などの整備推進をはかる目的で策定し、「読書冊数」を競わせることがないようにします。図書館サービスと機能の変質につながる、公立図書館への指定管理者制度導入、学校図書館運営の民間企業への委託に反対します。
学校給食を拡充します……安全で豊かな学校給食のために、地産地消、自校方式、直営方式などをすすめます。中学校給食、高校給食をひろげます。学校給食費の未払いをすべて保護者の責任にするのではなく、無償化の方向を検討するとともに、生活の実態に応じて、必要な免除措置をすすめるようにします。
保健室を充実させます……学校の保健室は、医師、カウンセラーなどの専門家と連携して、子どもの心身を支える、多様でかけがえのない役割を果たしています。養護教諭の複数配置をすすめるなど拡充をすすめます。
学童保育などの拡充をすすめます……共働き家庭やひとり親家庭が増えるなかで、小学生の放課後の生活と安全を保障する学童保育の役割はいっそう大きくなっています。学童保育はまだまだ不足しており、希望する子どもが全員入所できるようにします。子どもたちに負担を強いる大規模化を解消し、新・増設をすすめます。「遊びと生活の場」にふさわしく、適正な規模、施設の広さや設備など、安心して生活できる設置・運営基準を定めます。指導員の半数は、年収150万円未満であり、非正規が多く、不安定で働き続けられない劣悪な条件におかれています。指導員の専任・常勤・複数配置と労働条件の改善、研修の充実をはかります。これらにふさわしく国の予算の抜本的な増額・拡充を図ります。「放課後子どもプラン」は、学童保育、放課後子ども教室をそれぞれ拡充します。
外国人教育、夜間中学開設を推進します……日本に居住する外国人登録者は200万人を超え、新たに結婚する20組のうち1組は外国籍の人との結婚といわれています。内外人平等を保障した国際人権規約、子どもの権利条約にもとづき、日本語教室設置、公立学校への入学資格の改善など在日外国人の子どもの教育を保障します。夜間中学は、戦争の混乱や経済的な理由により教育を受けられなかった多くの人、不登校の子ども、障害者、中国帰国者・在日外国人らにとってかけがえのない義務教育の場となっています。ところが全国にわずか35校しかなく、06年には日弁連からも夜間中学増設の意見書が提出されました。今ある中学校の二部授業として夜間中学の開設を全国ですすめます。外国人の賃金未払いや劣悪な労働条件の改善、福祉・医療を受けやすくするとともに、地域での共生をすすめます。
社会教育、文化、スポーツ施策を拡充します……一昨年、改悪教育基本法の具体化として、社会教育関連法の改悪がおこなわれました。とりわけ、社会教育の自由、自律性が損なわれる危険は重大です。私たちは、そうしたことのないようとりくみをつよめます。同時に、公民館の増設や専門家の増員など社会教育施設の拡充をはかります。児童館、公園、スポーツ施設などの増設、拡充をすすめます。子どもの安全や文化環境を貧しくする民間委託に反対します。スポーツ・文化活動への公的援助をつよめます。学校などでの文化芸術鑑賞などを拡充します。青少年に有害なサッカーくじの廃止を求めます。
憲法と教育の条理に基づいた教育を追求します……2006年、教育基本法が改悪されました。しかし、国会審議を通じて、特定の愛国心の強制などは憲法の「思想、良心の自由」に違反すること、憲法の立場から教育への権力的介入は可能な限り抑制的でなければならないことが明らかにされました。こうした憲法の立場と教育の条理を、教育政策の根底として大切にします。「教育振興基本計画」は、政府のおこなうべき条件整備に限定し、教育内容・方法に介入したり、教育の自主性をおかすことのないよう、つよく要求します。憲法の立場に反する、侵略戦争の美化・肯定の公教育へのもち込みを許しません。
「内心の自由」を守ります……憲法19条(思想、良心、内心の自由)に違反する、「日の丸・君が代」の強制に反対します。入学式・卒業式は、子どもにとって最善のものにするため、教職員、子ども、保護者で話し合って行なえるようにします。
子どもの権利条約を教育に生かします……子どもの権利条約は、日本政府も批准しており、その精神と各条項を、政府、自治体ともに遵守することは当然のことです。「意見表明権」「余暇・休息、遊び、文化の権利」など子どもの権利を学校などあらゆる教育の場で生かします。そのために、子どもと教育関係者をはじめとするおとなへの権利条約の普及、子どもに関する施策への子どもの意見反映をすすめます。