国民の食を支えるべき国内の農漁業は衰退が続き、食料自給率は40%と先進国で例のない低水準に落ち込んだままです。農山漁村の崩壊が広がり、集落の維持や国土の保全が危ぶまれる事態です。しかも、米価など農産物価格の暴落が続き、肥料などの価格高騰も加わって、政府が「モデル」としてきた大規模農家も「やっていけない」のが現状です。
今日の事態は、歴代の自民党政権が、アメリカや財界のいいなりに、国民の食料を際限なく海外に依存する政策をとり続けてきた結果です。とくに、WTO農業協定を受け入れた95年以降、農産物輸入が30%増加し、農業産出額は2兆円以上(22%)も減りました。小泉内閣以後は、市場原理一辺倒の「構造改革」が推進され、農産物輸入のいっそうの拡大、価格保障対策の放棄、画一的な規模拡大が押しつけられました。09年度の農業予算(当初)は、2000年度とくらべ9300億円削減され、国の一般歳出に占める農業予算の比率が95年度の8%から09年の3.8%にまで低下しています。このような農政を続けては、農業と農村の崩壊に拍車がかかるのは必至です。
昨年前半、世界の穀物需給がかつてなくひっ迫し、穀物価格が史上最高値を更新し、世界的な食料危機に発展しました。その後、国際価格が一時的に低下したとはいえ、今年に入り、再び高騰を始めており、農水省も、穀物価格の中長期的な値上がりは必至と予測しています。世界は、「食料は金さえ出せばいつでも輸入できる」時代ではなくなっているのです。このときに、輸出大企業のもうけを第一に、「食料は安い外国から」という考え方で農政を続けては、国民の生存基盤が根本から脅かされ、日本が立ち行かなくなるのはあきらかです。
農漁業を立て直し、食料自給率40%という危機的状況から抜け出すことは、わが国にとって「待ったなし」の課題です。続発する食の安全をゆるがす事態の根本的な解決のためにも、食の海外依存からの脱却は欠かせません。それは、圧倒的多数の国民の願いであるとともに、食料問題の解決が人類的課題になっている21世紀の国際社会にたいする、食料輸入大国・日本の重大な責務でもあります。
自公政権は、世界的な食糧危機に直面して「自給率を50%に」と言い出しています。「水田のフル活用」を強調し、09年度の補正予算では1兆円を上回る規模の農業補助金を盛り込んでいます。しかし、昨年のWTO交渉では、米をふくめ農産物輸入のさらなる拡大が必至の「調整案」を事実上受け入れ、工業分野の輸出拡大の犠牲をまたもや農業に押し付けようとしました。自給率を低下させてきた効率偏重・市場原理一辺倒の農政も一切変えようとはしていません。ここに至っても、大企業の利益を最優先して、旧態依然たる農政路線にしがみつく自公政権に、自給率の向上を実現する能力がないことはあきらかです。
日本には、温暖多雨な自然条件、すぐれた農業技術の蓄積、世界有数の漁場、世界第二位の経済力、安全・安心を求める消費者のニーズなど、農漁業を多面的に発展させる条件は十分にあります。必要なのは、こうした条件を全面的に生かす政治です。
農林漁業と農山漁村の再生は、輸出偏重で内需が冷え込み、脆弱な体質にされてきた日本経済を内需主導、持続可能な方向へ転換するうえでも不可欠の課題です。日本共産党は、農漁業つぶしの政治を大もとから転換し、食料自給率の50%台への引き上げを国政の当面の最優先課題に位置づけ、その達成のためにあらゆる手立てをつくします。
わが国の農業再生にとっていまもっとも必要なのは、農家が安心して生産にはげめる条件を保障することです。その中心は、生産コストをカバーする農産物の価格保障であり、それを補う適切な所得補償を組み合わせることです。
米価に「不足払い」制度を導入し、当面1万7000円(60キロ)を保障する――95年には2万円(60キロ全国平均)を超えていた生産者米価は、いまや1万3000円前後。稲作農家の労働報酬は一時間わずか179円(07年産)にすぎません。これでは農家の後継者が育つはずがありません。暴落した米価の回復は、農家の最大の願いであり、最大の担い手支援です。
米価に「不足払い制度」を創設して、過去3年の生産コストの平均を基準として、販売価格がそれを下回った場合、差額を補てんします。当面、全国平均で1俵1万7000円以上にします。最近の生産コストの上昇をうけ、当然、基準は来年以降上昇していきます。
水田10アール1万円の所得補償を実施する――水田のもつ国土・環境保全の役割を評価し、中山間地に加えて平地にも直接支払いを拡大し、当面10アールあたり1万円の所得補償を実施します。食の安全や環境に配慮した有機農業などの育成にも、一定の基準で所得補償を実施します。価格保障とあわせれば、当面、全国平均で1俵1万8000円の米生産による収入を確保します。
米の需給や流通の安定に政府が責任をはたす――備蓄米は最低150万トンを確保し、不足時以外の売渡しを中止して、3年以上経過したものを主食用以外に振り向ける「棚上げ方式」を導入します。それに見合って、生産計画は需要見込みより50万トン程度のゆとりをもたせます。
米の流通規制を全面的に自由化した「米改革」(04年)が、米ころがしや悪徳業者をはびこらせ、「汚染米」事件にもつながりました。米流通の規制緩和を見直し、政府の管理責任を果たせるようにします。大手流通企業による買いたたきや、産地・品種・品質の偽装表示など無秩序な流通を規制するルールを確立します。年間を通じて計画的に出荷・販売する業者・団体にたいして、金利・倉庫料など必要な助成をおこないます。
当面、09年産米の大暴落を防ぐため備蓄米を緊急に買い入れる――大手量販店の買いたたきが横行し、今春以降、08年産米の取引価格が一段と急落し、09年産にたいする大暴落の不安が広がっています。当面、政府備蓄米100万トンの計画を満たすまで、不足分の緊急買い入れ(10万トン)を実施し、暴落の回避に努めます。
減反政策を根本から見直し、水田の総合的利用を強める――ミニマムアクセス米の輸入や量販店による買いたたきを放置したまま、米価安定を農家の自己責任に転嫁し、米減らしを強要する現行の減反政策はきっぱり中止します。米の生産調整は、棚上げ備蓄を含めたゆとりある需給計画を前提に、未達成者・地域への補助金カットといった強権的なやり方をやめ、転作作物の条件を思い切って有利にし、農家が自主的・自発的に選択できるようにします。水田稲作が適しているわが国の条件を生かして、飼料稲や飼料米、米粉向けの生産・実用化に力を入れます。当面、耕作放棄地や休耕田などでの生産する場合も単位面積あたりで食用米なみの所得を補償します。
麦や大豆、畜産、野菜なども手厚い支援で増産をはかる――自給率の極端に低い麦・大豆・飼料作物の増産は急務です。麦・大豆にも、生産費と販売価格との差額を補てんする交付金制度を復活するとともに、水田での作付け・増産をはかるため、10アール5万円の所得補償を実施します。国産を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大などを支援し、国産麦や大豆の需要拡大にとりくみます。畜産や野菜・果樹・甘味資源作物にたいしても、生産・流通の条件に応じた価格安定制度や助成制度を改善・拡充し、野放しの輸入を規制するルールづくりもすすめます。
燃油・肥料・飼料価格の高騰対策を強める――燃油・肥料・飼料原料価格を高騰させる重大な要因となっている投機マネーを規制するとともに、異常高騰には政府が補てんするようにします。燃油や飼料への依存度が高く、価格転嫁が難しい施設園芸や畜産などは補てんが不可欠です。加工原料乳、肉用子牛、畑作物をはじめ国の助成対象になっている農畜産物については、コストの上昇に見合った助成単価を引き上げます。現在の飼料供給安定基金への国の支援を強めるとともに、新たに特別の基金を創設して飼料価格の安定をはかります。
農業予算を基幹産業にふさわしく拡充し、価格保障・所得補償を柱に据える――価格保障・所得補償が農業予算に占める割合は、EU諸国では5割〜7割台です。ところが日本は、公共事業が依然として主力で価格保障・所得補償は3割台に過ぎません。農業予算全体も一貫して削減され、かつては軍事費を上回っていたのが、いまや逆転し、半分程度です。農業予算を日本経済の基幹的分野にふさわしい水準に拡大するとともに、農業予算に占める価格保障・所得補償の割合を高めて、農家経営安定に必要な予算を確保します。
これまで日本農業の中心を担ってきた多くの高齢者が「現役引退」しつつあります。今後、だれが食料生産と農村を担うかは、農家だけではなく、日本社会全体が真剣にむきあうべき課題です。大企業による大量首切りが横行し、雇用・失業問題が深刻化するなかで、その受け皿という面からも農業に対する関心と注目が高まっていますが、そうした場当たり的対応でなく、本格的に農業の担い手の確保と定着に政治の力を注ぐべきです。
多様な家族経営を維持・発展させる――わが国の農業は、大小多様な農家や各種の生産組織によって担われているのが実態です。農地の大小をモノサシに支援農家を選別したり、大規模化の数値だけをおしつけたりするやり方ではうまくいくはずがなく、食料自給率の向上など望むべくもありません。一定規模以上に対象を限定する「水田畑作経営所得安定対策」(「品目横断対策」)をやめ、農業をつづけたい人すべてを応援します。価格保障の充実など営農条件の改善、高齢化や小規模な家族経営の困難をおぎなう機械の共同利用や農作業の受委託、集落営農などの取り組みを応援し、農家の維持に努めます。
地域農業を支えている大規模農家や生産組織を支援する――離農者の農地や農作業を引き受けるなど、地域農業をささえている大規模農家、集落組織を重視し、規模拡大に見合う大型機械などの導入・更新などへの助成、低利融資、負債の利息軽減、土地改良負担の軽減措置などを実施します。
新規就農者の参入・定着を支援する――農家の後継者とともに、近年、増えつつある非農家や他産業からの農業への新規参入者の定着に力をいれ、生活支援や資金、技術、農地の面での総合的な支援体制を整え、新規就農者に月15万円を3年間支給する「就農者支援制度」を確立します。職場定年後の就農者にたいする支援制度をつくります。
株式会社の農地利用を監督・規制する――今年の農地法「改正」で、農業生産法人でない株式会社も、ほとんど制限なしに農地利用ができるようになりました。利潤追求を第一とする株式会社は、もうからなければ農業から撤退して、大規模な荒廃・転用が起こり、地域での秩序ある農地の利用や管理に重大な障害が生じる危険性が高まります。このままではなしくずしに、どんな株式会社にも農地所有が認められるようになる恐れがあり、問題はさらに深刻化します。みずから耕作に従事する者(農家)とその共同組織(農業生産法人)の権利を最優先し、株式会社の農地の進出に厳しい監視と規制を強めます。農業委員会がその役割を十分に担えるよう、必要な体制や予算を確保します。
WTO体制は、食料輸入国や途上国の農業に打撃を与え、世界の食料危機を激化させる重大な要因となってきました。いまや、世界の飢餓人口は10億2000万人と史上最高になり、6人に一人が栄養失調状態にあります。自由貿易万能のルールに農業や食料をゆだねることは、わが国にとっても、世界の食料問題の解決にとっても、もはや許されません。
WTO農業協定を根本から見直し、各国の「食料主権」の確立をめざす――昨年6月の世界食料サミットは、各国に資源を最大限生かした食料の増産を求めました。そのためには、輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」の確立が不可欠です。WTO農業協定を根本から見直し、各国に「食料主権」を保障する貿易ルールを追求します。
自由化拡大を最優先して、各国の食料増産の権利を制限することがあきらかになっているドーハラウンド(多国間貿易交渉)農業交渉の中止を求めます。
自由化をストップし、関税など国境措置を維持・強化する――日本の農産物の平均関税率は12%、農産物輸出国であるEU(20%)やアルゼンチン(33%)、ブラジル(35%)、メキシコ(43%)、タイ(35%)などとくらべて低く、農産物市場は世界でもっとも開放された国となっています。世界のどの国でも、農業をめぐる自然的・社会的条件の違いから生ずる不利を補正するために関税や輸入規制などをとっており、わが国でも、必要な国境措置を維持・強化するのは当然です。
日本農業に打撃となるFTA・EPAには反対する――オーストラリアの農業経営の規模は日本の約1900倍。国境措置=関税なしには日本の農業は守れません。牛肉・乳製品など4品目だけで約8000億円という甚大な打撃(農水省試算)をこうむることが明らかな日豪EPA(経済連携協定)交渉は中止を求めます。
日米財界は、日米自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の締結を強く求めています。世界最大の農産物輸出国であるアメリカは、牛肉をはじめ農産物の対日輸出の拡大に強い関心を持っています。民主党は、今回のマニフェストで日米FTAの締結を打ち出しましたが、食料自給率の急落をもたらす危険の大きい日米FTA・EPAに反対します。
日本企業の海外での「成長」のために農業に犠牲を強いる自由化の拡大は認めるべきではありません。FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)交渉では、わが国の農業と食料をはじめ国民の利益に重大な打撃をあたえるものには反対します。
ミニマムアクセス米の「義務」的輸入を中止する――わが国はいま、北海道の米生産量(63万トン)をはるかに上回る77万トンものミニマムアクセス米を毎年輸入しています。これが膨大な在庫となって国産米を圧迫し、「汚染米」事件を起こすなど、米をめぐる矛盾を激化させてきました。政府は、77万トンの全量輸入がWTO協定上の「義務」であるかのようにいいますが、本来、輸入は義務ではなく、“輸入機会の提供”にすぎません(99年11月の政府答弁)。米不足で暴動まで起きている国があるときに、日本が、必要ない米を輸入し続けることは犯罪的でさえあります。道理のまったくないこの制度の撤廃を求めるとともに、当面、義務的輸入は中止します。
近年、頻発する食の安全・安心を揺るがす事件の多くは、食の海外依存と深くかかわっており、根本的には、「安全な食料を日本の大地から」と結びついてこそ解決できます。食に関する信頼を高めるため、地産地消など農業者と消費者の共同を広げ、地域農業の再生をめざします。(→ 「14.消費者」参照)
輸入食品の検査体制を強化し、原産国表示の徹底をはかる――膨大な輸入食品の10%にすぎない水際での検査率を50%以上に引き上げ、厳格な検疫・検査を実施します。原産国表示を徹底します。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。
監視体制を強化し、製造年月日表示を復活する――くず米の混合品を「精米」と表示したり、生産国や産地を偽装したり、消費期限を改ざんするなど、“もうかりさえすればなんでもあり”の事態を一掃するために監視体制を強め、違反者にたいする罰則を強化します。偽装表示を抑制するため、JAS法の改正によって、直罰方式による厳罰かを全面的に導入します。また、食品に関する表示制度が各法律によって錯綜している点を一元化するため、統一的な食品表示法を制定します。製造年月日表示は復活させます。
卸売市場の公正な運営をはかるとともに、相対取引をふくめて、大手スーパーと産地、中小小売が対等な立場で交渉できる協議会を設置するなど、公正な流通ルールの実現をめざします。
BSE対策の全頭検査を維持する――アメリカは、わが国が同国産牛肉の輸入を「月齢20ヶ月以下」に限っている規制を撤廃するよう、執拗に迫っていますが、この圧力に屈することなく、わが国独自の対策を貫きます。米国産牛肉の輸入は、アメリカ側の安全体制が確立されないならば中止すべきです。自治体のおこなうBSE「全頭検査」への国の補助金を復活します。
鳥インフルエンザなど各種感染症の監視体制を強め、発生の影響を最小限にとどめるよう機敏に対処します。殺処分や移動制限で打撃を受ける農家・業者への補償を万全にすすめ、感染爆発が起こったさいの医薬品等の備蓄、ワクチン緊急生産体制などの備えを抜本的に強化します。
遺伝子組み換え食品、クローン由来食品は安全性を十分に確認する―――検証する遺伝子組み換え食品・飼料のほとんどは、急性毒性とアレルギー誘発性の審査しかされず、慢性毒性や発がん性など消費者が確認を望んでいる安全性の審査としては全く不十分です。「全食料品・飼料のGM表示義務化」のために表示制度を改善します。
クローン技術は、出生率が極端に低く、安全性の検証なども不十分で、未成熟な技術です。クローン家畜由来食品の生産、流通を認めることについては、慎重でなければなりません。海外からの輸入品で、不用意に流通、消費することがないよう監視を徹底します。もし十分安全性が確認されて、生産、流通が認められるようになっても、クローンによって生産された肉などについては、当然、消費者の知る権利を保障するため、クローン由来食品として表示します。
地産地消や食の安全を重視した地域づくりをすすめる――「食の安全都市宣言」「地産地消宣言」などをかかげる自治体が生まれています。直売所や産直がにぎわい、都会の消費者との交流もさかんです。学校給食に地場農産物を供給する取り組みも広がり、高齢者や女性、兼業農家などが元気に参加しています。こうした地域の自主的な取り組みを積極的に支援します。
地場農林水産物を生かした加工や販売を促進する――地元の特産物や資源を生かした農産加工や販売も、農産物の需要を拡大し、地域の雇用を増やすうえで重要です。地元産の小麦や米粉を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大などを支援します。農産加工への自治体の支援策について国も援助するようにします。
安全で安心の農産物の生産を広げる――「効率化」一辺倒で農薬や化学肥料に過度に依存した農業生産のあり方を見直し、有機農業など生態系と調和した環境保全型の農業、「地産地消」や「スローフード」への取り組み、食文化の継承・発展を支援します。
都市農業を振興し、宅地並み課税の廃止で都市農地をまもる――都市計画のなかに農業を明確に位置づけ、農業関連補助金の対象にするなど積極的に振興策を講じます。都市の農地を守るため、現況農地の固定資産税は農地課税に、相続税の評価は農業投資価格を基本にし、宅地並み課税を廃止します。当面、生産緑地の要件を緩和し、追加指定を広げるとともに、相続税納税猶予の制度を農業用施設用地や市民農園や体験農園の用地、貴重な緑を供給している屋敷林などにも適用を広げ、農家の営農を全体として守れるようにします。直売所、地元農産物を扱う商店、食品加工などへの支援を強めます。
中山間地等直接支払い制度を充実・改善し、恒久化する――耕作放棄の防止や集落の維持に役立っている中山間地域等直接支払い制度を、5年ごとの予算措置でなく、恒久制度として立法化します。対象要件も、高齢化が進んでいる実態を踏まえ、集落協定の要件を緩和し、対象地域の拡大、協定期間の弾力化、事務手続きの簡素化などを進めます。
過疎集落への支援を思い切って強化する――地域資源を生かした特産物や農林水産加工の振興をはかるとともに、「山の駅」(仮称)など地域にあった生活拠点をつくり、集落を結ぶコミュニティバスの運行、高齢者の多い集落への「集落支援員」の配置など、買い物や医療、福祉、教育などの生活に不可欠な最低条件(ライフミニマム)の整備に努めます。こうした対策を講ずる自治体に対し、国の支援を思い切って強めます。
鳥獣害対策を強める――増え続けている有害鳥獣から農作物を保護するため、該当する鳥獣の生態や繁殖条件の調査を国の責任で行い、防護柵、わななどの設置、捕獲物の利用などにたいする農家や自治体などの取り組みに国の支援を強めます。
わが国は国土の3分の2を森林が占め、戦後植林した人工林が伐期を迎えているのに、木材自給率は24%にすぎません。しかも、世界的な丸太の輸出規制や木材の需要増大などから外材依存が次第に困難になっています。森林・林業を山村の基幹産業として再生し、森林の適切な整備と国産材の安定的な供給が求められています。
林業労働者の確保と林業技術の継承をはかり、地域に即した流通・加工体制を確立し、林業・木材産業の再建をはかります。木材の生産、水源の涵養、国土保全、生物多様性保全など森林の多面的な機能を発揮させるため、市町村への財政措置を拡充し、森林組合など林業事業体への支援を強めます。作業道の整備、間伐の自己負担の軽減など、小規模所有者もふくめた森林整備をすすめる条件をひろげます。
国産材の需要拡大を図るため、公共事業での国産材・木製品の利用の数値目標設定、新たな木材加工・利用技術の研究開発の促進、融資や税制上の優遇措置を拡大し、地元材の使用住宅を広げます。木質バイオマスや森林レクリエーションの推進など山村地域での新たな事業を促進します。
国有林を健全に育成し多面的な機能を発揮させるため、事業の分割・民営化を撤回し、現業部門を重視し持続的な経営管理にとりくみます。
燃油高騰はある程度下がりましたが、経費増と産地魚価の低迷が、漁業と漁民経営の存続を深刻に脅かしています。投機マネーの実効ある規制を求めるとともに、政府の責任で燃油価格を安定させ、異常値上がりについては直接補てんを実施します。大スーパーの横暴な買いたたきを抑え、漁業者や産地卸の声が届く公正な取引、国内生産を圧迫する無秩序な輸入の規制などで漁民の労賃を正当に評価する魚価の実現をめざします。
日本は有数の漁場を持ちながら、世界の水産物貿易の4分の1を輸入する世界最大の輸入国であり、水産物の自給率は54%(07年)にすぎません。しかも、国民の生活条件の悪化とともに消費が減少しています。それにも関わらず経済水域内の資源状態も悪化しています。漁業経営の安定のためにも、また、乱獲を防いで資源を保全・回復するためにも、政府の責任で価格安定対策を強化し、調整保管制度を充実させ運用を強め、休漁・減船補償などを実施します。養殖や内水面漁業についても、漁場環境の保全、養殖技術の改善、疾病対策の充実、地域の自然環境を生かした振興策など、取り組みを強めます。後継者の育成のために青年漁業者支援制度を国の制度として創設します。7割が公共事業という突出した公共事業偏重の水産予算を改めれば、財源はあります。大規模な開発による干潟・藻場の破壊や埋め立て、海砂の採取、河川の汚濁などが漁場を荒廃させています。開発にたいするアセスメントの厳格な実施、藻場・干潟の保全・回復など漁場の改善に力を入れます。
漁業は地域の基幹産業であり、漁村は食料の供給とともに、環境・国土保全、生態系の維持、国民の生命・財産を守るなど多面的な役割をもっています。漁業・漁村の維持・振興は政府の責任です。漁業・水産加工業など産業基盤を強めるとともに、へき地漁村、離島の多面的な役割にふさわしく交付金の上乗せをはかります。住民の足である航路の確保、ミニバスなど地域にあった公共交通への支援を強めます。
イージス艦による漁船沈没事故など米軍・自衛隊による漁業被害、大型艦船による漁場の航行など、安全侵害が後を絶ちません。海上演習の中止と縮小、漁船の安全を保障する航海秩序の強化を図ります。