日本共産党

国土交通大臣  中山成彬 殿

2008年9月26日

日本共産党国会議員団

規制緩和政策を根本的に改め、国民の命・安全、

運転者のくらしを守るタクシー行政への転換を求めます

――タクシー政策の改定に当たっての日本共産党の提言と要求――


 タクシーは、ドア・ツー・ドアで乗客を運ぶなど、利用者の個々のニーズに柔軟に対応できる特長を持ち、地域に密着し、地域の経済、社会、日常生活を支えています。鉄道やバスのない地域では、住民の足としてなくてはならない公共交通機関でもあります。年間22億人の輸送を担い、国民の移動の権利を保障する手段の一つとして重要な役割を果たしています。

ところが、今日のタクシー事業は、需要が落ち込む中にあっても、タクシー台数が増え、運転者の低賃金や長時間労働が広がり、それが交通事故増加など安全運行を脅かすという事態が深刻さを増しています。

そのため、国土交通省は、「過剰な輸送力の供給」が「根本的な問題」であり、「供給過剰の解消やその防止に特に強力に取り組む必要がある」として、タクシー事業への新規参入や増車要件を厳しくするなど需給と運賃の問題に踏み込んで規制を強化する検討を始めました。

タクシーの「供給過剰」は、2002年の道路運送法改悪で需給調整が撤廃され、新規参入や増車を自由化するなどした規制緩和が原因です。

当時、日本共産党は、過当競争と運転者の労働条件の低下を生み出し、安全が脅かされると反対しました。しかし、政府は、利用者サービスは向上する、需要の拡大によって事業は発展する、働く労働者の労働条件は向上すると言って、規制緩和をおしすすめてきました。これが、まったくの誤りであったことは、事実が証明しています。

 いま、大事なことは、規制緩和政策の誤りを謙虚に受け止め、規制緩和政策と決別したうえで、道路運送法の改正を含めてタクシー行政を見直すことです。

そして、供給過剰が引き起こす労働者の賃金低下、長時間労働等による過労運転、乗客の争奪競争による乱暴運転などが事故の多発につながるという悪循環を断ち切らなければなりません。

そこで、「利用者の安全・安心の確保こそ、最大のサービス」「労働者のくらしを守ってこそ安全・安心」を基本とした日本共産党の提言と、直面する問題での要求を申し入れます。


1、タクシーの輸送の安全・安心の確保のため、供給過剰を解消・防止する

タクシーの輸送の安全を脅かす過当競争や運転者の労働条件低下のおおもとは需要を上回る過剰な供給にある。適正な需給調整規制を含め、供給過剰を解消・防止する手立てを講じる。

地域の実情に応じて、地域ごとに参入や増車の手続きと基準を厳格化できるようにする。

また、すでに台数が過剰な場合、地域政策として、協調的減車措置がとれるよう、独占禁止法の適用を除外する。

(適正な需給調整は、地方自治体、事業者、住民などが参加する協議会等が関与し、交通安全対策、運転者の労働条件、環境対策、地域貢献など考慮して基準を定める。)

現在実施している緊急調整措置制度は、実効性が確保できるよう改善・強化をすすめる。 

2、過度な運賃競争を解消し、適正な運賃制度を確立する。

 過度な運賃競争は、更なる労働条件の悪化などを招き安全性を損ねる要因ともなるため、解消するとともに、予防のためにも適正な運賃制度に改善する。

 地域の実情に応じて、地域ごとに認可できるようにし、同じ地域であればどのタクシーに乗ってもすべて同じ運賃(同一地域同一運賃)制度を含め、地域が自主的に制度を選択できるようにする。

3、運転者が誇りと働きがいをもてる賃金・労働条件の改善を図る

規制緩和以降、供給過剰のもとで、91年度の382万円をピークに漸減傾向にあったタクシー運転者の年間賃金(全国平均)は、06年度には全産業労働者平均の約半分の278万円に落ち込んでいる。長時間労働など、労働者の健康状態も悪化している。

タクシー事業は、人件費が総費用の7割を占めているうえ、歩合制が主流の賃金体系であることから、労働者に犠牲を容易に転嫁できる特殊性がある。これらを考慮して労働者の賃金・労働条件を改善する政策を求める。

1)名義貸し、リース制をやめさせ、タクシー経営者に、企業の社会的責任を果たさせる

 法違反の名義貸し営業は確実に摘発して撲滅する。

タクシーは、運転者の賃金体系が歩合給制であることから、売り上げが落ちても、会社は利益を確保でき、車を増やせば利益が上がるため、安易に増車しようとする。

 この特性を悪用して、企業経営上のリスクを運転者に転嫁するリース制は禁止する。

2)労働者保護及び安全運行規定に違反する事業者への行政処分を厳格に行う

無理な長時間運転をさせるような事業者に対し、強制減車や営業許可取り消しなど厳しい行政処分が科せられるようにする。

3)累進歩合制度の廃止、労働関係法遵守の徹底

 長時間労働を招く累進歩合制度の廃止をはじめ、「改善基準」告示、労働関係法の順守を徹底するため、労働行政とも連携して、運転者の賃金・労働条件の改善をはかる。歩合給の合理的改革を図る方策を検討する。

4、福祉・介護タクシーへの助成制度を設ける

 福祉・介護タクシー、過疎地の乗合タクシー等、移動制約者や地域住民の移動する権利を守る施策を充実させ、運賃や福祉車両導入への助成制度を設ける。

5、運転手の社会的地位の確立、資質の向上を図るため、タクシー運転免許の法制化を実現する。

タクシーの“輸送の安心・安全”、労働者の“誇りと働きがい”タクシー企業の“地域貢献”を確実なものとする「新たなタクシーシステムの確立」(タクシー運転免許構想)を展望し、その根幹となる「タクシードライバー法」(仮称)の制定などタクシー運転免許の法制化を実現する。

なお、運転者登録制度(2008年6月14日施行、政令指定都市等 13地域)について、良質な運転者の確保という本来の目的に適った実効性のある仕組みとして定着させること。また、運転者の登録取消処分などに係る対応については、懲罰的制裁でなく、公正、教育・指導、公開の原則を尊重するほか、背後責任の追及を明確化することを求める

6、「タクシー地域協議会」や、政策決定権限を持つ住民参加型の体制を設ける

利用者・住民、タクシー労働者の声が反映する「タクシー地域協議会」を制度的に設け、地域実情に見合ったタクシー輸送のあり方と健全な発展への施策について検討し、具体的な推進をはかるシステムを確立する。

地域ごとに、利用者・住民、事業者、タクシー運転者の声が反映する官民合同の委員会を設け、タクシーサービスのあり方や適正なタクシー台数、運賃などの重要事項の決定権を与えるようなシステムをつくる。

7、タクシー減車による地球温暖化防止への貢献

地球温暖化を防止するCO2削減の取り組みはタクシー業界の責務である。過剰なタクシー を減らすだけでも年間62万トンのCO2が削減できる。

タクシー行政が、この視点から業界を厳しく指導することを 求める。

8、原油高騰による燃料価格の値上げを抑えるため直接補てんを実施する

 タクシーの主燃料であるLPガスは、一年前に比べ約50%も高くなっている。投機マネー規制などによって燃料価格が引き下げられるまでの期間、直接補てんの実施を求める。

 以 上 


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