三月十日、日本共産党の演説会が東京・新宿区の明治公園で開かれました。一万三千人が参加し、熱気にあふれました。
お集まりいただいたみなさん、こんにちは(「こんにちは」の声、拍手)。ご紹介いただいた、日本共産党の志位和夫でございます。今日は、会場を埋めるこんなにたくさんのみなさんがお運びいただきまして、本当にありがとうございます。(拍手)
いっせい地方選挙が目前に迫ってまいりました。東京都知事選挙での吉田万三さんの勝利、市区町村議選挙での日本共産党候補の全員勝利を勝ち取り、参院選挙での勝利につながる躍進の流れを、この首都・東京からわき起こしていただきたい。このことをお願いにあがりました。どうかよろしくお願いします。(拍手)
まず国政についてお話しします。
安倍・自公政権は支持率が下がり続け、早くも行き詰まりを深めています。なぜ国民はこの内閣を見放しつつあるのか。もちろん、あの暴言をおこなった柳沢厚生労働大臣、「政治とカネ」の疑惑にまみれている伊吹大臣や松岡大臣の居座りを許していることにみられるように、あの教育基本法改悪の際には、あれだけ子どもたちに「道徳心」の説教をした安倍首相が、最低限の政治モラルも持ち合わせていないことへの怒りが広がっていることがあるでしょう(拍手、「そうだ」の声)。
同時に私は、国民がこの内閣を見放しつつある最大の理由は、自分たちが押し付けている暮らしの痛みに、あまりにも鈍感だということへの深い怒りがあるのではないかと思うのであります。前の首相の小泉さんが、「鈍感力」が大事だと言ったそうでありますが(笑い)、安倍首相のあまりの鈍感力には腹が立つではありませんか。(拍手)
わが党は、いま国民の中で、深く広がっている貧困と格差について、衆議院と参議院で連続追及をおこなってきました。
私は、衆議院の予算委員会で、子どもの貧困の広がりについてただしました。いま修学旅行にも行けない、給食費も払えないなど、子どもたちのなかでも貧困が深刻になっていることは、本当に心が痛みます。今日ここに持ってまいりましたが、これはそのときの国会で使ったOECD(経済協力開発機構)の報告書からつくったグラフです。働いている母子家庭、一人親家庭の子どもの貧困率のグラフです。青い棒は、サミットのほかの国の貧困率を示したもので、だいたい一割からせいぜい四割ぐらいですが、赤い棒、日本では57・9%、約六割に達し、飛びぬけて高くなっています。
先日、NHKが「ワーキングプア」─働く貧困層の特集番組を放映しました。二人の子どもを育てながら働いている、母子家庭のお母さんの姿が映し出されました。昼と夜、二つのパートを掛け持ちして働いています。昼のパートでは時給が六百五十円程度、手取りが月七万円にしかならず、夜も働くことになりました。家に帰るのは真夜中の二時、睡眠時間は四、五時間の生活です。このお母さんが、番組の中で次のように述べたのが、私の胸に刺さりました。「あと十年がんばれば、自分の体がぼろぼろになっても、子どもは巣立つ」。私はこの言葉を引いて、首相をただしました。「シングルマザーが、わが身を犠牲にしなければ、子どもを育てられない社会が、まともな社会と言えますか」
みなさん、少しでも心ある首相ならば、「志位さんの言うとおりだ。これではまともな社会とは言えない。政治の責任で救わなければならない」というのが、当たり前の答えではないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。しかし、私が重ねて聞いても、首相からは「まともな社会ではない」という答えは返ってきません。
それどころか、私がせっかくパネルまでつくってあげたのに(笑い)、それにけちをつけるんですよ(笑い)。首相は、OECDの報告書は「根拠が不明」だとまで言いました。しかしOECDの報告書は、その加盟国である日本政府が提供したデータからつくったものです。それが「不明」だということになれば、日本政府のデータが「不明」となって、そんなことも知らない首相は、「不明」を恥じるべきだと私は言いたいのであります。(拍手)
私は、この質疑を通じて、国際機関から指摘されても、母子家庭の切実な実態を突きつけられても、日本で貧困が広がっているとは口が裂けても言わない。この首相の姿勢に本当に腹立たしさを感じました。みなさん、現実を見なければ、「再チャレンジ」だのなんだのと、どんなきれいごとを並べても意味はない。首相の“心の貧困”こそ深刻です(拍手)。総理大臣失格だと、私は言いたいのであります。(大きな拍手、「そうだ」の声)
続けて、参議院の予算委員会では、わが党の小池晃政策委員長が、冷酷非情な国民健康保険証の取り上げの問題をただしました。国保料が高すぎて払えない。情け容赦なく保険証を取り上げて、資格証明書に置き換える。この悪政が猛威を振るっています。東京でも、約三万世帯が保険証を取り上げられています。資格証明書に置き換えられますと、病院の窓口で十割全額の負担が求められます。日本共産党の調査では、過去三年間で、そのために受診が遅れ、病気が重症化したケースが九百三十件、亡くなった方が、わかっているだけでも、二十五人にのぼります。
「保険証の取り上げをやめよ」、こう迫る小池さんに、安倍首相はくりかえし「突然、保険証を取り上げることはない」と弁明しました。最後は、「もしも本当なら指導する」としぶしぶ答えたことは、今後のたたかいの足場になります。しかし、「突然、保険証を取り上げるようなことはない」、そんな乱暴なことはしていないという答弁は、あまりにも現実を知らない。命の痛みを感じる心がないことに、私はあぜんとする思いで質疑を聞きました。
みなさん、国保料を滞納している人は、そのほとんどが生活が苦しくて、払いたくとも払えない人たちであります。そういう人から保険証を取り上げ、資格証明書に置き換え、窓口で十割全額払えという。窓口で全額払えるぐらいだったら、保険料を払っていますよ(「そうだ」の声、拍手)。それができないから、困っているんじゃありませんか。そういう方々から保険証を取り上げるというのは、命を捨てろというにひとしい暴政であって、文明国家だったら、絶対にやってはならないことだと、私は訴えたいと思うのであります(拍手、「そうだ」の声)。
私たち日本共産党は、貧困打開、生活防衛のために、五つの緊急要求の実現を主張しています。
第一は、定率減税の廃止など、庶民大増税を中止することであります。(拍手)
第二は、低すぎる最低賃金をせめて時給千円以上に抜本的に引き上げ、正規労働者と非正規労働者の均等待遇のルールを確立することであります。(拍手)
第三は、生活保護を受けている母子家庭への母子加算廃止の計画、児童扶養手当削減の計画を中止し、生活保護の老齢加算を復活することであります。(拍手)
第四は、冷酷無情な国民健康保険証の取り上げを中止し、高すぎる保険料の値下げをはかることであります。(拍手)
第五は、障害者自立支援法による応益負担、障害が重い人ほど負担が重くなる希代の悪法をあらため、一割負担を撤回することであります。(大きな拍手)
みなさん、これらは、立場の違いをこえて、誰でもご賛同いただける最小限の、しかも差し迫った要求ではないでしょうか。(拍手)
財源は、空前の大もうけをしているところに払ってもらえばいい(「そうだ」の声、拍手)。いまの大企業の空前のもうけは、尋常なもうけ、まっとうなもうけではありません。働く人の賃金を削りに削った上に、「サービス残業」と「偽装請負」という二つの無法のうえにつくられたもうけであります。職場の無法を根絶するとともに、このもうけを国民に還元させようではありませんか(拍手)。これ以上の大企業や大金持ちへの減税計画は中止し、もうけ相応の税金と社会保険料の負担をしてもらおうではありませんか(大きな拍手)。
安倍内閣は、自分が招いた、行き詰まりの打開と、内閣の延命のために、タカ派の本性、反動派の本性をむき出しにしています。二つの重大な問題が持ち上がってきました。
一つは、憲法改悪への暴走です。首相は、自分の六年間の任期中に憲法を変えると言い出しました。六年間も務まると思っているところが考え違いでありますが(笑い)、ともかくも、そういうことを言った首相は、戦後初めてです。憲法九条を変え、「海外で戦争をする国」をつくることがその中心です。その第一歩として、改憲手続き法を成立させろという号令をかけています。
改憲手続き法について、これを推進する勢力は、初めは「これは憲法改定と関係ないのです。中立の立場の法律の整備なんです」とごまかしていました。しかし、これが憲法改定と一体のものであることは、安倍首相自身がこれを一体に提起していることからも、すでに明らかであります。
しかも、その中身をみますと、国民投票になったら、憲法改定派が有利になる不公正、党略的な仕組みが満載されています。国民の少数の賛成でも、憲法が変えられる。公務員、教育者の自由な意見表明を制限する。改憲派が巨額のカネの力で有料CMを独占して、世論誘導を行う危険がある。有名タレントを登場させて、「古い憲法を脱ぎ捨てましょう」、などというコマーシャルを朝から晩まで流される危険があります。こうした猛毒の仕掛けが盛り込まれています。
こんな悪法を、こともあろうに、憲法記念日の五月三日までに強行するなどという暴挙は、絶対に許すわけにいきません(拍手)。私は、この場を借りて、この悪法を阻止する国民的運動を急速に起こし、国会を包囲するということを心から呼びかけたいと思います。(大きな拍手、「そうだ」の声)
いま一つは、歴史問題での逆流です。アメリカ下院の外交委員会で、「従軍慰安婦」問題について、日本政府に明確な謝罪を求める決議案が提起されました。これに対して、安倍首相が、「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」などと、歴史の真実をゆがめた発言を繰り返していることに、内外からの激しい批判がわき起こっています。
そもそも、「従軍慰安婦」問題とは、どういう問題でしょうか。朝鮮、台湾、東南アジア諸国など、日本が植民地としたり、軍事占領した地域から、おびただしい数の女性を動員して、日本軍が戦場に配置した「慰安所」に閉じ込め、「慰安婦」として性行為を強要したという問題です。このおぞましい非人間的な犯罪行為の全体──「慰安婦」の動員から「慰安所」での性行為の強要などの全体が、国家と軍による大掛かりな強制なしに不可能であることは明らかではありませんか(拍手)。それを裏付ける無数の証拠も存在します。そのことを自民党政府でさえ認めざるを得なくなったのが「河野談話」であります。
私は、安倍首相に歴史の真実をゆがめ、みずから継承すると言明した「河野談話」を事実上否定する発言を撤回することを強く求めるものであります。(大きな拍手)
私は、昨年九月に初めて韓国を訪問し、多くの方々と交流する機会を得ました。韓国のみなさんの日本への見方として、二つの点が強烈な印象に残りました。一つは、植民地支配をうけた傷跡の深さと、その歴史をゆがめる者への強い憤りです。いま一つは、「日本の右傾化」への心配です。「憲法九条が心配です」という声がたくさんよせられました。憲法九条のことを、アジアの人たちはわがことのように心配しているということを、私は痛切に受け止めました。
私は、この体験からも、歴史の真実と向き合うこと、アジアに甚大な犠牲をもたらした侵略戦争への反省のうえに築いた憲法九条を守りぬくこと──この立場にたってこそアジアの国々に本当に信頼される日本を築くことができると、深く心に刻みました(拍手)。侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた党として、そのために力をつくすことをお約束したいと思います。(大きな拍手)
「自民か、民主か」─これが今度の選挙の一番の焦点だと、ずいぶんいわれています。安倍・自公政権があまりにひどいので、「ワラをもつかむ」思いで民主党に期待をする方もいるかもしれません。しかし、民主党の実態をよく見きわめていただきたいのです。
いま民主党は「対立軸路線」をとなえ、「格差是正」を叫んでいます。しかし私は問いたい。格差と貧困を広げてきた責任は、自民・公明だけのものでありましょうか。
私は、今度の国会での民主党の質問を聞いて驚きました。民主党は本会議の代表質問で「非正規の著しい増加の主因は、度重なる派遣法制の変更にあります」とのべました。しかし、それなら一九九九年に派遣労働の原則自由化の法改悪に賛成したことをどう説明するのでしょうか(「そうだ」の声)。民主党は、「介護保険法改正で、現場は危機的な状態に陥っています」とものべました。しかしそれならば、わずか一年半前の介護保険法改悪で、軽度の要介護の方への支援の切り捨て、ホテルコストと称して施設に入所されているお年寄りから食費と居住費を取りたてる大改悪を、「介護保険の本来の姿に戻ろうとするものだ」と高く評価して賛成したことをどう説明するのでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。民主党は、「児童扶養手当の削減の中止」ともいいだしました。しかしそれなら、母子家庭のこの「命綱」を半分にまで減らす法改悪に二〇〇三年に賛成したことをどう説明するのでしょうか(拍手)。民主党は、「大企業への税金は安すぎる」といいだしました。それなら、大企業への特別減税の旗振りをおこない、「法人税をもっと下げろ」と主張してきたことをどう説明するのでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。何一つ説明してないではありませんか。(拍手)
最近、東京でおこなわれた集会で、民主党の菅代表代行にこういう質問が出たそうです。「民主党は派遣法制の変更を問題にしているが、派遣労働の原則自由化に民主党は賛成したではないか」。これに、なんと答えたか。「正確に覚えていません」(爆笑)。これはあまりに責任のない態度ではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
「格差是正」をいうのは結構です。しかしそれを言うならば、これまで自分たちが貧困と格差拡大の法案に賛成してきたことへの反省が必要ではないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。自民・公明と一体に貧困と格差を拡大する悪政を推進しておきながら、その反省もなしに選挙が近づくと「対決」を叫ぶ。これは国民にたいしてあまりに無責任、不誠実な態度といわなければなりません。(拍手)
憲法改定をきそって推進することでも、いまのべた国民のくらしの基本にかかわる問題でも自民、民主のどちらかが「よりまし」とは言えないのです。どの問題でも国民の立場に立って自民党政治を根本から転換するためにたたかう「たしかな野党」──日本共産党がいまこそ必要であります(拍手)。この党が伸びるかどうかが選挙戦の最大の焦点であります。みなさん、日本共産党をこの首都・東京から伸ばして、国民だれもが希望を持ち、安心して暮らせる、平和で豊かな日本への道を開こうではありませんか。(大きな拍手)
つぎに都政についてお話しします。都知事選挙では何が問われるでしょうか。この選挙は、何よりもまず石原都政の八年間への審判を下す選挙であります。私は、石原知事が東京都でこの八年間すすめた政治には、“3つの大罪”があると告発したいのであります。
第一の大罪は、都民の福祉とくらしを切り捨て巨大開発へ税金を注ぎ込むという「逆立ち」都政を極端なまでにひどくした罪であります。
石原知事が初めて知事に就任した一九九九年の都政の姿はどのようなものだったでしょう。思い出していただきたい。当時はまだ革新都政の時代に都民のみなさんが築いた福祉の制度が生きて働き、都民のくらしを守っていました。寝たきりのお年寄りのための老人福祉手当は月額五万五千円と、東京は全国で最も手厚い制度でありました。革新都政が全国に先駆けて実施した六十五歳から六十九歳までの老人医療費助成(マル福)はおこなわれており、「六十五歳になるのが待ち遠しい」という人もいました。シルバーパスは原則無料でお年寄りが気軽に外出するうえでの力強い味方でありました。特別養護老人ホームの利用者サービスを充実する都独自の補助は、東京は全国でももっとも手厚いもので、職員配置の充実におおいに役立っていました。私立保育園への都独自の運営費補助も、東京は全国でも最も手厚いもので経験豊かなベテラン保育士を確保し、保育の質を高めるうえで大切な役割を果たしていました。
これらの都民のみなさんが革新都政時代にみんなで築いたくらしを守る制度は、一九七九年に革新都政が壊され、鈴木自民党都政にかわり、青島都政になったもとでも、都民のみなさんの力によって守り抜かれていました。
石原知事の八年間は、それを乱暴きわまるやり方で破壊をしました。知事就任直後、「何が贅沢(ぜいたく)かといえば、まず福祉」といって切り捨てを始め、老人福祉手当を廃止し、老人医療費助成を廃止し、シルバーパスを全面有料化し、特別養護老人ホームへの補助を廃止し、私立保育園への運営費補助を大幅削減しました。さらには年間六十四万円の盲導犬のエサ代の補助、年間四十万円の身体障害者の方々の団体の海水浴の補助まで廃止しました。福祉関係費は、一九九九年度に比べ年間四百五十億円も減額され、歳出にたいする民生費の割合は、全国四十七都道府県のうち東京は第二位にあったものが、第二十二位まで転落しました。
福祉を削って注ぎ込んだのは巨大開発でした。大規模開発を中心に年間一兆円、バブル前の水準の二倍ものお金を大型公共事業につぎ込みました。「税金を一円も使わない」といって始めた臨海開発について、「引くも地獄、進むも地獄」という有名な「地獄発言」をおこない、破たんを認めながら、税金を流し続け、八年間に投入された税金と都民の財産は二兆円を超えます。利用料で建設費をまかなうことになっており、本来、税金を入れる必要のない高速道路の建設に、都民の税金を二千億円も投入しました。さらに、オリンピック招致を口実に八兆五千億円もの巨大開発を計画し、それをすすめるために毎年一千億円ものため込みをおこなっています。
福祉を切り捨て、巨大開発を推進する「逆立ち」都政を極端にまでひどくした──私はここにこそ、石原都政八年間の最大の罪があり、ただすべき都政の最大のゆがみがあるということを訴えたいと思うのであります。(拍手)
第二の大罪は、憲法と民主主義を破壊する暴政をすすめた罪です。
石原知事は「私は、あの憲法を認めない」と公の場で言い放ち、憲法改悪の旗振りをおこなってきました。
私は、昨年、教育基本法改悪に反対する国会論戦をすすめるうえで、東京の教育についての実情をうかがいましたが、「東京では学校の門をくぐると憲法はなくなるのか」との強い怒りをおぼえました。
東京では、卒業式や入学式で「日の丸・君が代」の常軌を逸した強制がおこなわれ、「君が代」斉唱にさいして従わない教職員─、起立しないという立場をとった教職員を、毎年のように処分しています。起立しない生徒が多かった学校には、教師が結果責任をとらされ事実上の処分がなされています。これが、子どもたちの心をどれだけ傷つけ、教育への信頼をどれだけ失墜させているかは、はかりしれないものがあります。
昨年九月、東京地裁は、この強制を、違憲、違法と断罪する画期的判決をくだしました(拍手)。教育基本法が改悪されても、憲法は厳然として国民の権利を守っています。東京での野蛮な行為が憲法違反であることに、いささかの変わりはありません(拍手)。憲法違反の無法な強制はやめよ、憲法を守れない人物に知事の資格なしと私は強くいいたいのであります。(大きな拍手、「そうだ」「よし」の声)
第三の大罪は、都政私物化の罪であります。
石原知事が税金を使っておこなった海外出張は、夫人同伴で一日五十万円を超えるホテルに泊まり、飛行機は側近も含めてファーストクラスに乗る。現地ではリムジン、ヘリコプター、クルーザーを乗り回す。十五回で二億六千万円を使った、豪華に「超」がつく海外旅行でありました。
四男を重用しての都政私物化も大問題になっています。知事は「余人をもって代え難い」と弁明しましたけれども、自分の息子を「余人をもって代え難い」という親(笑い)の心理は、計り知れません(笑い、拍手)。
さらに、知事と側近による公費を使った飲み食いは、百五十五回もおこなわれ、二千六百万円以上の税金が使われ、料亭で都政の重大問題が決められ、そのなかには一回五十万円、六十万円もかけた飲み食いもあります。
これらはすべて日本共産党都議団が膨大な情報開示資料を分析して明らかにしたものでしたが、こういう行為にたいして都民のみなさんの怒りがどうしてここまで広がったのか。それは「福祉については、盲導犬のエサ代補助のような、わずかな額のものまで削りに削りながら、ガラパゴス旅行とは許せない」──福祉切り捨てへの怒りが都政私物化への怒りがこれだけ広がった土台にあるのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
みなさん、ここで重要なのは、石原都政のこれらの“3つの大罪”は、石原知事一人でやったことではないということです。都議会の自民、民主、公明の「オール与党」が支え、知事を賛美・激励し、チェック機能を放棄する中でおこなわれたということであります。
「介護手当は寝たきりを助長する」といって、廃止の音頭をとったのは民主党です。破たんした臨海開発を「首都・東京の再生につながる」と後押ししたのは自民党でした。「日の丸・君が代」の強制のために「通達を出せ」「教員を処分せよ」とけしかけたのは、自民党と民主党の議員たちです。そして、豪華海外旅行は、自民、民主、公明の議員がそろっておこない、こちらも一人平均百四十八万円という豪華ぶりでした。自民、民主、公明の「オール与党」が石原都政の“三つの大罪”の共犯者であったということを、私はきびしく指摘しなければなりません。(大きな拍手)
選挙になって、自らが共犯者だったことを隠して、“にわか野党”になろうという党があります。民主党は、この二月の議会で、にわかに石原知事との「対決」姿勢をとり、石原知事を「公私の境目を失い、周囲に太鼓持ちを置く裸の王様」とまで批判しました。しかし、知事に、「ならば今までなぜ都が提案した提案に民主党はすべて賛成してきたのか」「公党としての品格が問われる」などと反論されて、それに反論できません。あの石原知事に「品格」を問われて(笑い)、反論できない政党とは何者か(爆笑)。「太鼓持ち」という批判も、石原知事のありとあらゆる行動を賛美してきた自分にはね返る批判ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。民主党は、知事側近の豪華海外旅行についても「追及」しましたが、知事から、「民主党の議員も南米のイグアスの滝にいっているではないか」と反論されてしまいました。(笑いと「そうだ」の声、拍手)
自民党、公明党とともに民主党もまた石原都政の八年間の暴政の共犯者であって、そのことへの反省ぬきに選挙目当てに「野党ポーズ」をとることは、都民をあざむく卑きょう・卑劣な行為といわなければなりません。(「そうだ」の声、拍手)
都民の審判を受けるべきは石原知事だけではありません。「オール与党」への審判が必要です(拍手)。この選挙を石原都政と、それを支えた自民、民主、公明の「オール与党」の“三つの大罪”に厳しい審判を下す選挙にしていこうではありませんか。(大きな拍手)
みなさん。石原知事と「オール与党」によってすすめられた福祉切り捨て、巨大開発推進という「逆立ち」都政をただし、「都民が主人公」への都政への転換をはかる立場、政策、資格を持つのは、政党では日本共産党、候補者では無党派の方がたと日本共産党が共同で推選している吉田万三さんだけであります。(拍手)
日本共産党は、石原都政がすすめた“三つの大罪”のどの問題でも、それを正面からただし、ついに「石原タブー」を打ち破るところまで、この暴政を追い詰めてきました。都政における唯一の野党が日本共産党であります(拍手)。
日本共産党都議団は、毎年の予算都議会で予算組み替え案を提出し、都財政の数%の予算を組み替えれば、福祉、教育、中小企業支援、環境など、都民のみなさんの願いにこたえることができることを、具体的な対案の形で示してきました。
石原知事も「(民主党が)予算を今度は否決(反対)するようだ。それなら対案として、共産党のように組み替え動議をだすべきだと思う」と何回も都議会でいったそうであります。日本共産党が具体的対案を示す責任ある政党であるということは、わが党をもっとも恐れ、憎んでいる現知事も、認めるところであります。(拍手、「そうだ」の声)
そしてみなさん。候補者では、無党派の方がたと日本共産党が共同して推薦している吉田万三さんだけが、都政を大本からかえるたしかな立場にたっています。そして、吉田万三さんは、それをやり遂げるたしかな実績をもっています。
吉田さんが区長をつとめた足立区では、かつて自民、公明両党がホテルの誘致計画をすすめ、「ホテルをつくるなどというのは、区がやる仕事ではない」と強い批判がふき上がりました。一九九六年に足立区長になった吉田さんは、議会での激しい妨害にきぜんと立ち向かい、公約したホテル計画の撤回をやりぬきました。わずか二年十カ月の間に、区の税金の使い方を、大型事業中心から「くらし第一」にみごとに切り替えたのが吉田万三さんであります(拍手、「そうだ」の声)。
「逆立ち」自治体をただした、ためされずみの実績を持つ吉田万三さんこそ、「逆立ち」都政を、「都民が主人公」の都政に切り替えることができる唯一の候補者だということを、私は心から訴えたいのであります。(大きな拍手)
この点で、前宮城県知事の浅野史郎氏はどうでしょうか。
私は、四年前に浅野さんが三期目の知事をつとめている時期に、宮城県に共産党県議選の応援にいったことを思い出します。そのときの演説の記録を読み返してみましたら、当時の記憶がよみがえってきました。私は、そのときに浅野県政の資料をつぶさに分析して、「この知事さんは、政党の推薦を受けてはいないが、やっている政治の中身をみると自民党よりも自民党型だ」と診断し、批判しました。なにしろ、その時点の数字ですが、宮城県は、東北六県で一人あたりの住民税は一位。一番税金をとっているのに、東北六県で、福祉費は最低、教育費も最低、衛生費も最低でした。宮城県では、浅野さんの前の自民党の知事も「これだけは絶対にやらない」といってきたのは国保証のとりあげでした。それを浅野知事は平然とすすめていました。その一方で、巨大開発のほうは、船のこない石巻市の港に、何千億円ものお金をいれて、巨大なふ頭と防波堤をつくっていました。私は典型的な「逆立ち」県政の見本だと批判したことを思い出します。
私のこの診断と批判は正しかったと思います。私は、いくら港をつくったって、船は来ませんよと、四年前に言いましたけれども、その“予言”はそのとおりになりました。
浅野氏の三期十二年の宮城県知事としての「実績」をあらためて調べてみましたら、冷酷な福祉切り捨てと大型開発優先の「逆立ち」県政を自民、公明、民主、社民の「オール与党」に支えられておこなったという点では、石原知事とまったく同じ流れのなかにいる人物であるということはまぎれもない事実であります。(拍手)
石原東京都政と浅野宮城県政を並べてみますと、やっていることは驚くほど同じであります(「そうだ」の声、拍手)。福祉切り捨てをとってみても、介護保険導入を口実に介護手当てなど経済給付的独自施策をのきなみ打ち切ったこと、乳幼児・障害者・母子家庭の医療費助成に一部負担を導入したこと、特別養護老人ホームなど老人福祉施設への都・県の独自補助を削減したこと、私立保育園への都・県の独自助成を削減したこと、都立高校や県立高校の統廃合を推進してきたことなど、絵に描いたようにうり二つであります。この二つの対照表をつくったら、どちらが東京でどちらが宮城かが、ほとんど区別がつかないというありさまであります。(拍手)
浅野さんは立候補表明の際、東京都の介護保険三施設の人口あたりの定員率が、全国四十七都道府県で最下位だということをさかんに批判しました。しかし残念ながら、浅野さんがやってきた宮城県政も全国四十位(笑い)なのであります。四十位の県政が四十七位の都政を笑うことができるでしょうか。どちらも二人の知事が「施設から在宅へ」を口実に、介護施設への補助を削減するなどして、施設整備を遅らせてきた結果であります。
「障害者自立支援法」──障害が重い人ほど負担が重くなるという、稀代(きだい)の悪法にたいしても、石原氏、浅野氏ともに、これを賛美する態度で共通しています。
ですから浅野さんが石原都政に対して、「一期目はよかった」、「輝かしい業績をあげてきた」、「基本的にはだいたい継承すべきもの」といっているのは、たんなる外交辞令ではないのです。それは、まさに二人が「逆立ち」仲間であるということを、当事者が認めた発言にほかなりません(「そうだ」の声、拍手)。
石原知事の暴政があまりにひどいだけに、浅野さんを「よりまし」と期待する人がいるかもしれません。しかし自治体とは何よりも「住民福祉のための機関」であり、その自治体の原点を、乱暴に、また冷酷にふみにじるという点では、石原さん、浅野さんのどちらかが「よりまし」とは、けっしていえないのであります(拍手)。
宮城県で「逆立ち」県政をすすめてきた人物が東京にきて、「逆立ち」都政をおこなってきた「オール与党」の一部にかつがれて、どうして都政改革ができるか。私は絶対にできないと言わなければなりません。(「その通り」の声、拍手)
マスメディアなどは、「石原・浅野対決」などと書きますが、それはまったくの偽りです。この選挙の真実の姿は、二つに分裂した「オール与党」陣営と、日本共産党と無党派が共同して推薦する吉田万三さんの対決です。これが真実の姿です。この対決の構図を広く都民に伝え、無党派と日本共産党の共同の輪を広げに広げ、吉田万三さんで都政に「福祉の心」をとりもどし、「都民が主人公」の都政をとりもどそうではありませんか。(大きな拍手、「よし」の声)
最後に私は、世界に目を向けてみたいと思います。
私は、昨年九月に、韓国、パキスタンを訪問し、今年の一月にベトナムを訪問する機会を得ました。どこでも共通して感じたのは、二十一世紀の世界が平和と進歩の方向に音を立てて変わりつつあることとともに、日本共産党の八十五年の歴史がもつ重みでありました。
韓国では、日本共産党が戦前の厳しい弾圧のもとで、侵略戦争と植民地支配への反対を命がけでつらぬいた党だということが、友好の土台となりました。私はソウルに到着して、一番はじめに西大門刑務所跡歴史館を訪問し、弾圧で倒れた朝鮮の愛国者たちに追悼の献花をおこないました。西大門というのは、かつて日本帝国主義が朝鮮の愛国者たちを投獄し、拷問し、処刑した、韓国の人たちにとっては深い痛みの地であります。私はつめかけた韓国メディアに「まっさきにここにきた理由はなんですか」と問われて、こう答えました。
「私たち日本共産党は、一九二二年に党を創立しましたが、党をつくった当初から、朝鮮の愛国者とともに植民地支配に反対を貫き、朝鮮独立のたたかいに連帯してたたかった歴史をもっています。そういう党を代表して、私は、私たちのいわば“歴史的同志”にたいして敬意をあらわすために来ました。同時に私は、二十一世紀の日韓両国民の本当の友好を願ってこの地にきました。誤った過去に正面から向かい合ってこそ、アジアに本当の友人を得ることはできると、私は信じています」。
私は、こう答えながら、苦難のなかで、反戦平和の旗をかかげ続けた、戦前の私たちの先輩たちへの敬意と、こういう歴史をもつ党の一員であることの誇りを強く感じました(拍手)。
私のこの言葉を、韓国のテレビ各局はゴールデンアワーの時間に大きく報じました。日本ではあまり報じられなかったようですけれども(笑い)、韓国ではずいぶん報じられたようです。次の日に私が国会を訪問しますと、国会議長のイム・チェジョンさんはこういわれました。「志位委員長が西大門を訪問されたことに、私は感無量です。感謝の気持ちでいっぱいです。韓国国民を代表して感謝します」。この言葉には、私たちが逆に深い感動を覚えました。(拍手)
次に私は、パキスタンを訪問しました。パキスタン政界のみなさんとの交流で、信頼の根本となったのは、日本共産党が旧ソ連のアフガニスタン侵略に反対し、自主独立を貫いた政党だということであります。ソ連のアフガン侵攻で、パキスタンには難民、銃、麻薬が大量に流れ込み、大変な被害をこうむりました。それだけにこれに勇気をもって反対を貫いた有力な共産党が日本にあるということが、信頼の土台となりました。
私は、スムロ上院議長と会談した際に、自己紹介をしようと思いまして、プロフィルをだそうとすると、その前に先方からこういう言葉が出てきました。
「私は、日本共産党について研究しました。一九二二年に党を創立されて以来、戦前の困難な時期、戦後の党内部分裂などをくぐりぬけ、二つの大きな共産党の干渉にもかかわらず、自主独立を維持してきました。チェコ、アフガン侵略に反対し、自分の頭で考え、自分の路線をさだめてきた政党だということを知っています。私はあなたの党に最大の敬意をもっています」。
こういわれてしまいますと、私は自己紹介の必要がなくなってしまいます(笑い)。ここでも、自主独立という党の歴史が信頼の源になったということを報告しておきたいと思います。(拍手)
私は、この一月にベトナムを訪問しました。ベトナムでは、アメリカによる侵略戦争に反対してたたかった日本共産党や民主団体の連帯のたたかいが、どこでも生々しい記憶として残っています。戦争博物館にいきますと、なつかしい日本のベトナム人民連帯のポスターがはってあります。これがベトナムの人々との連帯の絆(きずな)となりました。
ベトナム共産党のマイン書記長、ズン首相などとの会談でも、「かつて抗米救国闘争に連帯してくれたことを、けっして忘れない」、この感謝の言葉からはじまります。若い人との交流でも、そのことへの信頼が寄せられました。私は、ハノイ大学で講演をする機会がありましたが、私はそこで私たちが青年だった時代に「自由ベトナム行進曲」をみんなでよく歌った、ということを話しました。不覚にも「いまでも歌詞を全部暗唱しています」(笑い)、こういったために、学生のみなさんから、「ここで歌ってください」といわれまして、一節を歌いましたら、若い人たちもみんな知ってる歌で、手拍子と拍手かっさいが起こりました。
ベトナムでは、ホーチミン市の郊外にあるクチという土地にあるトンネルを訪問しました。かつて南ベトナム解放民族戦線が地下にトンネルを掘ってたたかったあとであります。当時、米軍は枯れ葉剤をまき、クチの緑を根こそぎ破壊し、クチを死の地に変えようとしました。しかしクチの人々は負けませんでした。手掘りで二百五十キロメートルにわたるトンネル網をつくりました。ここへ入りますと何でもあります。司令部、休むところ、寝るところ、食堂、医療所もあります。私は聞きました。「水はどうしていたんですか」。そうしますと「トンネルの中に、さらに深い井戸を掘って、くみあげたとの答えでした。「食料はどうしていたのですか」と聞くと、「自給と周辺の農民がもってきてくれた」との答えでした。「武器はどうしたんですか」と聞くと、「米軍から奪ってたたかった」(笑い)との答えでした。案内してくれた元兵士の方は、「だから米軍がこないと困った」(笑い)という話までしていました。
しかし、ここでは一万八千人の兵士のうち一万二千人が命をおとしたとのことでした。私は、案内をしてくれた元兵士に「ベトナム人民の不屈の闘争に、心からの敬意をのべたい」と言いました。そうすると相手から返ってきた言葉は、「同志たちも同じ立場だったら、私たち同じようにたたかったでしょう」。これは、私たち日本共産党へのベトナム人民の最大級の信頼の言葉ではないでしょうか。(拍手)
日本共産党の八十五年の歴史は、一言で言って苦難の歴史です。わが党の歴史には、党が前進する時も、後退を余儀なくされる時も、いろいろあります。しかしどんな時でも、わが党が、どこかの風頼みで、楽々と前進できる時は、ひとときとしてありません。それはわが党が、この政治を大本から変える高い志を持った政党であり、だからこそ相手も、この党の前進を恐れているからであります。それに正面から立ち向かい、打ち破りながら、前進を切り開いてきたのが、私たちの党の歴史であります(拍手)。
しかしみなさん、大義に立ったたたかいは、必ず未来に生きる。このことを私は、三つの外国訪問を通じても実感したということを、みなさんにご報告しておきたいと思うのであります。(拍手)
みなさん、選挙戦はあと一カ月です。この党の歴史と路線に確信をもって、直面する都知事選で都政改革の大義の旗を高く掲げ、吉田万三さんの勝利をめざしてがんばりぬき、つづく区市町村議選で日本共産党候補者の全員の勝利をかちとり、七月には首都での参議院選挙での勝利を、党の歴史に刻み込もうではありませんか。私もみなさんと一緒に最後までたたかいぬく決意を申し上げて訴えといたします。ともにがんばりましょう。(「そうだ」「がんばろう」の声、大きな拍手)
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