2005年8月11日(木)
その社会における男女の平等は民主主義と人権のバロメーターです。社会のさまざまな分野で女性が力を発揮し、企業でも地域社会でも、スポーツの分野でも女性の活躍は確実に広がっています。しかし、女性の地位や平等の改善は遅々としてすすみません。
2003年に女性差別撤廃条約の実施状況を検討した女性差別撤廃委員会では、「世界でもっとも富裕な国の一つである日本の女性の地位の変化の速度が、いらだちを覚えるほど遅い」ことを指摘し、日本政府に改善を求めています。先進国のなかで日本のように社会全体の根本問題として国際的機関からくりかえし批判され、改善の勧告が出されている国はありません。
女性にたいする差別の是正は日本社会全体の課題です。日本共産党は社会のあらゆる分野で差別是正の実効あるルールを確立し、女性が生きいきと力を発揮できる社会にするために奮闘します。
政府・財界がすすめる、正規雇用を非正規雇用におきかえる政策のもとで、職場で働く女性の過半数が非正規雇用となり、不安定な労働条件のもとで働いています。若い女性のなかでもパートや派遣労働が急増し、派遣労働者の8〜9割は若い女性です。女性労働者の賃金は男性の5割であり、企業の管理的部門への登用は1 ・8%(部長職)、妊娠・出産による差別的扱いも横行しています。「将来に希望がもてない」、「能力が生かせない」という不安がつよまっています。男女雇用機会均等法改定と一体におこなわれた労働基準法の改悪で、残業や深夜・休日労働を制限していた女子保護規定が撤廃され、女性にも長時間労働がひろがり、家庭や子育てとの両立はいっそう困難になっています。
職場で働く女性の過半数をしめるパートや派遣労働者の労働条件の改善なくして、男女平等の前進はありません。法律に違反する一方的な解雇や雇い止めをやめさせます。パートや派遣労働者への不当な差別や格差をなくします。均等待遇の確保をはかる法整備をすすめ、希望する人に正規雇用への道をひろげます。また、最低賃金を引き上げ、全国一律の最低賃金制度の確立でパートの賃金の底上げをはかります。
均等法を抜本的に改正し、コース別雇用など表面的には男女差別にみえなくても事実上、女性を差別する「間接差別」禁止をもりこみ、罰則、救済制度の強化などをすすめます。「妊娠リストラ」といわれる妊娠・出産による退職強要などの不利益取り扱い禁止を明記し、企業への指導をつよめます。土木業界などの強い要望がある坑内労働の解禁については、関連企業への調査で母性健康保護の面から不適切という意見もあり、女性労働者の健康被害への影響の検討が不十分な現段階では反対です。
だれもが安心して利用できる育児介護休業制度へ拡充をおこないます。パートや派遣、有期雇用でもとりやすい制度への改善、休業期間の延長、休業中の所得保障の6割への改善、勤務時間の短縮や時間外・深夜労働の免除制度の拡充などをすすめます。
出産、育児などで退職した女性への再就職支援、職業教育訓練、そのための助成や保育制度などを整備します。
農家や自営業者の家族の働き分を正当に評価するように税制の改善、出産・傷病手当制度を導入します。
女性の体、性差に考慮した医療の発展をはかり、女性専用外来の開設・運営への国の助成と条件整備、保健所での女性専用相談窓口の開設、乳がん・子宮がん検診の充実など総合的な対策をすすめます。妊娠中の検診への補助拡充、出産一時金の引き上げ、産休中の所得保障引き上げなど、妊娠・出産にかかわる経済的負担の軽減をはかります。
母子家庭の平均年収は一般世帯の約四割にとどまり、七割以上の世帯が「生活が苦しい」と感じており、経済的困難の解決は急務です。政府のあいつぐ児童扶養手当の改悪など社会保障切り捨てが、困難に拍車をかけています。子どもの養育やDV(配偶者暴力)など、生活全体にかかわる悩みも深刻です。児童扶養手当の拡充、就労支援の充実など母子家庭への支援をつよめます。
パート労働者に厚生年金加入の権利を保障することが大切です。現在、加入要件をみたしているにもかかわらず企業が保険料を負担したくないことから未加入のままにしている状況があります。政府は、こうした状況を放置せず、積極的に改善措置をすすめるべきです。また新しい基準を設けるなら最低賃金の底上げによるパート労働者の低賃金の改善が必要です。現在、女性パート労働者は平均時給904円、男性正社員の45%、女性正社員の66%という低賃金におかれています。この現状のまま適用拡大をおこなえば、負担増を押しつけるだけです。
サラリーマン世帯の専業主婦(3号被保険者)からの保険料徴収問題は、所得のない人に負担を課さないという社会保障の原則に反します。日本共産党は「応能負担の原則」にたち、高額所得の夫に、税であれ、社会保険料であれ、応分の負担を求めることを提案しています。また、3号被保険者の問題を根本的に解決するためにも、全額国庫による最低保障年金制度をスタートさせ、女性の無年金や低額年金問題の解決をすすめます。
待たれている選択的夫婦別姓制度を早く実現し、民法にある女性のみの再婚禁止期間や婚外子への差別など、法律上に残された差別を是正します。
改正されたDV防止法(配偶者間暴力防止法)を生かし、より実効ある防止・被害者の自立支援をすすめます。国・地方自治体の責任による被害者の保護・自立支援の充実、支援センター増設、相談員の増員と研修の充実、民間シェルターへの助成、加害者更生対策の確立・強化、子どもの心身のケアなどをつよめます。
日本は、世界から「人身売買大国」といわれています。外国人被害女性に対して、保護と人権擁護の制度をつくります。ストーカーや売買春・児童買春など法にもとづく厳正なとりしまりとともに、女性の性をおとしめ、人格をふみにじる、漫画やビデオ、マスメディアなどの性を商品化する社会的風潮に対して、国民的な討論と合意によって克服するために力をつくします。
審議会への女性の登用については、設定した目標の達成に政府が責任をもって力を注ぐとともに、構成のうえでも女性の意見が公正に反映するようにすることが重要です。そのためには、審議会で78人、部会で316人が兼務している現状、一つの団体、組合から何人もの委員を選任するなどの現状を改め、改善をはかるべきです。
男女共同参画基本法に企業の社会的責任をもりこみ、男女の平等にむけた実効ある施策の推進、女性差別撤廃条約にもとづく責任ある施策の具体化、ILOパート条約、母性保護条約、女性差別撤廃条約選択議定書などの批准のために力をつくします。