2005年8月11日(木)
子どものむかつきの感情や暴力のひろがり、低学力の子どもの増加や学習意欲などの学力の問題、「教育も金次第」といわれる教育の格差拡大。日本の教育は大きな問題をかかえています。その根底には、子どもをとりまく社会環境の悪化とともに、いきすぎた管理と競争による教育のゆがみ、OECD(経済協力開発機構)諸国の7割弱の教育予算(GDPに占める国と地方の教育予算の比率)のもとでの劣悪な教育条件があります。
日本共産党は、こうした教育のゆがみをただし、教育をよくするために、次の立場にたって全力をあげます。
何より、教育への国民のねがいをまっすぐ国会に届け、みなさんと協力しながら実現していく立場を大切にします。
全国45道府県に広がった少人数学級。政府は「財政がきびしい」「教育効果があるかどうかわからない」などと「40人学級」に固執し続けてきました。私たちは国会で教育効果や雇用創出効果などを示しながら、少人数学級の実施を政府に迫りました。質問回数は他党のつい随をゆるさない90回以上にのぼりました。02年には、地方の判断によるティームティーチングの加配教員の学級担任への転用を提案。04年に実現し、地方独自の少人数学級をひろげる転機となりました。ついに、この2月には少人数学級推進を認める大臣答弁と中教審会長答弁をひきだし、政府の姿勢をかえさせました。
日本共産党は、山積しているさまざまな教育要求を国会に届け、実現させるために全力をつくします。
自民党は「『大東亜戦争』は正しい戦争だった」と子どもに教える歴史教科書への支援を強めています。命令や処分の脅しによる「君が代」「日の丸」強制も見過ごせません。こうした動きのなか準備されている教育基本法改悪は、教育の目的を主権者としての1人ひとりの子どもの「人格の完成」を目的とする教育から、「海外で戦争をする国」のための人間づくりに変質させることとむすびついたものです。この動きは、9条にまとをあてた憲法改悪と軌を一にしたものです。
民主党も歴史を歪める教科書を擁護する質問をしたり、「改憲と一体の教育基本法改正」を主張しています。「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す」「次の戦争は負けない」と公言する民主党議員もいます。公明党は、歴史をゆがめる教科書の検定合格、教育基本法改悪の準備のいずれも、与党として認めてきました。
子どものことを真面目に考えず、アジアの人々との共生をこわすような誤った歴史認識を押しつけたり、教育基本法の改悪をすすめようとする。日本共産党はこうした動きに正面から反対し、子どもと教育を守ります。
こうした立場を大切にして、以下にかかげる諸項目の実現に全力をつくします。
いま子どもに必要なのは、人と人との間で生きていく安心感であり、主権者として生き、自立した人間に成長していくための学力です。
社会性の形成やモラルを正面から位置づける……学校生活のあらゆる場面で、子どもが人間として大切にされ、人間関係をはぐくむことができる学校づくりを重視します。教育基本法・子どもの権利条約を学んで生かせるようにします。
すべての子どもに豊かな学力を……単なる暗記ではなく、市民として生きていくための学力の重視が世界の流れです。注目されているフィンランドは、教員の自主性、競争でなく共同の重視などが特徴です。ところが、文部科学省は「競い合いや叩き込み」といって、授業時間延長、「習熟度別学習」や評価方法、学力テストなどを押しつけ、学校をますます窮屈にしています。学校・教員の自主性と創意を保障するとともに、学習指導要領にかわる学習内容の大綱を国民的英知をあつめて作るため、政府から独立した第三者機関を創設します。
ヨーロッパでは、少人数学級が当たり前、学費も幼稚園から大学まで無料の国が多いのにくらべ、日本では「40人学級」、多額な父母負担など教育条件が劣悪です。その改善のために全力をつくします。
30人学級……国の責任による「30人学級」をすすめます。
私学助成……私学助成2分の1助成を早期実現します。
学費負担の軽減……「学費の無償化」の国際人権規約を批准し、大学と高校の学費無償化と給付制奨学金導入にふみだします。教育扶助・就学援助の拡充をすすめます。
障害児教育……障害児学級の廃止などを許さず、比較的重い障害の子ども、LD(学習障害)などの「軽度発達障害」の子ども双方への教育を手厚くします。
学校統廃合……地域での子どもの育ちを困難にし、地域のコミュニティーの拠点をうばう、学校の一方的統廃合をやめさせます。
その他の教育諸条件……公立学校施設費を増額し、耐震化などをすすめます。学校図書館への専任の人の配置と図書の充実をすすめます。公立図書館の拡充をすすめ、指定管理者制度による民間委託に反対します。学校給食を充実させます。夜間中学を増設させます。学校安全、アスベスト対策を強化させます。自然空間、児童館、中高生のたまり場、障害のある子どもの居場所の整備をすすめます。
自民党政治は、教育にお金をかけず、「改革」と称して教育の中身に口をだすことばかり熱中してきました。それにふりまわされた学校現場は大変です。教育行政の仕事を「諸条件の整備確立」に限定した教育基本法の原点に立ち返り、学校のことは学校で決められるようにします。
国の役割……必要な教育の全国的諸基準は、政府から独立した教育関係者・国民を代表する第三者機関で決め、政府は条件整備に徹するようにします。
地方の役割……小中学校等に住民の意向を反映させ、県からの不当な支配をなくします。教育委員の民主的選出、会議の公開、住民や学校現場の意見反映のしくみ、事務局の専門性の向上など教育委員会の改革をすすめます。
学校運営等……子ども、保護者、教職員、住民の学校運営への参加を奨励します。学校評議員制度、「地域運営学校」は、その立場から改善します。地域での子どもの成長を困難にし、学校統廃合をひき起こしている「学区自由化」の押しつけに反対します。
義務教育国庫負担金制度……憲法で明記されている義務教育無償を支えている義務教育国庫負担金制度の廃止に反対します。政府は財政負担に責任をもつが、口は出さずに地方の自主性を保障するようにします。
子どもとふれあったり教材研究の時間が取れない長時間労働、管理統制の強まりのもとで、6割の教員が「教師を辞めたいほど忙しく感じる」というなど、教員の困難は放置できない状態です。教員が専門家としての力量を発揮・向上できる環境を整備します。
「多忙化」の解消……政府に超過勤務の実態を調査させ、異常な長時間労働を解消するための措置をとります。
命令型の学校運営をやめさせる……職員会議は教育方針を合議する場にします。教員の目を子どもでなく管理職に向けさせる教育行政を改め、一方的で恣意的な教員評価制度に反対します。子どもとの関係で問題をかかえる教員については、子どもの成長本位で毅然と対応すると同時に、教員としての立ち直りへのていねいなケアを重視します。
教育基本法……教育基本法改悪を許さないために全力をあげます。改悪派は「学級崩壊も、教育基本法が個性の尊重をいったから」などと、教育の問題をなんでも教育基本法のせいにしています。しかし、自民党政治のもとで、「個人の尊厳」をはじめ、教育基本法のかかげた民主主義的な諸原則がふみにじられ、子どもたちが人間として大切にされてこなかったことこそが、教育をめぐる危機の大きな要因です。いま求められているのは、「真理と平和を希求する人間の育成」をかかげ、教育の目的を「人格の完成」におき、政府による教育への「不当な支配」を禁じた教育基本法を子どもの教育に生かすことです。
歴史教科書……政府も表明した「侵略と植民地支配への反省」という立場を、歴史教科書に反映させる努力をおこないます。
「日の丸」「君が代」強制反対……卒業式・入学式のあり方は子どもの成長を第一に、各学校できめるようにします。
性教育・ジェンダー教育などへの不当な介入を許さない……青少年の間で性感染症や望まない妊娠がふえるなか、性教育は重要な課題です。自民党などによる「性教育=過激」攻撃には道理がありません。保護者と教育関係者が連携してていねいに性教育を進められるようにします。「心のノート」など特定の道徳観の押しつけに反対します。