日本共産党

2005年8月11日(木)

衆議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策

8.安全に暮らせる経済・社会を実現するため、環境問題に真剣に取り組む

 持続可能な経済・社会のために、温暖化ガス削減を実現する対策など地球環境の保全とともに、国内のアスベスト対策や大気汚染対策など環境対策に真剣に取り組む必要があります。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守る取り組みを強化します。各地で起きている環境汚染の問題解決には、少なくとも(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3)住民参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で、次のような取り組みを強めます。

アスベストの除去を急ぎ、化学物質の有害性にかんする研究と規制を強める

 吸いこんでから20〜30年以上も後に悪性腫瘍(がん)を引き起こすアスベスト(石綿)のために、石綿関連企業において石綿を吸い込んで、がんの一種である中皮腫(ちゅうひしゅ)による労働者の死亡が続々と明らかになり、その被害は家族、周辺住民にも及んでいます。中皮腫による死亡者は、政府が統計をとりはじめた95年以降6千人を超え、今後40年間で10万人にのぼるともいわれるなど、事態はきわめて深刻です。WHO(世界保健機関)やILO(国際労働機関)が1972年にアスベストの危険を警告し、86年には規制のILO条約が採択され、また同年WHOが安全の基準値を「空気1リットル中、10本以下」という厳しいものにしました。ところが政府は、ILO条約の批准を先延ばしにした結果、このWHO基準の200倍も緩い基準(76年の通達)をことし4月まで放置してきました。いまになっても「できるかぎりのことはしてきた」といっている石綿関連業界と政府の責任は重大です。

 政府は、石綿に関する緊急全国実態調査(学校や米軍基地も含む)を実施し、公表するとともに、石綿の製造・使用等の全面禁止、在庫回収、安全除去などの被害防止対策、労働者・住民の安全対策、被災労働者等の被害者救済の徹底を早急に図るべきです。石綿関連企業や事業所周辺住民などの健康診断調査を原因企業と国の費用負担で緊急に実施し、地方自治体と協力して「相談窓口」を設置することも必要です。石綿の労災認定を抜本的に見直すとともに、すべての健康被害者を救済する新たな救済制度を早急に実現するよう求めます。

 来年には公式認定から50周年を迎える水俣病にかんして、昨年10月、最高裁が国の責任と判断基準や認定制度・検診の見直しを認めたことをうけ、2700人をこえる被害者が国の認定を求めています。政府はただちに実態調査をおこない、すべての水俣病被害者の救済を急ぐべきです。

 各地の工場跡地や、旧日本軍の毒ガス兵器の成分である有機ひ素化合物をふくんだ茨城県神栖市の産廃の不法投棄が原因とみられる井戸水の汚染など、有害物質による環境汚染がひろがっています。住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度など、早急な調査と対策が必要です。

 化学物質による環境汚染が引き起こすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックハウスやシックスクールなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。

地球温暖化対策での国際的公約を果たし、中長期の取り組みイニシアチブを発揮する

 政府は温暖化防止大綱を見直し、今年3月に「京都議定書目標達成計画」を閣議決定しました。日本の温暖化ガス排出は、その94%がエネルギーの消費にともなうものです。また部門別でみると8割が企業・公共部門であり、家庭関連は2割です。アメリカ、ドイツ、イギリスと比較すると、日本は家庭ではずば抜けてエネルギー効率がよいのに、従来、効率がよいとされていた製造業が優位を失いつつあります。京都議定書にもとづく温暖化ガスの削減目標(90年比で6%減)の達成は、日本が世界にたいしておこなった国際的約束ですが、2003年度の総排出量は逆に90年比で8・3%の増となっており、2012年までに03年比で13%削減しなければなりません。ところが、産業界が「自主的な取り組みの尊重」と言い張る一方、産業部門のエネルギー起源のCO2削減がわずかしか進まないなど、目標の達成が危ぶまれています。EU諸国で削減のため導入されている政府と産業界との協定制度や、環境税など実効ある措置を日本でも導入し、主要な事業所ごとの燃料や電力の消費量を公開するなど、地球環境の分野でも企業の社会的責任を果たすべきです。「しんぶん赤旗」の報道で明らかになった冷蔵庫のカタログにおける消費電力の過少表示などは、言語道断です。

 イギリスは長期的な目標として二酸化炭素を1990年比で2050年に60%削減する自国の目標を打ち出し、ドイツは2020年までに20%を、スウェーデンは2050年までに現在よりも50%削減するという目標を掲げています。また、自国だけでなく、世界レベルの目標として、「2050年までに15〜50%削減」(EU)、「45〜60%削減」(ドイツ)、「半減」(フランス)などを提起しています。日本でも京都議定書の約束の後の長期的な目標を持って削減を計画的に進めることが必要です。

大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任をはたさせる

 自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が認められた以上、国は、1988年以降、被害者の認定を打ち切った姿勢を転換し、新たな措置も含めてすべての被害者の早期・迅速な救済にあたるべきです。また判決が、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化を進めたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘したことは重要です。まして三井物産のように除去装置のデータを捏造し、車にとりつけて補助金までだましとったことなどは言語道断です。企業がいま使用しているディーゼル車の汚染物質(粒子状物質や二酸化窒素など)除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。

ごみの“焼却中心主義”からの脱却を図り、ごみを出さないシステムを製造段階から確立する

 大型焼却炉によるごみの“焼却中心主義”からの脱却を図ります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するために、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場にたって、自治体と住民に負担を押しつける現行の制度を抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ廃棄物処理施設での爆発事故やトラブルに、自治体は安全性と費用負担で頭を痛めています。国は、政策的に誘導してきたことを反省し、責任をもって改善と補償をプラントメーカーに指導すべきです。

 不正軽油の生成から大量に発生する硫酸ピッチをはじめ、地下水から法定基準値を超えて検出されたヒ素やセレンなどの有害物質など、廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけるため、徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な指導と監督をおこない、不法投棄のルートと関与者の解明、違反者はもちろん排出者の責任による撤去を実施させます。

公共事業などの大型開発による環境破壊をやめさせ、生態系や住環境をまもる

 人類生存の基盤である生態系や住環境をまもるため、環境破壊を引き起こすような大規模開発をやめさせるとともに、環境アセスメント制度を改善し、住民参加と情報公開、代替案の検討を義務づけ、事後評価を実施させます。さらに欧米で導入されている「政策の計画段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の実施を求めます。諫早干拓などをただちに中止し、自然の維持と回復の取り組みを盛り込んだ干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。


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